地には金銀、空には錦

作者:質種剰


「群馬県は渋川市に、黄金の湯と白銀の湯なる二種の名湯を楽しめる温泉街があったのでありますが……」
 小檻・かけら(麺ヘリオライダー・en0031)が言い差して溜め息をつく。
「そこの温泉宿がデウスエクスの被害に遭いまして……宿泊客全員が無事に避難できたのは不幸中の幸いでしたが、温泉宿が全壊した為に営業再開の目処が立たないのでありますよ」
 それ故、今回もケルベロス達へ温泉街にお出まし頂いて、是非とも温泉宿をヒールして欲しい——とかけらは懇願した。
「もしも皆さんのヒールで旅館を修復して頂けたら、せめてものお礼に露天風呂を開放致しますので、温泉へ浸かって暖まりながら絶景を楽しんでらしてください……と旅館の方も仰せであります」
 温泉から望める上州の山々を、友人や恋人と眺めるのも楽しかろう。
「ヒールを終えられた後は、男湯と女湯の分かれた旅館か、もしくは男女混浴や家族風呂の温泉がある旅館か、お好きな方をご堪能くださいませね」
 そう言うと、かけらは満面の笑みを浮かべて、やたら気合充分にほざいた。
「ではでは、わたくしは混浴にて、皆さんのご参加を楽しみにお待ちしてるでありますよ〜!」
 注意事項は、未成年者及びドワーフによる飲酒喫煙の禁止、それだけである。


■リプレイ

●女湯
「まあとりあえず修復はこんなものですね」
「よし、あたしたちの受け持ち分のヒール終了。ベッカ、温泉行こっ!」
「うん、それじゃ温泉ですね」
 意気揚々と旅館へ向かう連に連れ立って、レベッカも歩き出す。
「広々した露天風呂もいいけど、やっぱり人目があるもんね」
「じゃあ二人きりで十分温泉を楽しむためにも、家族風呂ですね……ええと、体を洗い合ってゆっくりと温泉に?」
「そう。家族風呂ならいくらでもえっちできるよ」
 さらっと大胆な事を言ってレベッカを呆れさせるのもいつもの連である。
「うんまあそんな気はしましたよ。レンが裸の場所で二人きりでいて普通に行動するわけないですし」
「ふふ、いけないおもちゃ沢山持って来ちゃった♪ 一緒に気持ちよくなろ?」
「ただ、道具持ち込みはやりすぎじゃないですかね」
 そう溜め息をつくも、レベッカとて一緒に家族風呂へ入れば、いとも簡単に連へ押し切られてしまう。
「愛してる、ベッカ」
「うん、愛してますよ、レン」
 白い湯気に蒸されながら濃厚なキスを交わしていると、すっかりお互いしか見えなくなる。
(「まずはちゃんとキスからですね」)
 それでいて、愛慾爛漫たる連がレベッカの気持ちを汲んでくれている事も解って嬉しかったりするのだ。
「ベッカも、あたしのこと愛して?」
 だから、キスの後すぐにおもちゃのスイッチを入れられた事も身体で判ってしまったが、幾らでも受けて立てる気分になっていた。
「それじゃせっかくだから各種ご要望にお応えしましょうか」
「ベッカを全身で感じたい」
 力いっぱい抱き締め合って、その背を愛撫する連。
 本気を出して応戦してきたレベッカの齎す快楽に喘ぎつつも、まだまだ足りないとレベッカの唇を求めた。
 掌に収まりきらない胸の弾力にはやはり劣等感を覚えるものの、
(「でもいいもん、ベッカのものは全部あたしのものだから」)
 と、褐色の肌に口づければ、劣等感は執着心にも似た愛情へ簡単に飲み込まれた。
「明日オフにしといてよかったね。このまま一晩中、犯し合おう?」
「良いですよ。ただこれだけだと温泉に来た意味が薄いから、あとでちゃんと普通に温泉も堪能しましょうね」

 ヴェルヴェアは倒壊した旅館へ熱心にヒールをかけていた。
 たとえ自身の生き甲斐の範疇になくとも、これも誰かの生きる為ならと張り切っている。
「ヒール要りますか?」
 もしかすると、建造物へのヒールへ尽力した理由には、通行人へヒールを申し出ても悉く断られたせいもあったかもしれない。
 ともあれ、ヒールを終えたヴェルヴェアは、単に近いという理由から女湯のある旅館へ。
 何分、温泉という存在をそもそも知らなかった彼女だから、『外のお風呂』というものへ最初は戸惑っていた。
 とはいえ、いざ入ってみると、寒空の中で熱いお湯へ入るという心地よさ、そして紅葉が綾なす景色の素晴らしさに感嘆の息が洩れ出る。
「温泉とはヒールの一種なのですね。勉強になりました」

 一方。こちらも女湯にのんびりと浸かっているのはアウレリア。
「これが女子会というものね。義妹から聞いて密かに憧れていたの」
 湯着を纏っていても判るほどに抜群のスタイルを誇る、物静かなレプリカント美女だ。
「はい、セクメト……大丈夫? ぶくぶく沈まないでね?」
 その隣では、こちらも湯着を身につけた雅が、ウイングキャットのセクメトの為に木桶へ温泉のお湯を張ってあげていた。
 普通の猫ならばお風呂に入れられると死にそうな声を上げて嫌がるものだが、相当な風呂好きというセクメトは、鼻や口をギリギリ水面上に覗かせてリラックスしている。
「セクメトも気持ち良さそうね」
 湯着姿で温泉の縁に腰掛けたかぐらが、セクメトの顎を撫でて微笑んだ。
「晩秋の山を眺めながら春を飲み干すのって贅沢よね」
 上機嫌でアウレリアが傾ける盃には、ほんのり色づいた桃の花弁が。
 見ると、彼女の前にはお酒で満ちたお銚子がお盆に乗って浮かんでいる。
「寧々花も呑んでる? 美味しいお酒をありがとうね」
 自分は早々に盃を干したうわばみのアウレリアだからか、寧々花の盃へもじゃんじゃんお酒を注ぐ。
 ちなみに彼女が言う通り、日本酒を持ち込んだのは寧々花である。
「おおきに〜誰かと~お酒飲むってぇ、楽しいわぁ」
 甘口の日本酒をぐいっと煽って、寧々花がけらけら笑う。
 今はしっとりと湯文字だけを着ているものの、日頃から全身甲冑を身につけている彼女が人前で鎧を脱ぐのは夏ぶりだとか。
「私はあまり酔わない体質だけれど、お酒が回って楽しそうにしている方を見ると、此方も楽しいものよね」
 夫の付き合いで呑んでいる時もそうだったわ——ふっと目を細めて亡き夫を想うアウレリア。遠くを見つめるその眼差しは優しい。
「女子会といえば恋話が定番だそうね。皆の恋愛事情は如何かしら?」
 だが、アウレリアはすぐ明るい笑顔になって、旅団仲間へ話題を振った。
「……はふ」
 好きな恋バナを振られても我が事となればやはり緊張するのか、雅は溜め息をつきながらノンアルの甘酒で唇を湿らせる。
「私は、今の所。女性と話す方が、好きですね……楽で、良いです。男性と親しく、お話しするのは。まだ、苦手ですし……」
 鈴を転がすような高く澄んだ声が紡ぐは、内気そうな雅らしい答え。
「男性は、私の目よりも。胸を見て、話す人の方が……多いのが。どうにも……」
 雅がはにかむと同時に、お湯へぷかぷか浮いている彼女の胸がぷるんと揺れた。
「れんあいじじょう……」
 そして、雅以上に動揺してぶくぶくと沈んでいくのはかぐら。
「いや、うん、なんというか……」
 危うく、せっかく用意してきた温泉卵や温泉饅頭、葡萄や梨の乗ったお盆をひっくり返しそうになりながら、のぼせそうな頭で懸命に答える。
「まだそういう人に出逢った事がないのよね……」
 相手がいなければ別段冷やかされる心配も無いのだが、昔から自身の恋愛との縁遠さを気にしている節があるかぐらだから、頭まで沈みそうなぐらいに恥ずかしいらしい。
「うちは小学生時分から甲冑やったさかい、全然告られへんかったなぁ」
 一方、ほろ酔い気分の寧々花は大分口が滑らかになっていた。
 ちなみに寧々花自身は人見知りの奥手で、自分から告る事もなかったそうな。
「お嫁さん願望はあんねんけど、『君は僕が守る』っちゅーよりは『一緒に戦ってほしい』って言われたいから、あんまお姫様願望はあらへんなー」
 甲冑少女の勇ましい恋愛観を聞いて、へぇぇと感嘆する3人。
「みんなあまり縁がないみたいね。一緒にお酒を呑める様になる頃には良い方が現れているかしら」
 アウレリアのフォローは流石に大人の気遣いである。
「身構えるのではなく自然に、心から一緒にいたいと思える人にいつかきっと出会えるわ」
 含蓄のあるアドバイスを、特にかぐらは深く胸に刻み込んだ。
「アウレリアさんは、引く手数多だったと。思いますが……旦那さんの。どういう所に……惹かれて。ご結婚、なさったのですか?」
 雅はアウレリアへ亡夫との馴れ初めを尋ねる。もしかすると世の男性への認識を改めたいのかもしれない。
「ああそうだ! 乾杯しよ!」
 宴もたけなわといったタイミングで、かぐらがふと提案する。
「何に?」
「うーん、これからもよろしくって事で!」
 日本酒とノンアル甘酒の盃をそれぞれ掲げる臥龍院の面々。
「乾杯!」

●家族風呂
「温泉へ行くのに治すんじゃなく直す為とはこれ如何に……なんてな」
 蒼眞は湯治に絡めた冗談を呟きつつ、ヒールを施していく。
「さっさとヒールで破壊跡を癒して、癒しの温泉を取り戻すとしますか……」
 毎度覗きへ闘志を燃やしていたはずの蒼眞がこの日赴いたのは、意外にも家族風呂であった。
「広い露天風呂やらも良いけど、一人でのんびりしたいからな……」
 その実、人目を憚ってこっそり不埒な真似をしている——という訳でもなく。
 バシャァァァン!!
 誰に気兼ねする事なく湯舟へ無駄に飛び込んでお湯を溢れさせたり。
「……ぷはっ。……水を飲んでしまわないギリギリのところで上がらないとな」
 息の続く限りお湯に潜ってみたりと、1人である事を活かして無邪気に遊んでいるだけだったりする。
「……さて、覗きを敢行するなら色付きの黄金の湯よりも無色透明な白銀の湯の方が色々とはっきり見えそうだな……」
 それでも、存分に家族風呂で遊び倒した後は、やはりそっちのお楽しみも味わいたいと欲望が鎌首を擡げる蒼眞。
「露天風呂とかだとそれなりに対策されていそうだし、寧ろ家族風呂とかの方が狙い目と見るけど……?」
 覗くならどこに狙いを定めるべきか、慎重に考え始めた。

「お久しぶりです、かけらさん、お誘いありがとうございます」
「ご無沙汰しております〜」
「折角ですしお背中お流ししましょうか?」
 石鹸で泡立てた両手を滑らせ、小檻の身体を隅々まで洗おうとするのは奏星。
「かけらさんの胸は大きくて形も良くて柔らかいですね」
「誉め殺しどうも……って、やだ、そんなところまで」
 さっきまで白い胸を撫で回していた奏星の手は、今やお尻や太ももを這い回り、その奥にまで触れようとしている。
「良ければ、私の方もお願いできますか?」
 大事な所も含めて全身、かけらさんの胸や手でして欲しいです。
 大胆かつ誤解を招きそうなセリフを堂々と放つ奏星へ、小檻は呆気にとられるしかない。
「……わかりました。あくまで洗いっこだけですからね。それ以上は無しね♪」
「かけらさん、好きです、愛してます」
「もうっ、告白してもだーめ。わたくしはっきり振りましたでしょ〜」
 苦笑しつつ奏星の背中を胸で円を描くように洗っていると、ふと視線を感じた小檻。
「あら、寒い中何を……女湯の方が収穫多いでしょうに」
 こっそり覗いていた蒼眞へ声を掛けるも、そのアドバイスはどこかズレていた。

●混浴
「うむ、お誘い感謝、だ……」
 努めて威風堂々とお湯へ身を沈める絶華だが、その視線がラピスのどっしり浮かぶ白い巨乳へ吸い寄せられるのは男の本能として如何ともしがたい。
「山籠もりをした時もこうして湯に浸かると溜まった肉体の澱みが流されるようでな」
「そういえば私も山籠りはしたことあるけど、温泉に入る事は無かったわね。滝壺で汚れを落としてそれで終わりだったわ」
 絶華は線の細い美少年、ラピスは抜けるような白い肌と豊満な肢体が目を惹く色っぽい美女。
 そんな2人が山籠りや滝行というアウトドアを通り越したサバイバルな話題で盛り上がっているのは、何とも見た目に似合わず面白い。
「ああ。滝行も善いが温泉に浸かった後に行うとより良い。身が引き締まる」
 経験者の強みを見せてか、絶華は屈託なく笑っている。
「……やはり温泉で飲むお酒はいいわね。雪山だったら尚いいのでしょうけど……どこ見てるの?」
 浮かべていた桶から熱燗と御猪口を取り出し、手酌で楽しみながら、ふと問いかけるラピス。
「う……」
 絶華は言葉に詰まって僅かに目を逸らすも、それはそれで何か悔しい気がしたのか、
「それはもちろんお前なの、だが……」
 結局は堂々とラピスの裸身へ視線を注いだ。
「私の? ……エッチね。そんなに見たいのなら、我慢しなくてもいいのよ?」
「……む……私は其処で止まる人間ではないぞ?」
 ゆったりと構えているラピスに比べて、言葉とは裏腹に緊張を隠せない絶華。
 それでも勇気を出して白い胸へぽふっと顔を埋めれば、後頭部を慈しむように細い指が撫でてくる。
「……って、みるだけだったか、な?」
「……いえ、いいのだけどね」
(「なるほど。歳を考えればこの辺りが限界なのかもしれないわね」)
 ラピスは絶華の若さではこれ以上の振る舞いになど及ぶまいと安心しきって、
「じゃあ、暫くこうしていましょうか」
 彼の頭を軽く抱き締めてあげた。
「ぁぅ……私も男子だ、ぞ……」
 巨乳に挟まれ、恍惚とした様子で呟く抗議は、何とも弱々しい。

「外なる混沌に棲まう異界の魔獣……召喚に応じ、わたしに従え…召喚『混沌魔獣』……」
 さて、相変わらずの無表情ながらやる気満々で召喚・混沌料宴を使うのはリーナ。
「……アレ……??」
 何やらキシャー! と叫ぶ料理が壊れた旅館へうにょうにょ襲いかかっている。
 一種異様な光景にセイヤもガイバーンも溜め息をついたが、これでもれっきとしたヒールグラビティでしっかり修復しているのだから文句も言えない。
「しかし、デウスエクスに壊される温泉地多いな……人が集まる場所だから狙われるのだろうが、地元の人にはたまったものじゃないだろうな……」
 こんなデウスエクスまがいの謎料理に直されるし——しみじみとぼやくセイヤの目は泳いでいた。
 ともあれ、3人は小檻も交えて混浴温泉へ。
「……水着着用じゃないみたいだから、タオル巻いて見られない様に……」
「あら、水着を着ても構いませんのに、脱ぐのも自由ってだけですから」
「え、そうなの……?」
 かく言う小檻は小檻で、セイヤを気遣って一応水着を着用している。
 もっとも、申し訳程度に大事な箇所を隠したオナモミ水着ではあるが。
 セイヤはセイヤで自分が飲む為の【星ノ空】と、未成年者及びドワーフ用のドリンクを持参。
「そういえば、ドワーフってノンアルコール飲料なら呑めるのか……? 一応、買って来たが……」
「これはかたじけない。アルコールが全く入ってなければ大丈夫じゃ」
 女性陣の身体を極力見ないようにしながら、ガイバーンへノンアルコールカクテルを渡してくれた。
「……そういえば、3月頃もみんなで温泉入ってのぼせた事があったような……気を付けないと……」
 リーナも小檻と一緒にアイスを食べ食べ温泉を満喫している。
「ん……近くの牧場で買って来たアイス美味しい……。はい、かけら、あーん……」
「あ~ん」
「温泉入りながらアイス、最高……」
 珍しく幸せ全開な表情のリーナを見て、セイヤも頰を緩めた。
「既に寒い日も多いし、温泉が格別だな……。先日はこの時期にわざわざ海底まで行く事になったしな……。ゆっくり癒されるとしようか……」

 本人曰くゴージャスなヒールをかけてきたらしいトートは、混浴風呂でかけらの裸を間近に眺めていた。
「そういえばそなたは好いている者はおるのか?」
 勿論、見ているだけでは飽き足らず、後ろから抱き着いて顎を頭の上に乗せるトート。
「ご存じでしょうに。ええ、いますとも。大好きな人が」
 意地悪な質問をしてくる彼へ口を尖らせつつも、小檻は素直に答えた。
「恋愛は焦っちゃダメって頭ではわかってても、いつも空回りして……そんなかけらへ狼狽えつつも毎回フォローしてくれる、受け入れてくれる……良い人であります」
「その気持ちは良い物だ。そなたは良き娘よ」
 トートは小檻の述懐に相槌を打ちながらも、その手はしっかりと豊かな乳房を揉みしだいている。
「この余がこうして楽しみに来ているのだ。誇ってよいぞ」
 あくまで上から目線な辺り、流石は王様の風格だが、気の置けない友人の言葉に小檻は心底慰められたようで。
「ありがとう神王様、お礼に今日はいっぱいサービスしちゃおうかしら♪」
 トートのマイペースに動き回る両手や唇へ、ゆったりとその身を委ねた。

「まずはヒールですね。煉くん、来てくれてありがとう」
 煉の腕へ抱きつくようにしながらも、丁寧に修復作業をこなすのはリシア。
「可愛い彼女の誘いだからな、当然だろ? そんなに喜んでくれんなら彼氏冥利に尽きらぁ」
 煉は煉で、苦手とするルナティックヒールを懸命にかける辺り、恋人に頼られて嬉しいのかご機嫌なようだ。
 ましてや、その後入った混浴温泉では、大きめのバスタオル1枚だけを巻いたリシアが、
「す、少し恥ずかしいね」
 そう言いながらも煉へぴったりくっついてくれるのだから、楽しくない筈がない。
「……リシア積極的だな。無理しなくていいんだぞ? ……嬉しいけどよ」
(「だって煉くん以外に肌を見せたくないんだもん」)
 そんな可愛らしい本音はひた隠して、リシアは煉とのラブラブっぷりを他の人に見せつけるつもりで密着する。
 何故なら、
「……かけらよ、何を見ているのだ」
「あ、トート殿、あちらのウェアライダーとオラトリオのカップルさんがね、ラブラブで羨ましいなぁと思って、つい」
 同じ露天風呂に入っていた小檻の視線が煉へじっと注がれているのを、女の勘とでも言うべきか早々と感じ取っていたリシアだから、煉は自分のものだとアピールせずにはいられなかったのだ。
 もっとも、一見痴女道まっしぐらに見える小檻とて、流石に恋人持ちの男性へ向かって自らちょっかいをかけるような蛮勇は奮うつもりもないだろうが。
「ううん、大丈夫。煉くん、温泉あったかいね」
 リシアが、さらにむぎゅぅっと胸を押し当ててみれば、
「安心しろ、俺はお前のだ。大好きだぜリシア」
 煉もリシアの内心を察してか、背中へ腕を回してぎゅっと抱き締めてくる。
「……なぁ」
 耳元に吹き込まれた吐息は熱い。
「リシア、上がったら部屋でよ……分かってるな」
 恋人の柔肌に短くない時間くっつかれて、なけなしの理性もすっかり崩れ去ってしまったらしい。
「……わかってるよ、期待してるね?」
 リシアも濡れた瞳で煉を見つめ返すと、小悪魔っぽい笑みを浮かべて彼の頬へキスをした。

「それでは頑張ってヒールをして温泉を楽しみましょう♪」
「ええ、頑張ってヒールしましょうか」
 力を合わせて温泉の築地をヒールで直していくのは蒼香とカイム。
 修復作業が終われば仲良く肩を並べて混浴温泉へと向かった。
「いい温泉ですね、じっくり温まりますし♪」
 蒼香は白銀の湯へ浸かってひと息入れた。白いビキニが目に眩しい。
「そうですね、ゆっくり温まりましょう」
 隣でのんびり身体を温めるカイムだが、蒼香のビキニからはちきれんばかりの存在感を誇る爆乳へチラチラ視線を向けてしまうのは、男子として仕方あるまい。
 そんなカイムの顔色を読んだのか、蒼香はおもむろに爆乳を押し付けるかごとく抱きついてみた。
「少し赤いですがのぼせてしまいましたか?」
 何せ、メロンに負けない大きさのバスト114、Pカップが眼前へ迫ってくるのだ。
「そ、蒼香さっ!? ひゃっ!??」
 カイムが狼狽えて腰を滑らせるのも道理だろう。
 顔を打たないようにと思わず突き出した両手で蒼香の胸を揉んでしまったり、結局は顔も胸の谷間へ突っ込んでしまったのは、彼の運が神がかって良——もとい悪いからとしか言えない。
「大丈夫ですか? クッション代わりにはなると思いますけど」
 蒼香はバランスを崩したカイムをただただ心配するも、
「んんぅーっ!??」
 ますます混乱の度を深めたカイムにビキニを剥ぎ取られれば、
「あ! ちょっと見ないでくださいね!?」
 流石に顔を真っ赤にしてあたふたと慌てた。
「ぷはっ、ご、ごめんなさいっ!」
 カイムもようやく顔を爆乳から抜いて、何度も謝りつつ離れた。
 結局は蒼香の胸を直接揉みしだいてしまったものの、カイトとしては直接蒼香の肌へ触れまいとして、せめて水着のストラップを支えにしようと掴んだのだろう。
 だが、ストラップを引っ張ったせいで元々ギリギリのバランスで収まっていたような蒼香の爆乳がポロリと零れ出てしまったのだから、もはやどうしようもない。
 今も、なんとかして爆乳を白ビキニに収めようと格闘している蒼香を、チラチラ見ずにいられないカイム。
 男のサガである。

作者:質種剰 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年11月14日
難度:易しい
参加:18人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 6
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