山粧う

作者:雨音瑛

●赤い風景
 カエデにブナ、サクラの紅葉は夕暮れの色が重なって一層深みを増している。
 絶壁から見える岩肌を照らす色もまた、石段を登る人の目を楽しませてくれる。
 山形県の山寺では、いま紅葉が見頃だ。
 人々の目的は、さまざま。寺院にお参りするために、登山のために。あるいはただ紅葉を眺めに。
 どれもが日常の地続きにあるもので、平穏が約束されているはずの1日だった。
 されど、無慈悲にも竜の牙が石段に突き刺さる。
 異常事態に逃げ惑う人々の背を、鎧兜を纏った兵が追う。
「グラビティ・チェインをウバウのだ!」
「ニゲテモヨイゾ、ゾウオとキョゼツをムケテクレルのナラバナ!」
「ドチラにセヨ、ドラゴンサマのカテとしてクレル!」
 枝から離れた赤い葉が、血だまりの上に落ちた。

●山寺へ
 どこからか飛んできた赤い葉が、七星・さくら(日溜まりのキルシェ・e04235)の掌の上に乗った。
「全国各地で紅葉が見られる季節ね。そうそう、山形県の山寺もそのひとつだわ。……でも、竜牙兵が現れるというのだから困りものよね」
 ため息ひとつ、さくらはヘリオライダーに予知してもらったという内容を話し始める。
「今から向かえば間に合うみたいなのだけれど、気をつけたいことが一つあるわ」
 それは、避難勧告のタイミング。竜牙兵出現前に周囲に避難勧告をすると、竜牙兵は他の場所に出現してしまう。そうなれば、事件の阻止はもはや不可能。被害が大きくなってしまう、というわけだ。
「ただ、現地の警察には連絡済みよ。現場に到着した後は彼らの誘導を任せられるから、ケルベロスは戦闘に集中できるわね」
 竜牙兵が出現するポイントは、仁王門のあたり。パンフレットを広げ、さくらが1点を示す。
「ヘリオンから輸送してもらって、ちょうどこの上空から降下できるらしいわ。現れる竜牙兵は3体で、全員がジャマー。装備している武器はゾディアックソード、とのことよ。ケルベロスとの戦闘が始まった後は、撤退することはないと聞いたわ」
 また、ケルベロスを無視して人々を襲うこともない。ケルベロスがしっかりと仕事をこなせば、人々の無事は約束されたようなものだ。
「本当、デウスエクスって空気を読まないんだから……さっさと倒して、無事に紅葉を楽める場所にしなくちゃね!」
 片目をつむったさくらは掌の葉を指先でつまみ、くるりと回した。


参加者
七星・さくら(日溜まりのキルシェ・e04235)
水無月・一華(華冽・e11665)
カレンデュラ・カレッリ(新聞屋・e14813)
一之瀬・白(闘龍鍛拳・e31651)
月岡・ユア(孤月抱影・e33389)
ステラ・フラグメント(天の光・e44779)
星野・千鶴(桜星・e58496)

■リプレイ

●秋の夕暮れに
 赤い空の下、風が吹いて舞い上がる木の葉の色は黄色。秋の色を視線で追えば、燃えるような山の色も目に入る。
「まるでお化粧をしたかのように美しく色付く秋の山々ね」
「まったくだ。竜牙兵共もこの景色を楽しめば良いのに」
 七星・さくら(日溜まりのキルシェ・e04235)の言葉に、レッドレーク・レッドレッド(赤熊手・e04650)はうなずく。
「竜牙兵には無理じゃろうなあ……うん? それは何じゃろうか?」
 問いかけるは東洋龍のドラゴニアン、一之瀬・白(闘龍鍛拳・e31651)。へらり笑って応えるのはロマン主義の新聞記者、カレンデュラ・カレッリ(新聞屋・e14813)だ。
「まァまァ、気にするなよ。それより奴さん、お出ましのようだぜ」
 重りつきの長い棒を茂みに隠しつつ、カレンデュラは空を指差した。
 飛来する竜の牙は石畳へと突き刺さり、骨の兵へと姿を変えてゆく。
「仕方がない、紅葉狩りの前のウォーミングアップに付き合って貰うとするか!」
 紅葉よりも赤い武器を身構えるレッドレークの後ろでは、警察の指示によって人々が避難を始めている。
「空気の読めない連中には困ったものだわ……さっさとお片付けしちゃいましょ♪」
 白黒斑の翼を広げるさくらも、臨戦態勢だ。
 竜牙兵3体は鎧と骨のぶつかる音を響かせ、咆吼を上げた。
「グラビティ・チェインをヨコセ!」
「マテ、ケルベロスだ!」
「ナラバ、先に始末してクレヨウ!」
 赤茶の髪をなびかせる星野・千鶴(桜星・e58496)の気合いは充分。刀を抜き一回転させ、紅葉に切っ先を突き立てる。
「真っ赤な紅葉に血色はご法度。お覚悟、いいかな?」
 目の前を過ぎる葉にため息ひとつ、水無月・一華(華冽・e11665)はすらりと刀を抜いた。
「紅葉の赤は良きものですが、添え物に骨は要りませぬ。さぁさ、お引き取り願いましょうか」
 何より、と赤い楓の葉一枚を拾うのはステラ・フラグメント(天の光・e44779)。
「紅葉にも花言葉があるんだぜ」
 アカギツネの耳をぴこんと動かし、竜牙兵に強気の笑みを向ける。
「楓の花言葉は『大切な思い出』って言うんだ。こんな無粋なヤツらに壊させるわけにいかないな!」
 指先から弾かれた葉が飛び、ゆらり舞う。それが地面に落ちるよりも早く、戦端は開かれた。

●舞う
 剣を振るう竜牙兵3体は、全てが状態異常の付与を得意としている。一度に受ける傷こそ深くはないが、3体が連携して襲ってくるのならば話は別だ。
 状態異常が耐性で消えることもあるが、竜牙兵が耐性を打ち消しにかかった場合、癒し手として動くウイングキャット「ノッテ」のヒールだけではやや回復しきれない。
「ドウシタ、ケルベロス!」
「まあ、そう慌てるな。急いては事をし損じる、と言うではないか」
 余裕の笑みを見せ、レッドレークは赤熊手を加速させ振るう。竜牙兵の1体は剣で受け止めた。が、競り負けるのは時間の問題であった。
 赤熊手がさらに加速し、竜牙兵の鎧を打ち砕く。
「グッ、マダマダ!」
 剣を一振り、星辰のオーラが前衛に到達する。次いで襲いかかる加護破壊の一撃、その後ろで展開される魔法陣が竜牙兵たちを癒す。
 前衛の状態異常が多いと判断した一華は、仲間に宣言する。
「無理はなさらず、お任せくださいませ。千鶴さん、ここはわたくしが」
 癒す手段を持ち込んでいる者は多い。
「それじゃ、一華さんにお願いするね」
 千鶴の返答にうなずき、一華はひらり、舞う。魔を払い、傷を癒さんと願いを込める剣舞の名は「祓魔癒術」。
「紅葉が好きなら、桜も好きかな?」
 斬霊刀の切っ先を向け、千鶴は笑った。
「綺麗に見えたらもうお終い」
 金色の目と、竜牙兵の眼窩が一直線上に結ばれる。次の工程までは、千鶴が瞬きをするかしないかの時間。
「――!」
 言葉の無い竜牙兵の胸元を、いくつもの刃が貫き通していた。
「次はステラさん、頼んだよ」
「任せてくれ! 俺のガジェット!素敵なダンスを踊ってくれ!」
 ステラの掲げたガジェットから、砲弾が溢れる。さながら、星屑たちのダンス。輝きは手を取り合って、竜牙兵を貫く。
「さくら、次頼めるかな?」
「もちろんよ。……ぴぃぴぃ、ぴりり、ちぃちぃ、ころり……おいで、おいで、雷雛遊戯」
 さくらの口元が紡ぐ、童謡のようなリズム。生まれた雛鳥たちは可愛らしく、されど囀り啄む様は容赦なく。
「白くん、次お願いね」
「うむ! 任せて欲しいのじゃ、さくら殿!」
 竜牙兵との距離を詰めた。
「八卦と八極の合わせ技…その身でとくと味わうがよい!」
 十六もの技は八卦の八法と八極の八掌。次々繰り出される技は体内と体外、その両方から竜牙兵の体力を削る。
「ふむふむ、今日の悪い子はキミたちだね!」
 月岡・ユア(孤月抱影・e33389)が抜いたのは、日本刀「終焉ノ月律」。
「でも、否定も肯定も……要らないよ!」
 月光に似た刃と、月の輪郭をなぞる閃き。見事な曲線を描かれた竜牙兵が、くずおれた。
「さぁさぁ、キミ達が大好きな殺戮で最後まで楽しく遊ぼうか♪」
 刀ととも舞って、ユアは竜牙兵から距離を取る。
 ビハインド「百火」は握る緑鎖に力を込め、次に撃破すべき竜牙兵の動きを拘束する。
 そこへ見舞われるのは、石畳に反射した銃弾ひとつ。カレンデュラの銃、「静寂のルネッタ」から放たれたものだ。
「『どうした、竜牙兵!』……とでも言えばいいか?」
 歯噛みする竜牙兵に、カレンデュラはは笑みを返すだけであった。

●信頼
 走りは怪盗の基本だ。石畳の上を軽やかに駆けながら、ステラはオウガメタルを纏う。
 拳を覆う流体金属を叩きつければ、すぐ近くに大切な人を見つけた。
「ユア! 頼んだぜ!」
 名を呼ぶ声には、確かな信頼が込められている。ユアは悪戯っぽく笑い、片目を閉じて答えた。
 石畳を蹴り、宙で一回転して着地した先は、竜牙兵の目と鼻の先。
「これはキミの為の一曲。さぁ、お手を拝借」
 月の光を纏ったユアが跳ね、竜牙兵の周囲を舞う。指先と足先が示す先には、どことも知れぬ深淵。
 傾く竜牙兵に、ノッテのリングが直撃する。
「ほら、次いくぜ! 新聞記者だからって甘く見てると、痛い目見るぜェ!」
 いつの間にか、カレンデュラは竜牙兵の背後へと回り込んでいた。飛びかかり、頭部と胴体の間にグラビティ・チェインを乗せた拳を打ち込む。続く頭突きに、竜牙兵の意識が一瞬飛んだ。飛び退いての回し蹴りで再び意識を取り戻した竜牙兵の視界には、真っ赤な空。と、銃口。
 全ての弾丸が放たれて一瞬の静寂が訪れた後、竜牙兵の身体が完全に砕け散った。カレンデュラが拳を握る。
「よっし、次!」
「……の、前に! 状態異常、消しておくね!」
 花弁のオーラを舞い散らしながら、千鶴が石畳の上を滑るように踊る。
 複数にダメージを与える攻撃が、既に何度か成されている。つまり、最後の1体の体力は残り少ないということ。
「しかし、加護が少々目障りだな」
 うなずき、レッドレークは攻性植物「真朱葛」の胞子を解き放った。
「根を張り、奪い、爆ぜろ!」
 白い骨に張り付く胞子は、火の粉を思わせる。そこに咲いた花冠はこれから先の温度を示すような、鮮やかな赤。
「ナニ……グワッ!?」
 竜牙兵が訝しむのと爆発の発生はほぼ同時であった。
「今だ、白」
「うむ、好機であるな、レッド殿」
 白は爆風に飛ばされた骨の欠片を蹴り、駆けた先で地面を踏みしめた。腰を落とし、重い蹴りをひとつ。
 ただの蹴りと侮った竜牙兵は、気付けば硬化した爪に貫かれていた。
 百火は緑鎖を両手で伸ばし、念じる。落ちた枝葉が竜牙兵へと集まり、確かな打撃を与える。
 剣を構えた竜牙兵に、レッドレークと白は目配せした。
「もう一仕事だな」
「うむ。誰一人、倒させまいて」
 レッドレークは赤熊手を前、白は翼を広げて。そうして中衛ふたりを庇った二人の腕や足に、氷がまとわりつく。
 回復は不要と告げる二人にうなずき、一華は一度袂を抑えて青眼に構えた。
 そのまま刀を振るう一華の振る舞いは、作法の手本を見せるがごとく。滑らかにして的確な動きの最後は、垂直の銀線で飾られる。
「さくらさん、お願いできますでしょうか?」
「ええ! これで……最後よ!」
 大樹を蹴り、さくらは跳んだ。星と重力の力が、足先に収束していく。煌めきを伴った桜天使の描く流星は、最後の竜牙兵を砕いた。
 さくらが着地するや否や、砕けた骨たちは黒ずみ、灰のようになって消えていった。
「お疲れさま、だな。さて、仁王門周辺はしっかり修復しておきたいところだな。それに……まさに見頃だ、人々にもこの風景を見せてあげたいからな」
 ヒールグラビティで門を修復しながら、レッドレークが空を見上げる。橙の端に、夜の色が滲み始めている。
「自然と昔ながらの景観は、できるだけ手で直してあげたいね」
「そうですわね。何より、綺麗な景色は綺麗なままが良いのですわ」
 千鶴と一華、和服の似合うふたりは穏やか笑みを交わし合った。

●季節の終わりに
 修復を終えた仁王門の前で、レッドレークは石段の先を望む。
「ではいざ、登るか!」
「うむ、石段登り競争じゃ! 負けた人が御食事処で奢りの罰ゲーム、負けるわけにはいかないのう!」
 兎跳びの体勢となる白を見遣りながら、カレンデュラは咳払いをした。
「公平を期して、『せーの!』で全員スタートな。ズルすんなよ? おじさんとの約束だ」
 よーし、いくぞ、などと言いながら石段を急ぐカレンデュラ。
 何せ、負けるわけにはいかない闘いである。ギャンブルに負け続けた現在の所持金、有名サッカー選手も顔負けの300円。
 負けるわけにはいかないというよりは払えないという決意に満ちたカレンデュラの顔を、夕日が真っ赤に染めていた。
「それじゃ、よーい、どーん!」
 ダンディな男の決意をよそに、さくらはくすりと笑って合図、さらにはフライング、しかも翼で飛び立った。容赦のないおねーさんである。
「勝負となれば手は抜いてられないもんね! 任せて、足には自信が……って飛ぶのもありなの!?」
 驚く千鶴は、それでも楽しくて笑いながら石段を登ってゆく。
「あっ……合図とは……? えっしかも飛ぶのアリ!? これだから翼持ちは! 皆ずるいぞ! だが勝負にノッた手前、俺様に二言はないのだ!」
 せめて地上での一等賞を掴もうと、レッドレークは数段飛ばしで階段を駆け上がる。
「よーし、負けぬのじゃよ……」
 兎跳びと見せかけて、翼を広げて飛行しようとする白。
「あっ! ズルいんだー! 飛ばせない、ぞ!」
 そこへ、跳躍したユアが自身の翼を広げた。翼の壁に弾かれ、白は階段から滑り落ち、転がってゆく。
「あっ、翼飛行なんてずりーぞテメーら!こういうのはもっと正々堂々とだなァ……」
 ぶつくさ言うカレンデュラの横を、白が転がってゆく。
「ユア殿、なんたる仕打ちいいいぃぃぃぃ!!」
 白の声が、遠くなってゆく。隠れる先がなくなった百火が、慌てて白を追いかける。
「ほーら、いくよ! 美味しい食べ物ゲットするんだよ~!」
 すかさずステラの手を引いて駆け出すユア。
「……って、おいユア、手を……! ああ、もう、仕方ないな!」
 仮面を押し上げ、ステラはユアを抱いて階段を駆け上がってゆく。
「ふふ、頑張れ〜♪」
 楽しげに笑うユアに見せたステラの笑みは、自信満々の怪盗のそれだ。此処でで負けては、怪盗の名が廃るというもの。
 ガジェットをちょっとした杖代わりにして体を支えつつ、器用に階段を駆ける。
 何でもありの競争に、カレンデュラは肩をすくめた。
「……まぁ良い、この戦い、ビリにさえならなけりゃ勝ちなんだからな。この世はなァ、入念に準備した奴とあくどい奴が勝つんだよ! ほらよ、これでも喰らえ!」
 準備していた重りつきの長い棒を、下を駆ける連中目がけて転がす。
 その妨害工作装置を難なく掴んだのは、レッドレークであった。
「おーい、何か落としたぞ!」
 レッドレークの投げ返した棒は、鮮やかなまでに持ち主に命中。
「無駄な親切心を発揮してんじゃねェェェ!!!」
「わ、怪我しないよう気をつけてね? でも石段駆けっこ、ふふ、なんだか懐かしいね!」
 バランスを崩して落ちていく新聞記者に驚きつつ、千鶴も自分のペースで階段を登るのだった。
 見事な紅葉に感嘆の息を吐く一華の目に、石段競争をする仲間の背が見えた。
 のんびり堪能する秋の中、落ちた葉を眺めてゆく。探しているのは一番綺麗な紅葉いちまい、家で待つ恋人へのお土産だ。
「写真つきの連絡は……止めておきましょうか。帰ってのお楽しみ、にしましょう」
 拾い上げた葉を手元でくるりと回し、一華は少しの間目を閉じた。

 最初に到着したのは、真っ先に翼飛行したさくらであった。続いてレッドレーク、ステラとユア、千鶴、白。
 そして最後に着いたずたぼろのカレンデュラが、自信満々に掌の上の300円を皆に見せる。
「これしか無ェからな?」
「仕方ないなー! それじゃ、ボクがお団子を振る舞ってあげる!」
 元気に挙手したユアが、ご機嫌で人数分の団子を購入する。皆に手渡して座る先は、ステラの隣だ。
「やぁ……競争楽しかった~♪」
「……なあ、ユア。あの時、ありがとうな。あいつを送って……俺を支えてくれて……ありがとう」
 その言葉にユアはきょとんとし、優しく微笑んだ。
「他の誰でもない君の為だからね」
 さも当たり前のような返事に、ステラは思わずユアを抱きしめる。
「……もしかして照れてますか? 俺の歌姫様」
 少しの間、目を丸くして驚くユアが。徐々に頬が赤くなり、抱きしめられたまま慌て始める。
「照れてない……! 照れてないもん! ほ、ほら、くっついてたらお団子食べれないよ!?」
「そっか……そうだな、ふふ」
 無理矢理言い訳をつくるユアに、ステラはにこにこしながら離れるのだった。
 団子を食べ終えてどんどん焼きを買ったレッドレークは、広がる光景に一瞬だけ無言になった。
 山の上から見渡す一面の赤と黄色は、夕暮れの色も重なって格別だ。
「食べ物も美味いことだし、最高だな」
「そうね、あったかいおうどんも美味しかったし、何よりこの景色!」
「うん、お腹を満たしてみる景色はとっても素敵だね!」
 うどんを食べ終えたさくらと千鶴も、紅葉に目を見張る。
 さくらにとって初めてだというサクラの紅葉は、夕日を模したような色でとりわけ目を引く。
(「それに、愛しい彼のような雄大で真っ赤な山々、大好きなあの子の瞳のような橙の夕焼け……」)
 スマホに収める、なんでもない平穏な秋の景色。家に帰った時の土産話をするのが、今から楽しみだ。
「本当に見事な山の粧い。どこを見ても綺麗だね」
 千鶴がそっと手のひらを差し出せば、思い出に連れて行ってと言うような紅葉いちまい、舞い落ちた。

作者:雨音瑛 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年11月22日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 3
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