星影は血の海に

■リプレイ

●夜空の星を
　神奈川県川崎市の、川崎駅前。
　薄曇りの天気の下、夜空には星空が瞬いている。
　そして、駅前の広場には、家路を急ぐ者に、これから一杯、またはカラオケに……と、様々な年代と人々が出歩いていた。
　そんな日常を破壊する影が、空から降り注ぐ……との話を、ダンテより聞いたケルベロス達。
「また、死なぬモノたちが動いたか」
　短くドゥマ・ゲヘナ（獄卒・e33669）が言葉を紡ぐと、朧・遊鬼（火車・e36891）も。
「うむ。通常のサルベージ以外で出現した敵との事……何が起こるかは判らぬが、一般人を殺戮しようというのは確か。絶対に手出しはさせぬぞ」
『ナノッ！』
　傍らで、ふわふわ浮かぶナノナノのルーナが、遊鬼の肩に乗ってキメポーズ。
　……そんな可愛い仕草にくすりと笑顔を浮かべた雨宮・利香（黒刀と黒雷の黒淫魔・e35140）。
　しかし、何処か悩んだ表情を浮かべるは神苑・紫姫（白き剣の吸血姫伝説・e36718）が。
「……こいつら、なんとなく見覚えがあるような、ないような……」
　呟く紫姫に、利香がぽんっ、と肩を叩き。
「ん、紫姫ちゃん、どうしたの？」
「いえ……何でもありませんわ。誰であろうと、平穏に暮らす人々の蛮行を許す訳にはいきませんの。吸血姫・神苑紫姫、皆様を護る為に参ります！」
　強い決意をその拳に込めると、利香はうんうんと頷いてから。
「そうだね。どんな理由で現れたにせよ、一般人に危害を加えさせるわけには行かないよ！　ここでやっつけないとね！　それに紫姫ちゃん、私を頼りにしていいんだよ？　いひひ♪」
　いたずらっ子的な笑みに対し、紫姫もくすりと笑い。
「そうですね。攻めに関してはお言葉に甘えましょうか。護りの方は私にお任せあれ。そして風太郎さん……貴方にも、手出しはさせませんわ！」
　愛する恋人の岩櫃・風太郎（閃光螺旋の紅き鞘たる猿忍・e29164）の姿に、更に気合いの入る紫姫。
　そんな紫姫へ風太郎は。
「そうでござるね。申し訳ござらぬが、皆様、何とぞよろしくお頼み申す。その代わりニンジャらしく、初撃はガツンと確実にキメさせていただく所存！」
　と印を切り、隠密気流を纏う。
　……それに浜野・真砂（本の虫・e41105）が。
「宜しくお願いします。ちなみに確認ですが、ジャマー最優先、で間違い無いでしょうか？　服破りはジャマーのデスサイズシュートだと思いますし」
　と小首を傾げると、風太郎は頷きつつ。
「そうでござるね。まぁ、それに似た能力って事になると思うでござるが」
「分かりました。防御を削がれると、それは厄介ですし、気をつけて行きます」
　と、作戦を再確認した所で、源・那岐（疾風の舞姫・e01215）と如月・沙耶（誓いの導き手・e67384）が。
「何が目的であろうと、一般人を犠牲にする所業は許す訳にはいきません」
「ええ……私欲で罪無き命を多数奪う行為、断じて許せません。この送り込まれた『パイシーズ・コープス』のように……私も他人を死地に送り込んできた罪を背負っています。その再現を見ている様で、目を覆いたくなりますが……」
「……ん。助けられる命は助ける、だよね、沙耶？」
「……ええ」
「それじゃ、頑張ろうね！」
　沙耶の肩を叩き、励ます那岐。
　そして、そんな仲間達の言葉を纏めるように、ドゥマが。
「生と死のサイクルに属さず、それでいて死を振りまくモノたち。サイクルを乱すモノたちに、終わりを告げよう」
　と言葉を紡ぎ、そしてケルベロス達は……空を見上げながら、パイシーズ・コープス達の襲来に備えるのであった。

●降り注ぐ血の影
　そして、夜空を見上げながら、駅前に張るケルベロス。
　雲の合間から、瞬く星空が綺麗に映る……そして、いつもと変わらない日常が広がる。
　……そして、そんな日常を破壊する、パイシーズ・コープス達が、空より降り注ぐ。
『キャーー！！』
　と、悲鳴を上げて、其の場から逃げ惑う一般人。
「みなさん、こっちです！　ここからすぐに逃げて下さい」
「私達はケルベロスだよ！　私達に任せてみんなは逃げて！　あ、そこの警察さん、避難誘導、宜しくね！」
　翼飛行で空から沙耶が呼びかけ、隠密気流で姿を隠していた利香が大きく手を振って、誘導先のアピールと、警察官への引き継ぎ。
　更に那岐、真砂、遊鬼とルーナらも、手分けをして、周りの一般人達の逃げる方向を指示し、離れるように指示を与える。
　……と、そんなケルベロス達の動きに対し、地上へと降りたパイシーズ・コープスたちは。
『……ジャマスルナ！！』
　怒号と共に、禍々しい覇気を周囲へと放つ。
　その覇気に不敵な笑みを浮かべた風太郎。
「ドーモ、エイプ・ニンジャでござる」
　合掌し、一礼……それをジロジロと睨んでくる彼ら。
　彼らが一般人に注目しない様、更に風太郎が。
「ハロウィンの余興にしては趣味が悪い造形でござるな！　我々ケルベロスが駆けつけた以上、貴様等の凶行は許さぬ！　灰は灰へ、竜牙兵は塵芥へ！　さぁ、二度目の辞世の句を詠むがいい！　イヤーッ！！」
　気合い充分、如意棒をくるくると回し、構える。
　そして更にドゥマは、ライドキャリバーのラハブに騎乗した状態で。
「なぁ、お前はゲヘナを信じるかい？」
　と、問いかける様にしながら、アスファルトをタイヤで擦り、白煙を昇らせる。
　そんなケルベロス達の行動を、パイシーズ達は敵対行動と認識した様で。
『ウルセエ、コロス！！』
　と威勢を上げて、取りあえず中衛のβが服破りの一撃を仕掛けてくると、ほぼ同時に連携し、γも同様、服破りの一撃。
　二匹の攻撃、身を呈し受けるドゥマと、紫姫。
『ヌゥ……』
　と睨み付けてくるも、そんな彼らへ。
「夜に跋扈し、星空を覆い、死を齋す。あなた方の在り様は、特に気に障りますの」
　と紫姫は吐き捨てながら。
「我が名は紫姫、吸血姫シキ。夜を照らす紫の追憶、そして人を護る白き件……我らの歩みを、続けましょう」
　と、『紫砂子の吸血姫』を、風太郎に付与、それを受けて。
「刮目せよ！　煌めけ、我が閃光螺旋！　ニルヴァーナッ！　アミダ・スパイラルッ！！」
　叫びと共に『三千世界を貫く七色の無量光大螺旋』を、βに向けて撃ち抜く。
　初っ端の一撃から、かなり大ダメージを食らうβ。
　しかし、死しはせず。
『ウウ……ガアア！！』
　獣の如く咆哮を上げると、αの三体がケルベロス達へ接近。
　至近距離より、ゾディアックソードの様な武具を大きく振り上げ、力一杯に振り落す。
　アスファルトの地面はいとも容易く裂け、土埃がその場に巻き上がる。
　とは言え目眩ましになる程でもなく、続くドゥマとラハブ。
　ラハブはキャリバースピン、そしてドゥマはフローレスフラワーズの葬送花を、ラハブのタイヤから撒き散らし、βを攻撃。
　そして、周りの人達の避難誘導をさっと片付けた、他の仲間達も合流。
「それじゃ、先ずはβを倒さないとね……この剣で、勝利を掴む！」
　威風堂々と、利香の『雷迅月翔斬』がβを薙ぐと、同時に真砂も。
「来たれ、極夜よりの魔弾」
　『Freikugel』を撃ち抜く。
　そして、沙耶が那岐と風太郎にエレキブーストで壊アップを付与し、同時にルーナはナノナノばりあで盾アップを付与、更に遊鬼も、メタリックバースト。
　中後衛陣の強化を受けた那岐が。
「時間をかけれません……仕留めます！」
　と、月光斬の一閃を、脳天から叩きつけ……βの一匹は、早々に崩れ墜ちてしまう。
　……一刻で仕留められた仲間、流石に脅威を覚えそうなものだが……パイシーズ・コープス達は。
『コロス、コロス！』
　殺意をくりかえし口にし、攻撃を継続。
　そして二刻目、となれども行動に変わりは無く、γは服破りの攻撃、αは強烈な一撃を次々と繰り出してくる。
　流石にαの攻撃を真っ正面から護りも無く受ければ、重傷になる可能性は充分あるだろう。
　しかし、その攻撃はドゥマ、ラハブ、紫姫のディフェンダー陣で受け流し、食らった被害は遊鬼のメタリックバーストに、沙耶が。
「貴方の運命をお護りします！！」
　と『運命の導き『女帝』』、そしてルーナのナノナノばりあがしっかりと回復をし、体力を戻す。
　又、紫姫のサーヴァントも。
「今ですの、お願い姉様！」
　と、紫姫と連携。
　ポルターガイストに続き、紫姫が月光斬をαに放つ。
　そして利香も。
「舞踊れ！」
　と桜花剣舞、そしてラハブのデットヒートドライブと、ドゥマが。
「……生きたなら死ね」
　宣告と共に、『死の沈黙』。
　そして風太郎が紅蓮大車輪、那岐が気咬弾を、同じ一体に確実に仕掛け、ダメージを蓄積。
　流石にαは一刻で死ぬ程柔では無い模様。
　とは言え、傍目から見れば、半分以上のダメージを食らって瀕死に近い。
　そして次の刻……パイシーズ・コープスの動きに変わりは無く、強力な攻撃を仕掛けた後の隙へケルベロス達の一気阿世に攻撃。
　三刻目、クラッシャーの攻撃で以て、α一体が討ち倒され……残るは３体。
　ただ、狙いはαから変える事無く。
「次は、左側のαに仕掛けましょう」
　と真砂がターゲットを指示。
　そして全員で以て、怒濤の如くの集中砲火を繰返し……戦闘開始から８分経過。
『グォォ……！』
　立ち下がりしα３体が全員崩れ去り、残るはγ一体。
「さあ……後一匹だ。俺が鬼だ。精々綺麗に凍りついてくれ」
　と『【言霊遊戯】氷鬼』の一閃を穿ち、そして利香が連携し。
「溺れなさい……暗闇の中で！」
　トラウマボールを投げつけ、トラウマに苦しむパイシーズ・コープス。
　そして……ドゥマが。
「最後だ」
　と、ドラゴニックスマッシュの一撃を叩きつけ……その一撃に、γは声を出すことも出来ずに、崩れ墜ちた。

●風の薫り
　そして……どうにか無事にパイシーズ・コープスを倒したケルベロス。
「……終わった、かな？」
　周りを見渡し、深呼吸する利香。
　それに頷き、紫姫も。
「そうですわね。利香さん、そして風太郎さん、ご無事でしょうか？」
「ん、大丈夫でござるよ！」
　満面の笑みで頷く風太郎に、安堵の息を吐く紫姫。
「さて、取りあえずは片付けを開始するとしよう」
　と、ドゥマの提案に従い、ケルベロス達は手分けして、駅前の戦闘痕を一つ一つ、ヒールグラビティで修復。
　更に避難させていた警察官、警備員の方々に労いの言葉を掛けつつ、戦いが終わった事を告げて安心させる。
　……一通りの修復が終わると、前とはちょっと違う雰囲気にはなってしまうが……それは仕方ないとして。
　そしてまた、市民の方達も、いつもの日常を取り戻して行き……その光景を目にしながら。
「さて、と……ご苦労様。帰って美味しいデザートでも食べる？」
　と那岐が沙耶に笑い掛けると、沙耶も。
「そうだね。帰って一休みだね」
　と頷き、真砂も。
「戦いに疲れた身体に甘いお菓子……良いですね」
　とくすっと微笑み……女性陣中心に、スイーツを食べに、街へと繰り出していくのであった。

作者：幾夜緋琉	重傷：なし 死亡：なし 暴走：なし
種類： 公開：2018年10月25日 難度：普通 参加：8人 結果：成功！
得票：格好よかった 0／感動した 0／素敵だった 1／キャラが大事にされていた 0
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