女性用露天風呂覗きこそ男のロマン!

作者:小鳥遊ちどり

●とある温泉郷にて
 栃木県の深山にある温泉郷……の、倒産・廃業してしまった旅館の広い座敷に、10名ほどの男性が集まっている。この座敷、元は宴会場だったのだろう、前方に小さな舞台があり、そこに上がり彼らに向かって熱弁をふるっている者がいて……。
『女性用露天風呂は、男が覗くためにあるのだ! 覗きこそロマンである!』
 手前勝手な教義を繰り広げているのは、紫色の羽毛を持つビルシャナである。
『そもそも露天風呂とは開放的なもの、つまりそこに入っている女性たちも開放的であるからして、彼女らは覗かれること前提で入浴しているのだ! いや、むしろ覗かれることを望んでいるに違いない!』
 この場に女性がいたら袋叩きになること請け合いの屁理屈であるが、男性たちは、やんややんやの大歓声。ビルシャナの異形にも何の疑問も感じていないようだ。
『さあ、では皆で唱和するのだ……女性用露天風呂覗きこそ男のロマン!』
「「「女性用露天風呂覗きこそ男のロマン!」」」
『女性用露天風呂覗きこそ男のロマン!』
「「「女性用……」」」

●ヘリオンにて
「なんという男目線の屁理屈だ!」
「全くですよね、許せません!」
「女子だって開放的な環境で自然な姿でくつろぎたいのだ!」
「この変態鳥は、女性の権利を何だと思ってるんでしょう!」
「女の敵認定してやる!」
 今回のビルシャナを怒り心頭で罵りまくっているのは、発見者のエメラルド・アルカディア(雷鳴の戦士・e24441) と、セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)。
 鎌倉奪還戦の際にビルシャナ大菩薩から飛び去った光の影響で、悟りを開きビルシャナになってしまう人間が出ているのはご存じの通り。
「……というわけで」
 幾らか冷静さを取り戻したセリカが説明を始めた。
「この『女性用露天風呂覗きこそ男のロマン』という教義を広めようとしているビルシャナ化した人間と配下を撃破する事が今回の任務になります。但し、配下となりつつある男性たちは、説得によって戦う前に救出できる可能性があります」
 順調にいけば、ビルシャナと男性たちが唱和しているくらいのタイミングで介入することができる。
「ビルシャナの言葉には強い説得力があるので、放っておくと一般人はずぶずぶ深みにはまって、真の配下になってしまいます。しかしここで、ビルシャナの屁理屈を覆す、インパクトのある主張を行えば、男性たちが配下になる事を防げる可能性があります」
 配下となってしまうと、彼らは、ビルシャナが撃破されるまでの間、ビルシャナのサーヴァントのような扱いとなり、戦闘に参加する。
 ビルシャナさえ倒せば元に戻るので、説得無しでも救出は可能だが、配下が多くなれば戦闘で不利になるだろう。
 配下予備軍の男性たちは10名おり、弱っちいが、ビルシャナ経文のようなグラビティを使えるようだ。そしてやっかいなのは、倒すと死んでしまうということだ。
「男性たちは、ビルシャナの教義に多少なりとも納得している状態です。全く納得できない人たちは、逃げてしまっているはずですからね」
 ということは、彼らの認識を覆すには、かなりのインパクトのある説得が必要だろうから、言葉だけでなく、何らかの演出も加えてみるのも手かもしれない。
「少なくとも」
 エメラルドがキリっと顔を上げて。
「覗きは犯罪だし、女子には絶対嫌われるぞ!」
「そうですとも!」
 セリカも再び怒りの表情で、
「ビルシャナとなってしまった人は救うことはできませんので、覗きが実行されないうちに遠慮無く撃破しちゃって下さい!」
 と叫ぶと、ふと思い出したように。
「あ、怒りの余りに言い忘れるところでした。実は同じ温泉郷の中にステキな露天風呂を持つ秘湯の宿があるんです。そこは立派に営業してますし、無事に任務完了したら、寄ってこられたらいかがですか?」


参加者
シフカ・ヴェルランド(血濡れの白鳥・e11532)
エメラルド・アルカディア(雷鳴の戦士・e24441)
白焔・永代(今は気儘な自由人・e29586)
カヘル・イルヴァータル(老ガンランナー・e34339)
ルリディア・メリーバ(ハッピークランベリー・e41388)
ジュスティシア・ファーレル(エルフの砲撃騎士・e63719)
ルゴール・ブラッドマン(熱輝求む戦人・e66139)
霏・小獅(カンフー零式忍者・e67468)

■リプレイ

●それはそれは熱い説得
『女性用露天風呂覗きこそ男のロマン!』
 破廉恥ビルシャナとその信者の唱和を物陰から観察しながら、ルリディア・メリーバ(ハッピークランベリー・e41388)は、
「こそこそ覗くなんてさー、ロマンかなんか知んないけど、ダサいよね! 男らしくないっつーかさー! 見たきゃ見たいって言えっての!!」
「いやあ、覗きはロマン、てのは解んなくもないけど」
 と、白焔・永代(今は気儘な自由人・e29586)は女子達の手前首をすくめて、
「対象を言い訳に使ったらダメだよねん」
 ジュスティシア・ファーレル(エルフの砲撃騎士・e63719)は、永代をジロリと睨み付け、
「変態死すべし慈悲はない」
 手を組んでベキバキと指を鳴らし、シフカ・ヴェルランド(血濡れの白鳥・e11532)は、面白そうに笑って。
「ビルシャナと信者を相手する時は常識を捨てるべきですね……まあ衆目の中、真顔で全裸になれる私が常識を語るとか片腹痛いって話ですが。ともあれ、そろそろ湯の用意もできているようだし、行きましょう」

 湯の用意、というのは霏・小獅(カンフー零式忍者・e67468)の作戦である。
「はぁー、女湯を覗き見ってなぁ……んなら、こそこそしねぇで堂々混浴すりゃいいじゃねぇかよ」
 彼は廃業旅館の露天風呂を急いでヒールし、お湯を溜め、服を脱いでお湯に入った。そして入り口に背中を向け、ぱらりと長い髪を解き……。

 一方の仲間たちは、
「黙れ、変態共!」
 詠唱のただ中に突っ込み、信者に向けて説得を開始していた。
 いや、説得……と言ってしまっていいのかどうか、この場合。
 ジュスティシアは、
「一口に女と言っても年齢や体型等は千差万別、好みじゃない女を覗いたら、どうせ陰口をたたいたりするんでしょう! 覗かれた上に陰口までとは踏んだり蹴ったりです!」
 突入するなり、1人に向けて拳銃を撃ちまくった。
「覗いていいのは撃たれる覚悟がある者だけ!」
 頭や股間スレスレを銃弾がかすめまくり、信者は恐怖のあまりに失神してしまった。
 一丁上がり、とばかりにジュスティシアは、更にその隣で腰を抜かしている信者の胸ぐらをむんずとひっ掴み、
「覗いていいのは覗かれる覚悟がある者だけ! こうしてお粗末なモノを描かれるのも覚悟しないと」
 某旅団発行の薄い本(信者攻ビルシャナ総受)をぐいぐい押しつけ、更に顔を強引に仰向けると、
「温泉と言えば無礼講! 信者さんのーちょっとイイとこ見てみたいー♪ そーれイッキ! イッキ!」
 某旅団特製の青汁を無理矢理飲ませた。
 あまりの仕打ちに信者はすっかり心を折られ、ひいひい泣いてひれ伏した。これで二丁上がりである。
 またエメラルド・アルカディア(雷鳴の戦士・e24441)と永代の、何故かやたらと温泉で縁のある2人は、コントというには余りに残酷なステージを繰り広げていた。
「良いか? そもそも覗きとは法にも触れる犯罪なのだ。女性の許可も無く自らの欲望を満たす為に、最も落ち着いている場面を盗み見るなど外道の所業!」
「ひいい~、ごめんなさい~」
 首に『私は覗きをしました』と墨痕淋漓と記された札をかけ正座した永代の膝の上には、大きな石が積み上げられている。いわゆる拷問の石抱きだ。
「肌を見せるなど、夫か、想いの通じた異性のみ。覗きみる権利など――」
「そだね~、正面から頼んだ方が見せてもらえたりするもんね~」
「そういう問題ではない!」
 ケルベロスだから何とか大丈夫な石の量だが、その拷問と説教の凄まじさに信者らは完全にブルっている。
 またカヘル・イルヴァータル(老ガンランナー・e34339)とシフカ、ルゴール・ブラッドマン(熱輝求む戦人・e66139)は、数人の信者を前に、
「浪漫、それ自体は否定せんがね……だがお前らなんつった。覗かれる事前提? 寧ろ望んでいる筈? だから覗く? それが浪漫だ? ――ふざけるなや!」
「なんと小さきロマンじゃ……それくらいで満足とは今の若人は哀れじゃのう。男なら度胸! もっと大きなロマンに向けて突き進むのじゃ! 覗き? 見るだけ? いいや、もっとその先、女性用露天風呂にダイビングじゃ!」
「ええ、覗きなど邪道。本来入ってはならない空間へのダイブ、己が裸身を異性に晒し、異性の裸身に触れに行く。それこそロマンです」
「男子禁制の桃源郷に飛び込む背徳感、そりゃあもうゾクゾクして堪らんし、何より気になるおなごの谷間と尻に飛びつけるという、至福のひと時を味わえるんじゃ!」
「浪漫は掴めぬ希望との戦い、夢物語への挑戦だろうが! 極上の神秘を諦められぬからこそ追う! リスクを払う事もいとわず! 常識すらも踏み倒し! 故挑み止められぬ頂上への『挑戦』、それが浪漫てもんだろう!」
 何故か女湯突撃を奨励している。
「真に手に入れたいなら! 例えその先に待つのが罪罰だろうと、呵責吹き飛ばし踏み越えろ! 男がロマンを語るなら、叶わぬ理想へも手を伸ばして見せなぁ!!」
 ルゴールは威圧感でぐいぐい押し、
「真の男なら、正面から堂々と入って女の肌に触れなさい。私のこの体に触れていいのは、真の男のみ……あら」
 と、シフカは白く美しい肌を誇示しつつ、浴場の方をわざとらしく振り向いた。
「女湯に誰か入っているようですね、ふふ、私も入ろうかしら」
 さっぱーん、と湯をかける音が響いてくる。
「ホレ、ボーっと聞いてないで今行くべきじゃ! おなごの魅惑の肢体がおぬしらを待っておるぞい!」
 カヘルは年の功とばかりに煽り立て、そわついている5人の信者を、3人は囲むようにして浴場へと連れていきかけた……が、しかし。
「お、おお、おい、お前ら!」
 あいにくそこで乱入に虚を突かれていたビルシャナが我に返り、
「こんな突然入ってきたやつらにノセられてんじゃない!」
 後方の方にいた信者二人の襟首をつかんで引き留めてしまった。
 3人は内心舌打ちしたが、とりあえず捕獲している者だけでもオトしてしまえと、3信者をぐいぐいと浴場へと引っ張っていく。
 そして。
「そうれ、突入だー!」
 勢いに任せて飛び込んだ露天風呂で待っていたのは――下半身を湯に浸した華奢な背中。けぶる湯煙の向こう、脇を見せるかのように腕を上げ、長い髪を結い止める。
「お……おおお」
 3人の信者たち思わず声を上げたが、人影は動じることなく髪を結い上げ……。
 ザッパアア!
 そして正面を向いて立ち上がったのは。
「やーい、まんまと引っかかりやがったな。オレは女でなく男だ! ついでに入り口の暖簾もすり替えてやったから、ここは女湯じゃなく男湯だぁ!!」
 可愛いけど、れっきとしたオトコノコである小獅であった。
「お……おと……こ」
 信者たちは浴場の床へと崩れ落ちた。

●あっという間に孤立無援
 浴場から4人のケルベロスが広間に戻ってみると、残っている信者は、ビルシャナが力付くで引き留めた2人だけとなっていた。あとは仲間たちが心をへし折って叩き出した。
 残った2人もすっかり腰が引けており、ビルシャナは丸裸も同然。
「うぐぐぐ……せっかく集めた信者になんてことをしてくれる」
 怪鳥は怒りの炎をハトっぽい目に燃やしているが、全員集合したケルベロスたちは、冷静にそれを囲む。
 シフカが、
「戦闘準備完了……では、行きましょうか」
 鎖を腕に巻き付けると、
「ああ、先に信者を無力化しておこう」
 まずはエメラルドが手近にいた信者をひっ捕らえ、ゴツンと一撃手加減ゲンコツを喰らわせ、手っ取り早く失神させた。
「きーっ、まだ信者を減らす気か!?」
 怪鳥はいきりたち炎の孔雀を噴いたが、
「させないよんっ!」
 永代が、先刻アンナコトをされたにも関わらず、献身的にエメラルドを庇った。後方ではすかさずジュスティシアが、ソードで守護星座を床に描き前衛の守りを固めている。
 更にシフカが、
「触手の感触を、私と共に味わってもらいましょうか。螺旋忍法『貼足繰快楽宴』!」
 鎖を変化させた触手――ぬらぬらが何とも趣味的な――で足止めをかける。
 カヘルは縛霊手から紙兵を撒いて中衛の防御を高め、
「ほっほっほっ、若い頃はよく女湯に飛び込んだわい。後の地獄なぞ知らん」
 更にボクスドラゴンには永代をヒールさせる。
「ねーねー」
 ルリディアはラスト・ワンの信者に。
「なんでわざわざ隠れて覗くのー? 見たきゃ見たいって言えばいいじゃん!」
 信者はおたおたとルリディアと一応主であるビルシャナを見比べている。変な鳥よりもロリ可愛いドワーフ女子に同意したい気配満載であるが、呪縛から逃れきれずにいるのだろう。
「ああそっかあ、さては覗きがバレて『きゃーえっちー!』のビンタまでがロマンなんだね? じゃ今からビルシャナにビンタするから、それ見て気持ち変わらなければ覗いたらいいんじゃないかな!」
 ルリディアは敵めがけて跳躍すると、柔軟性抜群の腕を思いっきりしならせて。
「いやーんえっちィィィィイイイ!!」
 びったーーーーん。
 怪鳥が、とととっ、と横によろめくほどのビンタを喰らわせた。
「お……おおお、恐れ入りました」
「もうスケベ心につけこまれるんじゃないよ!」
 ひれ伏す信者を広間から蹴り出して、これでターゲットはビルシャナのみとなった。
「よし、ここからが本番だぜ」
「おうっ、信者は体張って説得してやったけど、鳥公には容赦しねえぜ!」
 これで心おきなく戦えるとばかりに、ルゴールが地獄の炎をめらめらと燃やし、小獅が如意棒を構えて飛び込んでいく。

●慈悲はない
 手下を削ぎ落としたビルシャナなど、もはやケルベロスの敵ではない。数分の後には、かなりのダメージを与えることができていた。
 エメラルドのライトニングロッドから放たれた電気ショックを浴びつつ、永代は星形のオーラを思いっきり蹴り込み、シフカは雷の霊力を宿した刃で、目にも留まらぬ突きを繰り出す。ルリディアは、しなやかな筋肉をめいっぱい使って斬撃を喰らわせ……と。
 ビシュルッ!
 苦し紛れのようにビルシャナが翼をばたつかせ、氷のリングを射出した。
 無数の氷輪は、中衛を襲うが、
「させるものか!」
 エメラルドはジュスティシアの前に立ちはだかり、シフカは、
「ヘイドレク、ルゴールさんを!」
「ありがとうございます!」
「すまねぇな!」
 ルゴールは壁となってくれたビハインドの陰から高々と飛び上がり、
「どっせえええぇ!」
 イフリートアックスの重たい一撃を、肩肉のあたりにザクリと見舞うと、
「ぐあっ!」
 羽毛と濁った色の血が飛び散り、同時にジュスティシアが床の間に残っていた古い石像に跳ねさせた弾丸を翼に命中させた。
 一方、ディフェンダー陣には、
「フローレスフラワーズのステップは、腰にグギッと来るんじゃ……」
 ぶつくさいいながらもカヘルが花びらのオーラを送っている。
 その間にも攻撃は続いている。小獅が魂を喰らう一撃を拳で、エメラルドはロッドから発した雷を敵へとぶちこんでいる。永代はチェンソーで、シフカは愛刀で挟み撃ちのように斬り込んで傷口を広げ、カヘルもここは勝負処とみて、フォローをドラゴンに任せ、自らはリボルバーの一撃で年輪を見せる。
 すかさず、
「喰らって奪や済む話よ……そう言う訳だ、クタバリな」
 ルゴールが黒液の牙で地獄の炎を爆ぜさせ、
「愛情こめて麺から作り上げました! さあ、召し上がって下さいね!」
 ジュスティシアの『フルーツお汁粉スパ・マヨネーズ&生クリーム特盛り』が、敵をピキーンと固まらせた。
「今だっ!」
 このチャンスを逃すまいと、クラッシャーの2人が元気よく飛び出し、
「こんにゃろー! とりゃぁーーっ!!!」
 渾身のビンタと、炎を宿した如意棒の突きを見舞った。
 ビルシャナは炎に包まれながら殴り倒され……それでも。
「の……覗くからこその……ロマンだっつーの……」
 結局最後まで主義を曲げることなく逝ったのであった。

●錦繍の露天風呂……なんだけど
 さて、お楽しみの露天風呂である。
「……え?」
 シフカは女湯に入ってきたジュスティシアが携えているブツを見て目を丸くした。
「不埒者への用心ですよ。残念ながら身内も要注意ですし」
 なんとビニール袋に密封した拳銃である。
 性的には大らかなシフカは苦笑して、
「まあ、一般のお客さんもいますし、さすがに狼藉は無いとは思いますけど……ね」
 と言いながらも、あの人とかこの人とかの顔を脳裏に浮かべずにはおれないわけだが。

「あぁー……生き返るぅー! たまりませんなぁー……」
 混浴風呂ではルリディアが思いっきり体を伸ばしていた。一般のお客さん含め、結構にぎわっているが、湯浴み着もつけていることだしキニシナイ。
 エメラルドは、そっと永代に近づいていくと、
「説得とは言え、さっきはすまなかったな……痛む所は無いか?」
「ぜんぜん大丈夫だよん!」
 永代はエメラルドと一緒が嬉しくてニコニコ。
「今日は大人しいのだな?」
「だって目の前に俺好みの美人さんが居るもん」
「そ、それは私のことか?」
「うん、もちろん……本当、美人。紅葉と美女、両方を同時に見れて、これぞ保養!」
「……ふふ、ありがとう。なんでかな、少しのぼせたような気分だ」
「照れてるのかーわいい。何時もの真面目な姿も素敵だけど、こういうギャップで尚更、魅力的に映るってねん」
「……もう」
 照れ隠しのように、ことん、とエメラルドの頭が永代の肩に載せられた。
 一方、小獅は。
「わー、女の子みたいで可愛い」
「ぼく何処からきたの?」
「じ、じーちゃんばーちゃんしかいないと思って、混浴にしたのに……」
 女子旅の女子大生に囲まれて隅っこに追いやられ、真っ赤になって縮こまっている……。

 で、男湯である。
「若ければ女湯に飛び込んだじゃろうが」
 というカヘルの呟きに、ルゴールは首を傾げ、
「知らん女の素っ裸見て、いったい何が楽しいんだいや……戦の方がアガるんだが。そりゃあ男よりゃ見苦しかぁないだろうけども、うーむ」
「今日は女性陣の年齢が幼く守備範囲外じゃしのう。ここは紅葉と焼酎をのんびり嗜むか」
 と言ってるそばから。
「む、混浴が賑やかだな」
 岩壁越しに混浴風呂からきゃっきゃうふふが聞こえてくる。主に小獅に群がっている女子大生の声だが、カヘルの年季の入った耳は熟女の声を聞き分けた。
「わし好みの一般人が居るようじゃ! こうしては居られん! 皆の者行くのじゃっ!」
「いかねーよ!」
 カヘルは腰にタオルを巻いただけで飛び出していったが、残ったルゴールは溜息をついて大岩に身を預け、
「やれやれ、ロマンを語ってはみたが、俺にゃあ未知の世界だぁな。温泉ぐらい、ゆっくり気ぃ張らず浸かりたいやね」
 小さく首を振ったのであった。

作者:小鳥遊ちどり 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年10月26日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 4
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