「クロム・レック・ファクトリアの探索を終えたケルベロスの皆さんが帰還したっす!」
そう切り出した黒瀬・ダンテ(オラトリオのヘリオライダー・en0004)によれば、2人の暴走者を出して何とか撤退という苦い結果ではあるものの、もたらされた情報の価値は、非常に高いものとなったようだ。
「まず1つは、伊豆諸島海底部の海底熱水鉱床で、たくさんの資源がダモクレス勢力に奪われていた事がわかったっす」
資源採掘を行ったのが『クロム・レック・ファクトリア』で、ディザスター・キング率いるディザスター軍団は、その護衛だったらしい。
「ディザスター・キングが直接指揮を担当してるって事は、『クロム・レック・ファクトリア』が重要なのは間違いないっす」
そして、伊豆諸島海底部に、もう一基の拠点ダモクレス『バックヤード』の姿も確認された。
巨大な『環状の門』のような形状をしている事から、『魔空回廊を利用して、採掘した資源の輸送を担当している』と想定される。
「バックヤードの方には、巨大な腕型のダモクレスが確認されていて、指揮官として『五大巧』と呼ばれる5体の強大なダモクレスがいるらしいっす」
『クロム・レック・ファクトリア』がこれまでに採掘した資源量は膨大。概算に従えば『ここ数年のダモクレスの侵略に必要な資源』の半分以上は、ここで採掘されたと考えられる。
「ということは、『クロム・レック・ファクトリア』を撃破できれば、ダモクレスに物凄い損害を与えられるっすよ!」
ケルベロスに拠点の場所を発見されたダモクレス勢力は、『クロム・レック・ファクトリア』の移動準備を開始したとみられる。
せっかく手に入れた情報を無駄にしないためにも、敵が撤退してしまう前に、短期決戦で撃破する必要がある。
『クロム・レック・ファクトリア』を破壊する為には、内部に潜入してディザスター軍団の防衛網を突破。ディザスター・キングが守護する中枢部を破壊しなければならない。
「敵も必死で防衛してくるはずっすから、きっと戦いは激しくなるっす。それを承知の上で頼むっす、皆さんの力を貸して欲しいっす!」
『クロム・レック・ファクトリア』の外周部には29箇所の資源搬入口があり、そこから内部に潜入する事が可能だとダンテはいう。
だが、搬入口の全てが中枢につながっているわけではない。
「ディザスター・キングは、全部の搬入口の警備レベルを均等にすることで、ケルベロスの戦力を分散させるつもりみたいっす。ここは警備が厚いから中枢につながってるかも、みたいな予測はできないわけっすね」
つまり、敵を撃破して実際に探索してみるまでは、その搬入口が中枢に続いているかどうかを確認する事は不可能。
複数チームで1つの搬入口から進行すると、侵攻時の安全性は向上する反面、『外れ』だった場合、ディザスター・キング戦の戦力が低下するリスクが伴う。
「『クロム・レック・ファクトリア』の内部には、ディザスター軍団のダモクレスの防衛部隊が展開してるっす。奴等は、まずは隠し部屋を利用して待ち伏せたり、奇襲攻撃を仕掛けてきたりして、少ない戦力でケルベロスを消耗させるっす。その上で、それぞれの搬入口の奥に強い戦力を集めてとどめをさすつもりなんっすよ」
そのため、敵の奇襲に素早く対応して損耗を避けつつ、奥で待つ有力ダモクレスを撃破する必要がある。
更に有力敵に勝利した後、その通路が中枢に繋がっていた場合は、続けてディザスター・キングとの決戦に向かう事になる。
この決戦は、中枢に到達した全てのチームで協力して戦う、総力戦だ。
「正直、『バックヤード』の方も探索したいところっすけど、あんまり欲張るのもよくないっすね。ここは皆さんの出来る事を果たして、無事に戻ってきてほしいっす!」
ダンテの応援が、ケルベロスたちを鼓舞した。
参加者 | |
---|---|
水守・蒼月(四ツ辻ノ黒猫・e00393) |
ノーフィア・アステローペ(黒曜牙竜・e00720) |
浅川・恭介(ジザニオン・e01367) |
赤星・緋色(中学生ご当地ヒーロー・e03584) |
ロウガ・ジェラフィード(金色の戦天使・e04854) |
大上・零次(螺旋使い・e13891) |
リリス・セイレーン(空に焦がれて・e16609) |
風陽射・錆次郎(戦うロボメディックさん・e34376) |
●突入
目指す『クロム・レック・ファクトリア』に向け、深海を移動する風陽射・錆次郎(戦うロボメディックさん・e34376)たち。
浅川・恭介(ジザニオン・e01367)の隣でぱたぱた泳いでいるのは、テレビウムの『安田さん』だ。
(「中々に大掛かりな作戦だけれど、せめて何か見つけないとね」)
リリス・セイレーン(空に焦がれて・e16609)が思うように、今回の作戦に参加したケルベロスのチームは多数となった。1つの搬入口に対し、複数であたるチームもあるようだ。
ただ、『バックヤード』にも複数のチームが向かっている。それが吉と出るか凶と出るかは、まだわからない。
やがて、ノーフィア・アステローペ(黒曜牙竜・e00720)たちの行く手に、巨大な構造物が見えてくる。あれこそ、クロム・レック・ファクトリア。
(「ここで材料集めて身体作って、あの蜘蛛型のが取り付けば立派なダモクレス……なのかな。結構すごいよね、正直。……何て感心してもいられないし、正々堂々、真正面からぶっこわす!」)
あちこちに設置されているのが、搬入口だろう。
それにしても、多い。
(「29も搬入口って……それもどれが当たりか判らない様にするとか、ディザスター・キングも凄く面倒な事してくれるなぁ~もう!」)
素直にドーーン! って登場してくれれば凄く楽なのに~……などと思ってしまう水守・蒼月(四ツ辻ノ黒猫・e00393)である。
(「こいつら、周りの環境とかお構いなしに発掘しやがるな。こんなバカでかいやつは早々に破壊したいもんだな。万が一、撤退されたとしても、大打撃を与えたうえで、だ」)
覚悟しておけ、ダモクレスども、と大上・零次(螺旋使い・e13891)は鋭い眼光をファクトリアにぶつけた。
そして一行は、受け持つ26番搬入口へと接近する。
(「この闘いに勝てば、ダモクレスの侵略に大きな『待った』をかけることができる。力無き民を苦しませない為に、今までの戦いを無駄にしない為に……最後まで戦い抜く!!」)
決意を胸に、ロウガ・ジェラフィード(金色の戦天使・e04854)が、突入をはかる。
(「ふっふー、そろそろキングにも引導渡してあげないとね。今回の作戦はなんやかんや難しそうだけど頑張るよ」)
意気揚々と、搬入口に身を躍らせる赤星・緋色(中学生ご当地ヒーロー・e03584)。
フェーズ1、ファクトリアの潜入は成功した。ここからはフェーズ2……目指すは中枢。
●侵入
さっそく、探索を開始した一行。突出して先行しているのは、ボクスドラゴンのペレである。囮として、敵の奇襲に対策する役割だ。
隠密気流をまとったロウガが、囮役との距離を一定に保つ。
ペレの主であるノーフィアは、通路左手側を重点警戒。分岐路や扉があれば、これから通過する方に、ペンキと刷毛で1本線を描き、目印とする。
(「今日は工場見学だよ、安田さん。抽選で当たった班だけ特別室に行けるという」)
恭介が小声で語り掛けると、安田さんが「そうなのか」というようにうなずいた。
(「……さて冗談は置いておいて、静かにかつ速やかに進みましょう」)
恭介のマイペースさは、敵地でも健在のようだ。
辺りを警戒しながら、リリスも慎重に進む。奇襲はもちろん、いつ敵と遭遇してもおかしくない状況だ。
天井や背後、そして足元に注意を払う緋色。また、センサー系のトラップにも警戒を怠らない。
一同のしんがりを務めるのは、錆次郎。集音デバイスなども駆使して、音や気配に気を払い、仲間と合わせて隙が無いよう努める。とは言え、慎重になりすぎて時間をかけるわけにもいかない。
そしてペレが、何度目かの曲がり角から顔を出した時。
「侵入者発見……!」
警備中のダモクレスたちの襲撃を受けた。
敵の数は3体。
レドームだろうか、円盤状の装備を左右に搭載した、黒のダモクレスが1機。
ブレードを手に、足に車輪を搭載したピンクのダモクレスが1機。
そして、肩に砲、背部に大型のブースターを二基搭載した、グリーンのダモクレスが1機だ。
「サーヴァントヲ認識。ケルベロスヘノ警戒ヲ怠ルナ」
「了解」
行動指針を共有し、攻撃を始めるディザスター軍団。
ペレが集中攻撃を受ける前に、零次が、螺旋隠れを解きつつ援護に入った。二振りのナイフを構え、敵の刃や砲を遮る。
戦端が開かれる間に、囮の近くにいた蒼月も隠密気流を解除、後続の仲間に敵襲を報せる。
ブラックの機体が、ペレに砲を向けるや否や、今度は恭介が飛び込んできた。態勢が崩れたところに、間髪入れず、安田さんが襲来。その凶器の一撃が、砲身をかち上げる。
始まる乱戦。冷静に、敵戦力の分析に努める蒼月。
「クラッシャーが1体に、スナイパーが……2体みたいだ」
事前の打ち合わせ通り、クラッシャー……ピンクの機体から倒すべく、蒼月はドラゴニックハンマー砲撃形態のトリガーを引いた。エネルギーの奔流がピンクに激突、光の飛沫が、通路の壁面を照らす。
続いてノーフィアの電光石火のキックが、ピンクの脚部に炸裂した。駆動部のパーツがきしみ、或いは破損し、姿勢制御に支障をきたす。
一方ペレは、蒼い焔の力を、味方に送る。
敵のホームグラウンドとはいえ、攻め込んでいるのはこちら。リリスは余裕をにじませつつ、ウイングキャットに守りをお願いした。
そして自身は、優雅に敵の周りを舞い踊る。ステップを踏んだ場所から生まれたつぼみは、すぐさま花開き、延びたツタが、ピンクの四肢に巻き付いていく。
ヒット&アウェイ……敵からすぐに離れるリリス。
「反撃!」
指示を飛ばしたブラックの脚部から、小型弾頭が射出された。前衛に着弾、爆発が連続する。
爆煙も晴れぬ中、ピンクがロウガに斬りかかった。金の翼で後退するが、腕部に仕込まれた小型ブースターが、斬撃の勢いを加速した。
そして後方から、グリーンの破壊光線が、前衛を一気に薙ぎ払う。
だが、ダメージを受ければ、錆次郎の出番だ。攻性植物『パンドラゴラ』弐号機をしゅるりと動かした。瞬時に果実を作り、金色の光を放射。皆を癒す。
踵のタイヤで音を鳴らして、方向転換してきたピンクのブレードをかわしつつ、緋色が反撃した。身を回し、その胴に遠心力込みのキックを浴びせる。
「!!」
星型の空洞を刻まれ、上半身と下半身を分かたれたピンクは、緋色が離れた直後、爆散した。
ケルベロスたちの攻撃が、今度はグリーンへと集中する。
ロウガがグリーンの背後を取ると、下段から剣で切り上げた。ブースターが誘爆し、爆散するグリーン。爆風を背に受けながら、ロウガは、斬撃直前に生成した宝石の輝きを受け、傷を癒す。敵から奪った『時間』……生命エネルギーを変換したものだ。
僚機を相次いで失ったブラックが、後退しながら、射撃。
救援を呼ばれてはまずい。すばやく零次がナイフを閃かせた。ばちり、と飛び散る火花。
機体の外へ放出されるグラビティ・チェインを吸収しつつ、零次は、相手が機能停止するのを見届けた。他に、敵の気配や音は感じられない。
敵部隊を排除した一行は、怪我の具合などを確認した後、進軍を再開した。
●連戦
敵の襲撃は続いた。
単機ならともかく、複数で来られれば、手を抜く余裕はない。どの搬入口も警備レベルは同じ、というのは偽りなしのようだ。
あまり時間を賭けて、敵がこの海域を離脱してはまずい。小休止を挟みながら、一行は足早に進軍を継続した。
現在は、安田さんが囮役を交代している。その背中からは「自分にまかせておけ、今は休め」とペレを気遣うような男前っぷりがにじみ出ている。
いつ襲撃を受けてもいいよう、恭介が、隠密気流で付かず離れずの距離を維持。
一方、囮役を交代したペレは、ノーフィアの頭の上でお休み中。
上方や下方を警戒するロウガ。トラップを踏まないよう、適度に身を浮かせて。到達する場所がどこにせよ、強敵が待ち構えていることに変わりはない。つまらぬ損害を出すのは避けたいところ。
そして一行がたどり着いたのは、少しばかり開けた、半球状の空間だった。
その中心に、1体のダモクレスが立っている。
頭部に2本の角を持つ、騎士然としたダモクレス。そのスリット状のカメラアイに光が宿る。
「ディザスター・キングノ邪魔ハサセヌ。キサマラノ終着点ハ……ハメツダ」
「ふっふーん、それはどうかな!」
2本角……呼称はツインホーンと言ったところか……を見上げ、緋色は胸を張った。
「30近い搬入口全部に、それなりの護衛を配置したって事だったよね? なら、ディザスター・キングの守りは手薄! のはず!」
「戦力配分ニ問題ハ……ナイ!」
緋色の指摘を一蹴すると、ツインホーンは、右腕に流体金属をまとわせ剣を生成すると、ケルベロスの排除を開始した。
●相対、双角騎士
エース機といった趣のツインホーンは、これまでの警備兵たちとは、段違いの実力だった。近づけば高速の斬撃、離れれば砲撃と、隙が無い。
ここまでの連戦で、ケルベロスたちも万全ではない。囮役のサーヴァントは特に疲労の色が濃い。
これはいけない。錆次郎が怪我人に駆け寄ると、腕に内蔵されたサブアームを展開。手をわきわきと動かしながら治療にかかった。回復方法というかモーションが独特だが、その回復力は確かなものだ。とってもありがたい。
守りを固め、敵にバッドステータスを叩き込んだところで、一気に仕掛ける。
ツインホーンの視覚が、漆黒の球体を捕捉した。ノーフィアのグラビティだ。球体に引き寄せられ内部に封じられた敵を、超重力が襲った。装甲が引き裂かれていく。
これまでの攻撃で、敵の機能が低下したと見た恭介が、ハンマーを携え、殴り掛かった。破壊力の塊がダモクレスに叩きつけられ、装甲板が湾曲、あるいは弾け飛んだ。更には、本体を白く冷気が染める。
奮戦するケルベロスたちを、応援する安田さん。
「ナラバ受ケヨ、超鋼剣・ディザスタースラッシュ!」
更に巨大化した剣を構えたツインホーンは、跳躍し、ケルベロスの盾となったウイングキャットを切り伏せた。 その威力はすさまじく、ファクトリアの壁面にも大きな亀裂が走った。
「時を喰らう戦の竜よ、その力を示せ!」
威力におののくロウガではない。その体に、竜の幻影が重なった。翼を大きく広げ、その存在を誇示すると、その魔力で敵の装甲を焼き払い、耐久力を削っていく。
「一気に攻め切るよ!」
ひときわ激しく吹き上がった緋色のバトルオーラが、床の金属片を吹き飛ばす。
そこからダッシュ、オーラを敵に叩きこんだ。
衝撃波が四方に拡散。それに混じって放出された敵のエネルギーを吸収した緋色の傷が、治っていく。
「見エテイル!」
死角から迫って来た零次のナイフを察知し、見切ろうと試みるツインホーン。しかし、 その刀身の長さ、構え、軌道……瞬時に変化する技を分析しきれず、ツインホーンはカメラアイにその一撃を受けた。
自己修復を行おうとするツインホーンに、蒼月が仕掛けた。その影から飛び出したのは、無数の猫たちだ。次々と敵にじゃれつき、関節や装甲の隙間に入り込んでは、破壊を行う。
「邪魔ヲスルナ!」
弾き飛ばされ、猫たちが影に戻る中、リリスがファミリアロッドを掲げた。
倒れたウイングキャットに、離れるよう視線でうながすと、魔力を凝縮。ミサイルを射出した。ツインホーンがとっさに広げた掌を突き破り、本体まで貫くと、爆発の花が咲いた。
「機能停止……ダガ、我ノ役目ハ果タシタ……」
膝を屈し、爆散するツインホーン。
だが、この通路はここで行き止まりのようだ。
やむを得ない。零次は、重要そうな物や書類、コンピュータからデータ等を探す。それらを保管、保続する道具……防水加工の施されたポーチやフラッシュメモリなども準備している。抜かりはない。
リリスも、何らかの手がかりや痕跡、物品などを探し求める。
「でも、こういうのって、ボスが倒されたら施設爆発したりとかがセオリーだよね?」
周囲を調べていた蒼月が、何気なくつぶやいた途端。
大きな震動が、建物全体を揺るがした。
崩壊を始めたファクトリアから、脱出を図る一同。おそらくは、ディザスター・キングの撃破、あるいはそれに相当する出来事の影響だろう。
だが、落下してきた機材が、行く手を遮った。すると、錆次郎が前に出る。怪力無双で、がれきを排除し、道を作る。
錆次郎に促され、海中に身を投げ出す一行。
気づけば周囲には、脱出を果たした他のケルベロスたちの姿もある。
作戦は、成功したのだ。
作者:七尾マサムネ |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2018年11月7日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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