ポンペリポッサの魔女作戦~悪夢夜会

作者:紫村雪乃


 宝石をちりばめたようにネオンの煌く大阪府堺市の夜。
 ハロウィンということで街は賑わいに溢れていた。様々な格好をした若者が散見される。
 それ故であろうか。その異様な姿の者に注意をはらう者は誰もいなかった。
 それは若者に見えた。青い肌の持ち主で、背には竜のものらしい翼がある。顔には傲然たる笑みをうかべていた。
 彼の名はソルガーノ。ドリームイーターであった。
「くくく。浮かれ騒ぐ愚かな人間どもめ。すぐに地獄に叩き落としてくれる」
 ソルガーノの嗤いがさらに深くなった。
 次の瞬間である。異変が起こった。ソルガーノの身体が一気に巨大化したのである。
 その時に至り、ようやく街ゆく人々は異常事に気づいた。十メートルほどの大きさとなったソルガーノを呆然と見上げる。
 この時、ソルガーノは大きさだけでなく、姿も変わっていた。
 赤い硬玉のような目。耳まで口は裂けており、獣のような尖った歯がぞろりと覗いている。肌は象皮を思わせる皺に覆われ、硬そうだ。魔女を思わせる不気味で巨大な鼻がぶらりと垂れ下がっていた。
「くくく」
 口の端をつりあげると、魔女ポンペリポッサの姿に変じたソルガーノは巨大なウインナーソーセージを人々めがけて振り下ろした。
 ズズン。
 ものすごい衝撃に地が揺れた。叩き潰された人々の血と肉が飛び散る。
「きゃあ」
 ようやく事態を悟った人々が悲鳴をあげ、逃げ始めた。


「ハロウィンの力を求めてドリームイーターの魔女ポンペリポッサが動き出したみたいなんです」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)はいった。
 おそらく寓話六塔戦争で受けた痛手を回復する為にハロウィンの魔力を狙ったのであろう。発生する事件は、ハロウィンで賑わう街角に現れたドリームイーターがハロウィンの魔力を利用して『ポンペリポッサの姿に変身して巨大化』するというものであった。
「ポンペリポッサ化したドリームイーターの全長は十メートルほど。その戦闘力は本物のポンペリポッサには及びませんが、かなりの強敵となるでしょう」
「戦闘手段は?」
 半裸といっていい魅惑的な肢体を惜しげもなくさらした女が問うた。和泉・香蓮(サキュバスの鹵獲術士・en0013)である。
「香しいお菓子の香りを放散し、嗅いだ者の精神を狂わせます。さらに巨大なウインナーソーセージを乱舞させ、敵を打ちます」
「かなりの強敵のようね」
「はい。けれど」
 セリカはいった。ポンペリポッサの姿に変身して戦闘をする為にはハロウィンの魔力を消費してしまうため、変身していられる時間は五分程度である、と。
「それが過ぎれば変身が溶けるのね」
「はい。元のドリームイーターに戻ります」
「その後なら有利に戦う事が出来そうね」
「ええ。また戦闘時にハロウィンらしい演出を行う事ができれば、ドリームイーターからハロウィンの魔力を奪い取る事も可能です。そうすれば五分よりも早くポンペリポッサ化を解除する事も可能となめでしょう」
「なるほどね。……ところでそのドリームイーターだけれど。戦闘方法は?」
「そのドリームイーター――名はソルガーノというのですが――はガンスリンガーとワイルドウェポンのグラビティに似た力をふるいます」
「ポンペリポッサ化が解除された後も大変そうね。ともかく」
 香蓮はケルベロスたちを見回すと、慰撫するように微笑んだ。
「ポンペリポッサ化したドリームイーターは強力だけれど、みんな、負けないでね」


参加者
水無月・鬼人(重力の鬼・e00414)
ロイ・リーィング(紫狼・e00970)
ラハティエル・マッケンゼン(マドンナリリーの花婿・e01199)
霧島・カイト(凍護機人と甘味な仔竜・e01725)
ヴィヴィアン・ローゼット(色彩の聖歌・e02608)
木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・e02879)
ガルソ・リーィング(若き古城の領主・e03135)
遠野・篠葉(ヒトを呪わば穴二つ・e56796)

■リプレイ


 大阪府堺市の夜。ハロウィンということで街は賑わいに溢れていた。様々な格好をした若者が散見される。
「楽しいハロウィンに、本物のサバトは、およびじゃないってな」
 子供達に南瓜の飴を配っている男が苦く笑った。
 二十歳ほど。ジャックフロスト顔の書かれた帽子をかぶり、白いスーツをまとっている。どこか無気力そうな若者だ。が、良く見てみればその藍色の瞳には強い光がやどっている。手には雪の結晶を模した鍔をもつ白鞘の刀を握っていた。
「アイドルっていうより、ホストだな、こりゃ」
「そんなことないよ」
 ヴィヴィアン・ローゼット(色彩の聖歌・e02608)が若者――水無月・鬼人(重力の鬼・e00414)に愛情のこもった眼差しをむけた。彼女は鬼人の恋人であり、この夜――ヴィヴィアンにとっては楽しい舞台であるようだが――を一緒に過ごすことができて嬉しいのである。
「そうか?」
 鬼人はヴィヴィアンに苦笑を返した。
 そのヴィヴィアンであるが。紫色を基調とした魔女風の衣装を身につけていた。帽子からもれる赤の巻き髪が鮮やかである。
「ふっ」
 男が笑った。二十代の若者だが、歴戦の戦士を思わせる不敵な笑みだ。
「強敵相手の戦闘、厳しい戦いが予想される、な。だが……それが、心踊るというもの。状況がタフになった時こそ、タフな奴の出番である。さぁ……暴れまわってやろう!」
 白のジャンプスーツにリーゼント、背にはギターを背負っている。七十年代ロックスター風の身なりのその男――ラハティエル・マッケンゼン(マドンナリリーの花婿・e01199)は振り向いた。
 その視線の先、みるみる巨大化していく異形があった。魔女ポンペリポッサである。


「あ?」
 巨大な魔女ポンペリポッサを見上げ、アイドル風の衣装に身を包んだガルソ・リーィング(若き古城の領主・e03135)は大仰に貴族的な顔をしかめた。竜種らしく、頭には二本の角がある。
「なんだドッペルゲンガー、気色の悪い格好になんじゃねぇよ。俺様に似てんだから綺麗なまま殺してやっからよォ?」
 ニヤリと笑いかけると、ガルソはマイクを掴んだ。
「おら、テメーら菓子がねぇならさっさと俺の前から逃げねぇと悪戯するぜ?」
「そうだよ」
 ガルソと色違いのアイドル風衣装の男がうなずいた。二十歳の若者であるのだが、人間ではない。狼のウェアライダーであった。
 名はロイ・リーィング(紫狼・e00970)。ガルソに使えており、相棒でもあった。もっているのは自作の南瓜だ。
「お菓子をくれないから悪戯しちゃうよ!」
「さぁ、ハロウィンの行進よ」
 ヴィヴィアンと色違いの魔女っ娘アイドルの衣装を身につけた遠野・篠葉(ヒトを呪わば穴二つ・e56796)が叫んだ。そして南瓜ランタン型のバスケットに詰め込んだキャンディと焼き菓子を配りながら、
「さあ。お菓子をあげるから、あっちへ」
 一般人を避難させるため促した。すると――。
 じろり、と魔女ポンペリポッサが人々を見下ろした。
 その時だ。ギターの音色が流れてきた。
「赤い夕陽よ 燃え落ちて♪ 夜に紛れて 消えてゆく♪」
 キダーを弾きながら男が現れた。二十歳に満たぬ若者だ。額に弾丸による傷があり、右半身を地獄化させている。身にまとっているのは革ジャンで、背に渡り鳥の文字があった。
「消えてくのはアンタだけどな」
 ニヤリとすると、若者――木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・e02879)は背の文字を見せた。
 刹那である。魔女ポンペリポッサが巨大ウインナーソーセージを振り下ろした。
 ズズン。
 ものすごい衝撃に地が揺れた。が、その時、すでにウタは跳び退り、逃れている。
「ったく折角のハロウィンに無粋な奴だぜ。賑やかに皆が笑顔になるこの時を邪魔されて堪るかよ」
「さぁ、お立ち合い!」
 ばさり、と黒マントを翻し、闇から突如現れた吸血鬼のように霧島・カイト(凍護機人と甘味な仔竜・e01725)が現れた。そばにはフランケンシュタインっぽいメイクをしたボクスドラゴン――たいやきが浮遊している。
「今宵こそ幽玄なる世界、偽りさえも虚飾と笑う宵闇の宴!」
 バイザーの奥のカイトの目がぎらりと光った。
「トリック・オア・トリート!」
 カイトは指をぱちりと鳴らした。すると魔女ポンペリポッサの身体の一部が突如燃え上がった。まるで魔法でも行使したかのように。
 続いて帽子と白ローブでおばけ風の姿をとったアネリーとたいやきが属性をインストール。が、その時、魔女ポンペリポッサは態勢をたてなおし、巨大なウインナーソーセージをうちおろした。
 さすがにこれは避けきれない。数人のケルベロスが子猫のように吹き飛ばされた。ビルに激突、それでもとまらず突き破り、三つ目のビルの壁面にめり込み、ようやくとまった。
「なんて力だ」
 ウタが歌い始めた。生きる事の罪を肯定するメッセージを含んだ歌を。
 ビルの壁面にめりこんだ者たちに光粒が降り注いだ。分子レベルで――完全ではないものの――修復されたケルベロスたちがうっすらと目を開く。
 その時だ。軽やかな歌声が流れてきた。
「今日はハロウィーン。お化けがお菓子をもらいに行くよ。魔女の力にかかれば カボチャも愉快に踊り出す。ほらこの通り!」
 歌っているのはヴィヴィアンであった。スカートの裾を翻して踊る姿は魔女というより妖精に近い。その身からキラキラと輝く光が放散されていた。
 すると魔女ポンペリポッサに異変が起こった。七色の魔力の光に包まれたのである。
「おねんねするにはまだ早いぜ」
 眠ったように動かない魔女ポンペリポッサめがけてガルソは炎塊を撃ちだした。敵の生命力を喰らう地獄の炎を凝縮させた弾丸である。撃ち抜かれた魔女の皮膚に炎が食らいついた。
「ふふ」
 篠葉が妖しく笑った。
「ハロウィンって怪しい雰囲気だし呪いっぽいわね。つまり今日の私はハロウィンの呪いパワーもついてて絶好調って事よ。採れたてピチピチ、有象無象の怨霊、怨恨、全部まとめて食らっちゃえ!」
 篠葉が跳んだ。流星のごとき光の軌跡を空に刻みつつ、つま先を魔女にぶち込む。たまらず魔女はよろけた。


 巨大な魔影が破壊を撒き散らした。が、地獄の番犬が怯むことはない。止むことなく攻撃を繰り出す。
 どれほどの攻防の後か。菓子の匂いが流れた。後衛にいたケルベロスたちが頭を手でおさえて、がくりと膝を折った。
「胸に燃ゆる不滅の焔は天下御免のフラムドール、人呼んで黄金炎の天使ラハティエル! マッケンゼン流撃剣術、一指し舞うて仕る!」
 接近するとラハティエルは脚をはね上げた。刃の鋭さをもった蹴撃だ。叩き込まれた魔女の肉体がざっくりと裂ける。
 ぎろり、と魔女がラハティエルを睨みつけた。ウインナーソーセージを振り上げる。と――。
 季節外れ桜花が空に舞った。
「舞い散れ桜よ、敵を切り裂け!」
 ロイが叫んだ。すると舞い散る桜花が魔女を切り裂いた。たまらず魔女が懊悩する。
 次の瞬間、桜花を突き抜け人影が空に躍った。鬼人である。
 閃く刃は越後守国儔。魔女ごときには見切れぬ一閃が象皮のごとき肉体を切り裂いた。
 が――。
 ニンマリと魔女は笑った。そして今度こそ大木を思わせるウインナーソーセージをケルベロスたちに叩きつけた。
 さしものケルベロスも避けきれない。とてつもない衝撃と重さに地にめり込む。
 全身の骨が砕かれていた。内蔵はミンチと化している。
「一撃で……魔女というより化物だね」
 ヴィヴィアンの全身から輝く光粒子が放散され、傷ついた仲間に降り注いだ。さらにたいやきとアネリーが属性を注入。二人だけだが、さらに肉体の再生を施す。
「助かったぜ、ヴィヴィアン」
 コンクリートをはねとばし、鬼人が立ち上がった。空の霊力を帯びた越後守国儔で魔女の傷跡を正確に斬り広げる。
 続いたのはロイだ。喰霊刀で薙ぎつける。呪われた一閃は魔女の魂を啜った。
「おのれ」
 魔女が苦悶した。その隙をラハティエルは見逃さない。
「すまない、愛しいリリア……少し帰りが遅れそうだ。戦術的に…フッ」
 剣が描く光流は二条。ラハティエルが舞わせた二刀が魔女を襲った。
「おおお」
 魔女が苦しそうに絶叫した。瞬間、その身がどろどろと溶け崩れた。中から現れたのは竜種の姿をした若者である。
 彼の名はソルガーノ。ドリームイーターであった。
「やってくれやがったな」
 ソルガーノの手の銃が火を噴いた。目にもとまらぬ速さの銃撃である。
 瞬間、影が舞った。カイトである。弾丸は仲間をかばったカイトの額に着弾、衝撃で彼は吹き飛ばされた。
「ったく。無茶してくれるぜ」
 使い魔めいた黒猫が空を跳んだ。ウタが放ったオーラである。黒猫が舐めたカイトの身が癒されていく。
「やりやがったな」
 ガルソが踏み込んだ。一息で肉薄。地獄の炎を纏わせた拳をソルガーノの顔面にぶち込んだ。
「ぐっ」
 ソルガーノが吹き飛んだ。十数メートルの後退。地を削りつつ、ソルガーノはとまった。
「さすがにやるじゃないか、ガルソ。いいパンチだぜ」
「やるのはガルソさんだけじゃないのよね」
 篠葉が漆黒の呪い宝珠を掲げた。氷の冷たさをもつ水晶の炎がソルガーノを切り刻む。
「くはっ」
 ソルガーノの全身から鮮血がしぶいた。が、次の瞬間だ。真紅の狭霧を引き裂くように無数の弾丸がばらまかれた。


 破壊の嵐が吹き荒れた。乱れ飛ぶ超硬度鋼の弾丸がケルベロスたちの身を穿つ。
 たいやきとアネリーが血まみれになって地に落ちた。恐るべき威力である。
 ソルガーノが跳んだ。ケルベロスたちの只中に飛び込む。
 着地と同時にソルガーノの混沌化した腕が閃いた。瞬時にしてその腕は巨大な刀と化している。ざっくりとウタが断ち切られた。
「はっはは。番犬どもが。邪魔してくれたつけは命で払ってもらうぞ」
「黙れ」
 ロイが叫んだ。
 ソルガーノは確かに彼の主であり相棒でもあるガルソに似ている。が、似ているのは外見のみであった。
「おまえとガルソ様は全然違う。おまえにはガルソ様のような信条も、強さも、思いやりもないじゃないか。そんなおまえに負けるわけにはいかない」
 ロイは喰霊刀を疾らせた。煌く刃に憑依しているのは無数の霊体だ。
「ほざけ」
 ロイの呪われた一刀ががっきととまった。ソルガーノの巨刀により。
 が、その時、すでに鬼人は間合いに飛び込んでいた。背後に回り込み、刃を一閃。緩やかな弧を描いて疾る越後守国儔が正確にソルガーノの足の腱を斬り裂いた。
「まずは足をもらったぜ」
「くそが」
 身をよじらせたソルガーノの銃口が鬼人の胸をポイントした。咄嗟に鬼人が後方に跳んだ。が、間に合わない。胸を撃ち抜かれた鬼人が地に転がる。
「あなたの運勢を占っちゃおう」
 嘲弄するような声がした。篠葉だ。
「今日のあなたの運勢は…、おっと出ちゃった大凶。気がつくと、いつの間にかぼっちに…! そんな悲しい貴方のラッキーアイテムは鼻眼鏡、です!」
「ぬかせ。――ぬっ」
 本能的な恐怖にかられ、ソルガーノは横に跳んだ。が、遅い。地に降り立った彼の脇腹がごっそりと抉れている。篠葉が放った虚無球体の仕業であった。
「世界に仇なす邪悪な者共、我が黄金の炎を見よ! そして……絶望せよ」
 ラハティエルが叫んだ。すると広げた彼の二枚の翼が真紅の炎に包まれた。大きく羽ばたいた翼から放たれたのはプロミネンスを想起させる超高熱エネルギーだ。核爆発すら効かぬソルガーノの無敵の肉体が灼かれていく。
「まだだ」
 地を溶解するほどの高熱の炎を切り裂き、弾丸が噴出した。撃ち抜かれたラハティエルの翼から鮮血と光がしぶいた。
「さすがにしぶとい。ならばお前に相応しくない役を与えようか」
「何っ」
 目をむけたソルガーノは見た。先ほどまで蒼瞳であったカイトの目が真紅に輝いている。そして、その口は酷薄そうな冷笑にゆがんでいた。
 ソルガーノは無論知らぬことであったが、この時、カイトは別のカイトであった。レプリカントである彼は、かつて自分の同型機だった『カイト』を組み込み、二重人格者となっていたのである。
 次の瞬間だ。カイトが召喚した氷の歯車が二つ現出。ソルガーノを挟み込んだ。氷片を散らしつつ、ギリギリと彼の肉体を押しつぶす。
「こ、こんなもので俺がつぶせるものかぁ」
 血煙につつまれつつ、ソルガーノは歯車を吹き飛ばした。そして、疾走。片足の腱が切断されているとは思えぬ速さはケルベロスの機動力に匹敵していた。
 ソルガーノの銃が火を噴いた。無数の弾丸をばらまく。
 刹那、ウタが跳んだ。怒涛のような弾丸の嵐の前に身をさらす。
 着弾する寸前、彼はワイルドウィンド――バイオレンスギターを横薙ぎに払った。
 ごう。
 振り抜いたワイルドウィンドの軌跡が燃え上がった。断罪の業火である。
 ソルガーノが紅蓮の炎に包まれた。真紅の焔の中で苦悶する黒影はあまりに不気味で。それは咎人が地獄の底で滅び去る光景を思わせた。
「踊ってもらうぜ? お相手は地獄の焔摩だけどな」
「ガルソちゃん」
 スカートを翻し、ヴィヴィアンが跳んだ。一瞬で距離を詰めると、魔法杖状に変化させたエクスカリバールをソルガーノに叩きつける。
 繊手がふるう一閃はいかにも弱々しかった。が、岩すら砕く威力が杖には秘められている。
 ギンッ。
 ヴィヴィアンの杖が受け止められた。ソルガーノの巨剣によって。
「させるかよ、女」
 ソルガーノがニンマリした。一瞬、二人の視線がからみあった。するとソルガーノの目に不信の光が揺れた。ヴィヴィアンの口辺に笑みがうかんだからだ。
「止めを」
「おう」
 声はソルガーノの背後から響いた。はじかれたようにソルガーノが振り返る。そこにはうっそりと佇むガルソの姿があった。
 ガルソとソルガーノ。今、相対する宿命の二人。
「楽しかったぜ」
 ガルソはリボルバー銃No.831のトリガーをひいた。


「ハロウィンの締めといえば…やっぱ拉麺だよな。喰いに行こうぜ」
 ウタが仲間を誘ったのは、ソルガーノ殲滅の直後であった。
「先に街の修復だよ」
 ロイがいった。そして嬉しそうな眼差しをガルソにむけた。
「ガルソ様、俺、頑張ったでしょ!」
「ああ」
 ニヤリとすると、ガルソはロイの頭に大きな手をおいた。その光景を微笑みながら眺めていた鬼人が、
「そうだ。みんな」
 と、呼びかけた。
「折角だし、この場を盛り上げて、此処に居る人達に最高のハロウィンを過ごしてもらおうじゃないか」
「名案!」
 パチパチとヴィヴィアンが手を叩いた。その肩を鬼人がそっと掴む。
「その後は一緒にハロウィンを楽しまないか」
「あ……う、うん」
 恥ずかしそうに頬を紅く染め、こくりとヴィヴィアンはうなずいた。積極的に見える外見とは違い、実はこの娘、すごく純情だったりする。とまれ――。
 賑やかにハロウィンの夜は深まっていく。

作者:紫村雪乃 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年10月31日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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