●勇気ある者を狙って……
千葉県船橋市のとある商業施設。
そこに、突如として異常な姿をしたキメラとでも言うべき死神が来襲する。
どうやら、上半身の獣人の女性の姿が主人格と言うべき存在だが、いくつもの狼の頭を従え、さらに下半身がタコのようになったおぞましい化け物だ。
「デウスエクスだ、逃げろおおおおっ!!」
施設を訪れていた人々は怪物に怯え、慌てふためいて逃げ出す。
ただ、その死神は逃げる者にはあまり気を払うことなく、近づいてきた一人の男性に着目する。
「おのれ、怪物め……!」
この場の人々を逃がそうと、果敢に彼はモップを手に死神へと無謀にも立ち向かおうとしていた。
だが、その死神ケートーは小さく唸って。
「その勇気、気に入った。われら姉妹の計画の為、お前の勇気サルベージさせてもらう」
彼女はタコの足を伸ばしてその男性の身体を捕え、複数ある狼頭に食らいつかせていく。
男性がその死神の攻撃に耐えられるはずもなく、いとも簡単に命を奪われてしまった。
ところが、……だ。
程なく、男性の死体は異形のものと成り果て、歪な姿をした屍隷兵へと成り果ててしまう。
「おまえと同じ勇気あるものを殺して、私達に捧げなさい」
ケートーの指示を耳にした新たな屍隷兵は小さく頷き、フロア内を歩き始めたのだった。
新たな死神のサルベージ事件とあって、ケルベロス達はヘリポートへと情報を求めに向かう。
「うん……、千葉県船橋市にあるとある商業施設で、死神による予知を確認したよ」
やってきたケルベロス達も加え、リーゼリット・クローナ(ほんわかヘリオライダー・en0039)がこの場のメンバーへと説明を始める。
この事件を起こす死神『暗礁の死神』ケートーは、生きた人間の魂をサルベージして殺害、死体を屍隷兵にして人々を襲わせるのだ。
襲撃を受けた施設では多くの人が逃げ惑っており、生み出された3体の屍隷兵が別々に人々に襲い掛かろうとしている。
施設から避難した人々の救護活動は警察と消防が引き受けてくれているが、施設内部は屍隷兵が暴れていることもあってケルベロスでなければ手が負えない状況だ。
「被害がこれ以上広がらないように、どうか屍隷兵の撃破をお願いしたいんだ」
ケートーは3体の屍隷兵を作成してから撤退したものの、その3体は施設内にて別々に行動しているようだ。
どのように個々の敵と対していくかはチームメンバーによって変わることになると思われるので、打ち合わせを行って屍隷兵との戦いに臨みたい。
生み出された屍隷兵『ウツシ』3体は、いずれもクラッシャーとして行動する。
近距離で暴れ、喰らい付くだけでなく、遠くから翼を羽ばたかせて強襲してくることもあるので注意したい。
「事件現場となる商業施設は、3階建てなのだけれど……」
L字型をした3階建ての建物で、屋上にも行くことは可能だ。
1階は食品売り場と、飲食店、アパレル店舗などが軒を連ねる。
2階は売り場の広い専門店が並び、3階は小型の専門店ばかりだが、フードコートが目を引く場所だ。
3体の屍隷兵は1体ずつ、それぞれのフロアで徘徊しているようだ。
「1階の客やスタッフはそのまま地上階から避難し、3階の客は屋上に逃げ込み、扉をバリケードで封鎖している状況だね」
ただ、2階の客はほとんどの客が1階を通って外へと逃げたものの、息を潜めて各店舗内で隠れている者も若干数だがいる。これらの人々の救出も兼ねたいところだ。
各階への移動は各所の階段、エスカレーター、エレベーターの他、外壁から窓を蹴破るなどして突入もできる。
空を飛ぶことが出来れば、屋上から侵入もできるだろうが、人々の築いたバリケードをどうにかする必要があることを留意したい。
一通り状況説明したリーゼリットはこう補足する。
「この屍隷兵『ウツシ』は、勇気ある者を優先して襲ってくる傾向があるようだよ」
だからこそ、ケルベロスが果敢に屍隷兵へと攻撃を仕掛けることで、一般人への被害を防ぐことが出気かもしれない。
なお、相手は勇気を感知する能力などは持ち合わせていないので、直接相手の前で勇気を示す必要があるだろう。
「以上だね。……どうか、よろしく頼んだよ」
――これ以上、被害が大きくならないように。
リーゼリットはそう、ケルベロス達へと願うのである。
参加者 | |
---|---|
蒼龍院・静葉(蒼月の戦巫女・e00229) |
ウォーレン・ホリィウッド(ホーリーロック・e00813) |
セルリアン・エクレール(スターリヴォア・e01686) |
罪咎・憂女(刻む者・e03355) |
西村・正夫(週刊中年凡夫・e05577) |
ククロイ・ファー(ドクターデストロイ・e06955) |
筐・恭志郎(白鞘・e19690) |
レオンハルト・ヴァレンシュタイン(医龍・e35059) |
●これ以上犠牲を出さぬ為に
千葉県船橋市。
メンバー達が到着したその商業施設の屋上からは、避難した人々のざわつく声が聞こえてくる。
「死神、そして屍隷兵か」
モノクルをつけたセルリアン・エクレール(スターリヴォア・e01686)が施設を見上げる。
この中で暴れているのは、元人間、屍隷兵だ。
「勇気を出した奴を屍隷兵に変えるなんざ、胸くそ悪い死神だなァ……!」
「自分の手先とするとはのう、ずいぶんと悪趣味じゃ」
鳥をモチーフとした姿をとるレプリカント、ククロイ・ファー(ドクターデストロイ・e06955)が怒りを露わにすると、見た目少年のご老体、レオンハルト・ヴァレンシュタイン(医龍・e35059)もまたこの事態に嘆息する。
叶わない相手に立ち向かう勇気。
それを抱く者が3名、死神の手で異形と化してしまっている。
『決意を虚仮にするような所業は、少し不愉快だな』
すでに、戦闘状態へと切り替えた罪咎・憂女(刻む者・e03355)もまた、男性口調で不快感を露わにする。
『思いを無下にしない為にも、急がないとな』
憂女が言うように、屍隷兵『ウツシ』と成り果てた人が今なお施設内に取り残された人々を手にかけてしまうことだけは避けねばならない。
「……彼らが最後に示した勇気、僕らで引き継ぐよ」
温和なお兄さんといったウォーレン・ホリィウッド(ホーリーロック・e00813)は、神妙な表情で同じく施設を見上げていた。
彼が抱いているのは、死神に対する怒りでも憎しみでもなく、犠牲となった人に対する悲しみだ。
そんな彼を、中性的な風貌の大学生、筐・恭志郎(白鞘・e19690)は心配そうに見つめる。
とある事件において力及ばなかったことを人知れず気に病む彼は、積極的に屍隷兵事件を追っていた。
その際、恭志郎はウォーレンと知り合い、折れそうになった心を支えてくれたいわば恩人だ。だからこそ、彼の様子が気になるのだろう。
施設から響く、低い唸り声。
それは、人外と成り果てた勇気ある者が上げる慟哭の声にも聞こえて。
「……だが、今は屍隷兵だ」
――これ以上、誰の犠牲も出させない。そして、彼らの勇気を穢させはしない。
そんなククロイの決意に、セルリアンもぶっきらぼうに一言。
「誰ひとり犠牲者を出さないように、頑張っていこーか」
その為にも、屍隷兵の対処に集中せねばならないとセルリアンも示唆する。
「このままじゃと二次被害の可能性もある、迅速に事を進めようぞ」
――被害にあった者達はもはや倒すしかない。
レオンハルトの言葉を受け、メンバー達はすぐさま作戦を開始するのだった。
●屍隷兵の捕捉を急げ!
さて、3階建てのこの施設内の各フロアで、屍隷兵『ウツシ』は暴れているという。
この対処の為、予めククロイがアイズフォンを使って調べた施設の見取り図を元にし、ケルベロス一行は作戦を立案。3チームに分かれ、それぞれ屍隷兵と対することとなる。
地上階、入り口から突入していったのは、ウォーレンとくたびれたスーツを着用した西村・正夫(週刊中年凡夫・e05577)の2人。
L字となったこの施設のそれぞれ端から突入した彼らは、他メンバーとトランシーバーで通信できるようにしつつフロア内を見回す。
「どこに相手がいるかもわからないので、ローラーで探すしかないですよね」
正夫はそう考えて捜索に当たるが、相手は唸り声を上げて堂々と徘徊している相手だ。
逆側のウォーレンは足跡や破壊音に気を払い、通路を駆け抜ける。
すると、正面入り口に近い場所に、歪な形をした人型……ドラゴンのなりそこないの様な姿に成り果てた屍隷兵がいた。
ちょうど、反対側から正夫も駆けつけたことで、2人はそのまま攻撃を仕掛けていく。
2階は4人が対処に当たる。
こちらも2手に分かれ、L字店舗の両端の窓から突入を試みていた。
黒いスーツ着用の蒼龍院・静葉(蒼月の戦巫女・e00229)は、翼飛行でセルリアンを運ぶレオンハルトへと声をかける。
「別階になりますがなるべく早く合流出来る様に努めます。そちらもお気をつけて」
「静葉殿も油断召されるな。後ほどまた会おうぞ」
ウインクを返すレオンハルトは静葉が割った窓へとセルリアンを下ろし、さらに上昇していった。
「熱源は……」
セルリアンの装着するスコープに、いくつもの熱源の反応がある。
それを元にして、2人は急いで人々の救出と索敵に当たっていく。
逆側からはすでに、ククロイが恭志郎と共に壁歩きを使って突入していた。
2階は売り場の広い専門店が多く、1つずつ店内を見渡す必要がある。
ククロイは望遠鏡でフロアを見回し、恭志郎と1店舗ずつ確認しつつ屍隷兵の姿を探す。
「きゃあああああああっ!」
その時、聞こえてきた女性の声。そちらへと急行すると、すでにセルリアンが相手の気を引こうとしていて。
「そこの屍隷兵 弱い者いじめなんてしてないでさ。自分とあそぼーぜ」
「うぅぅぅ……」
唸り声を上げる屍隷兵は自分に近づくケルベロスに気付き、果敢に向かってこようとする姿に気を取られていた。
奥には、怯える女性店員の姿がある。
静葉が彼女に従業員通路からの避難を促し、御業で作り出した護符を手に取って。
「蒼き月の加護を私達に……参ります」
静葉は『月神符・冬桜千里光』の力を解き放ち、セルリアンの精神を落ち着かせていたようだ。
「筐、一般人を護ってくれ」
そこへ、ククロイも飛び掛っていく。
「安楽死ってワケにはいかねぇが、きっちり殺してやるよ」
一般人を託された恭志郎も自分達がやってきた方向から階段を降り、そのまま店外へと出るよう指示を出してから戦列に加わる。
「……ごめんなさい。助けられなくて」
どうしても、一言謝らずにはいられなかった恭志郎は、荒ぶる屍隷兵の前へと立ち塞がる。
その光景は、過去、自身が人を庇って逃がす為に立ち塞がり、覚醒したあの日のよう。
「皆を助けようと立ち向かった貴方に、誰も殺させない……!」
せめて、勇敢な貴方のその手を汚さぬようにと、恭志郎は刃を抜いたのだった。
レオンハルトは翼飛行で3階に到着し、トランシーバーで他階メンバー連絡をとる。
「2階担当の者の輸送は完了。これより捜索を開始じゃ」
逆側から突入していた憂女は想定より壁歩きができるメンバーが増えたことで、一足先に突入して屋上への階段を確認する。
そちらに屍隷兵がいないなら、ひとまず屋上に立てこもる人々は安全だ。
比較的、見通しのよい3階フロア。彼らが敵を捕捉するのは早かった。
「目標を発見。場所は……」
フードコートをふらふらしている敵を発見し、レオンハルトが通信を入れると、憂女もすでにそちらへと急行していて。
『生き様、心意気には敬意を……それが無に帰す前に止めさせていただく』
飛び込んだ彼女は、深い菫色を宿す護身銃『捧』からエネルギー光弾を発する。
直後、レオンハルトは扇子『秋茜』をパチンと鳴らして。
「竜王の不撓不屈の戦い、括目して見よ!」
彼は一直線に跳び、敵の抑えに当たっていった。
●暴れ狂う勇気ある者達
1階の正面出口付近で、正夫とウォーレンが屍隷兵『ウツシ』1体と交戦に当たる。
ともあれ、こいつがフロア外に出るのは避けたいところ。
「相手側の屍隷兵の知能がどの程度あるか……」
こちらのペースが崩れないようにと気がける正夫は相手に竜鎚『救世円通』を叩き込み、その傷口をわずかに凍りつかせていた。
「どこにも行かせない。僕が相手になる。かかっておいで」
自らの周囲に降らせた雨に紛れつつ、ウォーレンが屍隷兵を引き付ける。
大きく開いた口で喰らい付いてくる屍隷兵をその身で受け止め、彼は悲しげに光り輝く魔力を込めた右手で触れる。
叫ぶ屍隷兵は痛みを気にすることなく、なおも襲い来る屍隷兵を抑えながら、ウォーレンは他フロアに向かった恭志郎のことをふと考えていた。
逃げ遅れた人々が周囲を走り抜けていた2階の戦場では、その恭志郎が主となり、率先して相手の注意を引く。
水平に構えた刃で霞構えをとった彼は強く踏み込み、鋭い突きを繰り出した。
その刃の切先が刻むは、死合の烙印。
どうやら、屍隷兵も彼を敵と認め、内から湧き出る衝動を解き放って襲い掛かってくる。
声すら上げずに攻撃に耐える恭志郎へ、静葉はオウガ粒子を飛ばして仲間の傷を塞ぐ。
「私が立つ限り、誰も落とさせませんよ!」
支援を受けながらも、セルリアンは日本刀『壊世』を手に、相手へと雷の刃を突き入れる。
序盤は様子見。相手の攻撃パターンを読むべく、彼はなるべく離れないようにしながらグラビティを行使していく。
「勇気ある者、つまり勇者の魂を天に導くならこの種族のグラビティだァ!」
叫ぶククロイは、自らのデータをセットアップする。それは、ヴァルキュリアの使う手刀を思わせた。
「その首、いただくぜェッ!!」
屍隷兵もそう易々と首を落とされはせず、身を引いてダメージを最小限に食い止めてから再度ケルベロスへと飛びかかる。
再び、それを恭志郎が抑えにかかっていたようだ。
3階では、レオンハルトが前線にオルトロスのゴロ太を向かわせる。
「ゴロ太スラッシュ!」
くわえた神器の剣でウツシの身体を切り裂いたゴロ太だったが、一声吠えた相手に渾身の殴打を食らってしまう。
回復に徹するレオンハルトは、緊急手術で愛犬の癒しに当たる。
後方からは憂女が相手から距離を取りつつ、前線に立つ2人を支援して。
「ーーーォォオ!!」
可聴域を超えた憂女の咆哮は、ケルベロスにとって有利に働くよう周囲に漂う重力鎖を塗り替える。
臨むところと、屍隷兵もまた雄叫びを上げ、前線のレオンハルト達へと蹴りかかってきていた。
屍隷兵は所詮、不完全な神造デウスエクスでしかない。
ケルベロスの攻撃によって、その身は徐々に崩壊を始めていく。
2階の戦いに身を置く1体は顕著に、その身を崩しかけていた。「はあああっ!!」
相手の気を引き続ける恭志郎はそれまで声を上げずにいたが、自身のダメージが重なってきていたこともあってか大声で吠える。
「蒼き月を祀る巫女の原点を此処に。かの者に戦展を見通す加護を!」
静葉も蒼月符の力で、彼を癒し続ける。
とにかく手堅い立ち回りをと意識していたこともあり、流れはケルベロスへと大きく傾く。
相手に見切られるようにとグラビティを替えながら切りかかるセルリアンは、ある程度相手の動きを捉えて一度刃を収める。
『死閃の蒼茫(デッドブルー)』。
そして、刹那の一時で、彼は抜刀の後に相手を切りつけて納刀するという一連の動作を行う。
いつの間にか付けられたその傷に、苦しむ屍隷兵。
そいつへとククロイが迫り、赤い光のラインが目を引く剣『モディファイズ』でその身体を解体してしまう。
崩れた相手の肉片は残らず、蒸発するように消え失せたのだった。
●勇気ある者を安らかに――
1階では、屍隷兵が高く跳び上がり、ウォーレンへと拳を叩きこんでいた。
(「自分を罰するように、無茶な戦いをしていないかな」)
自身が無茶しがちな戦いをしているのはさておき。彼は恭志郎のことを気にかけずにはいられない。
その間も相手は喰らい付き、ウォーレンの身体を痛めつける。
「耐えれば、仲間が来てくれます」
正夫が相手に拳を打ち込みながらも、彼を鼓舞していく。
消耗も激しいと感じたウォーレン自身も、全身に呪紋を浮かび上がらせた魔人へと変貌していた。
なお衝動のまま、襲い来る屍隷兵。
その横から入ってきた人影に、ウォーレンの表情が綻ぶ。
1階から駆けつけた恭志郎が盾となり、彼を守ったのだ。
これを機に、一気にケルベロスは相手を押し切っていく。
相手の腕を恭志郎が精神集中で爆発すると、同伴したセルリアンが『壊世』で相手の体を大きく切り上げ、動きを封じる。
屍隷兵の動きが硬直したところで、正夫が竜鎚『救世円通』を叩き付け、さらにウォーレンが氷の魔力を込めたチェーンソー剣『Ice shaver』で相手の体を切り裂いてしまう。
バラバラになった屍隷兵は小さく呻き、果てていったのだった。
3階もまた、盾役となるオルトロスのゴロ太とレオンハルトが戦線を持たせ、憂女が後方から支援を続けていた。
ここでは、ゴロ太が勇猛さを見せつける。
人の身ではないものの、小さな体躯で異形に立ち向かう姿は屍隷兵を引き付けるに十分。
問題は、その体力がいつまで持つか。
主のレオンハルトは同列にて、自身のオルトロスを気遣い自身の傷の回復も兼ねて癒しの雨を降らす。
憂女は彼らの傷を気遣いながらも、基本は攻撃にと護身銃『捧』から屍隷兵へと魔法光線を発射していく。
ゴロ太も戦意は捨てていないものの、いつまでも体力が持つはずもない。
敵の猛攻を受けて足取りがよろけた所で、蒼き月の光がゴロ太を包み込む。
「此処からは、私も加勢させてもらいます!」
静葉の登場にレオンハルトも笑みを浮かべて見栄を切り、気合を入れる。
「静葉殿を傷つけさせはせぬぞ!」
こちらも支援の手が入ったことで、猛然と襲い来る屍隷兵がケルベロスの勢いにのまれて。
頭上から流星の蹴りを食らわせてきたククロイの一撃に身を竦ませた相手へ、レオンハルトはオウガメタルを纏って殴りかかっていく。
屍隷兵が己の衝動のまま前衛メンバーへと暴れかかった直後、上半身が大きく揺らいだのを見た憂女が深い藍色を宿した護身小刀『憂』で相手の体を大きく、そして深く切り裂いてみせる。
僅かに安らいだ顔を見せた屍隷兵は次の瞬間身体を崩し、その欠片全てを消してしまったのだった。
●その勇気を引き継いで
ケルベロス達の作戦は成功し、新たな被害者は出さずにすんだようだ。
戦いの爪跡を残さぬよう、一行は各フロアで戦場となった場所を回り、修復作業へと当たる。
破壊箇所に施術を行うククロイの傍で、普段の穏やかな雰囲気に戻った憂女が考える。
「しかし、屍隷兵をどうやって作っているのでしょうか?」
技術の逸失をさせねば、いつまでも悲劇が起きてしまう。
憂女はこの打開策はないものかと、考えていたようだ。
別の戦場跡では、気力を放出して修復作業に当たる恭志郎が屍隷兵の消えた跡へと一礼して。
「……勇気ある彼らに、弔いと敬意を」
「勇気は確かに引き継ぎました」
ウォーレンもしばらく、犠牲となった人達へと敬意を示していた。
程なくして、施設内には人の姿が戻ってくる。
3階フードコートも営業を再開しており、そこへ、レオンハルトと静葉が食事を取ろうと向かっていた。
勇気ある人達が守ろうとしたもの。そして、自分達が守ったもの。
それを確かめるべく、ウォーレンは恭志郎と共に、この商業施設内を見て回ることにしたのだった。
作者:なちゅい |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2018年10月31日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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