●ポンペリポッサの魔女作戦
ハロウィンの空気に浮かれた街。大きな通りは南瓜やお化けの飾りで彩られダークで、けれどポップな雰囲気。
そんな通りを、ビルの上から眺める影が一つ。
楽し気にステップ踏んで踊ればしゃらんと音も舞う。それは踊り子と誰が見ても思うような姿をしていた。
「佳いね、佳いね! アタイ好みの賑わいだ! ココをアタイの舞台にしよう!」
しゃんしゃんと音鳴らし、薔薇色の布を閃かせビルの屋上から賑わい見せる通りに降りる。
突然現れた踊り子に周囲にいたもの達は驚くが、今日はハロウィン。
何か催しがあるのかと、賑わいの人々は突然のことを受け入れる。
踊り子がステップを踏み歌を奏でると、周囲にいたもの達はそれに合わせ手拍子を合わせ始めた。
けれど――お祭りの、楽し気な雰囲気は続かない。
「フフ、アハッ! これは、とてもイイもんだね!」
楽しい、面白いことが起こると踊り子はただ歪に、悪辣に。享楽的な笑みを浮かべた。
すると踊り子へと、何かが注がれていく。それは目に見えぬ力だ。そして、その姿は変わり始めた。
むくむくと何かへと巨大化していく踊り子。手拍子を贈っていた人々は慌てて、叫び声を上げながら逃げ始めた。
そして、そこにいたのはポンペリポッサ。
全長10メートルのそれはハロウィンの街を破壊しながら進んでゆくのだった。
●予知
ハロウィンの力を求めてドリームイーター、魔女ポンペリポッサが動き出したみたいなのだと夜浪・イチ(蘇芳のヘリオライダー・en0047)は集ったケルベロス達へと紡いだ。
「寓話六塔戦争で受けた痛手を回復する為にハロウィンの魔力を狙っているんだと思う」
事件が起こる場所はハロウィンでにぎわう街角。そこに現れたドリームイーターがハロウィンの魔力を利用して『ポンペリポッサの姿に変身して巨大化』するのだと言う。
その、ポンペリポッサ化したドリームイーターの全長は10メートル。その戦闘力は本物のポンペリポッサに及ばないが、かなりの強敵として見られている。
「お願いしたいのはある街に現れる一体。商店街がハロウィンのお祭りイベントになっているんだ」
ポンペリポッサの攻撃は香しいお菓子の香り、ウインナーソーセージ乱舞、そして『好奇心』を刺激するようなことを行ってくる。
しかし、このポンペリポッサの姿に変身し戦闘をする為にはハロウィンの魔力を消費してしまう。その為、変身していられる時間は五分程度だ。
それが過ぎれば、変身がとけて元のドリームイーターに戻る。その後なら有利に戦う事が出来るとイチは続けた。
「それから、戦闘時にハロウィンらしい演出を行う事が出来れば、ドリームイーターからハロウィンの魔力を奪い取ることもできるんだ」
つまり、ハロウィンの魔力を奪い取ることができれば五分よりも早く、ポンペリポッサ化が解除できる。
イチは何かしら、仮装や言動でできる事をしてみたらいいよと加え、ポンペリポッサ化が解除された後、戦うことになる相手について話し始める。
そのドリームイーターの名はグローアという。踊り子のような恰好をしたドリームイーターで、この場から逃げるというようなことはおそらくないと思うとイチは続けた。
「強敵相手になるけど、よろしくね。ハロウィンを早く楽しむためにも」
イチは皆に託すよと言って、ヘリオンへとケルベロス達を誘うのだった。
参加者 | |
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藤守・つかさ(月想夜・e00546) |
疎影・ヒコ(吉兆の百花魁・e00998) |
トエル・レッドシャトー(茨の器・e01524) |
オルテンシア・マルブランシュ(ミストラル・e03232) |
鯖寅・五六七(猫耳搭載型二足歩行兵器・e20270) |
エフェメラ・リリィベル(墓守・e27340) |
ヨル・ヴァルプルギス(グノシエンヌ・e30468) |
斬崎・冬重(天眼通・e43391) |
●ハロウィンの日に
巨大な巨大な、ポンペリポッサ。それが歩みを進めようとする前に――その一行は、一座は現れた。
「祭りの熱に浮かされ来たるは、百鬼夜行のみならず」
魑魅魍魎の魔女の群れ――見知った顔が二つとは、とヨル・ヴァルプルギス(グノシエンヌ・e30468)は零す。
悪霊を祓う儀式なれば、一人位恐ろしい者が居るも演出になりましょうとヨルは紡ぐ。
その姿は悪戯好きな貴女は好まないやも知れませんがと、ポンペリポッサとなっているものの事を思う。
ヨルの先導により現れるのは様々な姿の者達。
先んじて飛び出したのは奇術師。花撒く奇術を行うものは、オルテンシア・マルブランシュ(ミストラル・e03232)のミミックであるカトル。
「絢爛の華を欲しいままに掌中に収めしは、稀代の奇術師『四葩の御子』にございます」
いつもの主従は逆転。南瓜マスクのミミックに、如意棒をマジカルステッキのようにしてオルテンシアは付き従う。
「種も仕掛けも御身に刻んでお帰りください」
楽し気にエクトプラズム撒くカトルはふと、主と目が合って動きを止める。
「あとが怖いみたいな顔しないのカトル」
目配せして、これが済んだらお菓子食べ放題。そう告げると、カトルは一層、花を撒く。
その花の上を華麗に飛んで現れたのは。
「おっす! 魔女っ娘ゴロシチっす!」
フードで魔女コスチューム。そしてパイルバンカーに歩を撒いて箒に偽装した鯖寅・五六七(猫耳搭載型二足歩行兵器・e20270)は傍らのウイングキャットをずずいと前へ出し。
「そしてこいつが使い魔のマネギっす!」
その羽は蝙蝠のようにデコりカボチャランタンを抱え込ませればそれっぽさはばっちりだ。
そして魔女姿はもうひとり。
今年37歳、三女の父――斬崎・冬重(天眼通・e43391)は、童心に帰ったようなワクワク感を持っていた。
だがそれを表に出すのは恥ずかしい、というのは表情でバレバレなのだ。
そして任務遂行の為なら女装もなんのその。おっさんの女装仮装など誰得、と思いつつ冬重は南瓜ランタンを揺らしてみせる。
そして構えたバズーカ放って逃げる人たちへお菓子のプレゼント。
この場は俺達番犬に任せてくれ、とその気持ちを込めて。
せーの、と息合わせるがつれない連れ合いもまたご愛嬌。
「『Trick or Treat!』……ってな」
疎影・ヒコ(吉兆の百花魁・e00998)の背から銀の蝙蝠翼。それはオウガメタルの銀縷がかたどった物。
傍のファミリア、錦は同じようにマントを着せてみたがどうやら、ご機嫌斜めだ。
「尤も、どう答えても叩き伏せるんだが――……今宵の俺は誰よりも血を所望する」
吸血鬼の伯爵風の服。中世の洋装については先日、たんと教わったばかり。見真似て着てみたが、変では無いといいんだが、と思うヒコは髪を後ろに撫でつけて。一夜限りの牙みせニヤリ嗤う。
「あら、私も血を求めてますの」
奇遇ですわねと笑うはエフェメラ・リリィベル(墓守・e27340)の扮するゾンビナース。そのナース服は所々破けて、血糊もべったり。
「大きな注射はいかが? わたくしに血を分けてくださいまし。若返る為に必要な生け贄達の血……嘘ですわ。血糊も偽物です。ええ、たぶん」
エフェメラは大きな注射を掲げてうふふふと意味深な笑顔。
「役者が揃えば、幕は上がるべきなのだろうさ」
黒尽くめの怪人、藤守・つかさ(月想夜・e00546)はしかし、と仮面の下から告げる。
「俺が求めるはお前じゃない。お前の立つそこは俺だけの歌姫が立つに相応しい場だ。速やかに、退場願おう」
毎年毎年懲りないよな……とつかさは思う。ケルベロス側も毎年毎年受けて立つんだけど、と浮かべた笑みは、挑発でもある。
それにしても、とトエル・レッドシャトー(茨の器・e01524)はじーっとつかさを見ていた。
まっくろくて、普段と変わり映えがない。
「普段着ですか?」
「凝視してくるから何かと思えば……いやいや、いつもより正装に寄せてるだろ?」
つかさはトエルの視線に苦笑して。
「それに普段から仮面愛用してるみたいな言い方はどうなんだ……?」
そう言うと、トエルは瞬いて視線をつかさの顔へ。
「あまり顔を凝視する機会がないので、気づきませんでした」
「お姫サマはご機嫌ナナメ……な訳じゃないな? うん、普段通りだった」
つかささんの方こそ、と言いつつ普段通り、悪気ゼロのトエルはくるりと回ってドレスのスカート摘まんで挨拶を。
「眠りを邪魔して、お菓子もくれない無礼者は許しません」
目覚めたばかりのいばら姫は少し不機嫌なのだ。
ポンペリポッサは歩むのをやめ、ケルベロス達を意識する。
「此処で会ったが“何年目”で御座いましたかね……さぁ、グローア。“舞台”の幕を――」
開け。
或いは、
閉じよ。
死神姿の魔女は、表情変えぬまま、瞳開かぬまま。
その傍らでウイングキャットのケリドウェンが愛想なく一声鳴いた。
その一声にポンペリポッサは笑い零し、ケルベロス達へと攻撃を仕掛けた。
●ハロウィンの魔力
全員仮装をしての振る舞いは、ハロウィンの魔力を確実に奪っていた。
ポンペリポッサは首にかけたウインナーソーセージを手にし振り回す。巨大なそれは前列への横薙ぎの一閃。
「ポンペリポッサがなんぼのもんっすか!」
五六七はヨルの前に立ってそれを受け止め、バタッと倒れた。
その一撃の様を目に捕らえつつ、つかさは己のグラビティを集わせる。
「我が手に来たれ、黒き雷光」
放たれた雷は地を撃って、ポンペリポッサを貫いた。
その間に素早く凄惨なメイクを施し、呻き声を上げながらフラフラと立ち上がった。
「正義のケルベロス忍軍! 出動っす!」
メイクそのままにしゅぱっと忍者コスチュームに。今日はマキビシではなく金平糖をばらまいた。
マタギは前列へと向け羽ばたき清浄なる風を向ける。
毎度大騒ぎ、悪戯の範疇で収まらないあたり、いい迷惑ですとトエルは零す。
そして振り回されるウインナーにあれはいただけないと思うのだ。
「ウインナーじゃなくてお菓子が欲しいのですが。お菓子がないならお仕置きですね」
私の茨は残酷ですよ? と、トエルは茨の槍を伸ばす。
それはポンペリポッサへと絡みつき締め上げてゆく。
「ああ、いけませんお客様、営業妨害ですお下がりください」
下がって頂けない場合は、奇術によってとオルテンシアはその足へ流星の煌めきと重力を。
「カトル、営業妨害には、ガブリングも武装具現化も正当防衛でしょうとも」
好きにやってしまいなさい、と言う前にカトルもまた飛びかかっている。
が、その狙いはと言えば。
「って、ちょっとカトルそのウインナーは……いえ。余さず食べちゃってね」
ウインナー狙いのガブリング。けれど噛みつく前に揺れて、口にできぬまま転がる。
その様子に楽しそうだと小さく笑ってヒコはマント翻す。
「毎年懲りないな」
ヒコの足にもまた流星の輝きと重力の力。
「そう思うだろ、従者殿」
揶揄う様な声色にオルテンシアは今日だけです、伯爵様とお返しを。
そして、息合わせて攻撃を繰り出す。
「うふふふふ、トリックオアトリート。お菓子をくれないとゾンビにしますのよ」
エフェメラは笑って、その脚に力のせて飛び蹴る。エフェメラの蹴りはその鼻面を捉えた一撃。
そこへ喰らいつくオーラの弾丸。それはヨルが放ったものでケリドウェンも続けて攻撃を。
「この歌が聴こえるか?」
その間にボクスドラゴンのマグナスと共に、冬重は前列の仲間達へ向け歌を紡ぐ。あくまで伴奏曲というそれは仲間達を鼓舞するものだ。
その冬重からの歌の恩恵受け、狙いの精度を上げた五六七は早速攻撃にかかる。
「魔女っ娘☆ゴロシチのマジカルパワー、見せてやるっす!」
そう言って五六七は箒を手に舞い踊る。
「おらー!!!!!」
そして瞳孔開いたまま、仕込んだパイルバンカーをポンペリポッサへとぶちかました。
怪しく香るお菓子の香り。それはポンペリポッサから放たれている。
後列に届くその香りはとろりと夢見心地に誘うもの。
「カーディシャン見習いも拙いながらもこれくらいはお見せできますので」
オルテンシアが取り出した白いカード。それをもって呼び出したるは氷の騎士。
つかさは人として極めた技をポンペリポッサの巨体へと繰り出す。
そこに続けて。
「戒め、砌絶つ堰よ……ここに」
トエルが指差す。自らの血を媒介に錬成した魔力が放たれ撃ち込まれれば、ポンペリポッサのみの上を蝕む茨となって這い廻った。
遠慮のない攻撃につかさは格好は違えども戦いは変わらないかと思わず笑み零した。
ヨルが振り上げたドラゴニックハンマーはその力を噴射し加速し、振り下ろされた竜槌はポンペリポッサの身を力強く打つ。
続けて構えていたヒコの腕を、銀縷が伝いやる気を見せる。
ヒコは銀縷に覆われたその拳でもって攻撃仕掛けた。
その間にエフェメラが唱えたのは古代語。紡ぎ終われば石化を齎す光線が走り、敵の身の一部を固まらせ動きの精度を落としてゆく。
そして薬液の雨が落ちる。冬重は先程攻撃受けた仲間達へ向け癒しの力を振るう。
マグナスも主に合わせて癒しの力持つ風を。
と、ポンペリポッサの姿はすぐ、小さく萎み始めた。
戦い始めて2分。その間に魔力奪われ、その姿維持することができなくなったのだ。
ポンペリポッサの足元から立ち上がる煙。
それが消えた時――そこには一人の踊り子が、魔女がいた。
「話が違うじゃないか、ポンペリポッサ!」
もっと長く遊べると聞いていたのにと舌打ちし、けれどとグローアは視線を投げる。
「ああ、いや。アタイにはまだ次のお楽しみがあったか」
その笑みは言葉通り新たな楽しみ見つけたと歪んでいる。
グローアはくるりと回って、踵を返し。
その動きは軽く、先程までかけていた阻害のほぼ全てが解けてしまっている様子。
軽やかなステップと共にしゃらりと音が鳴る。
変化の幕間は終わり、魔女と次の幕が上がる。
●幕は下りる
グローアの踊り。それはふと目に入った程度の軽さでつかさに向けられようとしていた。
五六七がその前へ。もう倒れるふりも必要なく、五六七は攻撃いなしてみせた。
それに感謝しつつ、つかさは黄金の果実、その聖なる光を後列の仲間達へ。
今の所回復の必要は無さそうだけれども守りは堅い越したことは無いとトエルは周囲の状況に気を配り、五六七へとオーロラのような光を贈った。
己の回復が今一番必要なことだったがその必要も無く、五六七も流星の煌めきと重力を脚に。
「マネギ、いくっす!」
その声に合わせマネギも攻撃を、五六七に合わせた。
懐に入りこめばグローアと視線が合う。
「どんな風に遊んでくれるんだい?」
「足技でな」
そう言って、ヒコは再び脚に流星の輝きと重力のせて蹴り上げる。
もうウインナーは無いのかとしょんぼり背中のカトルにオルテンシアは一声。
後でお菓子が待っていると告げれば積極的に守りに攻撃に動き始める。
そしてオルテンシアも、解けた阻害をまたとその脚に流星の煌めきと重力を以て飛び蹴る。
「もうひとつ、おまけですわ」
そう言って懐に入ったエフェメラも同じ攻撃しかけまたひとつ、縛っていく。
「そう……貴女は『逃げない』、のね」
ヨルは呟く。
目の前の相手へと孕む思いは様々に絡まって、言葉にするものではなく。
くるりと回した如意棒が伸び、グローアを突く。
グローアは痛ァいと笑って、その痛みさえも今は愉悦とする。
「お返しだよ」
笑い含む囁きがヨルに向けられる。 その囁きはヨルの身を硬直させ固まらせるような、不思議なもの。
だが、それに蝕まれ続けることはなかった。
すぐさまヨルに向けられたは冬重の揮う癒しの技。
それは強引な手ではあるが確実にその傷を塞いでいくもの。
すぐさま癒える、その様子にグローアは舌打ち零し、しゃらんしゃらんと音たて踊る。
グローアの攻撃は踊り、囁き。惑わすことを楽しんでいるようだ。
けれど、それが齎すものは払われる。
攻撃の勢いはケルベロス達にある。
ポンペリポッサの状態での戦いが長引いていればもっとダメージも募っており、戦いの流れは変わっていたかもしれない。
だが短い時間で対処できた故に、有利に事を運べていたのだ。
グローアが攻撃しようとも、守り手達は庇いに入り。
そして冬重も癒しの手をしっかりと打ってくる。
戦線が崩れることはなかったのだ。
「お姫様はこんなことしないでしょうが」
トエルは茨の槍に己の内にある地獄の炎を纏わせてグローアに突き立てた。
「もう一発、お菓子代わりに如何っすか!」
そして、箒のふりがとけたパイルバンカーを五六七は再び振るう。
深く、トエルの与えた傷にさらに叩き込むように。
続けて貫いたは冬重が杖からほとばしらせた稲妻。戦いの終わりが見えてきた今、回復よりも攻撃の手を向ける。
「そう、静かに静かに蝕んで行くのです」
エフェメラは呼び起こす。それは魔導書38頁で眠る闇竜の力だ。
彼の竜が吐き出す黒い霧はグローアの身を蝕んでいくもの。
「かつて朽果てた時空より甦れ。顕現せよ! そして我等を勝利に導け」
紡げば、蒼を纏う女騎士が傍らに。だがその姿はいつもと少し違う。
ちょっとだけハロウィンに浮かれた、そんな姿にオルテンシアが瞬く間に攻撃をかけていた。
「世の中は 恋繁しゑや かくしあらば――……其の望み、抱いたまま零れろ」
涅槃西風を起こすのは己の翼ではなく今日は銀縷の役目。
それにのって見せる白昼夢は甘き痺れとなる。
「上がった幕は引かれるべきだろう?」
けれどそれは俺の役目ではなく。幕引きを手伝うのみとつかさは空の霊力を足に纏わせ、グローアの傷をさらに深くしていく。
ケリドウェンがグローアからの攻撃を遮って、その間にヨルは紡ぐ。
「全て等しく、死と絶望のパレードを……カタストロフィで御座います」
盗られた物を、返して貰う――何としてでも。
その為に、紡ぎ終えた言の葉がある。
自らの血・肉・骨を媒介に、復讐の神々と其れに服す那由多の怨嗟を。
千の憎悪が喝采し、万の悲嘆が狂喜する悪魔の宴、その澱はグローアを捕まえた。
全てを呪う以外、その心静める術は無く。
「さようなら、グローア」
ヨルはグローアに言葉向ける。そして、少し置いて。
「楽しかったわ」
その言葉を受け、姿消えつつもグローアは笑って見せる。
「アタイも楽しかったよ、それなりにね。サヨウナラ、――」
サヨウナラの後、グローアが最後に小さく紡いだものはヨルとケリドウェンの耳には届いていた。
それはヨル達だけが知り得る、宿縁の一端。
そして――デウスエクスのものではなく、ケルベロス達の、人々のハロウィンが戻ってくる。
作者:志羽 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2018年10月31日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 4/キャラが大事にされていた 1
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