ポンペリポッサの魔女作戦~慈悲深きスイカズラ

作者:狐路ユッカ


 ハロウィンに賑わう街に、修道服を纏う女が現れた。ハロウィンにその姿は珍しくもない、と言ってしまうこともできるが、彼女は決定的にヒトとは違った。――その胸に、モザイクを抱えていたのだ。光を宿さない青い瞳をゆっくりと伏せ、祈るように手を組む。
「……」
 ざわり、ざわりとあたりの空気がざわめく。すると、彼女の姿が見る間にむくむくと巨大化していったのだ。
「な、なにあれ!?」
「えっ……イベント……とかじゃない、よね、やだ、ちょ」
 修道女――スイカズラの巨大化は止まらない。
「いやあぁあああっ! バケモノ!」
 ハロウィンイベントに参加していた人々は、圧迫するように膨れ上がっていくスイカズラの様子に怯え戸惑い、蜘蛛の子を散らしたように逃げてゆく。あっという間に全長10mの巨体となったスイカズラは、――ポンペリポッサと瓜二つに変わり果てていた。


「ハロウィンの力を求めてドリームイーターの魔女ポンペリポッサが動き出したようだよ」
 神妙な面持ちで、秦・祈里(豊饒祈るヘリオライダー・en0082)が告げた。
「寓話六塔戦争で受けた痛手を回復する為に、ハロウィンの魔力を狙った……ってとこかな。僕が予知したのは、ハロウィンで賑わう小樽運河の街角に現れたドリームイーターが、ハロウィンの魔力を利用して『ポンペリポッサの姿に変身して巨大化』するというもの」
 ポンペリポッサ化したドリームイーターの全長は10mで、その戦闘力は本物のポンペリポッサには及ばないが、かなりの強敵となることは間違いない。祈里はそう言った後で、でもね、と付け足した。
「ポンペリポッサの姿に変身して戦闘をする為には、ハロウィンの魔力を消費してしまうんだ。だから、変身していられる時間は5分程度」
 それが過ぎてしまえば、変身が溶けて元のドリームイーターに戻るので、その後ならば有利に戦う事が出来るだろう。それに、と祈里は何処からかカボチャのお面を取り出す。
「戦闘時にハロウィンらしい演出を行う事ができれば、ドリームイーターからハロウィンの魔力を奪い取る事も可能だよ」
 仮装をしたり、お菓子を用意したり、とにかくハロウィンっぽいことをするんだ。と祈里はお面を額にあてる。
「ハロウィンの魔力を奪い取る事が出来れば、5分よりも早く、ポンペリポッサ化が解除する事ができる。そうすれば、元の修道女の姿をしたドリームイーター……スイカズラに戻る」
 変身が解けたスイカズラは、モザイクをぶつけてきたり、鍵で斬りつけてきたり、歌を歌って惑わせてくるようだ。祈里は、変身が解けた後も用心するようにと続けた。
「巨大化したドリームイーター、強敵になるよ。早いとこみんなのハロウィンを楽しむ力で、魔力を奪ってやっつけてやろう! ……油断はしないでね」
 無事を祈っているよ。そういうと、祈里はケルベロス達をヘリオンへと案内するのであった。


参加者
リュートニア・ファーレン(紅氷の一閃・e02550)
ラプチャー・デナイザ(真実の愛を求道する者・e04713)
ハインツ・エクハルト(光を背負う者・e12606)
シエラシセロ・リズ(勿忘草・e17414)
フェイト・テトラ(黒き魔術の使い手・e17946)
軋峰・双吉(黒液双翼・e21069)
巽・清士朗(町長・e22683)
矢島・塗絵(ネ申絵師・e44161)

■リプレイ


 小樽運河を見下ろすビルの上。
「敵の前でやるのはちょっと怖いけど……それで守れるならめいっぱい楽しもうね、クゥ」
 リュートニア・ファーレン(紅氷の一閃・e02550)は、不安を紛らわせるように青い目をしたボクスドラゴンを優しく抱きしめた。その背には、ボクスドラゴンと揃いの蝙蝠の付け羽が揺れている。不安げな彼を鼓舞するように、ハインツ・エクハルト(光を背負う者・e12606)は笑って見せた。
「ハロウィンにガチホラーで来るのはやめてほしいものだな。スプラッタより楽しいハロウィンにしようぜ!」
 傍らのオルトロス、チビ助も頭にカボチャを乗せてはしゃいでいる。
「――いた!」
 ポンペリポッサ化したスイカズラの姿を見つけ、全身に真っ赤な塗料を塗って虎柄のビキニを身に着けた矢島・塗絵(ネ申絵師・e44161)が声を上げる。おにのぱんつに金棒がとても節分、じゃなかった。ハロウィン。
「現世と霊界の門が開くこの祭りの日に、火事場泥棒を図るというか、無粋なる魔女めが!」
 はるか上空から、皆が待機するビルの屋上へとひらりと舞い降りたのは巽・清士朗(町長・e22683)。何の騒ぎかとスイカズラは顔を上げた。逃げ惑いながら市民たちも顔を上げる。ばさぁ、と清士朗のマントが翻る。
「よかろう。人の子らに代わり、この竜の子、ワラキア公ヴラドが手ずから、痴れ者をば魔除けの篝火へと投げ入れてくれよう!! 人の子らよ、我が戦いの邪魔だ、疾く立ち去るがよい!」
「ふはは、私はコウモリ伯爵だ! ハロウィンと聞いてやってきたぞ! お菓子をくれそうもない魔女……魔女? には、我が制裁(イタズラ)が下るのだ!」
 ハインツは高い所からキャンディをばらまきながら避難を呼びかける。
「我が恩寵(お菓子)を受け取るといい! 疾く家に帰るのだぞ!」
 仮装したケルベロス達が助けてくれるらしい。状況を把握した市民たちは、素直に従って全速力でこの場を去った。
 ビュッ、と風を切る音とともに巨大化したスイカズラの足もとにカードが突き刺さる。
「その欲望(お菓子)を頂戴する」
 その予告状めいたカードを投げつけたのは、ラプチャー・デナイザ(真実の愛を求道する者・e04713)。仮面の奥に隠された瞳、不敵に弧を描く口元、悪魔を象徴するサキュバスの翼と、尾。怪しげに光る月を背に、彼は怪盗を思わせるマントをはためかせてひらりとビルから飛び降りた。続くように、ケルベロス達がお菓子の雨と共に舞い降りる。
「は、ハインツさんッ……」
 フェイト・テトラ(黒き魔術の使い手・e17946)はキャンディを口元に構えたままハインツを見上げる。シルクハットに燕尾服、ステッキを携えた貴公子は、飛ぶことができない。
「ん、任せろ!」
 ハインツは、ひょいっとフェイトを抱きかかえ、二人でスイカズラの元へ降下した。
「ふ、ふえぇぇぇえ」
 オーブが、可愛らしいハロウィンの蝙蝠やおばけをホログラムで映し出す。エアライドのおかげで、優美に舞う彼らと映し出されるお化けたちは楽しげに。
「trick or treat!」
 漆黒のマントに薄紅の翼を隠し、魔女のワンピースにちりばめたお菓子とカボチャの装飾を揺らしてシエラシセロ・リズ(勿忘草・e17414)はスイカズラの注意を引き付けるべく叫んだ。
「でも暴れまわるならお菓子あげないよ?」
「ゲハゲハゲハゲハ!」
 彼女を守るように、軋峰・双吉(黒液双翼・e21069)も共に降下。その形はわりといつもと同じ服装なのだが、サングラスとマントと鎌がくっついただけでいかにもヤバそうな悪魔に仕上がっている。
「はっはっは、そこの魔女ババア、我と力比べでもしようではないか!」
 おもちゃの金棒をぐわんぐわんと振り回し、塗絵が叫ぶ。ポンペリポッサの姿を取ったスイカズラは、ゆっくりとケルベロス達を振り返った。


 ぶわり。香ばしいお菓子の香りが辺りを覆い尽くす。
「っ……!」
 前衛に立つケルベロス達は、その香りに軽い眩暈をおぼえて立ちすくんだ。
「う、皆大丈夫か?」
 ハインツは急ぎ、自分と同じ最前に立つ仲間たちへとオウガ粒子を纏わせる。
「ああ、大事ない……」
 ばさり、とマントを翻し、ラプチャーは優美に微笑んだ。
「あれ、いつもと口調が……」
「仮装中でござるからね!」
 ああ、なるほど、とハインツが笑う。ラプチャーはスイカズラへと向き直り、詠唱を始めた。
「此処は此方の世界……故に全ては思い通りに……!」
 その世界はハロウィン。ジャック・オ・ランタンがゆらぁりとスイカズラへ近づき、その巨体をばっくりと飲み込む。
「が、あああっ、あ!」
 呻くスイカズラ。その隙に、クゥは自らに属性をインストール。
「いくよ」
 リュートニアはmarteauを掲げると、轟音と共に竜砲弾を撃ちだした。10mもの巨体のど真ん中に、それが命中する。
「そこが泣き所よな!」
 スイカズラの次の動きを許さぬとばかりに、清士朗は黒いマントを翻らせ迫る。空の力を帯びた一撃で、その傷を切り裂いた。
「楽しい日を壊すなんて……許さない!」
 シエラシセロは高く舞い上がり、その足を敵の頭に勢いよく叩き付ける。文字通り星が散る一撃と、共にポケットから零れて舞い散らばるキャンディの嵐。
(「僕が倒れる訳にはいきませんから……!」)
 フェイトは祈りを捧げる。美しい女神を象った光が、彼に降り注いだ。
「ライデルさん!」
 ヴン、とライデルのエンジン音が響く。そのまま、全速力でスイカズラへと突進した。ばんっ、と火花とモザイクが散乱する。
「……」
 ゆら、と催眠にかかった双吉がリュートニアへと鎌を振り上げた。
「ッ……双吉、さん!?」
 リュートニアの肌を、鎌が掠める。
「クゥ、お願い……!」
 主の命に答え、クゥは双吉へと属性をインストールする。ゆらり、と気だるげに双吉は鎌を地へ降ろした。
「これでもう相手から気付かれないはずよ」
 塗絵は、自分の身体に器用に光学迷彩塗装を施していく。ゆらゆらと揺れながらポンペリポッサの姿をしたそれはソーセージを投げつける。迎え撃つように、ラプチャーはそこへ跳びこんで回し蹴りを叩きこんだ。双吉を庇うようにして、ライデルは掻き消える。
「そんなものが私に効くと思ったか!」
 ソーセージ乱舞を受けて、ハインツはバサッとマントを翻した。――痛い。ハロウィンを完全に演じ切るための台詞を発したが、ポンペリポッサの力を受けているドリームイーターの技は、貫かれた傷は、痛む。スイカズラの足取りが重たそうなのを見て、リュートニアはアイスエイジインパクトを放った。
「グ、ギャアァァ!」
 聞くに堪えぬ悲鳴が響く。
「軋峰さん、今、助けますっ……」
 目の焦点が合わない双吉に、フェイトはサキュバスミストを纏わせる。
「う、んん……」
「大丈夫ですか?」
 ハッとした顔で双吉は頷く。
「悪ィ。さァて……今までの分、お返ししてやるかァア!」
 ざわ、とブラックスライムが蠢く。それは巨体の敵を飲み込まんと、スイカズラへと迫った。
「オラァ! 菓子寄こせコラァ!」
 捕食形態のブラックスライムが、スイカズラに噛みつく。ケルベロス達の猛攻を受けたスイカズラに、もう避ける術は無い。
「悪魔の敵はシスターと相場が決まってんだぜ。魔女の仮装なんざ、ひん剥いてやっぜ!」
 悪魔面で叫ぶ双吉に再度ソーセージ乱舞が飛んでくれば、ラプチャーを庇うように前に滑り出る。
「やっぱりハロウィンは……楽しまなきゃ!」
 フロストレーザーを撃ちこむシエラシセロは、バラァッとお菓子も一緒に撒いた。深手を負っているハインツと双吉へと、清士朗は薔薇の花びらを咲かせた。
「我が加護を与えよう」
 黄金の果実の光が、彼らを癒す。
「助かったぜ!」
 振り向いて軽く手を挙げる二人に、清士朗は竜の鱗で覆われた目元を少し和らげた。
「おらああぁ!」
 塗絵は、金棒をヴンッと豪快に振る。すると、同時に飛び出て行ったエクトプラズムが、ポンペリポッサの頭部に命中。ぐらり。その体から甘い香りを漂わせようとする老婆に、リュートニアはFusilをまっすぐ向けた。
「させない!」
 魔導石化弾が、銃口から飛び出す。ポンペリポッサは、がくんとその膝を着き、動きを止めた。


「あ、ああ、あ……」
 ハロウィンの魔力をケルベロス達に奪われ、ポンペリポッサの姿はみるみるうちに縮んでいく。ノイズのようなモザイクから姿を現したのは、修道女だった。
「ああ、ポンペリポッサよ……どうか、私に力を……」
 スイカズラは請うように天を仰ぐ。しかし、その姿が再度変わることはなく、虚しく慈悲を請う声が響くだけだった。直後、唇から紡がれるのは、『失われた愛の歌』。愛を知らぬ者に愛を教えるため愛を失い、そして紡ぐ歌。
「ぐっ……」
 前衛を守るケルベロス達が顔を歪める。柔らかな歌声に反し、暴力的なまでに魂を削る歌に、ラプチャーは思い至った。
(「……そうか」)
 ――自分は、このひとを、しっている。気がする。
 愛を教えようとする女。愛を知らぬ、男。
「……っ」
 頭を押さえ、ラプチャーは耐え切れずに蹲る。痛い、割れるようだ。
「っは、ぁ、ラプチャー!」
 ハインツが声を上げる。蔦状のオーラを這わせながら、ニッと笑って見せた。
「これで大丈夫だ、あと一歩頑張ってこうぜ! トイ、トイ、トイ!!」
 激励の、魔法。
「ありがたい……!」
 ラプチャーは軽く頭を振ると、立ち上がる。追撃を狙うスイカズラに、シエラシセロが迫った。
「いくよ」
「キャアアァッ!」
 光の鳥を足に纏い、音速の蹴りを放つ。歌が止んだ。
「さぁ、一緒にハロウィンを楽しもう?」
 そう告げると、スイカズラはゆらりと顔を上げる。
「ふ、うふふ……」
(「愛、か……」)
 ラプチャーは、次は古今東西の妖怪の姿を魔力空間に映し出す。スイカズラに群がるように寄っていく魑魅魍魎たちが、スイカズラの傷を抉りに行く。
「やっ……やめっ……」
 ぐっ、と力を込めてスイカズラは叫ぶ。その瞬間、胸から無数のモザイクが飛び散った。
「っぶね!」
 中衛に立つ仲間へと飛散するモザイクを庇うように受け、双吉は歯を喰いしばる。クゥはその衝撃に耐えきれず、消えてしまった。
「呪われし竜の血、その力を受けよ!」
 清士朗の金色の爪が鋭く光った。目にもとまらぬ速さで、スイカズラの胸部に向かって突きを繰り出す。びり、と鈍い音を立て、修道服が裂けた。ぞわり、とあふれ出るモザイクに、スイカズラはうっそりと笑む。
「ちょいちょい、慈悲深いって聞いてたけどこの威力! メッチャ容赦なくないか!? 手加減ないの? 手加減攻撃で来いよッ!」
 双吉は己の身体を蝕むモザイクの痛みに、悲鳴にも似た抗議の声を上げた。
「形質投影。シアター、顕現(スタンド)ッ!!」
 ブラックスライムが、オラトリオから生み出されながら悪魔の形を取る。裂けた口から覗く凶暴な牙が、スイカズラへと食らいついた。
「ひっ、ああああっ!」
 堪らず悲鳴を上げるスイカズラ。その隙にと、フェイトは双吉にウィッチオペレーションを施した。
「邪魔者にはさっさと退場してもらうわよ」
 塗絵が轟竜砲を放つ。スイカズラはゆるりと身体を反転させると、舞うようにそれを避けて見せた。
「いいえ、いいえ……まだ!」
 スイカズラは息を吸い込む。そして奏でるのは、また――。
「この、歌……!」


 愛を歌う内容に、のせられない『心』欠落した愛もそのままに、スイカズラは歌う。ハロウィンの夜に、虚空に、響かせる。
「チビ……助っ」
 ハインツはオルトロスへと呼びかけた。チビ助は刀をくわえて突進していく。
「っ、ぅ、それ、でも私は……」
 スイカズラは歌うのを止めない。仲間を守るために立ちはだかっていたハインツがガクリと頽れた。
「おいっ、しっかりしろ!」
 双吉が駆け寄り、分身の術をかける。
「俺は大丈夫、それより……!」
 ゆら、とスイカズラはラプチャーの元に歩み寄る。
「動かないでください」
 リュートニアはラプチャーに迫るスイカズラの足を止めようと、囮の弾丸をその足元へ撃ち込む。
「ねえ……」
 歌を歌い終えたスイカズラは虚ろな瞳でラプチャーを見つめた。
「ラプチャーさん!」
「もう、歌は終わりか」
 ラプチャーの声にスイカズラは目を見開く。
「あ、アアっ、あ! ワカラナイ、わからない、教え……ッ、愛を、アイ、愛……は!」
 頭を抱え、慟哭。暴走したモザイクが胸からぶわりと滝のように溢れ出し、彼女を包む。その手には、巨大な鍵。いつか自分がされたような気がして、ラプチャーはスッと両腕を広げた。誘うように、受け入れるように。
「……ッ!」
 仲間たちが固唾を飲み見守る。それでも、これは彼の過去。向き合う、こと。
「あ、ああああ!」
 しっかりと握りこんだ鍵を、スイカズラはラプチャーの胸に飛びこみながら捩じ込んだ。
「ッ……」
 ごぼり、と口から零れる血液。
「おにいちゃん!!」
 フェイトの悲痛な悲鳴が上がる。
「愛があった筈の人から愛がなくなり、お互いに空っぽの化け物、と」
 ラプチャーは唇の端を赤に染め、小さく笑った。
「……残酷だな」
 その右手は、しっかりとスイカズラの腹部に入っていた。鍵を捩じ込まれただけではない。抱きこむように、その拳をスイカズラへ命中させてたのだ。
「く、……かはっ……」
 スイカズラの姿がモザイクに包まれ、やがて消えていく。重力の禊を打ちこまれたドリームイーターは、とどまることは叶わない。
「今、助けますから……ッ」
 フェイトはその場に頽れたラプチャーに駆け寄ると、ウィッチオペレーションを施す。
「ん……かたじけない」

「大丈夫、かな?」
 シエラシセロは心配そうにラプチャーの顔を覗き込む。
「はい。気を失っているだけかと……」
 安堵したようにため息をつくと、フェイトは微笑む。
「っと……じゃあ、俺が背負っていくぜ。……ん?」
 ハインツが街道の方を見ると、市民が戻ってきていた。パーティーの再開だ。
「よし、お菓子配りに行ってくるか!」
 怖がらせる気がほとんどないハインツ。ラプチャーを背負ったまま、お菓子の籠をフェイトに持たせて駆けだす。
「うおう、菓子を! 寄越せえぇ~!!」
 双吉も鎌をぶいぶい振り回しながら会場へ駆け出した。
「じゃあ、私も参加しようかしらね!」
 塗絵は、金棒を肩に担いでのしのしと歩きだした。
「よかった。無事にお祭ができるね」
 リュートニアは、クゥを呼ぶ。
「僕達も、行こうか」
 清士朗は、オレンジに揺らめくランタンの光と人々の楽しそうな笑い声に満足げに踵を返す。
「ハッピーハロウィン! いい夢を!」
 ふわり、美味しいお菓子を撒く魔女となってシエラシセロは空中を散歩した。お祭はこれから。脅威が去った会場の夜が更けていく。愉快なお化けの行列は、楽しげな歌声と共に。

作者:狐路ユッカ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年10月31日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 4/キャラが大事にされていた 0
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