クロム・レック決戦~スルー・ザ・アイアン・コリドー

作者:鹿崎シーカー

「ごほん……まぁ、色々あったけど……次の作戦、説明するよ」
 やや固い表情で言い、跳鹿・穫は資料を出した。
 二名の暴走者を出しての撤退となってしまったクロム・レック・ファクトリアの探索行だが、結果として非常に価値の高い情報を得ることが出来た。
 まず、ダモクレス勢力は伊豆諸島海底部の海底熱水鉱床で資源採掘を行っており、この採掘を行ったのが『クロム・レック・ファクトリア』。そしてこの護衛として、ディザスター・キング率いるディザスター軍団が配備されているとのことだ。
 ディザスター・キングは、かつて猛威を奮った『コマンダー・レジーナ』や『ジュモー・エレクトリシアン』と並ぶ六機の指揮官型ダモクレスの一角であり、それが直接防衛指揮をとっている事から、『クロム・レック・ファクトリア』はダモクレス全軍にとって重要な存在であると予測がつく。
 次に、伊豆諸島海底部にはもう一基の拠点型ダモクレス『バックヤード』が設置されている。
 バックヤードの詳細は不明ながら、巨大な『環状の門』のような形状をしているために『魔空回廊を利用した採掘資源の輸送』を担当していると思われ、戦力として巨大な腕型のダモクレスと、『五大巧』なるおそらく五体の指揮官型ダモクレスを擁している。
 クロム・レック・ファクトリアが採掘した資源量は非常に膨大で、概算では『ここ数年で行われた侵略資源』の過半数が、ここで採掘されたようだ。
 つまり、クロム・レック・ファクトリアの撃破に成功すれば、ダモクレスにかなりの損害を与えることができるというわけだ。
 現在、拠点を暴かれたダモクレス勢力はクロム・レック・ファクトリアの移動準備を開始している。ペースから考えて、どんなに遅くても一週間以内に、クロム・レック・ファクトリアは伊豆諸島海底から移動する。
 クロム・レック・ファクトリアが移動してしまえば、大きな犠牲を払って手に入れた情報が全て水泡に帰す。そうしない為にも、クロム・レック・ファクトリアが移動する前に、この強襲作戦を決行する運びとなった。
 肝心のクロム・レック・ファクトリアの破壊方法だが、内部に潜入してディザスター軍団の防衛網を突破、ファクトリア中枢に侵入して、ディザスター・キングの守る中枢部の破壊を行う必要がある。潜入には、クロム・レック・ファクトリアの外周部にいくつもの存在する資源搬入口を利用するのだが、全ての搬入口が中枢に続いているわけでは無い。
 加えてディザスター・キングは、敢えて『中枢に繋がる搬入口』と『それ以外の搬入口』の警備戦力を等しく分配することにより、ケルベロス側の戦力分散を狙っている。おかげで中枢に繋がる搬入口以外も固い防御網が敷かれており、実際に行かない限りどれが中枢に続いているかわからない。
 また、複数チームが一つの搬入口から進行した場合、運が悪ければディザスター・キングとの戦いに参加できる戦力が低下してしまうというのもネックである。
 守備に回るダモクレス達も、『ケルベロスの襲撃を撃退すれば、撤退までの時間が稼げる』として、決死の防衛を行ってくるため、激しい死闘となるだろう。
 そしてディザスター軍団防衛部隊は、隠し部屋を利用した待ち伏せなどの奇襲・搦め手をふんだんに用いることで、より少ない戦力でケルベロスを消耗させる作戦を仕掛け、最終的には最奥に集めた戦力でケルベロスの撃破を狙う形を取るらしい。
 これに対抗する為には、敵の奇襲を察知して素早く撃破し、道中の損耗を避けつつ、有力ダモクレスとの決戦に勝利する。通路が中枢に繋がっていた場合、続いてディザスター・キングとの決戦になる。
 ディザスター・キングとの決戦では、中枢に到達した全てのチームが協力して戦わねば勝利は難しいだろう。
 ちなみに、今回の作戦では『バックヤード』への攻撃も可能だ。
 しかし、バックヤードに戦力を投入した場合、クロム・レック・ファクトリアの撃破が難しくなる。
 バックヤードは『2本の巨大腕型ダモクレス』に護衛されている為、バックヤード内部に入るためには、巨大腕型ダモクレスと戦う二チームと、バックヤード内部の探索を行う一チームの、最低でも合計三チームがバックヤードへ攻撃しなければ、内部の情報すらわからない。
 ただし、バックヤードには『クロム・レック・ファクトリア探索中に暴走した二名のケルベロスが捕縛されている』可能性が高く、探索に成功すれば、捕らえられていたケルベロスの救出を狙えるかもしれない。
「危険な賭けではあるんだけどね、この機はどうしても逃せない。みんなならできるよ! 頑張って来て!」


参加者
叢雲・蓮(無常迅速・e00144)
目面・真(たてよみマジメちゃん・e01011)
クリュティア・ドロウエント(シュヴァルツヴァルト・e02036)
旋堂・竜華(華炎の竜姫・e12108)
豊田・姶玖亜(ヴァルキュリアのガンスリンガー・e29077)
天変・地異(は名前多すぎ・e30226)
根住・透子(炎熱の禍太刀の担い手・e44088)
鈴城・咲(焔の拳・e56641)

■リプレイ

 鋼鉄の回廊に微風がそよぐ。気流をまとい不可視化した八本の赤鎖が獲物を探す蛇めいて床や壁、天井を這い回る。そんな中、風を巻き起こして走る旋堂・竜華(華炎の竜姫・e12108)、叢雲・蓮(無常迅速・e00144)、目面・真(たてよみマジメちゃん・e01011)、クリュティア・ドロウエント(シュヴァルツヴァルト・e02036)。その後ろをやや遅れて天変・地異(は名前多すぎ・e30226)、豊田・姶玖亜(ヴァルキュリアのガンスリンガー・e29077)、根住・透子(炎熱の禍太刀の担い手・e44088)、鈴城・咲(焔の拳・e56641)の四人が続く。
 真のハンドサインに従って軌道を細かく変えて走りながら、咲がふと後ろを振り返った。入り口は既に遠く、前後に見えるのは広く作られた通路のみ。
「結構遠くまで来たけど……この通路は何処まで続くんだろうね?」
 足元を軽く飛び越え、地異が口を挟んだ。
「そりゃあ、中枢かデッドエンドまでさ。出来れば、中枢だと嬉しんだけどな」
「辿り着いてみないとわからないんですよね……ここが正しかったのかどうか」
 大太刀を抱えて走りつつ、おずおずと言う透子。姶玖亜は鐘をあしらった銃握を握り、周囲に目を配りながら返す。
「まあ、行き止まりならしょうがない。運が悪かったと思って、破壊工作してやろうじゃないか。……おっと?」
 その時、連続バク転を決めたクリュティアが後方四人の近くに降り立って並走。素早く頭を下げ、彼女は切り出した。
「失敬。奥に続く扉が見えたでござるが、見張りが道を塞いでいるのでござる。すり抜けるのは不可能と見たが故、意見を聞きたく」
「ああ、見えたぜ。あれか」
 細められた地異の目が遠くにそびえる両開きの扉を捉えた。その三〇メートルほど前方、右手に長大な砲塔を構え、両ふくらはぎに小型のミサイルポッドを装備した黒鉄の機械兵が三体。彼らの上空には背中から左右に伸びたジェット噴射機構を持つ緑色の機械兵が滞空し、銃口を光らせて通路を見張る。咲は微動だにしない六体から視線をクリュティアに移す。
「如何にも最終防衛ラインって感じね。前のみんなはなんて?」
「目的地が見えているため、強行突破が無難であろうと」
「妥当かな。位置的にすり抜けるのは無理みたいだし、ここまで罠も奇襲も踏まずに来れてるから余裕もある」
 そう言ってリボルバーを引き抜く姶玖亜に、クリュティアはうなずいた。
「ではそのように伝えるでござる」
 前方に跳躍し、クリュティアは前を行く三人の近くに着地。赤い鎖を手繰りながら竜華が彼女に顔を向ける。
「お帰りなさいませ。如何でしたか?」
「強行突破に異論は無いと」
「わかった」
 真が返事し、徐々に近づいてくる機械兵をにらむ。彼女の体を包む白光!
「ディザスター・キングに通じている幸運を信じつつ……挨拶と行こうか」
「わぅ! ゴーゴーなのだ!」
 蓮が叫ぶと共に四人を覆う気流がほどけた。直後、目を赤く発光させた六体が一斉掃射を開始する! 腕を薙いで白光をまき散らし、真は叫んだ。
「しもべ達よ、皆を守れ!」
 散布された光が複数個所で収束し、天使型ドローン複数と銃座を装備したUFO型を生成。UFO型に搭乗したアリクイめいた姿の子竜が額のゴーグルを引き下ろし、一声鳴いて天使型と一緒に白光の弾丸を乱射! 弾丸の相殺により火花散る通路を駆ける蓮、竜華、クリュティアの背中を見、透子は引き抜いた大太刀を振り上げる。
「援護しますっ!」
 蒼炎燃える刃が振り下ろされ爆炎の波が前方四人を順に飲み込む。炎波から垂直に飛び出したクリュティアは薄桃色の螺旋を連れて回転、目前で交叉した両拳に月光じみた光を宿した。
「ヒサツ・ワザ! イイイヤアアアアアアーッ!」
 バッと両腕を開いた彼女の全身が薄桃色の蝶の群れを解き放つ! 蝶達はひっきりなしに発砲していた六機をまとわりつき、幻惑。撃ち方を止め右往左往する彼らに納めた刀を握った蓮と紅蒼二色の炎をまとった竜華が迫る! 跳躍する竜華と分かれた蓮はきょろきょろする砲兵の一体に居合い抜きを繰り出した!
「せい! はぁっ!」
 二度の斬撃を食らい黒鉄の機体が崩壊。四分割された残骸が地に落ちるを待たず蓮は別の一体へ疾駆し、コマめいて回転! もう一体の首を断ち切り後方跳躍。横向きになって回転しながら再度納めた刀で三体目の脳天に居合い斬を打ち込んだ。一方で竜華は滞空しながら惑う三機にそれぞれ赤い鎖を伸ばして巻きつけ、引っ張り寄せる!
「ふっ!」
 鉄塊剣を横薙ぎに振るった竜華とすれ違った三機が、彼女の後方で上下に分かれる。蓮に斬られた黒鉄の機体が地に落ちると同時、六機はまとめて爆発四散! その時、回廊全体が真っ赤に染まり甲高い警告音が響き始めた。怪訝な表情をした咲がハッとした顔で振り返る。
「みんな、後ろっ!」
 八人が通って来た回廊の床・壁・天井各所と扉の付近に穴が開き、複数の機械兵が現れる。緑と黒の機体に加え、ガントレットとブレードを装備した桃色の機体。ケルベロス隊列後方からジェット噴射で飛来した緑二体を振り返った地異が蒼炎燃える手を突き出す!
「おおっと!」
 次の瞬間、氷鎖の巨大円環が通路を塞いだ。円環を潜った弾幕はひとつ残らず先端から凍りつき、粉砕。銃声とダイヤモンドダストを浴びながら、地異はつぶやく。
「なるほどな。絶対に強行突破しなきゃいけないように兵隊置いて、こっちが仕掛けたら挟み撃ちって寸法か。セコいやり方で必死だな!」
 手の平を上向け、握り込む。氷鎖の円環は球状に収束し、吹雪の大爆轟を引き起こした! 回廊を満たすブリザードの中、咲は真っ直ぐ跳躍して回し蹴りを放った。跳ね飛ばされた二体が左右の壁にぶつかり砕けるのを余所に、咲は高速縦回転しながら垂直落下。真下に来たピンクの機兵にかかと落としだ!
「貴方達には用は無いわ。キングを出しなさい!」
 蹴り足を振り切り機械兵粉砕! 氷片をまき散らす咲に新たな二機の桃色機兵が霧を肩で切って突っ込み、とっさにクロスガードの構えを取る彼女を重厚なガントレットで殴り飛ばした。
「づっ!」
「咲!」
 吹き飛ぶ咲に地異はドクロ型の白霧を発射した。巨大な頭骨は咲を飲み込み氷塊に変貌、追撃に迫る二機のブレードを防ぐ。拳を振りかぶる二機をドクロの頭上から見下ろし、リボルバーを突きつける姶玖亜!
「さあ、踊ってもらおうか!」
 撃鉄を手刀で連打し銃弾を乱射! かかとの車輪を回して踊るようにバック走し始める二機の足元に鉛弾を撃ち込まれていく。
「根住さん、今だ!」
「お願い、劫火っ……!」
 後方、透子は逆手に握った大太刀を勢いよく床に突き刺す。直後、二機が蒼炎に包まれて炎上! 装甲の各部や車輪を溶かされ、動きを止めた二機を見た地異は傍らに出来た氷のトンネルから咲を引き出し、排莢する姶玖亜に呼びかける。
「進むぞ! 目的地はすぐそこだ!」
「急ぎましょう!」
 地面に差した太刀を抜いて振り返る透子。その視界に飛び込んだ大型の弾丸が白く輝いて爆発! 尻餅をつく透子より遥か前、真は中指の関節にくっつけた親指に白光をまとわせた。
「よそ見していると危ないぞ」
 彼女が指を打ち鳴らすと扉を背にして立ち並ぶ黒鉄の砲兵三機が爆発した。そびえたつ白炎めがけて全力疾走する蓮とクリュティアをピンクの機兵二機がそれぞれ迎撃! ブレードの刺突を回避した二人の剣閃をガントレットで受け止めた二機は、そのまま高速左ジャブでラッシュを仕掛ける。連続パンチを素早いステップで掻い潜った蓮は敵機の足元に入って抜刀!
「でいやっ!」
 足元からの斬り上げが装甲を引き裂く! 彼の隣ではパンチを裏拳で逸らしたクリュティアの正拳突きが機械の腹部に突き刺さった。そのまま逆手に握った刃で連続剣戟を浴びせかける。機械兵の胸から上を刻む緋色の刃!
「進軍の! 邪魔で! ござる! イヤーッ!」
 止めの回転斬を振り抜くと共に、頭部を失った機械兵が膝をついて爆発四散! そこへ高速で滑走しながら迫る一機の桃色機兵が跳躍、ブレードを構えて上段斬りの構えを見せる胴体に、赤鎖をワイヤーアクションめいて駆使した竜華が大剣を突き立てた。そのまま真っ直ぐ鎖に引っ張られるまま大扉にぬい止め、竜華は刃伝いに紅蓮の炎を流し込む!
「舞い散りなさい……!」
 機械兵と大扉が赤熱しながらボコボコと沸騰するように膨張していき、花弁状の爆炎を散らして爆散した。飛び散る熱い金属の雫を回避しながら、ケルベロスの面々は開け放たれた扉の奥へ駆けこんでいく。立ち込める煙を突破した直後、咲と真が防御姿勢を取って前に飛び出した。複数のミサイルが二人に着弾して爆発する!
「咲姉、真姉!」
「待ってください! ……来ます!」
 透子が叫んだ次の瞬間、ミサイルの黒煙から弾き出された咲と姶玖亜が床をバウンド。続いて銀の装甲を持つ騎士型の機械兵二体が飛び出し、右手に備えた長剣を煌めかせて特攻をしかける。すぐさま銃を向けた姶玖亜が二機の足元に鉛弾を叩き込んで複雑軌道を描かせたところへ、クリュティアと竜華が突進していく!
 一方、作業着の両袖口から氷鎖を伸ばして咲と真を引っ張り寄せた地異は、煙の晴れた視界を見回して唇をへの字に曲げた。
「……殺風景な部屋だな。こりゃあハズレか?」
 そこは、正方形に広く切り出された密室であった。壁面はコインロッカーめいて無数のブロックに区切られており、高い天井のにまで続く。部屋中に素早く視線を巡らせた透子が言い辛そうにつぶやく。
「みたい……ですね。どこかに通じているようにも見えません」
「運が無いね。まあ、しょうがない」
 嘆息する姶玖亜のやや前方に、打ち払われバックジャンプした竜華とクリュティアが着地する。離れた部屋の中央には先の銀騎士二体に加え、褐色の中型ダモクレスが鎮座していた。両肩に大きなミサイルポッド二門を構え、上半身より巨大な脚部は昆虫じみた六本足。排莢とリロードを終えた姶玖亜は言い放った。
「憂さ晴らしついでに軽く暴れて、帰って野球観戦でもしようか?」
 クリュティアが両手を合わせて頭を下げ、竜華がスカートの裾を持ち上げて一礼する。
「ドーモ初めまして、ディザスター軍団の皆さん。我々はケルベロスにござる。このファクトリアを破壊しに来ました」
「ごきげんよう。一時の逢瀬、楽しみましょう?」
 褐色のダモクレスがミサイルポッドを解放! 一直線に飛来する複数の弾頭をにらみ、傷を氷でふさがれた真が相方を呼んだ。
「翔之助!」
 UFOに登場した子竜が引き金を引き白光弾を片っ端からミサイルに命中させていく。誘爆するミサイルを突っ切って突撃を敢行してくる二体の銀騎士! 低姿勢で迎撃に走りながら蓮が叫ぶ!
「クリュティア姉!」
「イヤーッ!」
 天高く跳躍したクリュティアが両手の平から光の蝶の大群を放射した。無数の蝶にまとわりつかれながらも騎士二機は一切止まらず、虚空を剣で斜めに斬り裂く。幻影をさばいた二体のうち片方が蓮の居合い斬を左腕の盾で防御! 即方向転換して蓮に向かうもう一体の剣に、突如蒼い炎が燃え上がった。
「捕まえ、ましたっ……!」
 透子が伸ばした右手を握り込むと同時に蒼炎が爆発! 腕から煙を上げた騎士は、ムチめいて振るわれた竜華の鎖に打たれて吹き飛ぶ。蓮の刃を防いだ一体はサイドキックで蓮を弾き、斬りかかる。割り込んだ咲がパイルバンカーで剣を殴って軌道を逸らし、腹部に踏み込みパイルパンチ! くの字に折れた機械兵が軋む!
「どきなさいっ!」
 追撃のパイルバンカー右ストレートが騎士を撃ち抜いた。後方に押し返されながらも着地する騎士の目の前で、咲が降り注ぐミサイルを浴びて爆煙に包まれる。八人の周囲を見境無く襲う飽和爆撃! 指を鳴らしてミサイルを放つ六脚を爆破した真は地異に目配せ。
「天変クン、カバー!」
「ああ!」
 地異は足元の床に両手を食いこませ、広範囲を力任せに引っぺがして頭上に放る。そして手中に現出した蒼炎を握って振りかぶった。
「回復ついでだ!」
 投擲された蒼炎の球を吸い込んだ床が瞬間凍結して爆散。尖った氷片で部屋中の壁を破壊し、冷気の幽鬼達が憑りついた仲間の傷口を閉ざす。火傷に雪を受けた姶玖亜は走りながら白銀の鎖を投げ放ち、爆破の衝撃で浮き上がった六脚の首を捕らえる。鎖をつかみ、思い切り振り回す!
「せああああああッ!」
 浮き上がった六脚が滅茶苦茶に宙を舞い、四方の壁に次々激突して設備を砕く。姶玖亜に駆け出した騎士二機を、それぞれ透子と竜華が追いかけ剣戟を仕掛けた。二機は振り向きざまに赤青二色に燃ゆる凶刃を盾で打ち払い、シールドバッシュ反撃! 透子に剣を砕かれた方は水銀状物質で新たな剣を生み出し、透子と激しく斬り結ぶ。その隣で竜華と刃を交わしていた個体は大剣を受け止めると共に左肩の砲塔を撃って剥き出しの肩を破壊!
「くぅっ……!」
 後ろによろめく竜華の脳天に騎士が斬撃を繰り出した直後、その背中に回った咲が飛び膝蹴り! 騎士の体が反り返り、硬直した。
「今っ!」
 咲の声を受けた竜華は全身に紅蓮の炎をまとい、一回転からの裏拳で騎士を殴り飛ばした。壁にぶつかり、爆発した騎士に一礼する竜華。他方、透子は蒼炎まとう大太刀を渾身の力で斬り上げる!
「はあっ!」
 射出された炎の斬撃が床を斬り裂き、天井にまで達して破壊する。左半身を盾ごと寸断されながらも刺突をしかける騎士に空から飛んできた紫電の鎖が巻き付き、虚空に引き上げた。鎖の先、クリュティアは引き寄せた騎士に瓦割りパンチ!
「イイイイヤアアアアアアアアーッ!」
 ドリルめいた螺旋の拳が機械の頭部を粉砕し、床にぶち落とした。地面に騎士が激突すると共に螺旋状の亀裂が床に広がり、壁を伝って這い登る。轟音を立ててひずむ床で踏ん張り、姶玖亜は銀鎖で捉えた六脚を壁に打ち付け引きずりおろす! 壁面を抉りながら振り下ろされた六脚が開放したミサイルポッドはしかし、斬り飛ばされて宙を舞う。空中で回転しながら明後日の方向にミサイルをまき散らすポッドを頭上に、刀を収めた蓮は合図を発する!
「いいよ真姉!」
 四枚の翼を広げた真が六脚の目と鼻の先に出現! 点滅するモノアイを直視し、回し蹴り!
「破ッ!」
 六脚の頭がはねられ、残った体がくずおれる。遠目に氷鎖を生み出し、一息吐いた地異はすさまじい轟音と地鳴りによろめく。見上げると、四方の壁や天井が次々に爆発し、鉄の破片をまき散らしながら部屋を揺るがしていた。地異は青髪にかかった破片を払い落として仲間たちの背に呼びかける。
「崩れるぞ! 撤退だ!」
「わぅ!」
 蓮が返事すると同時に一同が一斉に身をひるがえす。爆発と崩落の音を後ろに残し、八人と一匹は元来た道を逆走し始めた。

作者:鹿崎シーカー 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年11月7日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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