ポンペリポッサの魔女作戦~悪夢襲来、幸せ喰らう獏

作者:そうすけ


 賑わいを見せる町はハロウィンの仮装一色。子供たちは思い思いの仮装やフェイスペイントをしながら家々を巡り、「トリック・オア・トリート」と声をかけ、お菓子をもらっていた。
 奇声を上げ、はしゃぐ幼い声が、ビルの角を曲がった裏路地の影まで届く。
 夢喰むターフィルはふありとあくびを漏らすと、滅多に開かない目を開けた。丸めた体を伸ばし、鼻を上げ、すんすんとハロウィンの町の匂いをかぐ。
 ふらり、と影から抜け出して、町へ出た。
 口を開けて町中に広がるハロウィンの光と音と匂い――魔力を貪り喰う。
 愛らしい目は血のように赤く丸い目に、愛らしい鼻は長く伸びてごつごつになり、愛らしい口には鋭い牙が生えだした。体は薄気味の悪い緑色になり、どんどん大きくなっていく。周りの家を押しつぶしながら。
 歓喜の声に変わって悲鳴が町中に響く。
 全長10m、偽のポンペリポッサが町の人々を襲い始めた。


「ハロウィンの力を求めてドリームイーターの魔女ポンペリポッサが動き出したみたいなんだ」
 先で黄色と紫が渦巻く棒つきキャンディを片手に、ヘリオライダーのゼノ・モルス(サキュバスのヘリオライダー・en0206)が言った。
「……といっても、暴れているのは偽物なんだけど」
 ハロウィンで賑わう街角に現れるドリームイーターが、ハロウィンの魔力を利用。『ポンペリポッサの姿に変身して巨大化』するのだ。
 寓話六塔戦争で受けた痛手を回復する為に、ハロウィンの魔力を狙って事件を起こす……という所だろう。
「ポンペリポッサ化したドリームイーターの全長は10mだよ。その戦闘力は本物のポンペリポッサには及ばないけど、かなりの強いから油断しないで」
 そういうとゼノはぺろぺろキャンディをひと舐めした。
「ポンペリポッサの姿で戦闘をするとハロウィンの魔力を消費してしまうみたいだよ。だからかな、変身していられる時間は5分の間だけ。5分過ぎれば、変身が解けて元のドリームイーターに戻るから、その後はわりと有利に戦う事が出来るんじゃないかな」
 ちなみに、戦闘時にハロウィンらしい演出を行えば、ドリームイーターからハロウィンの魔力を奪い取る事ができる。ポンペリポッサ化の解除を早められるのだ。
「強要はしないけどね。でもやるとやらないとじゃ、敵を倒す難度が変わってくるよ。肝心の敵の能力だけど……」
 偽ポンペリポッサ時の攻撃方法は、『香しいお菓子の香り(理力 遠・列・催眠)』、『ウインナーソーセージ乱舞(頑健 近・列・追撃)』、 『『好奇心』を刺激する(理力 遠・列・BS耐性)』の3種類だ。
 本物とまったく同じ攻撃だが、威力は落ちる。
「変身が解けると、こんな攻撃になるよ。あ、ちなみに変身していたのは『夢喰むターフィル』という名のドリームイータ」
 悪夢以外のもの……ドリームイーターらしく、人の夢や希望、愛を含むグラビティ・チェインを食べて生きているデウスエクスの獏だ。
 その攻撃方法は、『夢喰らい(理力 遠・単・破壊+ 【催眠】)』、『欲望喰らい(敏捷 近・単・魔法 + 【武器封じ】)』、『悪夢のステップ(頑健 近・列・ 破壊+ 【パラライズ】)』 の3種類。
「頑張って悪い獏を倒し、町と町の人々を守って。そして、みんなで楽しくハロウィンのお祭りを楽しもう」


参加者
イェロ・カナン(赫・e00116)
シルク・アディエスト(巡る命・e00636)
烏麦・遊行(花喰らう暁竜・e00709)
新条・あかり(点灯夫・e04291)
江戸川・シャーロット(ぽんこつホームズ・e15892)
エストレイア・ティアクライス(戦乙女系武装野良メイド・e24843)
晦冥・弌(草枕・e45400)
蟻塚・ヒアリ(蟻の一穴天下の破れ・e62515)

■リプレイ


 10月最後の日。突然、現れた巨大な魔女に太陽を隠され、その邪悪な影がメインストリートを襲った。多くの人々が魔女の影に怯えながら、息をのんで身を潜めている――。
「そんなハロウィンの街に、地獄の番犬たちによるにぎやかなパレードがやってまいりました。お気に召されようが召されまいが、番犬たちの仮装を見るたびに、貴方がまとう嘘をひとつ消していただきます」
 イェロ・カナン(赫・e00116)はポンペリポッサに化けたドリームイーターの前で口上を述べると、胸に手を当て、優雅に腰を折った。
「それでは、まず――!!」
 出だしから白けた目をしてそっぽを向いていた『白縹』が、儚き花々を閉じ込めた水晶のような尾を強く振り、イェロの腰にツッコミを入れた。
「な、なんだよ、『白縹』!」
 小声で恨みごとをいうと、無理やり揃いのマントをつけさせられた小さな相棒に睨み返されてしまった。先にお前が名乗れ、と。
「俺としたことが……うっかりしていたよ」
 きょとんとした顔で見下す偽ポンペリポッサに、相棒と揃って向き直る。
「俺たちは司会を務めさせていただきます、地獄の貴公子イェロ・カナンと『白縹』にございます。……てか、この喋り方、やめていい?」
 『白縹』は、好きにしろ、とそっぽを向いた。
「じゃ、さっそくパレードを始めよう。『顔を上げて見ておいで』」
 イェロはさっと上げた腕の一振りで、高い秋空に黄金の果実をたわわに実らせた。『白縹』が翼をはためかせ、キラキラと光る風を送って落とす。
「まずは空から箒にまたがったお菓子魔女の登場だ!」
 偽ポンペリポッサが顔をあげた。
 溶けながら落ちる黄金の実の間を、箒にまたがった魔女――シルク・アディエスト(巡る命・e00636)が黒いパラシュートを広げてゆっくり降下してきた。
「さあさ、楽しいハロウィンです! お化けも魔女も怪物も、お菓子に悪戯欲しい人は寄っといで!」
 箒先にぶら下がった小さなおばけカボチャのランタンが、ゆらり、ゆらりと揺れている。偽ポンペリポッサの長く大きな鼻も、オレンジ色の灯を追って右に左に動く。
 突然、ランタンが音をたてて弾けた。
 色とりどりのセロファンに包まれたお菓子がたくさん飛び散って、偽ポンペリポッサの鼻を、頬をたたいて跳ね、ぱらぱらと地上へ落ちていく。
 地に降りたったシルクは、魔法の杖に見立てたバスターライフルを一振りし、銃口を目の前にそびえたつ巨大な体へ向けた。
「お菓子か悪戯か。貴方のご希望は?」
 怒りに目を赤々と燃え立たせた偽ポンペリポッサが大口を開く。あたりに香しいお菓子の香りが広がった。
「お菓子、ですね。承りました」
 シルクはバスターライフルを後ろへ回すと、武器を適者生存と銘打ったアームドフォートを替え、改めて巨体に狙いをつけた。
「お腹いっぱい召し上がれ。そして『冥府への道を辿りなさい。死は誰をも逃さない!』」
 赤、青、黄色。巨大な飴玉のようなグラビティ・チェインの弾が立て続けに発射された。甘く香ばしい匂いを吐き続けていた偽ポンペリポッサの腹に当たって、ねじれ込む。
 ぐはぁ、と紫色の吐息を吐いて、巨体がくの字に折れ曲がった。
「これは、これは」
 地獄の貴公子は腰を折って返礼する。
「お気に召していただけたようだね。じゃあ、次も楽しんでよ。魔界の空をはばたく漆黒の翼、ハービーの登場だよ!」
 天空から黒い影が急降下してきた。ハービーに扮した新条・あかり(点灯夫・e04291)だ。
 あかりは偽ポンペリポッサの上で、燕の羽根に見立てたマントの裾を掴んで広げ、風を孕ませた。空気抵抗を受けて落下速度が急激に落ちる。
「さあ、ここから先は魔物と番犬の物語だよ」
 ちょうどいい高さにまでゆっくり降下すると、流星を纏った足で巨大な魔女の帽子を蹴り飛ばした。
 巨大な魔女の帽子は、一階に寝具店が入っている小さな雑居ビルの手前に落ち、風を起こして道の端に置かれた看板や植木倒した。
 蹴りを放ったいたずら者のハービーが、血の色に塗られた唇を開いて笑いながら、まくれあがった帽子の縁に着地する。
 落下直後、帽子の中に走り込んだ白い影の存在を悟られぬように、とんとんとん、と軽くステップを踏んだ。
「悪い夢を見たくなければお家に帰るが良い。手元のお菓子が甘いうちに、ね」
 偽ポンペリポッサがイボだらけの腕を伸ばし、ハービーから自分の帽子を取り返す。
 あかりは慌てて帽子の縁から飛び降りた。
「おっと。僕は帽子の飾りじゃないよ。一緒に持ちあげないで」
「――俺も、ね」
 持ちあげられた帽子の下から、かぼちゃ型ランタンを持ったシーツおばけがふあり、飛び出した。放物線を描いて帽子の縁をかいくぐり、偽ポンペリポッサの目の前へ。蝙蝠が描かれたシーツの裾がひらひらと舞う。
 地獄の貴公子がクスクス笑う。
「シーツのお化けか。みんなの仮装姿、なんとも可愛らしいね。ところで君はどんなイタズラをみせてくれるんだい?」
 シーツおばけに扮した烏麦・遊行(花喰らう暁竜・e00709)は、偽ポンペリポッサが伸ばしてきた手をふありと沈んで避けた。下から入り込んだ空気で、大きくシーツが膨らむ。
「こんなのはどう?」
 遊行はシーツを頭までめくり上げた。
「Trick or Treat!! 『術式多重起動。土星の6、反転火星の5、木星の7。……今よりここだけハロウィンです』」
 南瓜のジャックや人魂のウィル、吸血鬼の旦那に魔女のお嬢さん、その他諸々。シーツの下から白いオバケの影が次々と飛び出して、面白おかしく踊りながら偽ポンペリポッサのまわりをぐるぐる飛び回る。
「すべてはダマしの世界、クワバラクワバラご用心!」
 遊行の、それ、という掛け声と同時に白い影たちがオレンジや黒の蝙蝠に姿を変え、巨体をグラビティ・チェインの翼で切り裂いた。
 細切れになって落ちていく『ポンペリポッサ』の悪夢を、ケルベロスオバケたちがここぞとばかりに集中攻撃。
 これには夢喰むターフィルも大慌て。切り取られた部分を、残っているハロウィンパワーを使い、急いで継ぎ接ぐ。
 巨大な魔女が、ちょっと大きな魔女になった。
 悪い魔女は地団駄踏んで悔しがると、口の中に手を入れ、腹の中からウインナーソーセージの連なりを取りだした。カンフースター底負けのアクションで、ふりまわす。
 周りの建物がガラガラと音を立てて崩れ、大量の土埃が空気中に舞った。
「がおー」
 まるで迫力のない無気力全開な吼え声が響いた。白く煙る世界に、モコモコとした円形のシルエットが浮かび上がる。
「がおー」
 土埃の幕内から出て来たのは、某ドーナツチェーン店の人気キャラ――ではなく、上半身がライオン、下半身がアリの怪物だった。蟻塚・ヒアリ(蟻の一穴天下の破れ・e62515)だ。連れはゾンビスコーピオンに扮した『センチピード』。
「お菓子をくれないと噛むぞ。虫の脅威を教えてやる~」
「ここでミルコメレオ登場! 噛まれるとマジで痛いよ~」
 ヒアリだけに、と仲間にしか分からないダジャレを地獄の貴公子が飛ばす。横で『白澤』が呆れたように目を回した。
 ミルコメレオが、黒いズボンにつけた偽足をぎっちょん、ぎっちょん、揺らして鳴らす。無表情のたてがみからオレンジ色に輝く光の粒が放出された。
 光の粒はたがいに引きあい、いくつかの塊になると、大きく膨らんでドーナツになった。すでに登場したものはもちろん、まだ土煙の向こうで出番を待つケルベロスオバケたちの上にも飛んでいき、頭から足元まですとんと落ちた。
「代わりに僕がお菓子を配ってやったぞ。感謝しろ」
 ――はぁ?
 そんな風に聞こえる形に口を開くと、偽ポンペリポッサはウインナーソーセージの連なりを思いっきり振り上げた。
 薙がれたウインナーソーセージがケルベロスたちに襲い掛かる。


 迫りくる肉塊。『センチピード』が、パートナーのヒアリを守るべく前に飛び出す。
 仲間を守るべく、四方から悪い魔女に向けて攻撃が飛んだ。が、ウインナーソーセージの勢いはとまらない。
「あら、お肉。大好きよ。だって人狼ですもの!」
 セクシーダイナマイトボディーに狼耳とふさふさ尻尾をつけて、仲間たちの前に飛び出したのは、江戸川・シャーロット(ぽんこつホームズ・e15892)だ。
 がおーっと吼えながら顔の前で指を曲げ、ポーズを決める。腰につけたカボチャのランタンの目がぴかっと光った。
 人狼に扮したシャーロットは骨つき肉――ちょっぴり四角いのはご愛敬――に仮装した『ワトソンくん』と、『センチピード』とともに、ウインナーソーセージをがっちりブロックした。
 『ワトソンくん』が蓋を開いては閉じを繰り返し、シャーロットに注意を促す。
「追撃は計算ずみよ!」
 ぺろりと舌なめずり。腰のベルトにさしていたルーンアックスを引き抜くと、くるりくるりと回し構え、折り返して飛んできたウインナーソーセージを切る。
 光輝くルーンアックスから放たれた斬撃は、ウインナーソーセージを切り落とした勢いのまま飛んで行き、偽ポンペリポッサのドレスを裂いた。切れた裾の間から、醜く皺のよった緑色の足が覗き見えた。深い傷から、ドロドロとしたものが流れ出している。
 少しずつ、少しずつ、偽ポンペリポッサの体が縮んでいく。とうとう、ハロウィン装飾が施された民家の、二階のベランダぐらいまで目の高さが下がってしまった。こうなるともう、ほとんど迫力がない。
「ここでちょっとタイム。みんなの治療を頼むよ、ゾンビメイド」
「おまかせください!」
 肌を緑色に塗り、メイド服を着た戦乙女が、ぎくしゃくと手足を動かして偽ポンペリポッサの前へ躍り出る。エストレイア・ティアクライス(戦乙女系武装野良メイド・e24843)だ。全身のいたる所に見える縫い目は、水性の黒ペンで描いたもの。光の翼は仕舞っている。
「アァ……、ア、ア……と、トリックオアトリート! ゾンビなメイド騎士、参上です!」
 エストレイアは第二星厄剣アスティリオの剣先を地につけると、くるりと輪を描いた。光が走り、守護星座の魔法陣が浮かび上がる。
 腕に下げていた網籠の中から、グラビティを秘めたいろとりどりの金平糖が吹きあがった。薄く伸びた雲の底を掠めるほど高く上がり、キラキラと輝きながら西洋オバケに扮したケルベロスたちの上に降り注ぐ。
 おとぎ話のような光景に、遠くからケルベロスパレードを見守っていた人々が思わず歓声をあげた。
 その声が癇に障ったのか、偽ポンペリポッサは地団駄を踏み、大きく鼻を鳴らした。自分の方がずっとずっと驚かせることができる、と杖を一振り。巨大なカボチャ型の鍋を出現させた。煮え立つカボチャ鍋の中に杖を入れて、グルグル、グルグル。さて、何が出てくるかな?
 メイドゾンビは心も死んでいる――と言う設定だから、当然、好奇心は刺激されない。実際はぐっと抑え込んだのだが。
「ハロウィンに必要なのは仮装とお菓子と笑顔です! お邪魔な方はお引き取り下さい!」
 エストレイアは、びしっと、カボチャの鍋にアスティリオを突きつけ、割った。
 カボチャの割れ鍋は、毒々しい紫色の霧に姿を変えて四散した。
「トリックオアトリート! さぁさ、魔法とお化けの時間、再びですよ!」
 徐々に薄まっていく紫の霧に、ライティングボールが投げ込まれた。ヒゲのような稲妻が無数伸びて、紫の霧をサイケデリックに光らせる。
「最後に登場は、お年寄りから子供まで、みんなが知っている超ポピュラーな西洋オバケ、フランケンだー!」
 やっと出番が来たよ、と苦笑いしながら晦冥・弌(草枕・e45400)が姿を現した。
 これまでだって合間、合間に偽ポンペリポッサへ攻撃を仕掛けていたのだが、家の影からだったり、土埃の向こうからだったり……ここでようやく凝った仮装をお披露目することができたのだった。
「『さぁあそびましょ、ぼくが鬼』……ううん、フランケン。お菓子をくれたお礼に、いたずらしちゃうぞ」
 伸ばした指先から、華のような氷菓子が次々と溢れ出し、甘い息を吐きだす悪い魔女を覆い隠すように積みあがった。
 弌は頭につけたネジをきりきりと巻くと、ミューズオーブを起動させた。ハロウィン風のポップホラーな曲メドレーが、悪い魔女の巨体につぶされた街角を大音量で流れ始める。
「全員集合、みんな集まれー!」
 お菓子魔女、ハービー、ゾンビメイド、地獄の貴公子、シーツおばけ、ミルコメレオ、人狼、そしてフランケン。
 全員一列に並んで――。
「「トリックオアトリート!!」」
 夢と希望を込めた言葉を、氷菓子でできた華の塔にぶつける。
 塔が崩れ落ちたあとに残ったのは、ハロウィンの魔力を失った夢喰むターフィル。


「あれっ正体は案外小さいんですね。……ねぇ、ぼくの攻撃でお腹いっぱいになった?」
 だったら、と弌はにやりと笑った。
「折角のお祭りです、思いっきり楽しみましょう。今日はハロウィン! 悪夢の食べすぎにはご注意を!」
 これからが本番ですよ。足を振り上げて、夢喰むターフィルの前に星屑の道を作る。
 ドリームイーターが悪夢のステップを踏み、弌が撒いた星屑を蹴散らしながら突進してきた。
 シルクがすかさずアームドフォートを向け、一斉発射する。
「ハロウィンの魔力も良いのかもですが、こちらは如何でした?」
 夢喰むターフィルが鼻を丸め、目をぎゅっと閉じてきゅ~と鳴いた。
「なかなかあざといね。でも、僕たちは騙されない」
 だが、街の人々が勘違いして寄ってこないとも限らない。あかりは念のため殺界形成を発動する。
 そのハービーの背中に獏の鼻が伸びて、夢に喰らった。
『連なれ剣よ、導きの翼となれ!』
 エストレイアは隠していた光の翼を広げた。傷ついた背中に光を当てて治療する。
 シーツをはぎ取った遊行が轟竜砲を放ってドリームイーターの進撃を止め、ヒアリがドラゴニックハンマーで叩いて弱体化した。
『ジャーック……ポット♪』
 『ワトソンくん』のエクトプラズムで作った、まあるい月をシャーロットが投げつける。
 夢喰むターフィルは前足を折って倒れた。
「さて、楽しい時間もこれで終わり――長らく続いた因縁にケリをつけよう」
 イェロが最後に、宿敵の前に進み出て、恭しく腰を折った。
 獏は尚も足掻き、イェロの夢を、グラビティ・チェインを喰らおうと、鼻を伸ばす。
「……俺のこと、これっぽっちも覚えていないんだね。まあ、そんなことだろうと思ったよ」
 奪うだけ奪って、奪い取られた者の悲しみを顧みようともしない――。
「……だけど、幸せはその人のもの。俺の知る夢で、もうこれ以上の勝手はさせない!」
 『白縹』に背を押され、カナンが渾身の蹴りを放つ。
 人々の夢を食い荒し、悪夢に変えてきた悪魔――夢喰むターフィルは星々の海に沈んだ。

作者:そうすけ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年10月31日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 4/キャラが大事にされていた 0
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