クロム・レック決戦~海底に潜む輸送基地

作者:質種剰


「クロム・レック・ファクトリアの探索に向かわれていたケルベロスの皆さんが、帰還なさったであります」
 小檻・かけら(麺ヘリオライダー・en0031)が説明を始める。
「ケルベロスお2方が暴走なさって敵の追撃を食い止めての撤退という厳しい結果となりましたが、得られた情報は非常に価値の高いものであります」
 まず、伊豆諸島海底部の海底熱水鉱床で、多くの資源がダモクレス勢力によって奪われていた事が判明した。
「この採掘を行ったのが『クロム・レック・ファクトリア』で、その護衛として、ディザスター・キング率いるディザスター軍団の姿があったようであります」
 ディザスター・キングが直接防衛指揮をとっている事からも、『クロム・レック・ファクトリア』が、ダモクレス全軍にとって重要な役割を果たしているのは間違いない。
「更に、伊豆諸島海底部にはもう一基の拠点ダモクレス『バックヤード』の姿も確認されてるであります」
 バックヤードの詳細は不明だが、巨大な『環状の門』のような形状から『魔空回廊を利用して、採掘した資源の輸送を担当している』と考えられる。
「バックヤード側の戦力は、巨大な腕型のダモクレスが確認されていまして、指揮官として『五大巧』という……おそらく5体の強大なダモクレスが存在してるであります」
 クロム・レック・ファクトリアが採掘した資源量は膨大であり、概算だけでも『ここ数年のダモクレスの侵略に必要な資源』の過半は、ここで採掘されたと考えて間違いない規模だという。
「即ち、クロム・レック・ファクトリアの撃破に成功すれば、ダモクレスへの打撃は非常に大きなものとなるでありましょう」
 かけらがそう請け負う。
「ケルベロスによって拠点の場所を暴かれたダモクレス勢力は『クロム・レック・ファクトリア』の移動準備を既に開始してるであります」
 遅くても一週間以内に、移動準備の整った『クロム・レック・ファクトリア』は、伊豆諸島海底から姿を消してしまうだろう。
「『クロム・レック・ファクトリア』が移動してしまえば、大きな犠牲を払って手に入れた情報が無駄になるであります」
 そうならない為にも、『クロム・レック・ファクトリア』が移動する前に短期決戦で撃破する必要がある。
「クロム・レック・ファクトリアを破壊するには、内部へ潜入してディザスター軍団の防衛網を突破後、ファクトリア中枢に侵入してディザスター・キングの守る中枢部の破壊を行わなければなりません」
 ダモクレス側も『ケルベロスの襲撃を撃退すれば、撤退までの時間が稼げる』として、決死の防衛を行ってくるため、かなりの激戦が予測される。
「危険な作戦となりますが、皆さんのお力をお貸しくださいませ」
 かけらはぺこりと頭を下げた。
「クロム・レック・ファクトリアの外周部には29箇所の資源搬入口があり、そこから内部に潜入できるであります」
 しかし、全ての搬入口が中枢に続いている訳ではないため、特定の突入口からのみの突入は避けねばならないだろう。
「ディザスター・キングは、敢えて中枢に繋がる搬入口とそれ以外の搬入口の警備を等しくすることで、ケルベロス戦力を分散させようという作戦をとっていまして、警備の様子などから予測するのは不可能であります」
 中枢へ繋がる搬入口以外もディザスター軍団のダモクレスによって堅く守られていて、敵を撃破して実際に探索してみるまでは、その搬入口が中枢へ続いているか否かを確認する術はない。
「複数チームが一つの搬入口から進行した場合、侵攻時の安全性が向上しますが、その搬入口が中枢へ続いていなかった場合は、ディザスター・キングと戦える戦力の低下を招く危険があります」
 クロム・レック・ファクトリア内部は、ディザスター軍団のダモクレスの防衛部隊が展開している。
「彼らは、隠し部屋を利用した待ち伏せなどの奇襲攻撃を行い、少ない戦力でケルベロスを消耗させる作戦を仕掛けた上、最奥には有力な戦力を集めてケルベロスの確実な撃破を狙ってくるであります」
 これへ対抗するには、敵の奇襲を察知して素早く撃破し道中の損耗も避けつつ、有力ダモクレスとの決戦に勝利するのが重要となる。
「この決戦に勝利後、通路が中枢へ繋がっていた場合は、ディザスター・キングとの決戦が続く事になります」
 ディザスター・キングとの決戦では、中枢に到達した全てのチームが協力して戦う事になる。
「今回の作戦では『バックヤード』への攻撃も可能であります」
 しかし、バックヤードに戦力を投入した場合、クロム・レック・ファクトリアの撃破が難しくなってしまうので、一考を薦める。
「バックヤードは『2本の巨大腕型ダモクレス』に護衛されている為、バックヤード内部へ取りつくには、巨大腕型ダモクレスと戦う2チームにバックヤード内部の探索を行う1チームを合わせた最低3チームが必要であります。これらのチームがバックヤードへの攻撃を行わなければ、内部の情報を得られなくなります」
 また、バックヤードには『探索活動中に暴走した2名のケルベロスが捕縛されている』可能性が高く、探索に成功すれば捕えられていた彼らの救出が可能かもしれない。
「危険な探索任務を成功させた方々の為にも、この作戦、どうか成功させてくださいませね」
 かけらはそう言って皆を激励してから、ふっと表情を曇らせた。
「これだけの大量の資源を採掘していたという事は、ダモクレスの大規模作戦が近いのかもしれないでありますね……」


参加者
タンザナイト・ディープブルー(流れ落ち星・e03342)
空鳴・無月(宵星の蒼・e04245)
氷霄・かぐら(地球人の鎧装騎兵・e05716)
ユグゴト・ツァン(ぐるぐる・e23397)
卜部・泰孝(ジャンクチップ・e27412)
北條・計都(凶兆の鋼鴉・e28570)
フェルディス・プローレット(すっとこどっこいシスター・e39720)

■リプレイ


 伊豆諸島海底に沈むクロム・レック・ファクトリア。
 ケルベロス達8人は、29箇所ある資源搬入口の27番目から、他の班とは分かれて単独での潜入を試みていた。
「……キングの居る中枢へ繋がってますように、と素直に祈るのが人の性だよね……」
 普段通りの淡々とした物言いで呟きながら、仲間の先陣を切って通路を進んでいるのは空鳴・無月(宵星の蒼・e04245)。
「……まぁ、他の班には悪い気もするけど……」
 ディフェンダー故に斥候を買って出た無月は、特殊な気流を身に纏って懸命に息を殺し、壁や床、天井に罠が無いか警戒する傍ら、防衛部隊の奇襲へも神経を張り巡らせていた。
「さあ、運試しなのです。大当たり祈願!」
 タンザナイト・ディープブルー(流れ落ち星・e03342)は、手袋を嵌めた両手を合わせて、なむなむと何やら祈っている。
(「敵陣の中……失敗は許されません、罠に掛かりませんように……!」)
 動物変身して慎重に通路を這うタンザナイト。ちなみに、隠密気流含めた防具特徴はグラビティの一種である為、動物変身中は使えなかったりする。
 それでもタンザナイトは壁面の継ぎ目やダクト穴、窪みを見つければ具に観察して罠を疑い、曲がり角や物陰などの死角からの奇襲も必死に警戒していた。
「さて、こいつの慣らし運転といこうか……」
 先に突入したディフェンダー2人との距離を見計らって、懐からメモリデバイス【レイヴンズコア】を取り出すのは北條・計都(凶兆の鋼鴉・e28570)。
 バトルベルトに装填した瞬間、こがらす丸そっくりの装甲が周囲へ展開、計都が歩く度にそれらが少しずつ装着されていく。
 全ての装甲が身体中を覆い、マフラーの如く膨張した青い炎を最後に、ワイルドレイヴン変身完了だ。
「罠や奇襲も侮らずに対応したいですが、一番怖いのは、やはり中枢へ辿り着けず行き止まりにぶち当たる事でしょうか……」
 どこからどう見ても地球人——に見えない計都は、こがらす丸のハンドルを握ってそんな事を言った。
「随分と久方振りに厄介な依頼だ。此処最近脳が鈍って在るのだ。故に我が心身は更なる昂りを求め、強烈な愛を晒して魅せよう」
 ユグゴト・ツァン(ぐるぐる・e23397)は、相変わらずの難解な言い回しで胸中を吐露するや、意気揚々と通路を進んでいく。
(「幸運の数字の入った路なれば、覚悟も易く成す。母は強い。強く在るべきだ」)
 足音ひとつ立てまいと細心の注意を払って静かに歩くも、その足取りはどこか軽やかなユグゴトだ。
 一方。
「さーて、なかなか巡ってこないどデカいギャンブルだ……今日のツキはどうかね」
 仲間の後に続いて潜入する直前、ふと手の中で弄んでいたコインを宙へ弾いたのは、卜部・泰孝(ジャンクチップ・e27412)。
 すると、高く跳ねたコインは金色に煌めいたのを最後に搬入口から外へ吸い出され、深海の水流に飲み込まれていった。
「ハハッ、ゲン担ぎに両表を投げりゃよかったかね」
 コイントスの結果が判らずじまいな事に苦笑する泰孝だが、不思議と不安は覚えずに通路を突き進んだ。
「これだけのものがひっそりと行動してたなんて、底が知れないわね……」
 氷霄・かぐら(地球人の鎧装騎兵・e05716)は、クロム・レック・ファクトリアへ近づければ近づく程その威容を誇る巨体が窺い知れて、搬入口から潜り込んだ時には圧倒されて溜め息をついていた。
「せっかく得たチャンス、必ず生かしてみせるわ」
 とはいえ、清楚な出で立ちの中に秘めた芯の強さを覗かせつつ、かぐらも仲間達同様、ディザスター・キングの居る中枢への道を引き当てたいと希望に胸を高鳴らせていた。
「潜入破壊工作なんてまるでスパイだネ、っていうか実際そうなんだけどさ!」
 他方。快活な口調と軽快なステップで迅速に移動しているのはペスカトーレ・カレッティエッラ(一竿風月・e62528)。
 さっぱりした外見と物腰柔らかな振る舞いが親しみ易い、ハリモグラの獣人型ウェアライダー男子だ。
「さぁて鬼が出るか蛇が出るか?」
 ペスカトーレは道中のそこかしこに死角がないか確かめる傍ら、8人の距離が離れ過ぎていないかも気遣ったりと、常の軽い調子からは意外に思えるほど目端が利いていて頼もしい。
「これもチームの勝利のためですから……」
 フェルディス・プローレット(すっとこどっこいシスター・e39720)はいつものシスター服を纏い、颯爽と中枢部目指して奥へ向かうも、その目つきは険しい。
「……チッ、お出ましですか」
 ずっと積極的かつ穏やかに相談していただけに、今のフェルディスの目の据わりようと口調の変貌ぶりには驚かされるが、例え心が荒んでいても周囲の警戒を怠らない彼女だけに、いち早く敵の襲来に気づいた。
 ディザスター・ナイト近衛型が通路に堂々と立ちはだかるのへ加えて、ディザスター・ビショップ2体も後方から姿を現し、挟み撃ちを仕掛けてきたのだ。


「戦闘、開始……」
 駆け戻ってきた際も淡々と呟く無月だが、その細く小柄な身体からは仲間を守りたいとの気迫も確かに感じられる。
 全身に溜めた力と筋力を星天鎗アザヤの穂先に載せて、近衛型の装甲を超高速で斬り裂いた。
「ゲットセット!」
 計都は両足に履いたレイジングタスクへ呪詛を載せ、斬撃にも劣らぬ鋭さの蹴りを見舞う。
 美しい弧を描いた跳び蹴りは近衛型のシャープな頭へ見事クリーンヒットして、常より多くのダメージを与えた。
 こがらす丸も搭乗者の意思に忠実に激しいスピンを決行。
 近衛型とビショップ2体、全員の足の甲を一気に轢き潰してみせた。
「これが防衛部隊ってやつなのかしら。なるべく早く突破したいわね……」
 超加速突撃を仕掛けて、敵群を一気に蹴散らすのはかぐら。
 ドラゴニックハンマーを力一杯ぶん回しながら突っ込み、回転の勢いに任せて近衛型やビショップらを薙ぎ払った。
 近衛型達が斥候2人の先行を見逃したお陰で、完全な挟撃とならなかったのは一行にとって幸運だった。
 そう思える程に、ディザスター軍の精鋭3体との戦いは激しさを極めた。
「さぁ天よ、人々を癒し祝福を与えたま……」
 真面目に天へ祈りを捧げて無月を癒すのはフェルディス。
「ガフッ。なんで!?」
 だが、祈る度に必ず彼女の頭へタライが落ちてくるのは防ぎようがなかった。
「上等だ。貴様等纏めて」
 ユグゴトは口角を歪めてニタリと笑うや、自称神格と神話生物の混血児たる本領を発揮してか、近衛型達へ襲いかかる——もとい、抱擁に走る。
 醜悪な母体の偶像による総ての抱擁は、ユグゴトへは満足感を、近衛型とビショップ達へは言い知れぬ恐怖と精神的損耗を齎した。しかもビショップ1体はそのまま事切れる始末。
「命懸けの賭けでも始めるとするかい?」
 パイルバンカーの杭に『雪さえも退く凍気』を纏わせるのは泰孝。
 そのまま近衛型の腕を挟み込んではぶっ刺し、金属製の身体をも寒さに震わせ凍てつかせ——遂に近衛型の息の根を止めた。
「タンザの『願い』を見つけるために、お前の『願い』を頂きます」
 タンザナイトは、グラビティによって生成した『鍵』をビショップの胸へ突き刺す。
 鍵を通して奴の『何かを願う心』とドリームエナジーを吸収し、己の傷を癒した。
「暴風警報! 嵐が来るぞー!」
 ペスカトーレは釣りが趣味の彼らしく、ルアーにグラビティを込めてカモメ型に変形させる。
 発進したカモメルアーが小さな嵐を巻き起こしながらビショップへ突撃。
 激しい雨風に飲み込まれたビショップは、次第に動きが鈍くなり、そのまま息絶えた。


 3体の警備を突破した8人は、緑色の光が微かに漏れてくる方へと突き進む。
 辿り着いた広間の中央、巨大な樹木にも似たクロム・レックの中枢が聳え立つ様は壮観だった。
 恐らくは巨大基地全体へ張り巡らせた中枢神経が枝状に絡まり集束して樹木みたいに見えるのだろう。
 そして、ケルベロス5班とディザスター軍ダモクレス15体が敵味方入り乱れて戦っているのを目の当たりにすれば、緑の光で照らされた広間がいかに大きいか判る。
 8人は、他班へ加勢しようかとも考えたが、すぐに気づいた。
 部下達を足止めに差し向けたディザスター・キングが、のうのうと高みの見物している事へ。
「かくれんぼは終わりです、勝負!」
 威勢良く啖呵を切るタンザナイトだが、キング相手ならばと長期戦を見越して、移動中既に後衛へ回る準備をしていた。
「月と星と、太陽よ!」
 それ故、まずは不慣れながらも小型無人治療機の群れを操り、前衛陣の守りを固めている。
「……凍てつけ」
 無月は相変わらず抑揚の無い物言いで、星天鎗アザヤに冷気を集中させる。
 そのままキングの黄金色をした草摺へ槍の穂先をズブリと突き刺した。
「速攻だ。抱擁する暇も無い」
 と、珍しく真剣な顔つきになってキングへ距離を詰めるのはユグゴト。
 尋常ならざる怪力を発揮するやキングの装甲をガバッと素手で引き裂き、傷口から溢れた生命エネルギーを啜り上げた。
「子供じみた遊びだが……コイツはちっと厄介だぜ?」
 泰孝はニヒルな笑みを浮かべて、魔力で生み出したトランプを手裏剣の如く投擲。
 トランプが突き刺さった痛みのみならず、7を示すトランプの魔力を帯びた障壁による加護という名の妨害機能をもキングへ植えつけた。
「ふん……見苦しく抗う様も見ものかと放っておいたが」
 ディザスター・キングはケルベロス達の攻撃を喰らっても涼しい顔で、反撃もどこかおざなりであったが。
「もはや、新たな定命のものどもは現れぬか」
 3分の間にケルベロス側の襲来がこの8人で最後と見極めたらしく、本腰を入れて攻撃を始めた。
「無様に散るが良い」
 まずは背面に装着されていた小型剣を飛ばすや、手足の如く操って次々とタンザナイトの腹部に突き立てるキング。
「痛っ……そんなぁ」
 警備兵戦の疲労が抜け切っていないところへ、凄まじい斬れ味の遠隔誘導兵器に翻弄されて、タンザナイトは悔しそうに意識を手放す。
 1分後、キングは幅広の両手剣を振り下ろして、何度も仲間を庇って負傷していた無月へ叩き潰すかのような重い斬撃を見舞い、かなりの深手を負わせた。
 更には、サブアームから繋がる大盾と四振りの剣を器用に捌いて、
「……醜悪を晒せぬ醜悪……耐えるに難い」
 ユグゴトとこがらす丸をひと息に打ち払ったかと思うと、
「クソッ……こんなに早く……ワリィ」
 間髪入れずに泰孝をも突き倒した。
 あっという間に戦力が半減するまで削られて、4人の表情へ絶望の色が走る。
 ただ、キングの猛攻に何とか耐え切った彼ら自体は、防具耐性のお陰もあって少しは余力を残していた。
 とはいえ、防戦一方となっては何分保つか——暗澹たる思いの中キングのソードビットに耐えていると。
 一筋の光明が見えた。
「――お前の運命を極めるダイス目だぜ、キング!」
 白い癖っ毛の青年が、サイコロ状のオウガメタルから地獄の炎激しいダイスを投擲。
 キングへ小さな太陽並みの灼熱を見事ぶち当てたのだ。
「わたし達も一緒に戦うよ!」
 はっとしてペスカトーレが振り返れば、明るく元気づけられる女性の声。
 同時に、青年の負傷を癒そうと後方から小型治療無人機の群れが迫ってきた為、援軍が1人じゃないと判った。
「支援はまかせてください」
 ココア色の髪の女性と共に追いついた銀髪の少女は、エクトプラズムで擬似肉体を作り、仲間の異常耐性を高めた。
「王手、飛車取り。ずどーん」
 また、別の少女の淡々とした声を聞いた瞬間、小型ミサイルがキングの足元スレスレに吸い込まれていき、カラフルな火花飛び散る爆発まで起こった。
「まだまだ諦めてられませんね……私が皆さんを支えてみせます」
 頼もしい4人の助太刀に励まされ、グッと腹に力を入れてバトルオーラを増幅させるフェルディス。
 今まで何度も仲間を庇ってきた計都の大怪我を、しっかりと治療してみせた。
 2班計8人が力を合わせてキングへ抗い始めてから、長い長い3分が過ぎた頃。
「自慢の布陣も剥げたな、裸の王様よ……! 凍てつく寒さを、プレゼントだ!」
 気炎を上げて突撃する赤目の狼ウェアライダーの姿が目に入った。
「……これが、最後の機会です! 一撃でも、一発でも多く……攻撃あるのみです!」
 純真なる悪の結社員も鋭い影を閃かせる。この広間で早くからキングの護衛に応戦していた2班が、今まさに合流したのだ。
「1発なら躱される弾丸でも、6発同時なら!」
 気力体力共に充実した計都は、弾丸へグラビティを込めてキングの下半身へ狙いを定める。
 威力の増した弾丸が一瞬で急所や関節など計6箇所を撃ち貫き、奴の機動力を削ぎ落とした。
 4班合同でキングへ立ち向かうケルベロス達へ、2分後、更なる追い風が吹いた。
「ゴー・トゥー・ヘヴン!」
 テキサスの牡牛の如き激しさで荒れ狂う竜巻を起こしながら、リボルバー銃の弾が空を駆け、キングの装甲を撃ち抜いたのだ。
「黒羽の弾丸……避け切れるものなら……!」
 加えて、グラビティでできた黒い羽根が無数に降り注ぎ、キングを縫い止めるべく、肩当てや盾へ次々突き刺さる。
 炎の息や天井から跳ね返った弾に混じって、S=Tristiaの弾丸もキングの小型剣を撃ち砕いた。
 次いで銀髪碧眼の淑女がフェアリーブーツでキング目掛けて蹴りを入れ、それらが新たな別班の援護だと知るかぐら達。
 仲間の回復へ奔走して哀れビットの餌食になったフェルディスや、キングの大剣を耐性ぴったりの防具で凌いでいたもののとうとう限界がきた計都の穴を埋めてくれる、有難い連続攻撃であった。
 尚も援護は続き、砲撃形態のハンマーから離れた竜砲弾が宙を奔り、聖女を穿つと称される魔弾は、キングの心臓部目掛けて真っ直ぐな光芒を描いた。
「へへっ、大物が釣り上がったみたいだネ?」
 本当はガトリングガンを連射したかったところだが、代わりにガジェットを構えるのはペスカトーレ。
「あとは〆て捌くまでしっかりこなさなきゃ!」
 ガジェットを『回転衝角形態』へ変形させ、キングの金色に輝く鎧を全力で抉り貫いた。
「今がキングを倒す、最後のチャンスよ。出来得る限り攻撃しましょう!」
 かぐらは皆へ発破をかけつつ、精神を極限まで集中。
 ドカン、とキングの両手剣を一切触れずに爆破して、少なくない損傷を齎した。
「お、ぉおおお!」
 動ける者達が一斉に攻撃を仕掛けても尚、絶叫こそすれ何度でも起き上がるキング。
「マザー! レジーナ……! クビアラ! 私は……まだ!」
 何ともしぶとい奴の懐へ最後の力を振り絞って肉薄するは、奴と因縁浅からぬサキュバスの少年だ。
「さよなら、キング。今度は……ボクたちの、勝ちだ」
 渾身の魔術領域が収束するや否や、遂にディザスター・キングは頽れた。

作者:質種剰 重傷:タンザナイト・ディープブルー(流れ落ち星・e03342) 空鳴・無月(宵星の蒼・e04245) ユグゴト・ツァン(パンの大神・e23397) 卜部・泰孝(ジャンクチップ・e27412) 
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年11月7日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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