●大魔女化装
「やれやれ。毎年この時期は散々な目に遭っているだろうに、懲りもせず。呆けているのか、それともタフなのか……」
十月三十一日。ハロウィン一色に染まった街並みを、ビルの屋上より見渡す男が一人。
モザイクで秘された大きな『自宅』の前に立ち、二振りの鍵剣を握るその姿、一瞥すれば誰であれ、男が人ならざる夢喰いの怪物と理解するだろう。
しかし、人々は忍び寄る恐怖の存在に気付かない。今日と言う日を余す所なく満喫する為には、一瞬上を向く時間すら惜しいのだ。
……この熱気こそが、『魔力』を生み出す源泉となる。
「いずれにせよ、侵略者(こちら)としては都合が良い。ハロウィン……その源流は収穫を祝う祭事と聞く」
男が事も無げに宙へ飛び出すと同時、その身は変異・拡張し、刹那、全長優に十mはあろうかと言う巨大な魔女が顕現する。
「『魔力』『居場所』……悉く狩るとしよう」
逃げる男。悲鳴を上げる女。
そして混乱と狂乱が全てを塗り潰した。
●フェスティバル・バトル
人が集まるってことは、必然彼らにとって絶好の狩場が出来るって事っすからねぇ、と、黒瀬・ダンテ(オラトリオのヘリオライダー・en0004)は溜息をついた。
今回の事件の黒幕はドリームイーター・魔女ポンペリポッサ。
寓話六塔戦争で受けた痛手を回復する為に、ハロウィンの魔力を狙ったのだろうとダンテは語る。
「全国津々浦々、ハロウィンで賑わう街角に現れたドリームイーター達が、ハロウィンの魔力を利用してでっかくなっちゃうんすよ。ポンペリポッサの姿で」
ポンペリポッサ化したドリームイーターの全長はおよそ十mで、その戦闘力はオリジナルには及ばないが、それでもかなりの強敵と考えて間違いない。
「ポンペリポッサの姿に変身して戦闘をする為には、ハロウィンの魔力を消費してしまうため、変身していられる時間は五分程度……それが過ぎれば変身は解除されるので、その後なら有利に戦う事が出来るっす。有り体に言ってしまえば制限時間付きの巨大化パワーアップっすね」
また、戦闘時にハロウィンらしい演出を行う事ができれば、ドリームイーターからハロウィンの魔力を奪い取る事も可能だと言う。
ハロウィンの魔力を奪い取る事が出来れば五分よりも早く、ポンペリポッサ化を解除する事が出来るだろう。
「どういうのがハロウィン『っぽい』のか、という判断に関しては皆さん一家言あると思うので、まるっと全部お任せするっす!」
丸投げでは。
しかし、ヘリオライダーがこちらに一任する以上、『っぽさ』の正答は無数にあるというという事だ。
逆に、難度は高くなるが、全くハロウィンらしい演出を行わず、真っ向から削り合いを挑んでもいい。
この班が相対する事になるのは、ケルベロス――長篠・ゴロベエと酷似した容姿を持つドリームイーター。巨大な自宅のモザイクを晴らすため、自らが欠損する『居場所』への想いを狙うのだと言う。
変身を解除すれば有利に戦うことが出来る、とダンテは言ったが、それはあくまで戦術上の話だ。当然彼自身も『宿敵』たり得る実力を保持しているという点は忘れてはならない。
「どうしてみんな毎年お祭りを全力で楽しむか。勿論、皆さん方ケルベロスの事を全力で信じてるからっすよ。だから、今日もいつものように……行きましょう!」
参加者 | |
---|---|
ノーフィア・アステローペ(黒曜牙竜・e00720) |
アイラノレ・ビスッチカ(飛行船乗りの蒸気医師・e00770) |
巫・縁(魂の亡失者・e01047) |
ロベリア・エカルラート(花言葉は悪意・e01329) |
綾小路・鼓太郎(見習い神官・e03749) |
フィアールカ・ツヴェターエヴァ(赫星拳姫・e15338) |
長篠・ゴロベエ(パッチワークライフ・e34485) |
霧島・トウマ(暴流破天の凍魔機人・e35882) |
●あめあられ
輝く眼が喰らうように地上を睨む。魔女がさらに一歩を踏み出して、全て圧し潰そうとしたその刹那、不意にあめが降り始める。
チョコにキャラメル、ビスケットやキャンディ、可愛らしいカボチャの紙吹雪。軽く柔らく、あまい甘いお菓子のあめ。
魔女の眼は地を離れ、あめを辿り、空を見る。そこにあったのはヘリオンだ。
「今宵の闇から這い出てきた同士眷属諸君、これよりここは生と死が交錯する舞台となろう。宴を愉しむのはここでなくとも出来る。私達に任されよ」
ぎっしり詰め込んだあめ放出し続けるヘリオン。魔女がそれを一瞥した隙に地上へと降下した巫・縁(魂の亡失者・e01047)達は、手分けして人々の避難を援ける。
その様子をヘリオンから確認したノーフィア・アステローペ(黒曜牙竜・e00720)と霧島・トウマ(暴流破天の凍魔機人・e35882)は敵の注意を引き付けるため、あめに紛れて魔女へと降りそそぐ。
「ハロウィンじゃ魔物は仮装した人間を襲わないのがルールだよ?」
羽根や花の飾りで彩られた帽子を風にさらわれぬよう片手で抑え、顔の左半分にはシュガースカルの仮面。
「相手が欲しいなら、私たちが応えよう!」
ドレス姿の装いの、首と右腕を包帯でめかし込み、ノーフィアは携えていたマリーゴールドの花束をふわりと魔女へ放ると、ソンブレロを被った相棒・ペレのブレスと共に絶凍の杭(パイル)を見舞う。
「ある意味全く捻ってねェ仮装かもしれねぇが……」
シルクハットとジャケットの英国紳士風の出で立ちに、ナイフと包帯、あえて物騒な要素を加え、トウマが扮するのは切り裂きジャック。
「ま、お前にゃ不釣り合いな『居場所』だっつーことだ。お帰り願うぜェ」
トウマは惨殺ナイフを逆手に持ち替え、魔女の大きな眼を切り刻む。ペレのブレスと相乗し、ジグザグに開いた傷口には悉く凍気が走り、血の一滴も零れない。
「おっと。まだだ。暫く蒼穹でも眺めていればいい」
場に応じ、魔法使いの衣装を纏った縁は、芝居がかった台詞を口にして竜槌を砲に可変させ、文字走る包帯を巻き付けた右腕でトリガーを引く。同時、顔と前足に包帯を施された縁のオルトロス・アマツが何処か不機嫌そうに魔女を睨んだ。
カトリーナとジャックを振り切り、地上に向こうとしていた魔女の首は、砲弾と炎によって強引に空へ押し戻される。
「さて、ショーの始まりだよ! 皆離れた離れた!」
縁同様魔法使い……大きな帽子がトレードマークの魔女に仮装したロベリア・エカルラート(花言葉は悪意・e01329)は、ショーの司会のような明るい調子で避難誘導を行いう。その後自身の周囲から人影が無くなった事を確認すると、改めて大魔女を見る。
毎年負け続きなのに、よく飽きずに事件を起こすものだ、と思う。
たまには素直にハロウィンを楽しませて欲しい所だが、この調子だとまず間違いなく来年も……。
「なんて、私は私で勝手に楽しむから問題ないんだけどね!」
ぴんと帽子の鍔を弾いて、携えたファミリアロッドに紫炎を纏わせる。
「トリック・オア・トリート、ってね! ここから先に行きたきゃ、お菓子を置いてきなよ!」
ハロウィン『らしさ』が戦闘を優位に進める鍵となるなら、眼前の大魔女が見惚れるくらい派手にやればいい。
ロベリアは想いのままに炎撃を大魔女にぶつけ、南瓜を被った彼女のビハインド・イリスが延焼した紫炎ごと敵を金縛る。
「ハッピーハロウィン! お菓子をあげたから悪戯させなさいな、悪い魔女さん」
三人目の魔法使い――包帯でその身を戒め、クラシカルなスチームパンク風の魔女に成ったアイラノレ・ビスッチカ(飛行船乗りの蒸気医師・e00770)は、割り込みヴォイスを駆使して、人々の避難を誘導する。
喧騒の中にあって、離れたアイラノレの声がはっきりと聴こえたことに驚いたのだろう、小さな子供が不思議そうな顔を向けてくる。
アイラノレは微笑して魔法ですよ、と再び割り込みヴォイスで子供に伝えると、子供は大きな身振り手振りと何かを叫び、満面の笑顔で戦場を後にした。
向こうの声は此方まで届かない。それでも、『頑張って』と応援してくれた小さな想いは、確かに届いた。
「雷鳴の掌よ、我らを包みたまえ」
アイラノレは星命杖ラス・アルハーグを掲げ、詠唱してみせる。新鮮な感覚だ。何時もは口遊まぬ呪文を口遊み、大仰に、それこそ神秘と怪奇を操るウィッチらしく。
「事前に予知されたとはいえ俺の偽物か……なんでさ」
雷壁の加護を受けた長篠・ゴロベエ(パッチワークライフ・e34485)は大魔女を見上げ、嘆息する。一般人は粗方逃げたろうか。
どういう経緯で生まれたのか、または創られたのか、色々と自身の偽物に訊いてみたい事もあるが、その前にまずはあの魔女の革を剥がさないとならない。
自分からは動くのは不得手だが、
「トン、トン、トンカラトン、トン」
革を剥ぐ為に必要なのが仮装や演出、台本のある道化役ならやり様はある。
全身包帯姿のトンカラトンスタイルに、カボチャを被ることも吝かではない。
「トンカラトンと言えー。さもないと刀で斬るぞー」
携えたゾディアックソードを日本刀と言い張って刀身を振り翳し、大器晩成の一撃を大魔女に叩きつけた。
「とんとんとんからとん! さあ言えなの!」
ゴスパン風味のトンカラトン・フィアールカ・ツヴェターエヴァ(赫星拳姫・e15338)は模造刀をぶんぶか振り回しながらベラスネーシュカのスイッチを押し込むが、前衛をカラフルな爆風で援護した際に、勢い余って模造刀を放り投げてしまう。すっぽ抜けた模造刀は包帯を雑にぐるぐる巻きすぎて見た目質感が硬そうなケセランパサラン、というかよくよく見てみると良く良く解らない妖怪Xと化したミミック・スームカに命中し、そしてスームカは、
「言えない? 言えないのね! 言えないならおしおきなのよ! ゆくのスームカ! あの脚をガブっとにぇっと!?」
噛んだ。フィアールカを。雑な仮装を施したことに腹を立てたらしい。取り敢えずはそれで満足したか、スームカは続けて魔女の脚にも噛みついて事無きを得た。
「御菓子を撒きましたならば、次は紙人形をば飾り付けましょう。彼奴の煩わしいtrickを肩代わりしますよう」
武者鎧、縛霊手、鬼の面に日本刀。武者の亡霊の姿を取るのは綾小路・鼓太郎(見習い神官・e03749)。
鼓太郎は無数の紙兵を前衛に吹雪かせ、魔女の攻撃を待ち受ける。
「貴方の『居場所』へ御案内に参りました。黄泉平坂越えた先、根堅州国への直行便。然らば駄賃は六文銭、御支払いを頂きます」
鼓太郎の言に応じたか、魔女の眼が再び地を照らす。四方の空間に罅が走り……割れて開いた超重力の陥穽が、前衛達を飲み込んだ。
●化装解除
「戦いの幕はとうの昔に切って落とされた。にもかかわらず、一人だけ未だ幕の内側に居るのは不公平だろう? 悪いが、引きずり出させてもらう」
会敵より三分。アマツの発した地獄の瘴気の深奥で、縁は巨大な『鞘』・牙龍天誓を振り上げ、思い切り地に叩きつける。
「奔れ、龍の怒りよ! 敵を討て! 龍咬地雲!」
そして生まれた衝撃波は宙を駆け天(そら)へ飛び、同時、ロベリアはロッドを元の小動物に戻し魔女へ疾らせる。
地のロベリアが射出したファミリアの一撃と天を征く縁龍咬地雲。大魔女の体は徹底的に裂かれ、砕かれ、霧散し、
「想定よりも早く解けた、か。やるな」
魔女の骸、闇の中より現れた、鈍く輝く一対の鍵剣。それを振るう存在こそ、『正真正銘』、ゴロベエの『贋物』か。
贋物は音も無く一息に、ロベリアまで距離を詰める。攻撃直後。敵の必殺圏。それでもロベリアは笑んでみせる。焦りは絶対に見せない。舞台役者のプライドだ。
「今年も懲りずにいらっしゃい。毒リンゴでも食べる?」
「折角の誘いだが、遠慮しておこう」
贋物は魔女の余韻を吹き飛ばすと、鍵剣二つを組み合わせ、大きな鎌を作り出す。
大鎌の切っ先は無慈悲にロベリアへ迫るが、しかし寸前、ゴロベエが盾となり鎌撃を受け止めた。
ゴロベエの全身に引きちぎられるような激痛が走る。鎌が齎すのはゴロベエの扱う『圧縮』とは正反対、物的、霊的、あらゆる結合を解く全方位への『拡散』だ。
ゴロベエは即座、重力場を圧縮して創り出したブラックホール的エネルギーを身に纏い、拡散の影響を最小限度に押し留める。
「荒ぶる力を御しきり守護となす。これぞ引きこもり用究極障壁……」
消失喰らい 護式 ダークプリズンウォール。
「……オウガでも殺せなかった俺を、お前は殺せるか?」
「無論」
贋物は不敵に笑う。
「お前は人間を護り、俺は人間を殺す。お前は夢喰いを殺し、俺は夢喰いを護る。俺はお前の逆だよゴロベエ」
「理由はどうあれ……一般人を襲うなら止めるだけだ!」
「その通り。やはり根は同じだな。理由がどうであれ、お前達が夢喰い(なかま)を襲うなら止めるだけだ」
そのためにも『居場所(ちから)』が必要なのだと贋物は言った。
「居場所を求める気持ちは分からなくもありません」
鼓太郎はブラッドスターを詠い、後衛を癒す。
生きる事の罪を肯定するメッセージ。『帰りたい』。鼓太郎の胸の内に燻ぶるその一心が通じていた居場所はさて、何処だったろうか。
「ただ、それを奪い取る気持ちは全く分かりません、分かりたくありません」
鼓太郎は頭を振った。
「奇遇だな。俺も定命化(あゆみ)寄るつもりは毛頭ない」
「そうかよ。だったら定命化(あゆみ)寄った俺が引導を渡してやる!」
贋物に対する怒りが、トウマの心で渦を巻く。この怒りの本質が何なのか、トウマ自身にも判りえぬものだが……今はただ、ぶつければいい。
トウマの腕部が雷雨の如く唸りを上げて回転し、その守りごと贋物の肉を断つ。
「さあ、私の眼を見て」
怒涛に抗う贋物が見たフィアールカの瞳。しかし、妖しく煌くその紫眼もまた陽動(フェイク)であり、視線が交わったその瞬間、フィアールカは本命である不可視の衝撃波を叩き込む。
アイラノレが魔法の杖(ステッキ)、classyの頭を贋物へ向けたのは、衝撃波が贋物の体に浸透した数瞬後の事。
「……魔法のステッキです、ええ」
実の所は刃を秘めたバールだが、兎も角、あの大魔女扮装を三分で解けたなら、今回の為だけに持ち込んだ種々の道具は有効だったという事だ。
「悪戯猫よ、玩具を追え」
classyを伝って放たれた魔法エフェクトが黒猫の姿に変じ、贋物に食らいつく。
猫が奮戦してる間にペレはノーフィアの頬をペチンと叩いた。
紙兵や雷壁の守護のお陰で、催眠は消え去り、心身ともに十全、注入されたのはペレの属性と気合。
ノーフィアは大丈夫、と頷いて星型のオーラを贋物に蹴り込み、そして高らかに宣言した。
「黒曜牙竜のノーフィアより緑の好奇心とこちらの同胞の姿を真似るドリームイーターへ。南瓜と月の祝福を!」
●居場所
『自宅』の扉が開き、前衛達は力がどこか別の空間へ根こそぎ奪われていく感覚に支配される。
「超重力。捕食。そう言うものの使い手が一人とは限らないよ?」
ノーフィアはトウマを庇いながら漆黒の球体――デモリションスフィアを生成し、超重力を意のままに、贋物を蚕食した。
「手元が狂ってしまうでしょう。じっとなさい」
アイラノレは幾つもの包帯を巧みに操り、敵を雁字搦めに束縛し、その脚を奪う。決して逃がさぬと決意を籠めた包帯を、断ち切る事は至難に近しい。
「あ! 閃いた! 皆、ちょっとだけ包帯借りるよ」
「ロベリアの頼みとあらば仕方ない。我が封印、残さず全て持ってゆけ!」
縁が右腕を突き出すと、ケルベロス達が仮装に使っていた包帯が独りでに解け、一所に集積し、蛇の如く贋物へ襲い掛かり締め付ける。イリスの念力だ。各々の包帯はアイラノレの拘束をさらに補強し、贋物を追い詰めた。
「ああ! 何てこと。スームカの動きが見違えて!」
単に窮屈な包帯から解放されただけである。軽やかな動きと主への信頼を取り戻したスームカは、シフィアールカと共に挟撃を仕掛ける。具現化した武装と硝子の鋭さの蹴撃が左右に交差した。
続けて贋物を捉えたのはオウガメタルで武装するロベリアの拳と、縁が解放した右腕に溜め込むオーラの一条。二つの達人の一撃が贋物を圧倒し、そして狂飆が吹き荒ぶ。
「さぁ、欠落持ちの夢喰い(おまえ)にも忘れられないモノがあんだろ? とっておきの『イタズラ』だ。くれてやるよ。祭りの邪魔したことを後悔しなァ?」
トウマは大量の感情データを螺旋力に乗せ、共に贋物へ叩き込む。脳髄が焼き切れ、錯乱するほどの過剰な情報量が相手に齎すのは、逃れられぬtrick(トラウマ)だ。
「遍く日影降り注ぎ、かくも美し御国を護らんが為、吾等が命を守り給え、吾等が力を寿ぎ給え」
祝詞を唱えた鼓太郎の胸部から、柔らかく輝く光球が現れる。
「あ、その人魂に見える光球は避けないで下さい、ヒールですので!」
「ああ、有難く受け取るよ」
それは、鼓太郎が日常的に使う癒しの業。光球はゴロベエを包み癒すと静かに消えて、異空に吸い取られた力を補填してくれた。
態勢を整えたゴロベエの、目鼻の先には二刀の鍵剣。しかし、ゴロベエは一振りの刀でそれを凌ぎ切り、
「二刀流とか、あの頃は俺も随分とはしゃいでたな。今はもうほとんど剣を握らないんだが」
斬り払い、偽物が揺らいだその間隙を、
「俺がそんな戦い方はしたのは初めの頃だけだ。ずいぶんと古いデータだな……見ろ。これが今の俺の戦いだ」
刃の如き鋭い蹴撃で貫いた。
●あめあがり
偽物が抱え込んでいた『自宅』が砕ける。
死んだら死んだでそれでもいい。偽物は最期に薄くそう笑んで、
「いいさ。此の世に『居場所』が無いのなら、根堅州国とやらに逝くのも面白い」
消失した。
そして再び宴はやってくる。
フィアールカがカラフルな爆風とダンスで街を癒し、戦勝祝いにペレがギターを弾く、ふりをして、ノーフィアは集まってきた子供達に、アイテムポケットに残っていたお菓子を配る。
やれやれです、と鼓太郎はようやく一息入れる。持参したお菓子を頬張りながら、アイラノレにも渡そうとすると、何やら恥しがる様子の彼女に気付く。どうやら今回の大立ち回りに、少々照れを感じていたらしい。
照れる事ないよ、格好良かったよ、とロベリアはイリスと手分けして皆の衣装を着付け直し、縁はアマツの毛並みをねぎらうように一撫でした。
トウマは何気なく、自分達が巻いたキャンディを一つ摘み上げる。
今日くらいは、あめが甘くても良いだろう。
何せ、そう、今日は。
「はっぴーはろぃん!」
平和になった街並みに、ゴロベエの割り込みヴォイスが駆け抜ける。
今日は、非日常(ハロウィン)なのだから。
作者:長谷部兼光 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2018年10月31日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 1
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