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北海道のとある街、駅の北側にある商店街ではささやかな催しが行われていた。碁盤の目で区切られた通りを飾るのは、黒いコウモリの飾りや小さなカボチャ、そしてお手製の衣装で仮想した人々である。
ハロウィン。世間の流行に乗っ取った町興しも兼ねたイベントである。そのため、参加者は地元の学生や子供を連れた若い夫婦が多く、スタンプラリーを開催している店も賑わいを見せていた。
そんな人々を物陰から一匹の大柄な犬が見つめていた。いや、犬ではない。全身を黒や緑のどろりとしたモザイクで覆われたそれは、ドリームイーターであった。
「グルルゥ――……」
鍵を咥えた口元から涎が滴り落ちる。かつての夢の名残か、あるいは何かの顕示欲か、その鍵だけは豪華絢爛であった。宝石に彩られた金色の鍵を振るうため、ドリームイーターは一歩前へ踏み出す。その時であった。
「ガアッ!?」
突如として流れ込んできた力によって、ドリームイーターの体はぼこぼこと歪に膨らみ始めた。異変を察した人々は振り返り悲鳴を上げる。
「ひっ――!? 何あれ!?」
「うわああん! 恐いよおおお!」
物陰から現れた異形を前に、人々は恐怖で顔を引き攣らせながら逃げ始めた。十メートルほどの大きさになったドリームイーターの姿は、長い鼻を持つ不気味な魔女へと変わっていた。
ぐふぐふと笑ったドリームイーターは、やおら進撃を始める。ドリームエナジーを奪い取るために、そして破れた夢を補完するために――。
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「ハロウィンの力を求めて、ドリームイーターの魔女、ポンペリポッサが動き出したようです」
予知を終えたカリーノはケルベロスたちを前に、事件の説明を始めた。
「おそらく、寓話六塔戦争で受けた痛手を回復する為に、ハロウィンの魔力を狙ったというところでしょう」
事件は次のようなものである。ハロウィンで賑わう街角に現れたドリームイーターが、ハロウィンの魔力を利用してポンペリポッサの姿へ変身し、巨大化するというものだ。
ポンペリポッサ化したドリームイーターの全長は十メートルで、グラビティによる攻撃でこちらを異常状態にしたり、腐った南瓜をぶつける攻撃をしてくる。無論、回復手段もあるため、その戦闘力は本物のポンペリポッサには及ばないが、かなりの強敵となる。
「ですが、ポンペリポッサの姿へ変身して戦闘をする為には、ハロウィンの魔力を消費します。敵が変身していられる時間は五分程度となるでしょう」
つまり、その時間を過ぎれば敵の変身は解け元の姿へ戻るのだ。相手が元の姿へ戻れば有利に戦う事が出来るだろう。
また、戦闘時にハロウィンらしい演出を行う事ができれば、ドリームイーターからハロウィンの魔力を奪い取る事も可能だ。
ハロウィンの魔力を奪い取る事が出来れば、五分よりも早く、ポンペリポッサ化が解除する事が可能だろう。
「敵が現れる場所は、北海道のとある地方都市です。襲撃される日は町興しのハロウィンイベントが開催されており、人通りは多いと予想されます」
変身が解除された敵は、モザイクを飛ばして敵を包み込む攻撃や、モザイクを巨大な口の形に変えて攻撃してくる。また、自身を回復する手段も持ち合わせているようだ。
「町興しのイベントを台無しにするわけにはいきません。皆さんの手で敵を倒し、人々が無事にイベントを楽しめるようにしてあげてください。それから……」
カリーノは最後に人差し指を立て、そっと付け加えた。
「もし戦闘後に時間があれば、商店街を見て回っても楽しいと思いますよ。日頃の疲れを癒し明日への活力を蓄えるのも、大切なことですから」
参加者 | |
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葛籠川・オルン(澆薄たる影月・e03127) |
テレサ・コール(黒白の双輪・e04242) |
皇・絶華(影月・e04491) |
カトレア・マエストーゾ(幻想を紡ぐ作曲家・e04767) |
リリス・セイレーン(空に焦がれて・e16609) |
ソフィア・フィアリス(傲慢なる紅き翼・e16957) |
アイクル・フォレストハリアー(ラディアントクロスオーバー・e26796) |
篠村・鈴音(焔剣・e28705) |
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道行く人々の足元をライトが照らしている。オレンジ、ピンク、紫。街路樹の根元に飾られたキャンドルライトは、商店街を幻想的に彩っていた。
大人は思い思いの衣装を身につけ、手を引かれた子供たちはキャンディ棒やお菓子を入れるカゴを握り締め、店頭に飾られた南瓜の置物や人形を見上げている。
祭りを楽しむ人々と商店街をざっと眺めた魔法少女、もとい魔法少年に扮した皇・絶華(影月・e04491)は、おもむろに口を開く。
「概ね衛星写真のとおりだな」
魔法のステッキに白薔薇のついた紫のベレー帽。腰に天光色の炎を灯すランプを下げ、衣装にはフリルをあしらっている。だが、見た目の雰囲気に反して説明を続ける声は凛としていた。
「商店街の中道路は狭いが駅前の道路は広い。人々を南へ逃しつつ、背の高い建物や電柱を足場に戦えば周囲の状況も把握できるだろう」
絶華の言葉にテレサ・コール(黒白の双輪・e04242)が、ジャイロフラフープと共に回転しながら頷く。
「左様でございますか。では、敵が出現しましたら、私はテレーゼと共に注意を引き付けましょう」
不意に商店街の一角から鋭い悲鳴が聞こえた。振り向いた視線の先では、緩慢な動作で体を起こした不気味な魔女が目をぎょろりとさせていた。敵の全容を確認した絶華は思わず零した。
「あれだけの巨体ならば、我がチョコで得るパワーもきっと圧倒的だろう……!」
裾の長いイブニングドレスを思わせるタイトな黒服に、目と口のついた三角のお化け帽子を被った魔女――ソフィア・フィアリス(傲慢なる紅き翼・e16957)も、揃いの帽子を被ったヒガシバと共に敵を見上げた。
「まったく、楽しいハロウィンにブスイなことしてくれるじゃない?」
「ハロウィンで盛り上がってる所に来るなんて感心しないね。とっととご退場願おうか」
青白く塗り上げた顔にツギハギの模様。不気味なフランケンシュタインを演出しているカトレア・マエストーゾ(幻想を紡ぐ作曲家・e04767)は眉を潜める。
「そうそう。楽しい夜を壊す悪い魔女はおしおきよ」
タン、と地面を蹴ったリリス・セイレーン(空に焦がれて・e16609)は、建物の屋上へ上がった。ワンピース風の衣装に可愛らしい小物を合わせたスイートな魔女は、敵の注意を引くように両手を広げる。
「ハッピーハロウィン! さぁ、楽しい楽しいハロウィンの始まりよ?」
彼女の動きに合わせて金色南瓜のお化けランプが腰元で揺れる。ウイングキャットも足元で鳴き声を上げた。リリスに続けて、テレーゼを伴ったテレサも屋上へ上がる。
さらに、猫耳帽子に猫尻尾とカボチャ型のイヤリング、ローブを合わせた猫の魔女――アイクル・フォレストハリアー(ラディアントクロスオーバー・e26796)が、敵の正面へ回り込む。
「とりっくおあとりーと!!」
アイクルが叫ぶと、傍らでインプレッサターボがエンジンを噴いた。
「奴は僕たちが引き受けます! あなた方は他の人々を広い場所まで誘導してあげてください!」
混乱する人々の中で、葛籠川・オルン(澆薄たる影月・e03127)がボランティアへ声を掛ける。ストライプのバルーンパンツをブーツで絞り、ベストを着込んで白衣のようなコートを纏った彼は、腕利きの町医者を演出していた。
オルンと共にカトレアも周囲へ声を届ける。ケルベロス達の声を聞いた人々は、多少なりとも落ち着きを取り戻し、駅前へ抜ける道路を走り始めた。
人々が自主的に避難し始めたのを確認したカトレアは、敵へ宣言する。
「ハッピーハロウィン! さぁ、ハロウィン特別公演といこうか」
戦闘用に強化された狼男の気ぐるみを着た篠村・鈴音(焔剣・e28705)も、敵を前に息巻いた。
「この日の為に温存しておいた、お菓子の力を見せてやりましょう。奴らの好きにはさせませんよ!」
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高所へ移動したケルベロス達は、人影が少ない場所を背に陣を構え、敵の注意を引きつけた。その甲斐あってか、敵はケルベロス達を狙い撃ちする。
対してケルベロス達は、退避する人々へ気を配りながらも、高い足場を生かした飛び蹴りや、黒い液体の礫で敵の武器に損傷を与えていった。腐った南瓜で汚された傷は回復に長けた仲間がすぐさま癒す。
再び敵の周囲にグラビティが浮き上がる。黒く淀んだグラビティは鋭い軌道を描き、ケルベロス達へ向かってきた。
「うっ!」
重い衝撃に鈴音は声を詰まらせる。後衛にいた他の仲間も攻撃を受けたようだ。
皮膚の感覚が鈍くなり痛みさえ遠のく。まるで肉が崩れ落ちていくような――。
惑わされてはいけない。気合を入れるため遠吠えを上げた鈴音は、刀を手に低い姿勢で屋上を走り込み、飛び降りざま敵の横を掠め傷口を正確に広げた。
敵はよろめきつつも周囲へ目を走らせる。その視界に横切る影。ティーシャの残霊を召喚したテレサだ。
残霊はジャイロフラフープを搭載し迎撃モードを取る。これにより追尾機能を得た攻撃は、神喰の双円刀として敵を切り刻む。
「切り裂け!! デウスエクリプス!!」
双円刀は敵の直前で鋭角に軌道を変え、死角へ回りこんだ。軌道を追いきれない敵は無防備な背を晒す。テレーゼもスピンしながら敵へ突っ込んだ。
「トリックオアトリート! お菓子をくれなければ悪戯するぞ! ……いや、お前達がトリックオアトリートをするならば、私が素晴らしいお菓子を提供しようではないか!」
敵の鼻先へ回りこんだ絶華は両手を広げた。絶華の背後にチョコレート色の何かが姿を現す。うごうごと積み重なったそれは、目玉をぎょろつかせニマリと目元を撓めた。
「残念だが王子様はちゃんと食べなかった! だが、貴様にはたっぷりとその分食わせてやろう! 体から溢れる圧倒的なパワーを感じ、そして歓喜の叫びをあげるがいい!」
絶華が『チョコ』だと豪語して止まないそれが、敵の口へ押し入った。ハロウィンは悪魔や悪霊を祓うための祭である。故に絶華のグラビティも、悪魔や悪霊が裸足で逃げ出すレベルのトラウマを植えつけた。
「あらあら、苦しそう。ヒガシバ、口直しのキャンディを用意して?」
口から黒い煙を上げ発狂している敵を見たソフィアは、ヒガシバへ伝える。返事代わりの電子音が鳴り、ソフィアは僅かに微笑んだのち、敵へ向き直った。
「さあ、貴方の罪を数えなさい。楽しいイベントを邪魔した罪は重いわよ」
翼を光らせたソフィアの隣に愛奈の残霊が並び立つ。二人から溢れた光は幾つもの軌跡を描き敵へ直撃した。続けて、ヒガシバが黄金の代わりにキャンディ型のエクトプラズムをばら撒いた。
「ハロウィンの魔女は人々を苦しめるための存在じゃなく、楽しませる存在じゃなきゃだめなのよ? こんな風に、ね」
粉塵を掻き分け接敵したリリスは、醜悪な顔を横目に軽やかに舞う。足元から芽吹いた可憐な蕾は花開き咲き乱れ、甘く気高い幻想の香りで敵の動きを鈍らせた。リリスの肩から飛び上がったウイングキャットも、リングを飛ばして攻撃する。
「みんにゃ頑張って!」
アイクルは猫の仕草を真似ながら、生きる事の罪を肯定するメッセージを歌い上げる。仲間を覆っていた不快な感覚を取り除いたアイクルは、インプレッサターボへゴーサインを出した。
「クソ魔女をぶちにょめして!」
激しく回転したインプレッサターボが敵の機動力を削ぐ。すぐさまオルンが続き、敵の足元へ更なる痛手を与えるため青い影を揺らめかせた。
「trick or treat――いいえ、お菓子は結構です。代わりに『彼』の相手をしてやってください」
ゆらり、とオルンから立ち上った影は、慟哭し慰撫を求め敵へ襲い掛かる。纏わり付く影は敵の足元を取り囲み怨讐の跡を残していく。
敵がもたついている間にカトレアは楽譜を準備する。自作のハロウィンをモチーフとした曲『金の鍵とカボチャ』は、単一のリズムから始まり次第に音を増やしていく。それはまさしく音のパレードだ。賑やかに響く音は仲間たちの傷を癒す。
「これでいくらかハロウィンの魔力とやらを奪い取れればいいんだけどねぇ」
カトレアが呟いたその瞬間、敵に異変が訪れた。
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戦闘開始から二分後。その場で膝を折った敵は、天を仰ぎ何事かを叫んだ。やがて仮初の姿は霧散し本当の姿が現れる。
緑の猟犬。崩れた皮膚はモザイクで覆われ、鍵だけは立派な物を持っている。変身が解けたことで取り乱しているのか、敵は何度も頭を振っていた。敵の様子を見たオルンは鈴音に声を掛ける。
「鈴音さん、今のうちにテープを。人が戻ってこないとも限りませんから」
「! 分かりました。パパッと行ってきます!」
狼男になりきっている鈴音は、テープを口に咥えて四つ足で走っていった。
グルルルッ――!
僅かに取り乱していた敵だが、そこはデウスエクスである。体勢を立て直した敵は、モザイクを口の形に変えリリスを攻撃した。
「テレーゼ!」
テレサの声と共にテレーゼがモザイクを弾き飛ばす。テレサの隣まで下がったリリスは敵を見て眼を細めた。
「変身が解けたばかりだっていうのに、元気だよねぇ」
「では今一度、足回りから削りましょう」
リリスの言葉を聞いたテレサは、転がりながら反動をつけ飛び出した。流星の煌きが敵を直撃し、直後、炎を纏ったテレーゼが突撃した。間髪入れずに絶華が地を蹴り、飛び蹴りで敵を吹っ飛ばす。
「それにしても『破れた夢』ねえ。夢破れることなんて長いこと生きていればあるけれど、他人の夢を奪ってまで取り戻そうっていうのはオウジョウギワが悪いのよ」
見た目とは裏腹に、長い人生を歩んでいるからソフィアだからこその言葉だ。
布を被せた祭壇からお化け紙兵たちが飛び出す。破れた敵の夢とは対照的に、決して破れることのない紙兵たちは、仲間に戦い続けるための力をもたらした。
●
魔力を失った敵は徐々に追い詰められる。テープを貼りに行っていた鈴音も戻り、戦闘は終わりを迎えようとしていた。
「それっ!」
電柱を足場に跳んだリリスは、敵の頭上から武器を振り下ろした。重い衝撃が武器を通して伝わる。ウイングキャットが爪を出し敵へ飛び掛った。
ゴアアッ――!
頭を振った敵はウイングキャットを振り払い飛び退いた。が、そこにはアイクルが待ち構えている。
「●ぁあああああっく!!」
戦闘の中盤からすでに立腹していたアイクルは、オーラを纏いひたすら、ただひたすら正義の拳をぶち込んだ。インプレッサターボはガトリング掃射でアイクルを援護する。
「他人の夢を奪うその鍵だけはやたらと豪奢なんですね。だが似つかわしくはない」
オルンは礫状にした黒い液体で敵の体と鍵を弾き飛ばした。地面へぶつかり跳ね上がった鍵を敵は追いかける。
「食べられやしないが、雰囲気は出るだろう?」
カトレアは回復を優先させた。鈴音へ向かって飛んだオーラは、ゼリービーンズのように輝いていた。
「さぁ、最後は頼むよ」
「任せてください!」
敵のモザイク攻撃を避けた鈴音は、グラビティを集約させる。現れたのはまさしく長いエクレアだった。
オオーン! と叫んだ鈴音は、艶々としたエクレアを全力で投擲した。口から貫かれた敵の体に稲光が走り、敵は内側から破壊された。そして敵の終わりを確かめたのち、鈴音は勝利の遠吠えを上げた。
●
戦闘を終えたケルベロス達は、すぐさま景観の修復へ取り掛かった。
街灯がジャックオーランタンになったり、店の壁に蔦がひしめいたりもしたが、商店街は概ね元通りになった。そして。
「さぁ、今度こそお祭りを楽しみましょ?」
というリリスの提案で商店街へ繰り出した。率先して前を行くのはカトレアと鈴音である。
「へぇ、カボチャのモンブランなんてのもあるんだねぇ」
「あっ、私それ食べたいです」
スタンプラリー制覇を目指す彼女たちは、受付で渡された手書き風マップを見ながら店を選んでいる。二人の後方では、リリスと絶華が仮装した子供たちに囲まれていた。
「トリックオアトリート!」
「うふふ、可愛らしいお化けさんたちにはコレをあげる」
リリスは篭から猫の足跡を模ったお菓子を取り出し、子供たちへ手渡した。足元にいるウイングキャットも、菓子の匂いを嗅ぐような仕草を見せている。
「待て待て、そんなに急かさなくても皆に配るから」
絶華が配ったのはチョコ金貨とキャンディの詰め合わせだ。市販だが子供たちは嬉しそうにしている。
「ありがとう、おねえ……?」
「お兄ちゃんだ」
「ありがとうお兄ちゃん!」
と、一人の子供が後ろを振り返った。
「ねぇ、あれ何……キャーッ!」
テレサを見た子供たちが悲鳴を上げ逃げていく。他の通行人にも二度見されるが、輪入道テレサはまったく表情を変えることなく、ゴロン、ゴロンと転がった。
「テレサのそれ、どうにゃってるの?」
横を歩くアイクルが目を凝らしながら尋ねる。テレサの顔の周囲は一応、黒い何かで覆われているのだが。
「企業秘密でございます」
テレサはやはりアンニュイなまま答えた。
ややあって、前を歩いていた鈴音が足を止める。
「んー、私ちょっとお腹が空いたので駅前に行ってきます!」
「あっ、あたしもおにゃか空いたー!」
すぐさま挙手したアイクルに鈴音は頷く。
「では、一緒に駅前へ行きましょう。えーと……あっ、オルンさん! スタンプカード預かってもらっていいですか?」
「あたしにょもお願い」
「あぁ、はい、大丈夫ですよ」
二人分のスタンプカードを受け取ったオルンは、駅前へ走っていく二人を細めた目で見送った。その肩を叩くものがある。
「お兄さん、スタンプ集める気満々だね!」
「えっ? いや、これは預かり物で」
「ほらほら、遠慮しないでうちの店で何か買っていきな!」
「違うんです、待ってください、ちょっと!」
押しに押され、強引に店へ招かれたオルンを見ていた仲間は小さく苦笑した。
駅前広場、休憩所の一角に子供たちが集まっている。背後に隠れたヒガシバからお菓子を取り出したソフィアが、子供たちの前で手を広げていた。
「わぁ、手品みたい!」
「ありがとう!」
お菓子を受け取った子供たちは親元へ戻り。振り返って手を振った。ソフィアも手を振り返す。と、そこへ鈴音とアイクルがやってきた。
キッチンカーでクレープとカラフルなクリームドーナツを買った二人は、ソフィアの所へやってくる。ソフィアは二人へ尋ねた。
「二人とも、スタンプラリーはもう完成したの?」
「まだだけど、おにゃかが空いたから甘いもの買いにきたにょ」
「ソフィアさんはスタンプ集めないんですか?」
訊かれたソフィアは雑踏へ目を向ける。
「今日はね、料理や街の喧騒をツマミにのんびりしたい気分なの」
そう言って紙コップへ口付けた彼女は、温かな葡萄色の液体をゆっくりと喉の奥へ流し込んだ。
作者:ユキ双葉 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2018年10月31日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 2
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