ポンペリポッサの魔女作戦~漆黒に染まるハロウィン

作者:雷紋寺音弥

●戦慄の巨大魔女
 橙色の灯りが街を一色に染める季節。街を行き交う人々の中には、思い思いの仮装を楽しんでいる者達もいる。
 お菓子をくれないと、悪戯するぞ。そんな声が、どこからか聞こえて来る街角に、ふらりと現れたのは黒いドレスに身を包んだ少女。
 もっとも、道の真ん中に佇む彼女に訝しげな視線を送るものこそいれど、それ以上の興味を抱く者はいなかった。ハロウィンで賑わう街の中。今更、ゴシックロリータなど珍しくもない。そう、誰もが思っていたのだが。
「……っ! な、なんだ、あれは!?」
「おいおい! 何のアトラクションだよ、これは!?」
 突然、少女の身体が凄まじい勢いで肥大化し、醜悪な老婆の姿へと変貌して行く。沼地の苔の如き体色に、血の様な赤い瞳をした巨大な魔女に。
「馬鹿! こいつはアトラクションなんかじゃない! 本物だ!」
「うわぁぁぁっ! に、逃げろぉぉぉっ!!」
 突如として出現した怪物を前に、逃げ惑う街の人々。そんな彼らに狙いを定め、巨大な魔女は不気味な笑みを浮かべつつ、人の口では発音できないような言葉で呪文を紡ぎ始めた。

●巨大魔女の悪巧み
「招集に応じてくれ、感謝する。寓話六塔戦争の後に行方不明になっていたドリームイーターの魔女、ポンペリッサが、ハロウィンの力を求めて動き出したようだ」
 恐らく、先の戦争で受けた痛手を回復するために、ハロウィンの魔力を狙ったのだろうと、クロート・エステス(ドワーフのヘリオライダー・en0211)は集まったケルベロス達に、事件の詳細について語り始めた。
「ポンペリッサはハロウィンで賑わう街角にドリームイーターを出現させ、ハロウィンの魔力を利用して、『巨大なポンペリッサの姿』に変身させようとしているようだな。ポンペリッサ化したドリームイーターの全長は10m。戦闘力こそ本物のポンペリッサには及ばないが、それでもかなりの強敵だぜ」
 敵のサイズはエインヘリアルや巨大ロボ型ダモクレス以上であり、一部のドラゴンにも匹敵する大きさである。当然、その巨体から繰り出される技の威力も半端ではなく、このまま戦うのは極めて不利だ。
「今回、お前達に向かってもらいたいのは、福岡県の大野城市だ。敵が出現するのは、ハロウィンの雰囲気で賑わう商店街。そこに出現するゴシック調の黒いドレスを着た少女……『漆黒のモノクローマ』を撃破してくれ」
 敵は一般人の中に紛れても目立たない格好をしているが、しかし巨大化すれば嫌でも目立つので、こちらから無理に探す必要は無い。また、事前に一般人を避難させてしまうと、それに便乗して漆黒のモノクローマも雲隠れしてしまう可能性が高く、色々と面倒なことになる。
「巨大化してポンペリッサの姿に変身したモノクローマは、謎の呪文を紡いだり、巨大なスプーンを撒き散らしたりして攻撃して来るぞ。回復呪文にも長けているから、中途半端に攻撃したところで、大した効果も与えられそうにないな」
 幸い、敵がポンペリッサの姿に変身して戦闘できる時間は、最長でも5分程度が限界だ。戦闘ではハロウィンの魔力を消耗してしまうため、5分を過ぎると元の姿に戻ってしまう。その後であれば、こちらが有利に戦うこともできるだろう。
 なお、戦闘時にハロウィンらしい演出を行うことができれば、その分だけ敵からハロウィンの魔力を奪い取ることも可能である。魔力を奪われれば、当然のことながら敵が巨大化していられる時間も短くなるので、より有利に戦いを進めることが可能となる。
「元の姿に戻った漆黒のモノクローマは、やはりスプーンを武器に使って来るようだな。その他にも、人のような形をした無数の影を操る能力も持っている。巨大化を解除した後も、最後まで油断なく事に当たってくれ」
 モノクローマは黄金のスプーンで相手の魂を削り、その生命力を掬って食したり、目玉を抉られたと錯覚させて、視界を奪ったりするようだ。また、彼女の繰り出す影に触れられると、それだけで忌まわしき記憶を掘り返されるため、こちらにも注意をしておきたい。
「折角のハロウィンに、人々の涙は必要ない。過ぎた悪戯を企んだ魔女には、お菓子ではなくお仕置きが必要だな」
 巨大ポンペリッサに変身したドリームイーターは強敵だが、それでも突破するための術はある。ハロウィンの祭りを台無しにしないためにも、この敵を逃さず撃破して欲しい。
 最後に、それだけ言って、クロートは改めてケルベロス達に依頼した。


参加者
篁・悠(暁光の騎士・e00141)
ジョルディ・クレイグ(黒影の重騎士・e00466)
ミルフィ・ホワイトラヴィット(ナイトオブホワイトラビット・e01584)
クロエ・ランスター(シャドウエルフの巫術士・e01997)
アルレイナス・ビリーフニガル(ジャスティス力使い・e03764)
ペシュメリア・ビリーフニガル(ノーブルオブリゲーション・e03765)
日生・遥彼(日より生まれ出で遥か彼方まで・e03843)
ティーシャ・マグノリア(殲滅の末妹・e05827)

■リプレイ

●史上最悪の悪戯
 西洋の祭りであるハロウィンが、日本に定着して久しい。今宵は日本全国、どこでもハロウィンムードで賑わっている。ここ、北九州に位置する福岡県の大野城市でも、それは何ら変わらない。
「Trick or Treat!」
「お菓子をくれないと、悪戯するぞ~!」
 どこからともなく、お菓子をねだる子ども達の声が聞こえて来る。が、そんな街の中央に、突如として現れたのは巨大な影。
「うわっ! な、なんだ、あいつは!?」
「ほ、本物の怪物だぁぁぁっ! 逃げろぉぉぉっ!!」
 大通りの真ん中に、突如として現れた醜悪な老婆。家の屋根に届かんとする程の身の丈を誇る魔女の姿を見て、人々は右往左往するばかりだったが。
「……ッ!?」
 突然、魔女の身体に砲弾が炸裂し、緑色の巨体がぐらりと揺れた。
 いったい、これは何事か。警察が助けに来てくれたのか。怪獣の出現に自衛隊でも出動したのか。否、そうではない。
「あっ! あれは……」
 誰ともなく指差したその先に立っていたのは、白を基調としたゴシック風の衣装を身にまとったティーシャ・マグノリア(殲滅の末妹・e05827)。彼女の手に握られたハンマーの柄からは、未だ煙がたなびいており。
「こういう傍迷惑なイタズラは不要だな」
 高層建築物の屋根の上、昇りかけた月を背に、魔女を見下ろす篁・悠(暁光の騎士・e00141)。
「姿だけ真似れば、その力が手に入るわけではあるまい。その内は空っぽで、何に満たされているわけではないのだ。……人それを『外彊中乾』と言う!」
 それだけ言って、颯爽と下界へ飛び下りる。そこから先は、他の者達も雪崩れ込み、瞬く間に狂乱の如き様相を示して行き。
「ケルベロスです。ここは私達が治めます」
「ここは僕たちが引き受ける! 避難を!」
 ゾンビナース風のペシュメリア・ビリーフニガル(ノーブルオブリゲーション・e03765)が逃げ遅れた人々の手を引く中、悠もまた魔女装束をバージョンアップさせ、人目を引きつけつつ誘導を開始する。その間に、敵の動きを抑えるべく、魔女の背後から迫る黒い影。
「トリックオアトリート!!」
 地獄化した頭部を曝け出し、炎の頭を剥き出しにしたジョルディ・クレイグ(黒影の重騎士・e00466)が、敵の頭目掛けて思い切り斧を叩き付けた。
 ちなみに、本人はデュラハン……首無し騎士の仮装をしているつもりらしい。もっとも、燃える頭の方が目立ちまくり、どちらかと言うとバイクに乗りながらチェーンを振り回して登場する、地獄の死者にも見えるような。
 後頭部を叩かれ、道に倒れ込んだ巨大魔女。しかし、さすがにこの程度では沈むこともなく、直ぐに起き上がってケルベロス達を見まわした。
「……おやおやぁ、ご挨拶だねぇ。これは、お返しをしてやらないといけないねぇ」
 そう言うが早いか、巨大な魔女は赤い瞳を妖しく輝かせ、周囲に不気味な閃光を解き放つ。それと同時に、聞こえる奇怪な声。定命の者の出自を捨て、デウスエクスのような存在になるべきだという、甘美で危険な不死への誘惑。
 こいつは、とんだ悪戯だ。幸い、一撃もらった程度ではそこまで大した影響はないが、しかし一般人が巻き込まれたとなれば話は別。
「ククク……。不老不死だぁ? 冗談も大概にしやがれってんだよ」
 クロエ・ランスター(シャドウエルフの巫術士・e01997)の手にした包帯だらけの人形が、声に合わせて揺れている。どうやら、これは彼女が腹話術で喋っているようなのだが……どう見ても、人形が実際に喋っているようにしか見えなかった。
「いたずらって言うのはもっと楽しいもんだぜ、おばさん! こんな風にな!」
 そう、人形の声が叫ぶと同時に、その身から伸びる半透明の巨大な手。クロエの放った御業が巨大な魔女を鷲掴みにする様は、まるで幽霊が敵に襲い掛かっているかの如く。
「お祭り……邪魔、しないで……」
 魔女の動きを封じながら、クロエは他の仲間たちに目配せした。
 一般人を逃がすなら今だ。そんな彼女の考えを察してか、戦場に紛れ込んだのは一匹の白兎。
「大変ですわ、大変ですわ☆ 一般の皆様お早くこちらへ……」
 金色の懐中時計を片手に、兎の恰好をしたミルフィ・ホワイトラヴィット(ナイトオブホワイトラビット・e01584)が戦場を駆ける。サキュバス特有のフェロモンで一般人を引き付けて、そのまま安全な場所へと逃がすために。そんな中、兎を追う様にして現れたのは、赤い頭巾の少女と白い狼の耳を付けた青年で。
「がおーん!!」
「きゃぁぁぁっ! 助けて、お婆様~!!」
 屋根の上で吠えるアルレイナス・ビリーフニガル(ジャスティス力使い・e03764)の姿に怯える素振りを見せつつも、日生・遥彼(日より生まれ出で遥か彼方まで・e03843)は巨大な魔女へと一直線。手にしたワイン瓶を魔女の口に放り投げるドサクサに紛れ、対デウスエクス用のウイルスカプセルも放り込んだ。
「さぁ、おばあ様? 赤ずきんのお見舞い受け取ってくださいな?」
「むぐぅっ! き、貴様……な、何を飲ませ……」
 これでもう、魔女は自分の体力を思うように回復させられない。一般人も避難したのを確認し、改めて一斉攻撃だ。
「おのれぇぇぇっ! こうなれば、貴様達から先に、菓子の代わりに食らってくれるわぁっ!!」
 目論見を邪魔されたことで、激高して暴れ回る巨大魔女。しかし、対するケルベロス達も負けてはいない。
「生憎だが……巨大な敵との戦いは慣れているのでな!」
 黄金のスプーンが乱れ飛ぶ中、両肩のカボチャランタンで敵を照らしつつ、ジョルディは街の地形を巧みに生かして立ち回る。降り注ぐスプーンの雨は遥彼が身を挺して受け止め、防ぎ切れなかった分のダメージは、ペシュメリアが黄金の果実を掲げてフォローする。
「トリックオアトリート! ふふ、悪戯代わりに差し上げますわ」
 お菓子でないのが残念だが、それはそれ。強敵相手に、攻撃重視の短期決戦を仕掛けるのであれば、このくらいの余裕がなければやってられない。
「よし、一斉攻撃だ! これ以上は、時間も掛けられない!」
 敵の出現より、そろそろ3分が経過する頃。ティーシャの号令と共に、四方八方から攻撃を浴びせるケルベロス達。
「行くぞ! ウルフ・サイコフォースだ!」
「トリックオアトリート☆ お菓子が欲しくば差し上げます! 必殺のお菓子ランチャーですわ!」
 アルレイナスが敵の足元を爆破する中、ティーシャの砲撃に重ねる形で、ミルフィが菓子と一緒に巨大な注射器砲を一斉発射。顔面に多数の注射針が突き刺さって倒れた巨大魔女へ、止めとばかりに悠がバラの紋章を生成しつつ、魔女の箒を召喚し。
「輝きは交わり、煌めきは混ざり合い、七色に光る虹を織り成す 夢眩の光よ、今ここに来たれ! 『Infinity Drive!!』」
 箒に跨ったまま飴玉のような光を散布しつつ、敵の胴体へ一直線。
「その漆黒を、煌めきの魔法で塗りつぶそう!」
「ぬぅっ……ぐぁぁぁぁっ!!」
 光の矢となり、突撃した悠の一撃を受け、巨大な魔女が緑色の煙に包まれて行く。やがて、その煙が晴れたところに立っていたのは……果たして、醜悪な緑色の魔女ではなく、ゴシック風の衣装に身を包んだ、金色のスプーンを持った少女だった。

●代価と因果
 ケルベロス達の活躍により、ドリームイーターはハロウィンの魔力を失った。
 だが、戦いはこれからが本番だ。それはケルベロス達だけでなく、敵もまた同じこと。
「まだよ……まだ……。私には、魔女ポンぺリッサの加護があるんだから……」
 再び魔力を得て巨大化すれば、お前達など敵ではない。そう言ってケルベロス達を睨むドリームイーター、漆黒のモノクローマではあったが、しかし何も起こらない。
「なるほど……代価を払わなければ、これ以上の力は与えてもらえないというわけね。……まあ、当然と言えば、当然かしら?」
 ポンペリッサに見捨てられた。その事実に気付いたようだが、それでもモノクローマは随分と肝が据わっていた。
 それは、彼女もまた色を代価に永遠の命を与えると囁き、言葉巧みに人間を騙して、その眼球とグラビティ・チェインを奪い尽くす悪女だからかもしれない。そんな彼女にとって、ポンペリッサのやり方は、どこか自分に通じるところもあったのだろう。
「本性を現しましたわね……。ここからはお遊び抜きで参りますわ……!」
 ここから先は、演出抜きの真剣勝負。気合を入れ直すミルフィだったが、しかしそれよりも早く動いたのは、モノクローマの方だった。
「今夜は魔の力が高ぶる日……。私の影に、蹂躙されなさい!」
 黄金のスプーンを掲げた瞬間、モノクローマの足元から湧き出る無数の影。それは瞬く間に人の形を成し、後方に控えるペシュメリアへと向かって行く。
「……あら、私の相手はしてくださらないの?」
 もっとも、そんな影人の攻撃は、射線に立ちはだかった遥彼によって受け止められた。
 目には目を、歯には歯を、そして影には影をプレゼントしてやろう。にやりと微笑み、接敵した遥彼が斬り付ければ、それに続けて他の者達も一斉にモノクローマへと狙いを定め。
「撃て! 撃ちまくれ!」
「了解ですわ。悪い魔女は、氷漬けの刑です」
 ティーシャとミルフィの構えたライフルから、白煙を上げて放たれる冷凍光線。だが、それだけでなく、小動物へと変じた悠の杖が追い打ちをかける。
「ジャスティーン、GO!」
 ハロウィンに合わせてカボチャの飾りを付けたモルモットが、モノクローマの頭に噛り付いた。必死に振り払おうとするも、その隙を逃さずクロエが畳み掛ける。
「ケッケッケ、悪いがお菓子は品切れでな!」
「いたずら……あげる……」
 人形が不気味に嘲笑するのに合わせ、クロエは猛獣の魂を宿したアンクで敵を殴りつける。もっとも、これは所詮、繋ぎの技。
「漆黒の夢喰いよ。我が嘴と爪を以て……貴様を破断する!」
「皆の楽しいハロウィンを守り抜くんだ! ウルフ・キック!」
 ジョルディの斧が、アルレイナスの脚が、横殴りにモノクローマを吹き飛ばす。道端に置かれた南瓜の装飾に激突し、少女の衣服が大きく破れた。
「……やってくれるわね、あなた達。でも……まだ、負けたわけじゃないわ」
 それでも、さすがと言うべきか、モノクローマは直ぐに立ち上がってケルベロス達を睨みつけた。
「こうなったら、あなた達の目玉と心……お菓子の代わりに、いただいて行くわね」
 それだけ言って、再びスプーンを片手にモノクローマはケルベロス達に迫る。
 ハロウィンの夜に降臨し、漆黒の少女のドリームイーター。巨大な魔女としての力を失ってもなお、彼女の闘志は未だ消えない。

●輝きに消える
 ハロウィンの魔力を失ったにも関わらず、最後までケルベロス達に抗わんと戦う漆黒のモノクローマ。だが、いかに彼女が強力なデウスエクスであったとしても、今回ばかりは分が悪い。
 巨大ポンペリッサを倒すため、ケルベロス達は捨て身に近い陣形を組んで挑んで来たのだ。対するモノクローマは、巨大化時とは異なり単体でしか敵を狙えない。数と火力の暴力を前にしては、ともすれば追い込まれてしまうのは自明の理。
「折角の楽しいハロウィンを、悲惨なものにする訳には参りませんの」
「お菓子の代わりに魔力はいただきます。ジャックは地獄へも行けませんでしたが、貴方はどうぞ迷わずに」
 ミルフィの砲撃に怯んだところへ、ペシュメリアが研ぎ澄まされた一撃を叩き込む。思わず怯んだモノクローマへ、クロエは護符を張り付けた人形を向かわせ、ティーシャもまたワイルドスペースより、テレサ・コール(黒白の双輪・e04242)の幻影を召喚し。
「……やっつけて」
「「「切り裂け!! デウスエクリプス!!」」」
 襲い掛かる人形に、黒と白の二つの車輪。殴られ、千切られ、ズタズタに斬り裂かれたモノクローマへ、遥彼はそっと近付き、そして囁いた。
「……私ほどあなたを愛しているものはいない。これほど愛することは、誰にもできない……♪」
「あっ……がぁっ……!?」
 だが、その言葉とは反対に、モノクローマの全身に残る傷口が、一斉に開いて抉られ始めた。闇に病んだ禁断の愛。そんな彼女の妄執は、肉体だけでなく心の傷さえも抉り出すのだ。
「よし、今だ! 一気に決めるぞ!」
 もう、敵に余裕が残されていないことを察し、悠が叫んだ。ジョルディとアルレイナスも、それに続く。今、この瞬間に、全身全霊を掛けて、目の前の敵を滅するために。
「とぁぁぁっ!!」
 まずは悠の蹴りを皮切りに、光り輝く拳と機械の刃を、それぞれ掲げてアルレイナスとジョルディが迫る。
「ジャスティス力が溢れて満ちるッ! 正義がこの手を求めて集うッ!」
「HADES機関フルドライブ! 戦闘プログラム『S・A・I・L』起動! 受けよ無双の必殺剣!」
 連結した二振りの斧が薙刀の如く襲い掛かり、輝く掌が敵の頭を掴む。そこに迫るは、悠の手刀。
「貫けェ!」
「ライジィング……サンダァァァボルトォォォッ!」
「爆砕ッ! ジャスティスフィンガァァー! ボンバァァーッ!!」
 その漆黒を一片も残さず輝きに染められ、昇天して行くモノクローマ。やがて、全ての光が収まった時、そこに残っている影は何もなく。
「お祭りに……悲劇は不要なり!」
「成敗ッ!」
 振り向き様に告げるジョルディや悠の背には、敵の残滓さえも見ることができない。
「終わったわね。……ふふ。ナス君も……私の愛が、欲しいの?」
「えっ!? い、いや……それは、遠慮しておくよ!!」
 ドサクサに紛れ、遥彼に頬を撫でられたアルレイナスが逃げ出していたが、まあ気にしないでおこう。

●最後の悪戯?
 ドリームイーターを無事に撃破し、再び人々が戻って来た街の中。街の被害も大したことはなかったのが、不幸中の幸いだ。
「とんだトリックだったが、なんとか被害は抑えられたか」
「折角のお祭り……楽しく再開だ!」
 安堵する悠の隣で、ジョルディは飴玉やチョコをミサイルのように発射している。
「ケケッ、あいつにはああ言ったけど実はとっておいたのさ」
「みんなで……食べる……」
 人形片手に、クロエもまた隠しておいた菓子を取り出して配っていた。そんな彼女達の姿を見て、ミルフィもまた仲間達を誘い。
「では……わたくし達も楽しいハロウィンと参りましょうか……♪」
「折角だし、メリアちゃんと一緒にナス君にトリックオアトリートメントよ♪」
 最後の方で、遥彼が何か勘違いしていたが、それはそれ。
「……トリートメント……? 遥彼さんそれは別物では!」
 サッと流すようにへ突っ込みを入れ、ペシュメリアもまた、仲間達へと菓子を配る。もっとも……遥彼とアルレイナスに渡したものだけは、ちょっと辛い味にしてあるのは内緒の話だ。

作者:雷紋寺音弥 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年10月31日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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