ポンペリポッサの魔女作戦~ハッピー・アンハッピー

作者:七凪臣

●ヴィランズ・マリン・ガーデン
 ――まぁ、まァ、マァ!
 焼けた靴を履いた少女は、その賑わいに歓喜した。
 カラスの翼で空を飛ぶ黒いイルカ。血の色の真珠を抱いた鈍色の貝に、矢鱈と爪が巨大化したエビやカニ。
 オーロラみたいにそこらを覆う布は、ぴかぴかには程遠い不揃いな端切れを縫い合わせたもの。
 行き交う魔女や悪魔に道化師、それに斬新な二足歩行の怪物たちは、目玉の串焼きに被り付き、毒々しい色の飲み物を美味そうに飲み干している。
 そこは物語の悪役たちをフューチャーしたハロウィンのパーティー会場。いつもは不吉の象徴たちが、仮装した人々の目を舌も心も愉しませ、すぐ近くの岸壁を叩く波音さえワルツのリズムにしてしまう。
 ――素敵、ステキ。
 満ちるハロウィンの魔力に、少女――ドリームイーターは長い髪をざわつかせ、背負った糸車をくるくると回し出す。
 途端、変わりゆく彼女の姿。
 華奢だった手足は歪み、白かった肌は古樹を覆う苔色になり。何よりぶくぶく膨らんで――。

「おい、化け物だ!」
「逃げろ、逃げるんだっ」
 突然現れた不気味な巨大魔女に、ハロウィンを楽しむ人々は恐怖で逃げ惑う。

●ハッピー・アンハッピー
「ハロウィンの力を求めて、ドリームイーターの魔女『ポンペリポッサ』が動き出したようなんです」
 寓話六塔戦争で被ったダメージを回復するのが狙いだろうとリザベッタ・オーバーロード(ヘリオライダー・en0064)は告げ、己が話に耳を傾けてくれているケルベロス達に改めて向き直る。
「事件の概要は、ハロウィンで活気づく街角に現れたドリームイーターが―、ハロウィンの魔力を得て『ポンペリポッサの姿に変身して巨大化』するというものです」
 巨大化。
 ヒーローもののお約束的展開とも言えそうだが、現実だって侮れない。
 ポンペリポッサ化し巨大化したドリームイーターの全長は約10m。しかも本物のポンペリポッサにこそ及ばないものの、戦闘力は高く、かなりの強敵になるのだ。
「皆さんに赴いて頂きたいのは、『ヴィランズ・マリン・ガーデン』と銘打たれたハロウィン・パーティーの会場です」
 舞台は九州のとある都市の、海浜公園。
 花壇や噴水は物語の悪役たちをモチーフにした飾りで彩られ、近くに停泊している船にも同様のデコレーションが施されている徹底ぶり。並ぶフードスタンドもヴィランをテーマにしたメニューを提供している――のだが。
「そこへ『メアリ・アン・バースデイ』というドリームイーターが現れ、ポンペリポッサ化します」
 ポンペリポッサ化し戦闘するとハロウィンの魔力を消費する為、メアリ・アン・バースデイが変身していられる時間は最大でも5分程度。
「皆さん自身で戦闘中にハロウィンっぽい演出を行えると、ドリームイーターからハロウィンの魔力を奪う事も可能です。そうすれば5分より短い時間でポンペリポッサ化を解除できるでしょう」
 姿がメアリ・アン・バースデイに戻れば、上がった戦闘力も元通り。
「メアリ・アン・バースデイ――今は略してメアリと呼びましょう。メアリは破れた本の頁を紙飛行機のように飛ばし、そこに書かれた不吉な言葉で精神的ダメージを与えてきたり、毒の葡萄酒を浴びせかけたり、胸元のモザイク化した絵本で皆さんの幸福……つまり、体力を奪ったりするようです」
 様々な不吉の象徴を集めたような姿のドリームイーターは、人々の幸福を己がものとしたいようだと付け加え、リザベッタは敢えてにこりと楽し気に笑う。
「厄介な相手ですが、折角のハロウィン。皆さんも存分に楽しんで、そして敵の思惑を挫いてきて下さいね」


参加者
シヴィル・カジャス(太陽の騎士・e00374)
雨月・シエラ(ファントムペイン・e00749)
市松・重臣(爺児・e03058)
筐・恭志郎(白鞘・e19690)
金剛・小唄(ごく普通の女子大学生・e40197)
神子柴・甚九郎(ヒーロー候補生・e44126)
死道・刃蓙理(野獣の凱旋・e44807)
ジークリット・ヴォルフガング(人狼の傭兵騎士・e63164)

■リプレイ

●真時火屡(まじかる)海賊団襲来!
 空飛ぶイルカが宙に弾け、血の色の真珠が巨大な足に踏み砕かれる。
「きゃー!」
「逃げろぉお!!」
「助けてええぇっ」
 突如、ずもももーんと現れた巨大な魔女にヴィランズ・マリン・ガーデンは蜂の巣を突いたような混乱に陥る。
 が、しかし!
 ドゥン、ドゥン、ドゥン♪
「……これは、何だ?」
 ドォン、ドォン、ドォオン♪
 海面を小刻みに波打たせる重低音に逃げ惑う人々は足を止め――そして見た。苔色の巨大魔女が巻き起こした破頁の嵐を、一体のゴリラ(※ゴリラ)が受け止めるのを!
「オオオオオ!!!!」
 果たしてその正体は、普通にゴリラ……ではなく、ゴリラの中のゴリラの着ぐるみを着たゴリラ――なウェアライダーの金剛・小唄(ごく普通の女子大学生・e40197)。尚、素でもゴリラだけど着ぐるみ姿なのは、全裸は駄目ですな乙女心の結果。しかも纏うオウガメタルをカッコいい鎧風にして姫騎士モード全開だ。
「伝説のキングな魔獣の登場、だと!?」
「はっはっは! 魔獣だけではないぞぉう!」
 まるでナレーションな謎の解説を、豪快な笑いが追い越してゆき。っばーん! と弾けた超絶カラフルな爆風に、山吹色のお菓子が乱舞する。
「ふはは、ふはは、此処は我が一味が預かった!」
 衝撃の一頻りが収まる頃、そこには海賊船長――になりきった市松・重臣(爺児・e03058)が仁王立っていた。
「奴は我らの獲物、邪魔立ては許さぬぞ! 命惜しくば去れ!」
 大気を震わす重臣の号砲に、虚を突かれてぽかーんとなっていた人らの顔に理性が戻る。
 ――そうだ、逃げなければ!
 ――彼ら彼女(ゴリラ含む)はきっとケルベロス!
「ぱっぴぷっぺぽぉーッ!」
 ――けるべろす?
 これまた突然。響き渡った奇声に、人々の脳裏には「?」が大量に並んだ事だろう。されど同時に放たれた殺気に、自然とその足は戦いの輪から遠退いていく。その中心には、人か獣か? 猫の着ぐるみを着用し、ケルベロス印の海賊旗をぶんぶん振り回す死道・刃蓙理(野獣の凱旋・e44807)がいた。
「おうおう、ワルが集まってやがるナ! とびっきりのバケモノの気配……アレに勝てるのはウチのおかしらくらいだ!」
 ぷち海賊船――風にデコった重臣のオルトロスの八雲が巨大な魔女へ神器で斬り込むのを手を翳して見上げ、ボーダーTシャツに腰にはサッシュを巻いて定番の海賊手下に扮した筐・恭志郎(白鞘・e19690)が割り込みヴォイスを駆使し、走る人らの耳へ声を届ける。
「今すぐ逃げれば間に合うゼ。さあ急げ! 早く!」
 ――みなさん、逃げて下さい。此処は、俺たちが預かります!
 潜まされた真意は、過たず伝わる。証拠に見る間に小さくなる人影に恭志郎は内心で安堵を微笑み、けれどそんなのはおくびにも出さず、空砲代わりにお菓子を詰め込んだユニークバズーカーをどごーん!
「おかしら! いっちょ派手にかましてやりますゼ! 先生、出番でさぁ!!」
「今宵は刀が血に飢えている……斬られたくなければ早々に立ち去れ」」
 そうして新たに場に呼び込まれたのは、先生と称されるならやっぱりアレな人影。
「あれ程の妖気……拙者では手が余る物の怪だ……いや、船長殿のお助けあればあるいは」
 色とりどりのキャンディーの雨に晒され、南瓜髑髏印の瓢箪の中身(ただの水)をぐびり。二振りの刃を腰に佩き、気だるげに和装を着崩す様はまさにTHE・浪人!
「ここは拙者に任せ逃げよ。手遅れだと気づく前にな……ッ!」
 今日日、海賊だって用心棒を雇う時代――と己に言い聞かせ、身も心も浪人になりきったジークリット・ヴォルフガング(人狼の傭兵騎士・e63164)は意識を斬霊刀へ集中。気迫を漲らせると見せかけ、霊的防護を断ち切る力を自らに宿す。
 と、その時。
 ――ドン!
 ジュストコールにベルトをつけた雨月・シエラ(ファントムペイン・e00749)と、恭志郎とは色違いの装いプラス頭にバンダナを巻いた神子柴・甚九郎(ヒーロー候補生・e44126)が、強く足を踏み鳴らした。
「さあさあ、皆お頭に続けー……? 続けー!」
 重い鉄塊剣を意気揚々と振り上げ、勢いよく飛び出しはしたものの。演技はちょっぴり苦手なJKシエラ。語尾がびみょ~に迷子になってしまうのはご愛敬。おまけの足ドンついでに鉄塊剣まで振り下ろしちゃったのもご愛敬☆
「ヨーホー、この海のお宝はオレたちのもんだー! 根こそぎ奪ってやりましょうぜ重臣お頭ー!」
 対する甚九郎は超ノリノリ。ジャガーの獣人ウェアライダーらしく軽やかに海風を切って跳躍すると、翔け星となって挨拶代わりに巨大魔女を貫いた。
 斯くしてハロウィン海賊団は揃い踏み――かと思いきや。
「これで勢揃いかぁ!? いや、まだいるぞ!」
 空気を読みまくったナレーション通り、あともう一人!
「愛と正義の魔法少女ハロウィンセイバー、ここに見参!」
 そう、魔法少女がいた! ……って、魔法少女!?
「今日だけ私は太陽の騎士ではなく、正義の魔法少女だ!」
 高々と名乗りを上げるシヴィル・カジャス(太陽の騎士・e00374)は、確かにハロウィンカラーの魔法少女。まさか二年連続で同じコスチュームに袖を通すと思っていなかった魔法少女!
「デウスエクスめ、かかってくるが良い!」
 悪役は正義の味方が居てこそ輝くもの。そんな持論を燦燦と掲げ、魔法少女シヴィルはすぱっとさくっとシエラへ祝福の矢を射る。

『さぁ、ハロウィンの魔法少女も加わり事態は急変。だが、ココは一時休戦して大物退治といこうゼ!』
 バイトで鍛えた声量を駆使し、恭志郎は物語に注釈を添えてゆく。つまり、これまでのナレーションは全て恭志郎。性格とは真逆の仮装をしたぎこちなさだって、勢いで誤魔化せるから一石二鳥。
 なお、一方その頃。
「大丈夫? 気を付けて」
 姫騎士ゴリラ小唄は逃げ遅れた人をそそっと手伝い、戦闘機コスなウイングキャットの点心は『避難路はコチラ』なプラカードを首から下げて避難に一役買っていましたとさ。
 ケルベロスには(いろんな意味で)隙は無い!!

●急転直下くらいまっくす
「これは震える毛玉を容赦なく討った悪の証よ、恐れ戦けお前もぬいぐるみにしてやろうk――いや苔魔女は守備範囲外じゃな!」
「さすがお頭、やることがエグイですゼ!」
 ふわっふわでもこっもこの愛らしいぬいぐるみをずずずいっと見せつけたかと思うと、ささっと隠し。天衣無縫の拳で真正面から殴りかかった重臣を手下恭志郎は褒め称え乍ら、雷を帯びた青い刃で巨大魔女へ斬り挑む。
「――いくよ」
 戦いが白熱してしまえば、すっかりいつも通りなシエラは果敢に竜の砲弾を撃ち放ち。
 偽物とはいえ、敵は『あの』ポンペリポッサ。戦えるだけでも、と心躍らす刃蓙理は、「ヴィランヴィラ~ン!」とヴィランになりきった儘――果たしてこの奇声がヴィランとして正しいか否かはさておき――銀の粒子で仲間の支援に尽力する。
 ほぼほぼ八割、シリアス路線の刃蓙理であろうとハロウィンの魔法にかかった今日は特別。
 どごどごと胸ドラムを叩いて暴れる姫騎士ゴリラな小唄や、その周囲をびゅんびゅん飛びつつ仲間の回復に尽力する点心だとか。
(「ヴィラン……ヴィランらしく、か」)
 繰り広げられる愉快絵巻に、無礼講を悟ったジークリットは先生街道まっしぐら。
「船長殿! 微力ながら拙者も助太刀致す!」
 しっかり船長を演じる重臣が格上アピールし乍らジークリットは袴の裾を華麗に捌いて、ポンペリポッサの足元を月凪の刃で斬り払う。
 鋭い一撃に、苔色の魔女が天を仰いで見悶えた。それを正義の魔法少女は揶揄り笑う。
「ポンペリポッサ化、か。同じ姿をした者が複数現れているというところだけを考えると、まるで量産型の雑魚怪人のようだな。飾られるような悪役が好みなら、早く姿を元に戻したほうが良いのではないか?」
 ――百菓繚乱、ハロウィンフラワー!
 乱れ飛ばす南瓜型に改造したヒールドローンはとても可愛く、そこからばら撒く菓子に花火は洒落て癒し効果抜群なのに。シヴィルの評価は極めて辛辣。そしてシヴィル、気付く。
 言った直後で何だが、ポンペリポッサの形が揺らぎ始めているのに。
 時同じくして、恭志郎と甚九郎も察する。
「なんだとォ、敵の巨大怪人は早くも退場かー!?」
「それだけオレたちが優秀ってことですかね、お頭!!」
 恭志郎のナレーションを追い、現状を的確に表現した甚九郎は、ひょいひょいっと巨大魔女の体を駆けあがり、魂喰らう拳を置き土産に叩き込んだ。

●みらくる・かおす!?
「女の子って何でできてるの?」
 爪先立ちでくるんと一回転。両腕を胸の前で組み、軽く握った拳を頬に当てる乙女ポーズできゅぴん。さすれば不思議。姫騎士ゴリラがみるみるショートボブの女子大生に早変わり。
「お砂糖とスパイス、そして素敵ななにもかも♪」
 小唄、心に秘めた女子力を全力放出。お菓子やぬいぐるみの可愛さMAXな幻影を背負って人型と化し、ついでにそのラブリーさで仲間たちの傷と心をきゅんっと癒し終えた途端。
「ほーっほっほっほ」
 気配を一転。小唄、姫騎士から悪の姫騎士へとイメージを変えたのだ!
「なん、じゃと」
「……」
『……』
 おかげで回復を受けた重臣のみならず八雲、そしてメアリ・アン・バースデイがぽかん。ゴリラから人間プラス善から悪へ。主に前者のインパクトが大きすぎて、ウェアライダーだからだって理解ってても脱帽は禁じ得ない。
「成程。確かに何でもあり、だな」
 しかし浪人ジークリットの立ち直りは早い。
「この一太刀は破邪の閃き……紫電。この斬撃、躱せはしまい!」
 というか好都合とばかりに走った。走って、刃を抜いて、目にも留まらぬ早業でメアリをざしゅっと薙ぎ払う。
「――斬り捨て、御免」
 とはいえ海賊団の頭目でありながらハッピーを満喫してるっぽい重臣は、ポンペリポッサ化が解除されたメアリの的にされてしまい。なんやかんやで疲労は蓄積。このままでは八雲が尻尾を腹ペタしてひゅんひゅん鳴いちゃいそうな展開に陥る可能性も否めない――しかし、そんな未来は絶対来ないのだ。何故ならば!
「はっはー! 騙されやがったな。本命は後で真の姿を現すもの! そう、実は俺が影の船長! キャプテンジャガーとは俺の事よぉ!」
 アイテムポケットに仕舞っておいた船長帽をささっと被り、ケルベロスコートをふぁっさぁと羽織った甚九郎が高笑う。
「トリックオアトレジャー、お宝か悪戯か、ってなぁ! 野郎ども、気合い入れて行けよ!」
 そうなのだ。いざとなったら的役を交代する手筈は重臣と甚九郎の間で約束されていたのだ。だがここへ来て、ケルベロスさえ予想していなかった展開が。
『……エ、と。ドッチを……?』
 いきなり姿を変えた小唄と甚九郎、どちらも獲物条件に合致してるものだから、メアリ迷った。
 迷った結果、
『……まトメて、幸福ヲ、頂くワ!』
 範囲攻撃をチョイス。重臣、安定の巻き込まれ確定。いや、そこはシヴィルと点心が頑張れるダメージ量だから無問題。
「頂く、なんてヤワな言葉じゃダメだね――根こそぎ全部、奪ってあげるよ」
 その上、メアリの台詞に心を疼かされたシエラが加速する。
(「人の幸福は人のもの。そして私の幸福は私だけのもの」)
 ――奪う、なんて。当然、一欠けらだって渡さない!
「君を斬ってつぶして、お宝は全部頂いて行くよ。なにせ今日の私は海賊だからね?」
 例え演技が苦手であろうと、投影出来てしまえば万事解決。どんな守りだってすり抜ける、と暴風纏わせた鉄塊剣でシエラはメアリを強かに打ち据えた。
『そ、ンナッ』
「セボンセボ~ン!」
 最早、猫人間を装うのに意味がなさそうな奇声を発し、刃蓙理がニャンっと構える。どうせなら弾け通すのがシリアス道のハロウィン極意。やるならば徹底的に。
「ぴっぴヴィラ~! セボ……爆発……!」
 一瞬、人語が混ざったのは詠唱だから止む無し。こうして刃蓙理が召喚したハロウィンぴったりの闇炎がメアリを焼くのを、恭志郎は攻撃しながら遠い目で眺めた。
 ――ハロウィンって、元は何でしたっけ?
 考えだしたらキリがない深淵から恭志郎、気合で顔を上げる。戦況は圧倒的有利。ヴィランズ・マリン・ガーデンにはもうすぐ平和が訪れる。願わくば、防犯カメラで撮られてるだろう現状が世界に拡散されませんように。
「トリックオアトリート! 菓子をくれなければ、退治してしまうぞ! 侵略者どもにハロウィンを汚されてなるものか!」
 敵味方の状況を鑑み、今は回復は不要と判断したシヴィルも攻勢に転じる。先が黒味を帯びる天使の翼で宙を駆け拳を繰り出す姿は、ほんのり悪に染まりかけてる魔法少女ちっくでもあった。

 ハロウィンを心から楽しみ、人々の平穏を早く取り戻そうとするケルベロスの熱意は、予想以上の速さで結実する。
 今やアンラッキーの欠片を集めた魔女は、ただの夢喰いとなり果てた。
「さぁ、物語はいよいよクライマックス! 最後を決めるのは誰になるのかぁ!」
 気を取り直した恭志郎のナレーションにケルベロス達は全乗っかり。シヴィルはぐーぱん、小唄は哄笑しながらこれまたぐーぱん、散らばるお菓子をつまみ食いしてた点心も慌ててぐーぱんならぬ猫ひっかき。
「さぁ、真の船長殿!」
「任された!」
 さり気に剣を収めぐーぱん勢に加わったジークリットからバトンを受け取った甚九郎は、曼荼羅型の後光をぴかーっとさせて、メアリ最後の一手を失敗に導く。
「ここで手加減せずに追い打つのが海賊の流儀じゃあ!」
 重臣、容赦ない。痛めつけられた分だけ倍返し。問答無用ですぺしゃるぐーぱん。ぐーぱん出来ない八雲は、神器でざくぅ。
「果たしてこれで良かったのか!? いや、良かったのだ!!」
「キミにどんな物語があったかは知らないけど。でも楽しい夜を台無しにしょうとした罪は重い。しっかり反省して来い!」
 開き直った恭志郎はメアリのドレスを破り(not非健全)、シエラは鉄塊剣を背負ったまま華麗に流星キック。これがまた、とんでもない威力を発揮してメアリを地に叩きのめした。
『あ、アっァ』
 青白い手が空を掻くのを、刃蓙理は静かに睥睨し。遂に最後の奇声を叫ぶ。
「魔女狩りは、これでお終い――ニャース!」
 〆は一応、猫っぽく。こうして刃蓙理は熱なき炎でデウスエクスの命を焼き捨て、はっちゃけモードへもさよならした。

●めでたしめでたし
 焼けた靴に、糸車。消え去ったアンハッピーの欠片たちが刹那、恭志郎の脳裏を過る。
 ――でも。
「折角ノリ良く仮装して来たのだ。このまま楽しもうか?」
 その方が人々も安心するだろうというジークリットの誘いに、負の余韻は吹き飛ぶ。
 不幸は幸せなパーティの賑わいで見送ろう。
 ハッピー・ハロウィン!

作者:七凪臣 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年10月31日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 9/キャラが大事にされていた 0
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。