白刃、罪過に煌く

作者:秋月きり

「ここが、地球か」
 自身の覚醒した街で男はぽつりと呟く。
 奇妙な男であった。外観だけ見れば、鎧を纏った容姿端麗な西洋人風の男。しかし、その双手に握られているのは直剣でもなく曲刀――いわゆる、日本刀であた。
 何よりも奇妙なのは、その男が偉丈夫だった事だ。否、偉丈夫過ぎた。身長3メートルを超える者など、この地球上に多くは存在しまい。
 ただ一つの例外を除いて――。
「で、デウスエクスだーっ!!」
 通行人の一人が叫ぶ。デウスエクス! 地球を狙い、地球人を狙い、グラビティ・チェインを搾取する侵略者!
「是。我が名は『白刃』のウルズ。貴様らのグラビティ・チェインを狩るモノだ」
 宣言と共にウルズと名乗ったエインヘリアルは対の鞘を捨て抜刀する。
 血飛沫舞う宴の到来であった。

「エインヘリアルによる、人々の虐殺事件が予知されたわ」
 いつもの如く、リーシャ・レヴィアタン(ドラゴニアンのヘリオライダー・en0068)の予知がヘリポートで告げられる。だが、今回は少しばかり毛色が違ったようだ。
「エインヘリアルは『白刃』のウルズと名乗っている。異名の通り白刃――日本刀を得物としているみたい」
 エインヘリアルの多くはゾディアックソード、或いはルーンアックスを武器としている事を考えると、異色と言えば異色だろう。
「……やっぱり、いたんだね」
 ぽつりと零れる声はリゼア・ライナ(雪の音色・e64875)から。
 日本刀を操るエインヘリアルの到来を予期していた彼は、独自の調査を敢行。その補助をリーシャに頼んでいたのだ。彼女の予知は、それが実を結んだ結果と言えよう。
「『白刃』のウルズは過去にアスガルドで重罪を犯したエインヘリアルで、放置すれば人々を殺害、グラビティ・チェインを奪取してしまうばかりか、人々に恐怖と憎悪を撒き散らし、地球で活動する他のエインヘリアル達の定命化を遅延させられることも考えられるわ」
 だから、とリーシャは続ける。一刻も早く現場に向かい、このエインヘリアルを撃破して欲しい、と。
「それで、『白刃』のウルズはさっきの説明通り、日本刀を得物としているわ」
 いわゆる二刀流と言う奴だ。攻防一体の動きに翻弄され無いよう、注意して欲しいとの事だった。
「それと、ウルズは捨て駒として送り出されているから、エインヘリアル達による回収もないし、彼自身撤退することも無いわ」
 退くことを考えない敵である以上、彼も決死の覚悟でケルベロス達と戦うだろう。
 故に戦闘は苛烈な物になる事が予測される。努々、気を付けて欲しい。
「あと、周囲の人々はみんながウルズを引き付けてくれれば、避難誘導は難しくないわ。警察や消防の助けもあるし、どうにかウルズを引き付けて欲しい」
 一番は挑発する事だろう。ただし、周囲の虐殺を煽ったり、説得などの戦闘の意志を示さなかったりすると逆効果になりかねないので、引き付ける方法は多少、考える必要があるとの事だ。
「『白刃』のウルズを止められるのはみんなだけなの。だから、よろしくね」
 そしてリーシャはケルベロス達を送り出す。
「それじゃ、いってらしゃい」
 それは、いつもの言葉と共に。


参加者
メルティアリア・プティフルール(春風ツンデレイション・e00008)
ファルケ・ファイアストン(黒妖犬・e02079)
武田・克己(雷凰・e02613)
西村・正夫(週刊中年凡夫・e05577)
ファルゼン・ヴァルキュリア(輝盾のビトレイアー・e24308)
アナスタシア・ヴィスターシャ(金火の放浪者・e32151)
リゼア・ライナ(雪の音色・e64875)

■リプレイ

●『白刃』のウルズ
「で、デウスエクスだー!」
 地球人の悲鳴とはなんと無様な事か。
 背を向け、逃げに転ずる一人を見やり、『白刃』のウルズはそっと溜め息を吐く。
 非戦闘民である以上、ある程度は致し方無いとは言え、恥も外聞もなく逃げ惑う姿のなんと嘆かわしい事か。ならば、それ以上の醜態を晒す前に切り伏せるのも、戦士の勤めであろう。
 双手に握った一対の刃――二本の日本刀が煌く。空間すら切り裂く斬撃で、この場所を血の海に変えるのに5分と掛かるまい。
 振り下ろした斬撃はしかし。
「やれやれ。不合理にも程があります。さっぱり判らない」
 刃を止めたのは横合いから突き出された二本のハンマーだ。対となった得物はそれぞれ、ウルズの左右に握られた刃を受け止めている。
 ハンマーを繰る主の名は西村・正夫(週刊中年凡夫・e05577)。何処にでもいる平凡な中年サラリーマン風の彼はウルズの刃を押し返すと、まるで、上司の無茶な注文を前にしたかの様に嘆息する。
「判らない?」
 正夫への疑問の言葉と共にファルケ・ファイアストン(黒妖犬・e02079)が牽制の一撃をウルズに放つ。
「ええ。自身を犯罪者と称し、挙句に棄てた――棄民としたエインヘリアルに何故、命を賭すような義理立てするのか。不合理にも程があります」
「命を賭していないから、だろう」
 淡々と事実を指摘するのはファルゼン・ヴァルキュリア(輝盾のビトレイアー・e24308)だ。サーヴァントのフレイアを携えた彼女は、掌の爆破スイッチを弄びながら正夫と並ぶように身構える。その様は、鉄壁の守りは自身らだと誇示するようだった。
「しかしエインヘリアルの国にも日本刀ってあるのですね」
 素朴な疑問を口にしながら、田吾作と共に登場するのはマリオン・オウィディウス(響拳・e15881)だ。エインヘリアル――アスガルドの住人が地球で言う北欧風の営みや生き様、戦略・戦術を用いているのは知っていたが、得物もそれにふさわしい物と思っていた。日本刀を使うエインヘリアルが存在する事に、稀有さを感じてしまう。
「シミター、ファルシオン、シャムシール。いわゆる片刃の曲刃が存在しない訳ではありませんが」
 アスガルドに縁を持つヴァルキュリア、アナスタシア・ヴィスターシャ(金火の放浪者・e32151)が挙げた武器は、地球に於いては中東で使用されている物だ。全身鎧を主とする地域では斬撃は効果が半減する為、直刃等の鈍器に近い武器が好まれる。
 そんな境遇の中、日本刀の様な斬撃武器を得物すると言う事は、何らかのこだわりか、ただの単細胞か、それとも……。
「腕が立つ、と言う事でしょうね」
 そうだとしても、負けるわけにいかない。
 リゼア・ライナ(雪の音色・e64875)は己を奮い立たせ、絡繰り仕立ての聖なるデバイスを構える。彼の調査がウルズの発見に一役買った。ならば、ここで止めるのも自身らの役目だと、赤い瞳を使命感に滾らせている。
「――地獄の番犬、ケルベロス」
 彼ら8人により豊富なグラビティ・チェインを感じた為だろう。
 獣の笑みをウルズが浮かべる。

●白刃、罪過に煌く
「まったく、気分が悪いな!」
 武田・克己(雷凰・e02613)の斬撃は雷を纏う。舌打ち混じりの悪態は、ウルズの得物に対してだった。ああ、全く以って気分が悪い。同じ日本刀使いとして、強者が弱者を惨殺しようとする様なんて。
「安心しろ、まず奪うのは貴様らのグラビティ・チェインだ」
 苛立たしげな彼の神経を逆撫でするかのように、ウルズがニヤリと笑みを形成する。
「その次は、一般人、と言う事かな?」
 メルティアリア・プティフルール(春風ツンデレイション・e00008)の問い掛けは、春風の妖精を纏いながら紡がれた。
 答えは無い。だが、無言で振るわれる刃がその答えだと悟る。ならば、それに対する彼の答えも一つだった。
「だったら、許さない。その白い刃に、罪もない人の血がつく前、此処できっちり、片付けておかなくっちゃね。……妖精さん……みんなのこと、お願いね」
 秋の街を染めるのは、春風にも似た芳香だった。メルティアリアが召喚した妖精、そして彼自身の翼が奏でる爽風は仲間を、そして彼自身を潤していく。
 主に続くヴィオレッタもまた、仲間を援護するべく自身の属性を正夫に付与。バッドステータスに対する耐性を高めていく。
「こいつは厄介だなぁ」
 抜き撃ちでリボルバー銃の弾丸を叩き込みながら、ファルケはむむっと呻く。
 高い運動能力に加えてキャスターの加護を纏うウルズは、メルティアリアが召喚した妖精の補助、そしてスナイパーの加護を纏うファルケと言えど、食らい付くのがやっとだ。
 いわゆる達人と言う敵に、愚痴の一つでも零れると言うもの。
「ですが……捉えられない訳ではありません」
 背後に広がる色取り取りの爆風は、士気の鼓舞の為、ファルゼンが起こした物だった。続くフレイアの付与魔術もまた、仲間を強化すべく、田吾作の外装を強化していく。
 その最中に紡がれたファルゼンの指摘は淡々としたもので、しかし、それ故に正鵠を射ていた。
 確かにケルベロス達と応対するウルズは強い。勇者と評されるエインヘリアルが弱い筈も無いが、彼はその中でも抜き出た存在であろう。
 だが、デウスエクスと戦い続けたケルベロス達もまた、研ぎ澄まされた刃の如く、だ。負けじと付けた力量は、彼の敵に匹敵する物。
 ならば、勝敗を決するのは――。
「互いの力量に遜色なければ、後は戦略、戦術、そして」
「根性論は好きじゃないけど……気概って奴だな」
 霊体憑依の剣を振るう正夫の言葉を、エクトプラズムの砲弾を放つマリオンが引き継ぐ。気概。或いは信念と呼ぶべき物。力量が互角であれば、勝利への執念が強い方が勝つ。戦いとはそういう物だ。
 主の言葉を示すよう、田吾作がウルズに齧り付く。星霊甲冑越しに牙が何処まで届いたかは謎だが、誇りに満ちた表情が、その一撃が有効打であったと示すようでもあった。
「ならば、『白刃』のウルズ。貴方に敗北する理由は何処にもありません」
 続くアナスタシアの左腕が振るうのは、地獄の炎によってドロドロに溶けた熔鉄だ。彼女の魔力によって剣と化した破壊の一撃は、ウルズの身体を袈裟懸けに切り裂く。
「笑わせえるな! それはこちらも同じよ! ヴァルキュリア!!」
 言葉に混じる喜色は、むしろ好敵手としてケルベロス達を認めるかの様だった。
「失われた想いよ、世界を愛する者への癒しを与えよ」
 愛しき者への想いを歌い上げるリゼアの詠唱は、狙撃の恩恵をメルティア、ファルケ、そしてファルゼンへ付与する。
 ただでさえ動きの捕捉が難しい俊敏な日本刀使い、ましてやキャスターの恩恵を纏うエインヘリアルだ。備えあれば憂いなし。自身の援護が、そしてそれを受けたスナイパー達による妨害が、きっと実を結ぶ筈だ。今は、それを信じて歌を紡ぐ。
 そう。仲間を信じる事。それがリゼアに課せられた使命だ。
(「相手の信念がどうであれ、それを上回る――」)
 それが大切な事だと知っている。
 ならば、後はそれを実践するのみだ。

●咎人は刃の露に消え
 白昼堂々と、白刃が煌く。
 否、煌くのは日本刀の輝きだけでない。戦場には銃弾と魔術が飛び交い、戦鎚や蹴撃の一撃が振るわれていた。
 戦場に残された存在は只の9人。エインヘリアル『白刃』のウルズと、3体のサーヴァントを従えた8人のケルベロス達だった。
(「みんなの避難は完了した……けど」)
 人気のなくなった街はまるでゴーストタウンのようだ。
 ふと浮かんだ空想を、リゼアは首を振って否定する。
 ゴーストタウンなど在りえない。ここを本物のゴーストタウンにしない為、自分達は来た。ならば、これ以上の被害を防ぐ為、今感じる静寂は歓迎すべき事なのだ。
「風雅流千年。神名雷鳳。この名を継いだ者に、敗北は許されてないんだよ」
 幾合、幾十合と刃を交わした克己は、しかし不敵に笑い宣言する。
 対するウルズもまた、同じ笑みを浮かべる。
「俺も同じよ。貴様らが地球の守護者とて、甘んじて敗北を享受する理由はない」
 それは獣の笑みだった。戦いに生き、戦いしか知らない戦士の、そして、如何なる物とも分かり合うつもりの無い、孤独の――否、蟲毒の笑み。
「……なるほど」
 地獄の炎で自己修復する正夫は得心が行ったと頷く。
「最初は恩赦の類を求めているのかと思いましたが……そうではない。貴方の行動原理はあくまでも自身の野心に基づくもの、ですね」
「でしょうね」
 同意の言葉は、アナスタシアから紡がれる。
「貴方が地球で暴れれば、地球人の恐怖と憎悪がエインヘリアルに向けられ、彼らの定命化に対する耐性が高まる。そして貴方は――」
「奪ったグラビティ・チェインでエインヘリアルに反逆する、か」
 マリオンが形成した表情は、意外にも嫌悪だった。
 浅ましい。言外にウルズの生き方を否定する。その程度の奴を――たかだか一個人で全てを覆せると思っている誇大妄想癖をエインヘリアルはこの地球に送り込んだと言うのか、と。
「ほざけ!」
 罵声と共に紡がれたウルズの一刀は、主を庇った田吾作の身体を切り裂き、木造の身体を四散させる。
 対して、ウルズの白刃には傷一つ、生じていなかった。ミミックの堅牢な身体を切り裂いた刃はしかし、一切の歪みが生じてはいない。流石は折れず曲がらずを信条とする武器――日本刀であった。
「でも、折れないのはボクらも、だよ」
「回復だ」
 そこに春風と黒き風が吹く。メルティアリアのオーラ、そしてヴィオレッタの属性付与は朽ち果てる寸前の田吾作を包み込み、ファルゼンの殴打の如き励ましとフレイヤの属性付与は、切り裂かれた身体を完治間際まで引き上げていく。
「金色の光よ、此処に集まり、皆の力になってあげて下さい!」
 そこに集うはリゼアの金色の光だ。治癒の光は田吾作の身体を癒し、克己や正夫、ファルゼンに破壊の力を付与していく。
「レーギャルンの匣より九つの鍵を解き放ち我が下に来たれレーヴァテイン。裏切りにみてる傷つける魔の杖。其は枝の破滅なり」
 重なる詠唱はアナスタシアの物だ。地獄の炎がこじ開けるのは異界の封印。破滅の光を抱く恒星の如き輝きの刃だった。
「お、お、おおおおっ!」
 雄叫びにも似た悲鳴は焼け焦げる臭いと共に。振るわれた刃の一撃は、ウルズの星霊甲冑を袈裟懸けに切り裂いて行く。
「Call、八角の牢獄」
 炎撃に切り裂かれた身体を覆うのはマリオンの生み出した檻――超圧力の結界だった。圧壊され、ぎちぎちと悲鳴を上げる自身の身体に、ウルズの顔色が変わる。
 そこに明確な怯みの色を見た瞬間、ケルベロス達は悟る。
 彼のエインヘリアルは恐怖している。そこに見えた死と言う終焉に。
 故に、それが彼の限界だった。自身の終わりを見てしまった戦士に、抗う術など在る筈も無かった。
「3つ同時に火を吹くぜ!」
「こいつはちょっと痛いですよ?」
 強襲する二つの影はファルケと正夫によるものだ。
 抜き撃ちと共に三連続で放たれたファルケの射撃は、しかし、一度の銃声のみがウルズの星霊甲冑に弾痕を穿つ。内臓を掻きまわされる苦痛はやはり3度。限界を超えた速射はエインヘリアルの身体を貫き、ぐしゃぐしゃに掻き回す。
 そして、正夫の貫手もまた、その一撃に追撃する。
 鋼の如き貫手が貫いたのは、ファルケの穿った穴だった。銃口大からこぶし大へ。破壊に動く指と掌は、星霊甲冑と共に無数の傷口が残る皮膚を貫通。生暖かい血飛沫に、エインヘリアルも人も変わらないのか、と場違いな感想が浮かび上がって来る。
「木は火を産み火は土を産み土は金を産み金は水を産む! 護行活殺術!」
 その一撃がウルズの最期となった。
 大地の気を纏った克己による無数の斬撃は、ウルズを切り刻み、切り裂き、切り払う。
「森羅万象神威!!」
 最期の斬撃は十字を模した一撃だった。
 まるで墓標の如く刻まれたそれに、エインヘリアルは抗う術もなく。
 どうっと倒れた身体はやがて、光の粒と化して消えていく。
 それが、白刃と呼ばれたエインヘリアルの最期であった。

●白刃が切り壊せなかったモノ
 様々な治癒が道を、建物を、そして街を癒して行く。
 僅かな幻想を残し、街の修復は完了していった。――まるで、そこに何も起きなかったように。
「成仏しろよ、ってのも変な話だけど」
 びゅうびゅう吹く風に飛ばされないように帽子を押さえながら、飄々とした表情で文言を口にするファルケに、メルティアリアが「むぅ」と口を尖らせる。咎める風ではないのは、人的被害にまで至らなかった為か。不謹慎と忠告すべきか、それとも悪乗りするべきか、悩んでいるようにも思えた。
「ま、事件は解決した。それでいいんじゃねーの?」
 軽い口調で告げた後、克己が快活に笑う。思う処は色々あったが、まずは同じ日本刀使いとして誇るべきことは、日本刀使いのエインヘリアルを倒した、その一点だ。
「随分切られてしまいました」
 自身の纏うジャケットやスラックス、カッターシャツを癒しながら、正夫が愚痴の様な言葉を口にする。
 ヒールで直るから問題ないものの、幻想を含み過ぎて着れなくなった――物理的にも、精神的にも――服を数着持っている立場としては、愚痴の一つでも零したくなる。
「二度とおいたが出来ないよう叩き割らせて貰いましたよ」
 消えてしまったウルズの得物を思い浮かべながら紡ぐマリオンの台詞は、何処となく悦の響きが含まれていた。
 折ったのは得物ではなく、ウルズの心の方だったが、結果は同じ事。二度と彼による被害は起きないのだから、間違いではないのだ。
 独白のマリオンに、頷いて是を示すのは、ファルゼンとアナスタシア、二人のヴァルキュリアだった。
 看取りは完了した。安らかにとは言わないまでも、永遠の眠りを享受して欲しい。心の底からそう思う。
(「このまま何事もなければいいけど……」)
 物騒な噂も幾らか聞いている。現実の物となってくれるな、との祈りは、誰に届くのだろうか。
「さて、そろそろ帰りましょう」
 リゼアは顔を上げ仲間達に呼びかける。
 ウルズは強く、しかし、それに自分達は打ち勝った。それが事のあらましであり、事実だ。
 ならばと言う。
 あの白刃は様々な物を切り崩し、しかし、この地球は、そしてケルベロス達を切り裂く事は出来なかったのだ、と。
 誇らしげに笑うリゼアの背後に、ばらばらとヘリオンのロータリー音が響き始めていた。

作者:秋月きり 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年10月31日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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