やきいも食べたい!~ユズカの誕生日

作者:澤見夜行

●お芋の美味しい季節です
 超絶寒がりであることが知られているユズカ・リトラース(黒翠燕脚の寒がり少女・en0265)だが、そのことを体現するように、秋に差し掛かったであろうこの日すでに炬燵の中で暖を取っていた。
「ユズカさん、さすがに炬燵は早いんじゃないのですか?」
 見るに見かねたクーリャ・リリルノア(銀曜のヘリオライダー・en0262)が苦笑気味に問いかけるが、ユズカは炬燵に包まり目を細めて言う。
「何を言うんだいクーリャちゃん。炬燵は一年中使えるすばらしい暖房器具じゃないか」
 そうやって一年中炬燵に包まっているから外に出ると寒くなるのではないかと思うクーリャだったが、それを言っても無駄なのはわかっていたので話を変える。
「ところで、ユズカさん。
 そろそろユズカさんの誕生日が迫ってきましたが、ケルベロスの皆さんは誘ってみたのですか?」
「うーん、それが何をしようか思いつかなくてねー。
 皆が楽しめること……うーんうーーん」
「そろそろ決めないと、本当に皆を誘う時間が無くなってしまうのですよ」
 お小言を言うクーリャにバブみを感じるかはさておき、蜜柑を剥きながらユズカは頭を捻る。そうして、一房蜜柑を口の中にいれると、はっと思いついたように目を見開いた。
「はっ!
 クーリャちゃん、私、今、とっても焼き芋が食べたい……それも落ち葉で焼いた焼きたての焼き芋を……!」
「えぇ……?
 それなら、それをイベントにすれば良いんじゃないのです?」
「そっか! 落ち葉で焼き芋なんて今のご時世なかなかやれないものね!
 どうせならお芋の美味しい名産地でやって、とにかく美味しい焼き芋を食べれば――!」
 唐突なひらめきに頭はフル回転。ユズカはバサッと炬燵からでると早速準備を始めた。
「ふふふ、これは誕生日が楽しみになる奴なのです」
「よーし、やるぞー」
 誕生日に向けて、ユズカの招待状作成が始まるのだった。


 数日後、ケルベロスに一通の招待状が渡される。
『第十九回 ユズカ・リトラース誕生会 ~焼き芋食べ比べしようの会~』
 ファンシーな文字で綴られた招待状は、日時と場所が記されていた。
 全国から集めた評判の芋を大きな広場で時間を掛けて焼き上げるようだ。
 少し肌寒くなった時期だが、焚き火で暖を取りながらゆったりまったりと過ごせるはずだろう。
 豪華でお洒落な雰囲気とは真逆だが、たまにはこういう過ごし方もいいように思えた。
 焼き芋にどんな味の差があるのか、そんなことを想像しつつ受け取った招待状をしまいこんだ。
 ユズカの誕生日。その日を今から楽しみにするのだった――。


■リプレイ

●食べ比べ会、開幕!
 千葉県香取市の焼き芋広場は日本一と呼び声の高い場所である。
 そんな場所を貸し切って、ちょっと早い焼き芋食べ比べしようの会が開かれた。
 主催者であり主賓はこの人。
「えーユズカ・リトラースでっす。
 今日は寒いところ集まってくださり本当にありがとうございます!」
「硬いぞー」「がんばってー」などの声援を受けながら、照れくさく笑うユズカが続ける。
「私の誕生日はさておき、今日は心ゆくまで焼き芋を食べましょう!
 ビバ、焼き芋! ビバ、焚き火! ゆったりまったり過ごしましょうね!
 あ、ちなみにお芋はこの日の為に用意してもらいました! 似た名前の有名商品とは別物です! 似てるけど、別物なのです! いいですね!? では行きましょう!!」
 もう焼き芋が食べたくて仕方ないのだろう、簡単な挨拶で済ませると、さっそく焚き火を囲み出す。
 身体の芯から温まるような熱を感じながら、焼き芋の食べ比べ会が始まった――。

●焼き芋ほくほく美味しいな
「フフフ来てしまったわ実りの秋……!」
 尻尾を横にフリフリ元気よく。美味しそうなサツマイモの山を前に嬉しさを堪えられないのは片白・芙蓉(兎晴らし・e02798)だ。
「ふふ、ようやくこの季節が来たね」
 そんな感情表現の塊である芙蓉に眼を細めて、隣立つメリルディ・ファーレン(陽だまりのふわふわ綿菓子・e00015)が微笑んだ。
「色々種類があるわね」
「いっぱいあって選びきれないね。
 ほくほくのもねっとりのも、ふたりで分けたら全種類食べられるかな?」
 ものすごい甘党であるところのメリルディは今から味比べを想像して眼を輝かせる。
 とりあえず一種類ずつ、アルミホイルに包んで焚き火の中へ。
 落ち葉を足して火を燃え上がらせれば暖かな熱気が膨らんだ。
「ふぅ、落ち着くね」
 焚き火の炎に眼を細め、パチパチとなる音に耳を澄ませば心の平静が訪れる。気が緩んでほぅと吐息をもらしたメリルディに、芙蓉が手にしたアイテムを見せた。
「……ククク。ところでこれを見て頂戴。
 そう、チューブの生クリームとバター様よ。
 どういう事か解るかしら。そう、もりもり食べられてしまう、という事よ……!」
「わあ、どっちも美味しそう!」
 ふんわり生クリームの甘さに、蕩けるバターの風味。どちらもきっと焼き芋に合う。想像するだけで……いけないけないと口を押さえる。
「はやーく焼けろー、焼けなさいー」
 白く繊細、儚げなその容姿は何処へやら。うるさく焚き火の回りではしゃぐ芙蓉は可愛いが五月蠅い。でも、そんな芙蓉が可笑しくて、愛おしくてメリルディは微笑み一緒になってはしゃぐのだった。
「そろそろ出来たかな?」
「うわ、あっついね。すごい良い匂い!」
 焚き火から取り出した焼き芋を、さっそくアルミホイルを剥がして見れば、香しい甘い香りが広がって。
 まずはそのまま、口に入れる。
「んん~ねっとり甘い!」
「こっちはホクホク!」
 続けて生クリーム、バターも順番に試して、どれも口の中が甘く広がっていく。
「はふはふ……二人でゆけば二倍食べられてハッピーね?」
 芙蓉の言葉にメリルディが頷いて。
「もぐもぐ……うん、楽しさも美味しさも、二倍で嬉しいね。
 あ、芙蓉」
「ん?」
 と、振り向く芙蓉のほほに白い生クリームがついていて。
「ふふ、ほっぺに生クリームついてる。
 取ってあげるね」
 メリルディがそっと指で掬って取ると、それを口にくわえて舐め取った。
「どう? おいしい?」
 なぜか拭ってもらった芙蓉が尋ねて、その可笑しさに苦笑して。
「うん、甘い。美味しいよ」
 と、メリルディが微笑んだ。
「んむんむ。お互い会う時は戦闘絡みばかりだったけれど、こういう時間もやっぱり必要だわねえ……なんて、のんびりするわ。けふー」
「ホントだね。ふふ、まだまだあるし、ゆっくりのんびり食べよ」
 お芋デートを楽しむ二人は、焼き上がった新しい焼き芋に手を伸ばすのだった。

 エヴァンジェリン・エトワール(白きエウリュアレ・e00968)と小早川・里桜(焔獄桜鬼・e02138)は二人揃ってクーリャ・リリルノアの下へと向かった。
「あ、エヴァンジェリンさんと里桜なのです!」
「クーリャ、見つけた。焼き芋、一緒に食べよ?」
「一緒に食べよー! 色々食べ比べ!」
 二人の誘いにクーリャは喜んで手を上げた。
 アルミホイルに包んだ焼き芋を恐る恐る焚き火の中へ。
 ちょっぴり手際の悪さを見せたエヴァンジェリンが苦笑して告白する。
「実は焼き芋って食べるのははじめて。
 フランスではさつまいもは、まだあまり一般的じゃないし」
「そっか、エヴァは焼き芋初めてなんだ? クーリャは?」
「ふふふ、大学芋は食べたことがありますが、こういう焼き芋は初めてなのです!」
 胸を張って自慢するポイントがズレてるクーリャに二人は笑って、
「あのね、すっごくおいしーからきっとビックリするよ!」
 里桜が、手際よく燃える落ち葉の中へと芋を入れていく。
「落ち葉で焼くなんて、なんだかキャンプみたい」
「ふふふ、楽しいのです。これはどんどん燃やせばいいのですか?」
「ノンノン、強火でドーンってしたくなるケド、
 おいしー焼き芋の為だから、じっくり弱火で、我慢我慢……」
 そわそわする里桜に、クスりとエヴァンジェリンが目を細めて。
「ふふ、燃やすの我慢する里桜、偉い」
「うずうず……もう焼けたのですか!?」
「クーリャは、もうちょっと我慢が必要ね」
 綻ぶ顔が焚き火を囲み。楽しく焼き上がるのを待つ。
 そうして良い感じに焼き上がるの確認したら、燻る落ち葉から取り出して、アルミホイルを剥いていく。
「わわ、もう良い匂いなのです」
「本当、とても甘くて良い香りね」
「うんうん、良い感じに焼けてるね。
 さあ、それじゃせーので食べよー」
 手にした焼き芋を二つに割って、沸き立つ湯気と鼻孔を擽る甘い香りに顔を緩ませて、三人は「せーの」で焼き芋を頬張った。
「ん、んーっ!」
 口の中でねっとりと広がる甘み。繊維を感じながらも蕩けていくその甘さを初めて感じたエヴァンジェリンが、その花緑青の瞳をぱちくり瞬かせ、感動に眼を見開いた。
「んーっ! あまーい! でも、あふ、あつ……っ!」
 はふはふと頬張る里桜の隣で感動に打ち震えるエヴァンジェリンが視線を向けて、
「里桜、クーリャ、甘いわ、とてもねっとりしてるわ。
 こんなの食べたことない、まるでスイーツね……っ」
「エヴァのもおいしい? 焼いただけって思えないくらい甘くて、おいしーよね!」
「ホクホクなのですよー! 自然の甘みが沢山出ているのです!」
 初めての焼き芋に感動する二人に里桜は満足げに笑って、ほくほくはふはふ食べ進める。
「食べていたら、二人のはどんな味なのか、気になってきちゃった。
 ねぇ、一口ちょうだい?」
「うん、いいよー! エヴァのも気になるし、一口ちょーだい!
 クーリャもコレ食べてみる? おいしーよ!」
「わーい、皆で食べあいっこなのですー!」
 パチパチと焚き火が爆ぜて、火の粉を飛ばす。
 身も心もぽかぽか、ぬくぬくな幸せな光景が広がって。
 三人はいつまでも笑いながら黄金色のスイーツを頬張っていた。

 【焼き芋食べ隊】の面々がユズカを誘って焚き火を囲む。
「みんなぁ来てくれてありがとぉ~」
 いつもお世話になってる皆に感謝をすると、一行は誕生日を祝う。
「ユズカお姉さんお誕生日おめでとうですの!
 それと素敵な招待状をありがとう♪」
 双月・蓮(いちごだいふく・e02154)が笑顔で祝えば、自然とユズカも顔を綻ばせる。
「リトラースは誕生日おめでとうだな。
 良かったらこれを」
 四辻・樒(黒の背反・e03880)は寒がりなユズカへと身体の温まる柚子生姜茶を用意した。ユズカは本当に嬉しそうに受け取って早速飲む構えだ。
「誕生日おめでとーなのだ!」
 月篠・灯音(緋ノ宵・e04557)は花束を用意していた。ユズカは大切そうに受け取ると、「えへへ、お家の花瓶が賑やかになるよー」と喜んだ。
「誕生日おめでとうございます。それに……素敵な企画もありがとうですよっ」
 鞘柄・奏過(曜変天目の光翼・e29532)がそう感謝すれば、「企画したかいがありましたっ」とユズカの鼻が高い。
「リトラースさん、お誕生日おめでとうございます!」
 素敵な招待状に誘われてやってきた滝摩・弓月(七つ彩る銘の鐘・e45006)も嬉しそうに微笑んで、来てくれたことにユズカは感謝する。
「お勧めの味のお芋はありますか?」
 お芋にあまり詳しくない弓月がユズカに尋ねると、ユズカは直前に調べた浅い知識をこれ見よがしに披露する。
 キャッチコピーと品種を叫ぶユズカに苦笑しつつ、なんとなく食べたい味は決まりそうだ。
 それぞれが、好きな芋を手にすると、てきぱきと焼く準備をしている奏過の下へと持って行く。
「順番に焼きますからね。
 お芋に合わせて色々と向いた焼き方があるみたいですけど……」
 と、さすがマメな奏過は違った。事前に調べた焼き方メモを見ながら、濡れ新聞に包んでからアルミホイルに包んだりと小技を見せていく。
「ボクもパパをまねてひとつ準備してみるのです」
 隣では蓮が奏過を真似て芋をアルミホイルに包んでいく。少し不格好ながら上手に密封出来たようだ。
 焚き火に芋を放り込んでいくのを灯音と蓮がジーっと眺めていると、奏過が隠し持ったアイテムを取り出して、
「ま、マシュマロなのだー?!」
「はい、焼き上がるまで、これは如何?」
 早速灯音が三人分(弓月と蓮の分)もらって配り歩く。
 焚き火に炙られて蕩けるマシュマロに、用意したチョコレートとクッキーで挟めば、スモアの出来上がりだ。
 瞳に星を浮かべた蓮が美味しそうに頬張って、頬を蕩けさせる。
 そうしてマシュマロを楽しんでいれば、いよいよ本番焼き芋が焼き上がる。
 焚き火から取り出して、アルミホイルを剥けば、香ばしくも甘い香りが広がっていく。
「焼き方や芋の種類には他の皆が既に言及しているようだし、
 私はトッピングを提案する」
 そう言って、樒がどこからともなく様々なトッピング材料を取り出す。
 キムチ、柚子ジャム、チーズ、ゴマ、バター。一癖も二癖もありそうなトッピングだが、
「んーっ! 美味しい!」
 とりあえず柚子と名の付くものには飛び込んでいくユズカが歓声をあげる。柚子の香りと焼き芋の甘みが非常にマッチしています。
「チーズ、ゴマ、バター辺りは大体イメージ通りだがキムチが合うとは思わなかったな」
 辛いものと甘い物であべこべになりそうだが、中々にキムチは合うようだ。女性陣にも好評です。
「ボクはねっとり甘い蜜たっぷりな焼き芋がいいな♪
 焼いただけで何もつけずにこの美味しさ、不思議です。素敵です!」
 焼き上がった芋をぱっくり二つに割って、はふはふと蓮が小さな口で頬張る。そう焼き芋はトッピングが無くても美味しいのです。
「弓月ちゃんが食べてるの、実まで紫色です!」
「パープル甘々ロードっていうらしいですよ。ちょっと食べて見ますか?」
 交換し合ったり、トッピングを乗せ合ったり、焼き芋一つで様々な楽しみ方がある。
 そんな幸せそうな光景を眺めながら、奏過は微笑むと、次なる芋を焚き火に投じた。
「灯のためだけに作ってみた、良かったら食べてくれ」
 樒が、灯音の側でじっくり想いを籠めて焼いた焼き芋を渡す。
「樒、熱いのだ、コレ。ふーふーしてなのだ」
「ん、確かに舌を火傷したりしたら困るからな」
 息を吹きかけ、熱を冷ます。そうして粗熱を取ったらもう一度灯音へ。
 受け取った焼き芋を灯音は美味しそうに――幸せそうにもぐもぐと食べる。思い出したかのように柚子ジャムやバターに付けて。
「ふふーふ♪」
 幸せな吐息が漏れた。
「えへへ、暖かいねー」
 焚き火の側ではしゃがみ込んで焚き火に当たるユズカと弓月の姿。
 弓月は少し離れて焚き火の絵を描いている。覗き込んだユズカが感心する。
「おー上手いねー弓月さん」
「……焚き火の火は見ていてホッとします」
「うんうん、わかるよー。ホッとしていつまでも当たっていたくなっちゃうんだー」
 ユズカのはただの寒がりだが、その気持ちはこの場にいる面々はよくわかっていた。
 周囲をキョロキョロ見回して、一際綺麗で形のよい落ち葉を弓月が拾い上げる。
「ふふ、秋の思い出ひろいましたー! ……なんちゃって」
「あー! 私もやるー」
「ボクもやるのです!」
「わたしもやるのだー」
 想いもがけず落ち葉拾いが始まって、そんな賑やかさに目を細めた奏過が声を掛ける。
「さあ、次の焼き芋が焼き上がりましたよ」
 一時の安らぎの中、小さな秋を見つけた。

 ヴィ・セルリアンブルー(青嵐の甲冑騎士・e02187)は恋人の香坂・雪斗(スノードロップ・e04791)と共に焚き火を囲む。
「焼けるまでまだ時間がかかるから暖まってようか」
「せやね。一緒にあったまれるようブランケット膝にかけとこ」
 二人並んで、ブランケットを掛ければじんわりと暖かさが伝わってくる。
 二人で相談しながら選んだお芋はは、べに東と安納ポテト。ホクホクとねっとり甘々の対極の二つだ。
 じっくりと弱火で火を通しながら、焼き上がるのを待つ。
 その間ヴィが最近解決したワッフルに纏わる事件の話をして、どことなくワッフルが食べたくなってしまったりして、お互い顔を見合わせて笑った。
「そろそろ良いかな?」
「楽しみやねぇ」
 焼き上がりを感じて、焚き火から焼き芋を取り出す。
 熱々の芋を手の上で跳ねさせながら、アルミホイルを剥いていく。
 真ん中から二つに割れば金色に輝く果実が現れる。
 べに東と安納ポテト。互いに性質の違う芋をそれぞれ食べる。
「んー! ホクホクだ。美味しい!」
「こっちはねっとり蜜が溢れてきそうや。甘々で美味しいなぁ」
 少し味わえば、次は相手のものが食べたくなる。
「ヴィくんのもくれる? わけっこやね!」
「食べてみる? 熱いから気をつけて」
 互いに交換して、熱々の焼き芋を頬張る。
「わ、本当に甘い。とろーりスイーツだね」
「……うん、美味しい! 優しい甘さ」
 綻ぶ顔が美味しさを表現していて、もう一度顔を見合わせて微笑んだ。
 焚き火の炎と煙のにおい。
 何処か懐かしさを感じさせる風景の中にあって、ヴィは暖かに微笑む雪斗を見た。
「寒空の下で、焚き火にあたりながら焼き芋を食べる……なんて、この季節ならではの贅沢やね!」
 その言葉にヴィは頷いて、暖かい焼き芋を手の中で包むようにして暖を取る。
「……大好きな人と一緒なら、より美味しく、あったかく感じるよ」
 雪斗の想い、それはヴィも同じ想いだ。
 いつも一緒にいてくれる恋人に感謝の言葉を贈る。
「雪斗、いつも一緒にいてくれてありがとう。
 これからも、色んな景色を一緒に見てくれると嬉しいよ」
「せやね。
 これからも、一緒に。移り変わっていく季節を二人で楽しみたいなぁ」
 焼き芋に負けない程甘々な二人は、焚き火の炎に負けない程に心が燃え上がっていた。
 寒空の下にあって、互いの暖かさの広がるこの場所は、二人に取って特別な思い出になるに違いなかった。
 そんな二人に妬くように、焚き火がパチりと音を立てて爆ぜた。

「やったー! 焼き芋だ焼き芋♪
 ユズカさんお誘いありがとうだよ!」
「わーミリムさん来てくれてありがとう!
 ミリムさんも焼き芋は好きなのかな?」
 ユズカの返しに、ミリムは「ふふふ」と笑って胸を張る。
「焼き芋には自信ある焼き芋中級者さん参上だ。
 焼き芋なら私に任せて!」
「わーい! 任せる任せる!」
 というわけで早速二人はお芋を焼き始める。
「ホクホクのと、シットリなの、ネットリ甘々なものもを用意したよ」
「うんうん、良いチョイスは流石だね!」
「アルミに包んでジックリ遠赤外線で一時間焼くんだ」
 焚き火の回りにおいて、体育座りするミリム。真似するユズカ。
 ボーッと時間が過ぎていく。
「えへへ、焚き火を見ているだけでも時間が過ぎていくね」
「うんうん、そう言ってる間に一時間だ。
 さ、ユズカさん一緒に食べよー!」
 取り出した焼き芋が熱々で掌の上を踊る。
「ホクホクとシットリは冷めないうち分けて皆で……アッチッチッチ!」
「うふふ、やっぱり美味しいねぇ」
「ふふふ、美味しかろう美味しかろう。
 そしてネットリ甘~い芋は本命でキープだ暫し待たれよ……」
 取り出した安納ポテトは焚き火から離して冷ますミリム。
 少し時間を置いて冷やしたらいよいよアルミを剥いていく。
「甘いさつま芋御開帳ー!
 ふっふっふ! 冷やすと更に美味しい焼き芋というのが世にはあるのだ!
 さあ食うがいいー!」
「うっわー! スイーツ! スイーツだよぉ!」
 ユズカの派手なリアクションにミリムは満足げに頷いた。
 そうして二人は仲良く焚き火にあたりながら、焼き芋を堪能するのでした。美味。

 燻った炎が、煙の登らせていく。
 お腹をさする満腹感と満足感が広がり、少し肌寒い風から守るように、身体を芯から温める。
 嗚呼、企画して良かったと、ユズカは満足した。
 今日集まってくれた皆に、感謝の言葉を添えて。
 立ち上る煙と秋空をいつまでも眺めていた――。

作者:澤見夜行 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年10月27日
難度:易しい
参加:12人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 2
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