●資源採掘基地突入作戦!
「招集に応じてくれ、感謝する。クロム・レック・ファクトリアの探索に向かっていた者達が帰還し、いくつかの情報が手に入ったようだな」
2名のケルベロスが暴走し、敵の追撃を食い止めての撤退という厳しい結果ではあったものの、得られた情報の価値は極めて高い。そう言って、クロート・エステス(ドワーフのヘリオライダー・en0211)は集まったケルベロス達に、探索によって得られた情報の詳細を語り始めた。
「まず判明したのは、伊豆諸島海底部の海底熱水鉱床で、多くの資源がダモクレス勢力によって奪われていたことだ。この採掘を行ったのが『クロム・レック・ファクトリア』で、その護衛にはディザスター・キング率いるディザスター軍団の姿も確認されている」
ディザスター・キングが直接防衛指揮をとっていることからも、『クロム・レック・ファクトリア』が、ダモクレス全軍にとって重要な役割を果たしているのは間違いない。しかも、今回はそれだけでなく、更なる拠点の姿も確認されているという。
「伊豆諸島海底部にある、もう一基の拠点の名は『バックヤード』と言うらしい。こちらの詳細は不明だが、巨大な『環状の門』のような形状から、『魔空回廊を利用して、採掘した資源の輸送を担当している』と考えらるな」
バックヤード側の戦力は、巨大な腕型のダモクレス。また、指揮官として『五大巧』という、おそらく5体の強大なダモクレスが存在しているらしい。
「『クロム・レック・ファクトリア』が採掘した膨大な資源量……。概算によると、『ここ数年のダモクレスの侵略に必要な資源』の大半は、ここで採掘されたと考えて間違いない」
つまり、クロム・レック・ファクトリアの撃破は、ダモクレスへの大きな打撃を与えることに繋がると言っても過言ではない。もっとも、拠点の位置が暴かれた以上、敵も黙って再侵攻を見逃してくれるほど甘くはない。
「拠点の場所を暴かれたダモクレス勢力は、どうやら『クロム・レック・ファクトリア』の移動準備を開始したようだ。準備に必要な時間は、遅くても一週間以内。それまでに移動準備を整えて、連中は『クロム・レック・ファクトリア』共々、伊豆諸島海底から姿を消してしまうだろうな」
敵が移動に成功してしまえば、大きな犠牲を払って手に入れた情報も、全て無駄になってしまう。そうしない為にも、『クロム・レック・ファクトリア』が移動する前に、短期決戦で撃破する必要がある。
「『クロム・レック・ファクトリア』を破壊するには、内部に潜入してディザスター軍団の防衛網を突破した上で中枢に侵入。ディザスター・キングの守る中枢部を破壊しなければならない。だが、連中も黙ってやられるつもりはないだろうからな。撤退までの時間を稼ぐために、決死の防衛を行ってくるはずだ」
予想されるのは今まで以上の激戦。かなりの危険な任務になるが、力を貸して欲しいとクロートは続け。
「『クロム・レック・ファクトリア』の外周部には、合わせて29箇所の資源搬入口がある。そこから内部に潜入できるはずだが、全ての搬入口が中枢に続いているわけでは無い」
中枢に繋がる搬入口と、それ以外の搬入口の警備を敢えて等しくする。それによって、こちらの戦力を分散させようというのが、ディザスター・キングの作戦だ。警備の様子も等しく変わりがないために、どの搬入口が中枢に繋がっているのかを判断するのは容易ではない。敵を撃破して実際に探索してみるまでは、その搬入口が中枢に続いているかどうか、確認する術が存在しないのだ。
複数のチームで一つの搬入口から突入すれば、侵攻時の安全性が向上する代わりにハズレを引いた際のデメリットも大きい。万が一、その搬入口が中枢に続いていなかった場合、ディザスター・キングとの戦いに参加できる戦力が低下してしまう危険がある。
また、防衛部隊を蹴散らして、内部に侵入した後も油断はできない。敵は隠し部屋を利用した待ち伏せなど、奇襲攻撃を行うことで、少ない戦力でこちらを消耗させる作戦を仕掛けて来るからだ。当然、最奥となる場所には有力な戦力を配置して、消耗したところを返り討ちにしようと目論んでいる。
「正直なところ、普通に突き進むだけでは勝機がないからな。敵の作戦に対抗するためには、奇襲を察知して素早く撃破し、道中の損耗を避けながら、有力ダモクレスとの決戦に勝利する必要が出て来るぞ」
この決戦に勝利後、通路が中枢に繋がっていた場合は、中枢に到達した全ての者で、ディザスター・キングへの決戦を挑む。しかし、その一方で今回は、もう一つの拠点である『バックヤード』への攻撃も可能である。
「『バックヤード』には探索時に暴走した、お前たちの仲間が捕縛されている可能性が高い。探索に成功すれば、救出も可能かもしれないが……あまり多くの者がそちらに向かうと、その分だけ『クロム・レック・ファクトリア』の撃破が難しくなってしまうから、気を付けてくれ」
『バックヤード』を守るのは2本の巨大腕型ダモクレス。そのため、このダモクレスと戦うのに2チーム、内部の探索を行う1チームで、最低3チームが攻撃を行わなければ、内部の情報を得ることも不可能だ。
「これだけの大量の資源を採掘していたということは、ダモクレスの大規模作戦が近いのかもしれない。可能ならば、『バックヤード』の探索も行いたいが……あまり欲張り過ぎて、どちらも失敗しては本末転倒だぜ」
どちらの拠点を、どのように攻めるか。その判断は、そちらに任せる。危険な探索を成功させた仲間達の想いに報いるためにも、この作戦は必ず成功させたい。
最後に、それだけ言って、クロートは改めてケルベロス達に依頼した。
参加者 | |
---|---|
陶・流石(撃鉄歯・e00001) |
喜屋武・波琉那(蜂淫魔の歌姫・e00313) |
ジョルディ・クレイグ(黒影の重騎士・e00466) |
ムギ・マキシマム(赤鬼・e01182) |
羽鳥・紺(まだ見ぬ世界にあこがれて・e19339) |
影渡・リナ(シャドウフェンサー・e22244) |
キーア・フラム(憎悪の黒炎竜・e27514) |
宝条・かなめ(偽りの魔女・e66832) |
●洗礼の砲火
深海基地の中へ足を踏み入れると、そこに待っていたのはダモクレス達の過激な洗礼だった。
入り組んだ回廊の曲がり角。複雑に絡み合ったパイプの上や、ダクトと思しき謎の穴。それらの死角から次々に現れては攻撃を仕掛けて来るダモクレス軍団は、個々の戦闘力こそ高くはないが、それでも数が合わされば厄介な相手だ。
「さすがに戦闘用なだけありますね。シモーベと比べても、撃たれ強いです」
後方から牽制射撃を繰り返す羽鳥・紺(まだ見ぬ世界にあこがれて・e19339)が、思わず額の汗を腕で拭った。
単機を的確に狙い撃つことはできても、彼女の持ち技では複数の敵の動きを止めるには手数不足だ。厳重に警戒を重ねることで敵の奇襲こそ阻止できていたが、こうも混戦になってしまうと、飛んで来る反撃の量も馬鹿にできない。
「まったく、鬱陶しい連中ね。屑鉄の分際で、ゾロゾロと……」
後方から一気に斬り込み、キーア・フラム(憎悪の黒炎竜・e27514)は燃え盛る炎を纏った槍の先で、剣を持った桃色の機体を薙ぎ払う。が、それでも敵の猛攻は止まるところを知らず、足を止めた瞬間にやられ兼ねない状況。だからこそ、一撃離脱の戦法を取っていたのだが、それは敵も承知の上だったのだろう。
「……ッ!?」
突然、後ろに下がった瞬間を狙って砲弾を叩き込まれ、キーアの肩に激しい痛みが走った。
見れば、肩に付けたカメラが木っ端微塵に粉砕され、それだけでなく赤い鮮血が滲んでいる。後方に位置する、肩にキャノンを背負った機体へと目をやったが、どうやら砲撃して来たのは別の敵のようだった。
「気を付けろ! 狙撃手がいるぞ!」
アームドフォートの砲撃で敵を牽制しつつ、ジョルディ・クレイグ(黒影の重騎士・e00466)が叫ぶ。ふと、上を見上げてみれば、巨大なパイプの上にレドームと長距離砲を装備した機体が立っていた。
「あいつは任せな。叩き落としてや……っ!?」
リボルバーを手に空へと舞い上がる陶・流石(撃鉄歯・e00001)だったが、その瞬間、下から浴びせられる銃撃の雨。先に狙撃手を倒そうにも、これでは迂闊に狙いを定められない。
「俺が正面から切り込んで引き付ける。その間に、下の連中の動きを止めてくれ」
そう言うが早いか、日本刀片手に飛び出したのはムギ・マキシマム(赤鬼・e01182)だった。
「さあ、こっちだポンコツども! 鋼にも勝る、俺の肉体を砕けるか?」
妖刀で敵の身体を斬り付ける度に、激しく飛び散る凄まじい火花。敵の刃が肩に刺さり、銃弾が胸元を貫いたが、それでもムギは何ら気にせず敵陣の奥深くまで切り込んで行く。
「回復は私に任せて。皆は敵の撃破を優先してね!」
惨劇の記憶より抽出した魔力を癒しの力に転じ、宝条・かなめ(偽りの魔女・e66832)はムギを始めとした、負傷した者達へのフォローへ回った。完全回復とまでは行かなかったが、それでも戦列を維持するには十分だ。
「こっちの敵は、わたしが抑えるね。その間に、あの大砲を持ったやつを……!」
ムギによって引き付けられた敵の一群。その中央目掛け、影渡・リナ(シャドウフェンサー・e22244)が無数の刀剣を召喚する。降り注ぐ刃に貫かれ、次々と倒れて行くダモクレス達。その様を見て敵の狙撃手が退く体勢に入ったが、もう遅い。
死角から飛来する光の矢。それは狙撃手の足を容赦なく射抜き、パイプの上に繋ぎ止め。
「残念、逃げられると思った? それじゃ、後はよろしくね、流石さん」
矢を放った主、喜屋武・波琉那(蜂淫魔の歌姫・e00313)が、にやりと笑う。下方からの攻撃も収まったことで、流石は改めて翼を広げ、空中でリボルバーの狙いを定めた。
「サンキュー、助かったぜ。さあ……今度こそハチの巣にしてやる。覚悟しやがれ!」
それだけ言って、目にも止まらぬ早撃ちで、敵の身体にありったけの銃弾を叩き込む。動力部を貫かれた狙撃手は、その胸元から激しい火花を散らしつつ、パイプの上から糸の切れた人形のように落下して爆散した。
●鎮座する者
回廊の各所に配備されていた敵を薙ぎ倒して先へ進むと、唐突に開けた場所に出た。
「ここは……」
天井が広い。思わず見上げる紺だったが、それ以外には何も見るものはない。
「残念、ハズレね。こんな場所にいても無駄だし、さっさと撤退するわよ」
他の場所に通じる道がないことを知って、キーアは肩を竦めながら溜息を吐く。もっとも、そう簡単に侵入者を逃がす程、ディザスター・キングは甘い采配をしていなかったが。
「ふむ……。早々に引き返したいところだが……まずは、あのデカブツを倒さねばならないようだな」
部屋の中央に鎮座していた機械がゆっくりと動き出したことで、戦斧を構えつつジョルディが告げる。それを聞いた仲間達も、何かを悟ったのだろう。
「来るわよ! みんな、散開して!」
そう、波琉那が叫ぶと同時に、駆動を開始する巨大な機体。その身の丈は先程の兵卒達を軽く超え、堅牢な装甲に身を包んだ姿は、正に拠点防衛用の機体と呼ぶに相応しい。
「侵入者ヲ、確認……。排除、開始……」
単眼を思わせるカメラアイが妖しく光り、背中のミサイルポッドが開放された。ディザスター軍団の中でも屈指の火力と装甲を誇るディザスター・ルーク。災害城の名を冠する機体の、上位機種と言ったところだろう。
「やべぇ!? アイツ、纏めてこっちを吹っ飛ばすつもりじゃねぇのか?」
流石が気付いた時には、既にミサイルは発射された後。天井目掛けて撃ち出された弾頭は拡散し、そのまま驟雨の如くケルベロス達へと降り注ぐ。
「させるかぁっ!!」
「重騎士の本分は守りに有り!!」
中衛目掛けて飛んで行くミサイルの雨。すかさず、ムギとジョルディが自らの肉体を壁にして立ちはだかるも、難を逃れた波琉那とリナは、決して緊張の糸を緩めようとはしなかった。
「いきなり真ん中を狙って来るなんて……こいつ、解ってるわね」
「わたし達が、一番倒し易いって判断したのかな? それとも……」
己の足を止める恐れのある相手から排除する。長期戦になる際の鉄則とも言える戦い方に、波琉那とリナは確信した。
この敵は、間違いなく拠点を守る際の戦い方をプログラミングされている。ならば、持久戦は却って不利。多少、無理を推してでも、速攻で畳み掛けなければジリ貧になると。
「さあ、反撃開始よ。後ろは私に任せてね」
かなめが癒しの魔力を展開したのを皮切りに、攻撃へと移るケルベロス達。敵は見るからに堅牢だが、それでも動きは鈍重なはず。
「捕まえたわ! 一気に畳み掛けるわよ!」
攻性植物の蔓で敵を縛り上げ、キーアが叫ぶ。そこに合わせ、他の者達も一斉攻撃。四方に散開して狙いを定め、あらゆる角度から砲撃を浴びせて行く。
「その鈍足に、根を生やさせてあげましょう」
「まだまだ! こっちからも行くよ!」
まずは紺とリナの二人が、竜砲弾で牽制射撃。続けてジョルディが背中の砲を展開し、流石もまたリボルバー銃を引き抜いて狙いを定め。
「拠点防衛用の機体か……。相手にとって、不足なし!」
「オラオラ! 風穴開けてやるぜ!」
一転集中の砲撃と、目にも止まらぬ早撃ちで、一気呵成に畳み掛けた。
「我が槍が汝を大地に縫い止め……破滅へ誘う……畏れと共に跪け!」
追い討ちとばかりに、波琉那が光の矢を敵の間接目掛けて発射する。爆風の中、火花が爆ぜる音がしたところで、最後はムギが自慢の剛腕を振り上げて、渾身の衝撃波を叩き込んだ。
「一切合切を断ち切れ筋肉!」
超高密度の空気は鋭利な刃となって、狙った獲物を逃がさない。単純だが、それ故に強力な技。これだけの猛攻を前にしては、さすがの拠点防衛用ダモクレスも無事では済まなかろうと……そう、誰もが思った時だった。
「なっ……!?」
「あれ……もしかして、バリアとか!?」
煙の中から姿を表したディザスター・ルーク。その足下より展開されていた光の盾を見て、ケルベロス達に戦慄が走った。
指向性の光波防御帯。もしくは、ビームシールドとでも呼べばいいのだろうか。半透明な光の盾は先の一斉砲撃によるダメージさえも修復し、ただでさえ堅牢なディザスター・ルークの装甲を、更に強固な物へと変えていた。
「ダメージ、軽微。戦闘続行可能ト、判断。障害ノ、排除ヲ、継続スル……」
単眼のカメラアイが不気味に光る。深海基地の一角を守りし鋼の巨体が、重々しい機械音と共に動き出した。
●鉄壁の守護者
搬入口の奥にて待ち構えていた、拠点防衛用のダモクレス。ディザスター・ルークの上位機種を前にして、ケルベロス達は思わぬ苦戦を強いられていた。
耐久力と守備力に優れた鋼の城。それを正面から突破するだけの火力が、決定的に不足している。
「こりゃ、ちょっと失敗したかもね……。どうせなら、装甲版の一枚でも、ひん剥ける技を用意するべきだったかな」
自嘲気味に苦笑する波琉那だったが、正直なところ、あまり余裕はない。少しでも手数を稼ぐために魔法の矢で応戦していたが、そもそもの攻撃力が補強されていないのだ。
「ブン殴るのは、あたしに任せな! 豆鉄砲じゃ、削りにもならねぇ!」
ならば、自分が攻撃の起点になると告げる流石だったが、彼女一人にそれを任せるのは、少しばかり酷というもの。
せめて、敵の使用する光の盾を、砕くための術があれば。しかし、普通に戦ってそれができるのはキーアぐらいしかおらず、しかも立て続けに同じ技で攻撃を仕掛ければ、却ってリスクの方が増してしまう。
「他の方々は、ディザスター・キングのところへ到達できたのでしょうか?」
戦いが長期化していることで、ふと、紺が別の個所から侵入した者達のことを考えた時だった。
「損傷率、70%突破。敵、戦闘レベル、修正完了。ファイナル・シーケンス、始動……」
敵の腹部が大きく開かれ、その内部から光輝く結晶体が顔を覗かせる。見た目こそ目を引く美しさだが、しかし決して宝石の類などではなく。
「……っ! 下がれ、紺!」
結晶体から凄まじい光の奔流が放たれるのと、ムギが飛び出すのが同時だった。
「うぉぉぉっ! 舐めるなぁぁああああ!」
あらゆる物質を原子レベルで分解する程のエネルギーが、ムギの肉体へと降り注ぐ。その全てを胸元で受け止めて、ムギは紺を守る盾となる。
「……ぐぅっ……」
やがて、光が収まった時、そこにいたのは全身から煙を上げ、胸元を大きく焦がして膝を付いているムギだった。
「ムギさん!」
思わず駆け寄る紺だったが、そんな彼女をムギは無言で手をかざして制した。
俺に構うな。お前には、他にやることがあるはずだ。口では何も語らなかったが、彼の背中が、そう語っていた。
「彼のことは、私に任せて。さぁ、幻の空間へようこそ。すぐに傷を治してあげるわね」
仲間を癒すのは自分の仕事。紺と入れ替わるようにしてムギの後ろに立ったかなめが、幻想的な色の霧を解き放ち、焦げた身体を瞬く間に修復して行く。
「よっしゃ、仕切り直しだ! 今度こそ、ぶっ飛ばしてやろうじゃねぇか!」
敵の攻撃が終わった瞬間の隙。そこを突いて、流石が床を蹴った。
いかに堅牢な装甲を持っていようと、修復できないダメージは蓄積するはず。ならば、こちらも殴ることで命を食らい、最後の最後まで付き合ってやろう。
「でやぁぁぁっ!!」
魔を食らう拳の一撃が、敵のミサイルポッドに直撃し、爆発させる。衝撃が部屋全体を揺らし、さすがのディザスター・ルークも反動で後ろへ吹き飛んだ。
「まだよ! 次は、わたしの番! ……放つは雷槍、全てを貫け!」
このチャンスは逃さない。敵の中枢目掛け、リナが稲妻の幻影を投げ付ければ、それに合わせてキーアもまた駆け出して。
「ナイスなタイミングだわ! もらったわよ!!」
放たれた雷撃に自らの槍を重ねるようにして、そのまま飛翔し敵の装甲目掛けて突き立てた。
「このっ……いい加減、スクラップにでもなりなさいよ!!」
光の盾で受け止められても、強引に槍先を押し込んで行く。雷だけでは、まだ足りない。しかし、そこに自分の得意とする、黒き地獄の炎を加えれば。
「神をも滅ぼす尽きる事のない黒炎……魂の一片すら残さず燃え尽きろっ……!!!」
瞬間、穂先から溢れ出す漆黒の炎。稲妻が爆ぜ、黒炎が舞い、光の盾と凄まじい電磁干渉を引き起こし。
「敵ながら見事な盾だな。だが……守りを極めし者は、それ故に守りを破る術も持つと知れ!!」
互いに一歩も引かぬキーアとディザスター・ルークの姿を見て、ジョルディが叫んだ。ぶつかり合う力と力。それが拮抗する個所に、更なる一撃を加えればどうなるか。
「エネルギーチャンバー頭部接続! 視線誘導ロック完了! 喰らえ! 全てを貫く魔眼の一撃……Mega Blaster!! ”Balor”!!」
間合いを一気に詰め、瞳から放たれし光線で敵の盾を突き破る。電磁フィールドの類は確かに強固な防御力を誇るが、極限まで収束させた指向性の一撃には脆いはず。
果たして、そんな彼の読みは正しく、均衡が崩れた瞬間に、ディザスター・ルークは下半身の盾を中心として大爆発を引き起こした。
「……やった!?」
空中で受け身を取り、着地するキーア。だが、煙の向こう側から現れたのは、満身創痍になりつつも、未だ行動を続ける鋼の要塞。
「しぶといやつね。だったら……」
ここで再び動かれるのは拙い。間髪入れず、波琉那が鎖で敵の身体を縛り上げるが、それでもパワーだけは相手の方が上だ。
「んぐぐ……ご、ごめん……。あんまり……持たないかも……」
圧倒的な力の差を前にして、早くも引き摺られて行く波琉那の身体。それでも、敵の動きが封じられた今、これは止めを刺すまたとないチャンス。
「今だ! 撃ち抜け、紺!」
「は、はい!!」
ムギの叫びに応え、紺がライフルの狙いを定める。その銃口に集まって行くのは、血に染まった戦の記録。
「戦い争う者の宿命です。どこへ行こうと、決してあなたを逃しません」
ここで外すことは許されない。否、外すはずがない。
戦いの最中、無念にも散った者達の怨嗟。それらは束となって鉄壁の城へ襲い掛かり、剥き出しとなった中枢部を、寸分狂わず撃ち貫いた。
●崩壊、深海基地!
鉄壁の城塞が動きを止めると、途端に揺れ出す深海基地。
「おいおい、次は何だ?」
「もしかして、これって基地が壊れ始めてる?」
天井を見上げる流石とかなめ。彼女達の予想は正しく、早くも壁や天井が、音を立てて崩れ始め。
「早く逃げないと、わたし達も巻き込まれちゃうよ!」
「仕方ないわね。悔しいけど、早急に撤退するわよ」
慌てて駆け出すリナに、キーアも頷き翼を広げる。物言わぬ鉄塊と化した敵の残骸を背に、ケルベロス達は崩落する基地を後にした。
作者:雷紋寺音弥 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2018年11月7日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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