ポンペリポッサの魔女作戦~恐ろしき魔女のアバター

作者:青葉桂都

●魔女の降臨
 日本の各地が、ハロウィンで賑わっている日。
 北海道の北見市に存在する広場でも、ハロウィンのイベントが行われていた。
 カボチャのランタンが道端に並び、テントやプレハブのたてもので、様々な店が趣向をこらしてハロウィンにちなんだ商品を用意している。
 さほど人口の多い町ではないが、それでも家族連れやカップルを中心に、多くの人々が広場を訪れていた。
 そこに、明らかに人ではない存在が現れた。
 緑色の結晶が、人を形作っている。
「感じるぜ……ハロウィンの魔力を……」
 周囲がざわめき始めるのを気にも留めず、冬の超晶者の名を持つドリームイーターは広場へと踏み込んでいく。その周囲には、牙の生えた緑色の箱が数体、跳ね回っていた。
 緑色の体が徐々に巨大化していく。
「みなぎるぜ、力が! この力で俺は本物になってやるぜ! 遠慮なく使わせてもらうぜ、ポンペリポッサ!」
 ミミックに似た周囲の箱も取り込みながら肥大化する超晶者の姿が、醜悪な魔女へと変じていく。
 もしケルベロスがいれば、それがかつてゲートを巡る戦いで現れた魔女ポンペリポッサと同じ姿だと気づいたかもしれない。
 今や人々は恐怖で逃げ惑っている。
 その中心で、全高10mにもおよぶ魔女が、高らかに笑い声を上げた。

●ポンペリポッサを迎え撃て
 集まったケルベロスたちに、石田・芹架(ドラゴニアンのヘリオライダー・en0117)はドリームイーターの大規模な動きが予知されたことを告げた。
「どうやらハロウィンの力を求めて、寓話六塔の1体である魔女ポンペリポッサが動きだしたようです」
 おそらく寓話六塔戦争で受けた痛手をハロウィンの魔力で補おうとしているのだろう。
「ポンペリポッサ本人の出現は予知されていませんが、ハロウィンでにぎわっている場所にドリームイーターが現れて、ポンペリポッサの姿に変身して周囲の人々を襲撃するようです」
 しかも変身後のドリームイーターは10mほどの大きさに巨大化するという。
 残念ながら変身を阻止することはできない。
「本物のポンペリポッサには及びませんが、戦闘能力はかなりのものになるでしょう。十分に注意して戦うようにしてください」
 芹架は静かに告げた。
 芹架が予知した変身ポンペリポッサは、北海道北見市で行われるハロウィンイベントに出現する。
 ハロウィンらしく飾り付けられ、出店が並ぶ広場だ。
 到着は敵の出現や変身と同時くらいのタイミングになる。
「ポンペリポッサの姿をしている間は、甘いお菓子の香りで催眠状態にする、びっくり箱で驚かせて麻痺させる、魔法の鏡で嫌な記憶を見せてトラウマを呼び起こすといった攻撃を行います」
 いずれも範囲攻撃でありながら、威力も十分に高いので注意したほうがいいだろう。
「ハロウィンの魔力を消費して変身しているため、敵が変身していられるのは5分ほどになります」
 さらに、ハロウィンらしい演出を行いながら戦うことで敵からハロウィンの魔力を奪い取ることができる。
 うまく行けば5分よりさらに短い時間で敵の変身を解除することも可能だ。
「ただし、ポンペリポッサ化を解除しても敵が倒れるわけではありません。元となっているドリームイーターとそのまま戦うことになります」
 敵は冬の超晶者。緑色の結晶が人型になった姿をしており、さらにミミックに似た動く箱をいくつか連れている。箱は配下ではなくグラビティによって作られた武器のような存在だ。
 戦闘では自分の結晶で強化した拳で殴り付けて防具を損傷させたり、敵を結晶化させ石化させる攻撃を行う。
 また、ミミックのような箱の噛みつかせて敵を捕縛することもできる。箱は複数存在するため、これは範囲攻撃になる。
「言うまでもないとは思いますが、変身前の敵が弱いわけではありませんので、解除したからといって油断はしないでください」
 なお、イベントの中止は、別の場所を狙ってくるだけなのでできない。避難活動は警察などが行うはずだが、逃げる一般人が巻き込まれないよう意識して戦ってもいいかもしれない。
「ドリームイーターは毎年のようにハロウィンの魔力を狙ってきます。彼らにとって重要な力なのかもしれませんね」
 とはいえ、まずは作戦を阻止するのが先決だ。
 芹架はよろしくお願いしますと頭を下げた。


参加者
メリーナ・バクラヴァ(ヒーローズアンドヒロインズ・e01634)
ルア・エレジア(まいにち通常運行・e01994)
神白・鈴(天狼姉弟の天使なお姉ちゃん・e04623)
ノーザンライト・ゴーストセイン(ヤンデレ魔女・e05320)
氷霄・かぐら(地球人の鎧装騎兵・e05716)
タクティ・ハーロット(重喰尽晶龍・e06699)
神白・煉(死神を追う天狼姉弟の弟狼・e07023)
オニキス・ヴェルミリオン(疾鬼怒濤・e50949)

■リプレイ

●北の町のハロウィン
 昼でも多少肌寒い北海道。だが、広場に向かう子供たち(と、ごく一部の大人たち)は、思い思いの衣装に身を包んでいた。
「この時期にドリームイーターが毎年恒例になりつつあるわね……」
 そう呟いた氷霄・かぐら(地球人の鎧装騎兵・e05716)は鎧装騎兵らしい姿ではなくメイド服に身を包んでいた。
 服の各所にはジャック・オー・ランタンの飾りが施され、手にはお菓子の入ったかごをたずさえている。
 ケルベロスたちも、皆仮装に身を包んでいた。
「眠い」
 目の下に隈を作って、そのうち1人が無表情に呟いた。
 普段から魔女の姿をしているノーザンライト・ゴーストセイン(ヤンデレ魔女・e05320)は、さらに一捻りしてメデューサのかつらを頭にかぶっている。
「ライちゃんメデューサ……ギミックすごい……。んー、でもわたしは可愛い方がいいかな」
 神白・鈴(天狼姉弟の天使なお姉ちゃん・e04623)が感嘆の声をあげた。彼女も魔女風の衣装だが、色は白。星屑を散らした星の魔女だ。
「うんうん、鈴はそれでいいと思うぞな」
 あくびを噛み殺しながら彼女は頷いた。
 人々の間をすり抜けて、ケルベロスたちは広場に入る。
「ウヒヒヒ……いや……ウオォォ……かな」
 ゾンビの扮装で、どんな声を出せばいいかルア・エレジア(まいにち通常運行・e01994)が移動しながらしていた時、前方から悲鳴があがった。
 離れた場所からでもはっきりと見えるポンペリポッサの巨体を目指して、ケルベロスたちが加速する。
「ケルベロスだ! 慌てずここから離れよ! 近くにはぐれた幼子がおれば、連れて避難させてやれ!」
 オニキス・ヴェルミリオン(疾鬼怒濤・e50949)が大きな声をはりあげた。
 白髪赤眼の鬼少女も、今日は魔女の扮装だ。もっとも、彼女もただの魔女ではない。
 大きなボルトが帽子を貫き、顔にはつぎはぎの怪物を思わす縫い目が走っている。
 他のケルベロスたちも演技をしながら避難を呼びかけている。
「オウガと組むのは初めてだな。腕っぷしが楽しみだぜ」
 吸血鬼の格好をした神白・煉(死神を追う天狼姉弟の弟狼・e07023)がオニキスに声をかけた。
「ほほう。なれば、怪力乱神たる吾の活躍、とくとご覧にいれるとしよう」
 不敵に笑い、オニキスはチェーンソー剣を構えた。
「期待させてもらうぜ。そんじゃ行くとするか、タクティ!」
 煉が呼びかけると、答えは少年の頭上から返ってきた。
「おう、任せときなご主人様だぜ」
 黒いポンチョを大きく広げて、ドラゴニアンの翼でタクティ・ハーロット(重喰尽晶龍・e06699)が宙を舞う。
 コウモリの付け耳をつけた彼は、吸血鬼の手下に扮しているのだ。
「Trick or Treat?」
 問いかけながら、タクティは同じく付け耳とポンチョを身につけたサーヴァントのミミックをポンペリポッサの前に投下する。
「そう、人間たちもお馬鹿さんですね♪ 魔女狩りだなんて火遊びで、私達を根絶やしにした気になるなんて――ひっひっひ~!」
 三角帽子に黒いローブを身につけたメリーナ・バクラヴァ(ヒーローズアンドヒロインズ・e01634)も、敵の前方へ飛び出した。
 手首に巻いた鎖をじゃらじゃら鳴らし、ランタンを揺らしながらメリーナはポンペリポッサの前に立ちはだかる。
「がんばって、ケルベロス!」
 仮装した子供たちのうち何人かが逃げながら声援を送ってくれる。
「Happy Halloween!」
 タクティがポンチョからお菓子をばらまく。
「お菓子はくれねーがー」
 メデューサのかつらに鉈という謎の和洋折衷を見せながら、ノーザンライトが中距離まで接近する。もはや魔女とも関係ない動きに、幾人かが思わず彼女へ視線を向けた。
「パワーを奪わせない為には、わたし達が楽しむことこそ大事じゃない?」
 付き合いの長い者たちは、微かにドヤ顔をしていたことに気づいたことだろう。
「ウォ~! 今年もやってきたぞハロウィン……」
 そのまま、ゾンビのような動きをしつつも一般人たちに避難すべき方向を指し示す。
「モンスターたちが蔓延る会場でトリック~オア~トリート~。みんな~準備はいいか~?」
 血のりで体を染め、ボロボロの服を身にまとい、ルアは広場を歩く。
 悪ふざけをしているようでも、ケルベロスは演出しながらちゃんと敵に近づいている。
「トリック・オア・トリートオオォォォ!」
 ポンペリポッサが恐ろしい咆哮とともに襲いかかってきた。
 ケルベロスたちは自分たちよりはるかに巨大な敵を迎え撃った。

●巨大魔女のいたずら
 いやらしい笑みを浮かべる巨大魔女から魅惑的な香りが漂ってきた。
 美味しいお菓子の匂いが前衛たちを惑わそうと襲ってくる。
 主をかばったミミックがふらつく。
「次はもう少し愛嬌のある者に変身すると良いぞ! 正直怖いわ!」
 オニキスの叫びを合図にケルベロスたちが反撃を始めた。
 煉は重力を操り、高々と跳躍する。
「さて、まずは星の煌めきでハロウィンを演出してやるとするか!」
 鋼のブーツが空を切り裂いてポンペリポッサへと襲いかかる。
 飛び蹴りとともに星が散った。
「なかなか派手に決まったんじゃねえか? ……吸血鬼じゃなく魔女っ娘っぽいとか言うなよな」
 敵の頭を飛び越えてハロウィンの飾りに着地し、煉は笑みを浮かべた。
「出ておいで使い魔さん。偽物の魔女なんて食べ尽くしちゃえ」
 鈴が狼型のエネルギー体を召喚し、煉を含めた前衛を支援させてくれる。
「二次会の始まり……楽しくやるぞな」
 ノーザンライトが赤く輝く銃身から氷のレーザーを放つ。
 ……放ちながら、彼女はさりげなく煉に近づいてきた。
「ところで煉ちゃん……自分からはしない?」
 予備のものらしき魔女の衣装を差し出してくる。
「……俺は魔女衣装とかしねぇぞ?」
 煉はそう告げて首を横に振った。
 1秒に満たない時間、ノーザンライトは考えた。そして、魔女はどこかへ視線を送る。
「うんうん、レンちゃん似合うと思うよ。一緒に魔女しよっ♪」
 狼を操りながら、楽しげに姉が語りかけてくる。
「ちょ、ノーザンてめぇ!? おい、姉ちゃんと2人がかりは卑怯だろ」
 焦る少年に、鈴はわざと目を伏せて見せる。
「うぅ……レンちゃんが反抗期だぁ……」
 泣き真似をしてみせる姉を呆然と見ていると、後ろから肩を叩かれる。
「煉が魔女服を着たとしても、俺は絶対に差別とか変な目で見たりしないからね。安心していいよ」
 さわやかに笑うルアが煉の横を通り抜ける。そのまま彼はヌンチャク型にした如意棒で敵を殴りつけた。
「そうだぜ。俺もいいと思うんだぜ」
 いい笑顔を見せ、鋭い蹴りを放ちつつタクティまで同意する。
 煉は、ごくわずかな時間、考えた。
「……帽子。帽子だけだ。ドレスは勘弁してくれ。リシアに女装したとか報告したくねぇ……」
「リシアちゃんとは良くやってるみたいだよね。ちょっと妬いちゃうかも。わたしも彼氏さん見つけた方がいいのかなぁ……」
 うなだれる煉を見て、鈴が呟く。最後の部分は小さな声だった。
 そんなやり取りもまた、ハロウィンの魔力を削っているのかも知れない。
 他の者たちからの攻撃も受けているポンペリポッサから、箱が飛び出してきた。
 紙吹雪が舞い、衝撃がケルベロスたちに襲いかかる。
 メリーナはびっくり箱の前に飛び出して、煉をかばう。
 物理的な衝撃をともなった驚愕を2人分受けて、魔女装束の彼女は力を削り取られた。用意していた花が周囲に飛び散る。
「あはは、私の身体は血の代わりに花弁が流れているのでーすよ♪ ……なんてのも、ぞっとする感じで楽しいでしょう?」
 容赦のない攻撃を受けても、メリーナは簡単には倒れない。
「ジャックオーランタン型のドローンを作ればハロウィンの魔力を消費できますかしら」
 メイドらしい丁寧な口調を作ったかぐらが、ドローンで仲間を守護する。
「ウォ~! お前、お菓子持ってるんだろうな~? 持ってないなら~イタズラ~しちゃうからな~」
 ゾンビの真似をしながら、ルアが敵に接近していく。
(「持っていようがいまいがイタズラはするけどね♪」)
「ゾンビのイタズラ受けてみろ~ウォ~!」
 ルアが咆哮を上げて拳を叩きつける。
「……『吹っ飛んだら偽目玉ポロリ、ゾンビ的第二形態に私は変身します』等と没案もあったのですよ? あ゛ぁぁあ゛~♪」
 奇妙な歩き方をしながらメリーナが古の魔法陣を足元に描き出していた。
 2分が経過し、魔法の鏡による攻撃を受けながらさらにケルベロスたちが攻撃する。
 魔女の帽子をかぶった煉が、やけっぱちな様子で激しい炎の連打を加える。蝙蝠の翼を広げて炎の中を突き抜けたタクティが、加速したガントレットで敵を打った。
「とりっく! おあ! とりーと! お菓子をくれねば悪戯するぞ!」
 オニキスは混沌の水を憑代にして『龍王・沙羯羅』を顕現する。
 敵へと向かっていく波に飛び乗った少女が突撃し、剣と斧がうなりをあげてポンペリポッサの体を断ち切る。
 巨大魔女の姿が消えていったのは、その時のことだった。
「なんだ、もう終わりか? 大技を叩き込んでやろうと思ってたのによ」
「それだけハロウィンの魔力をオレたちが消費できたってことじゃない?」
 少し不満げな煉をルアがなだめる。5分と聞いていたが、3分ほどでポンペリポッサの姿は消えていた。
「まだ次の敵がいるからね。技はそっちにしかければいいわ」
 かぐらが言った。
 ケルベロスたちの目の前で、巨大老婆は緑色をしたドリームイーターに変わっていた。

●緑の超晶者
「よくも邪魔してくれたもんだぜ、ケルベロス!」
 人型の結晶が言い放つ。
「なんか、どっかで見たことがある気がするんだぜ、あいつ……」
 その敵を見てタクティが呟く。
「はっ、こっちはてめえのことなんか知らないぜ。妙なことを言うんじゃねえぜ!」
 容赦なく結晶化の波動を敵はタクティに向けようとした。
 かぐらは攻撃の軌道に割り込む。
「縁があるかどうかは知らないけど、ハーロットさんの前に私の相手をしてもらうわ」
 ハンマーで防ごうとしたが果たせず、かぐらの服と体の一部が結晶に変わった。
 この敵は決して弱くない。だが、魔女との戦いでかなり士気をくじかれていても、退くことはできない。
 煉がまた飛び蹴りを放っている間に、鈴がボクスドラゴンのリュガと共にかぐらを回復してくれていた。
「ま、関係ないんだぜ。どうせお前はここで倒れるからなだぜ!」
 ガントレットからパワーを噴射し、タクティの一撃が敵をとらえる。
「うるさいぜ。つーかさっきからだぜだぜうるさいぜ! 聞いててゲシュタルト崩壊を起こしそうだぜ!」
「お前には言われたくないんだぜ。そっちだって似たようなもんなんだぜ!」
 睨みつける超晶者に応じている隙に、ミミックが敵へと噛みついた。
 他の仲間たちの攻撃も超晶者へと向かっている。
 オニキスが後衛からチェーンソーを振り上げて敵に接近した。
「種切れか? では汝のハロウィンを終わらせるとしよう」
 つぎはぎの鬼が敵をジグザグに切り刻んだ。
 緑の超晶者も強敵ではあったが、ポンペリポッサを3分で撃退できたおかげでまだケルベロスたちの体力には余裕があった。
 メリーナとかぐら、ミミックが攻撃から仲間たちを守り、鈴とリュガが3人を回復して支えている。
 ケルベロスたちの攻撃を浴びながらも、超晶者が結晶の拳を放ってくる。
「ひっひっひ、楽しいハロウィンはもうおしまいですよ♪」
 メリーナは拳を受けながらも笑顔を浮かべて見せた。
 ごつごつとした拳で魔女服が破られたものの、彼女自身を倒すにはいたらない。
 笑顔のまま精神を集中し、敵を爆破する。
 爆発から逃れて移動した先にはノーザンライトがいた。
「店長ちゃん、よろしく!」
「OKぞな」
 呼びかけに応じて上げた左掌から、彼女は輝く剣を引き抜いている。
「本物になるのに、変身に頼る時点でアウト。また来年っ」
 攻撃で動きが鈍り始めている緑の超晶者を極光剣が深々と切り裂いていた。
「結晶化するのが得意みたいだけど~、そっちも石になってもらうよ~」
 まだゾンビの演技を続けながらルアが石化の魔術を敵へと放つ。
 巨大ポンペリポッサと戦った時間の何倍かの時間が経過し、緑の超晶者を構成する結晶はすでにボロボロになっていた。
「こんなところで終わるわけにはいかないぜ!」
 ミミックの群れを差し向けてケルベロスたちを捕えてくるが、それで攻撃を防ぎきることなどできない。
「これが俺(わたし)達の絆っ!」
 煉が宿した蒼炎と鈴が宿した白光とが、いつもより少しふくらんだ……カボチャにも似た顎を作って敵を噛み砕く。
 タクティはひびの入った超晶者へと一気に接近した。
「お前をどこで見たかは、後からゆっくり思い出させてもらうんだぜ! たとえ、何者であろうとも砕き潰すのみ……!」
 炎と光の中から右のガントレットを突き出し、超晶者の顔をつかむ。
 そこを中心に、ドリームイーターが緑色をした……しかし敵とは質の違う結晶によって覆われていく。
「魔王掌! 晶滅!」
 つかんだ拳を強く握りしめる。
 手の中で結晶が砕け散っていく。
「俺は……本物に……!」
 言葉を最後まで言い終えることなく、緑の超晶者は砕け散った。

●楽しいハロウィン
 広場には静寂が戻った。
「さて、ハロウィンの再開だ! ところでお菓子ある?お腹空いて死にそう……ゾンビだけど……」
「ああ、配り損ねたのがまだ残ってるんだぜ」
 手当や会場のヒールを行いながら、ポンチョの中から取り出したお菓子をタクティはルアに渡した。
 広場には徐々に人が戻ってきている。
「メリーナ……予備の魔女服使う? 157cm用だけど。くほほほ……はぁ」
 服を破られたメリーナにノーザンライトが問いかける。
「8cmの差で――あぁん裾長ぁい!?」
 煉のために用意したらしい魔女服を受け取りつつも、2人はそろって大きく息を吐く。
「勝ったのに何溜息ついてんだノーザン」
 煉が彼女へ南瓜の玩具を放り投げると、それがケケケと笑い声をあげた。
「まだ夜は長いんだ。パーティ寄ってこうぜ」
「うん、ハロウィン3次会。呑みに行くぞな。メリーナはどうする?」
「飲み明かしますか♪ ……私、とりあえず牛乳で。身長のばす魔法下さいよぅ本業魔女~!!」
 ノーザンライトに問いかけられたメリーナが、余っている足元をながめてなげく。
「あ、わたしももちろん行くよ。ライちゃん、面白いの見つけて、レンちゃんにやりかえそっ♪」
 鈴の言葉に、魔女が深く頷いた。
「一件落着、というところじゃの」
 オニキスが言った。
「とりあえず今年は、かしらね。来年は来ないといいんだけど……」
 かぐらが呟く。
 トリック・オア・トリートと告げる子供たちの声が、広場の各所で聞こえた。

作者:青葉桂都 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年10月31日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 6
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