●流星の如き乱入者
暗い室内に飛び交う赤や青の光。駅前より少し離れた場所にある地下のライブハウスは、今日もそこそこの人が集まっている。
もっとも、所詮は小さなライブハウス。観客もせいぜい、多くて50人が良いところ。舞台の上で歌っているアイドル達のクオリティも、高校や大学の文化祭の演目よりは、少しばかり上といった程度。
「ふ~ん……。アイドルっていうから少しは歯応えあるかと思ったのに、このレベルじゃ殺すまでもない相手ね」
そんな中、突如としてステージに現れたのは、奇妙な仮面を被った従者を連れた1人の少女。いったい、これは何事か。突然のアクシデントに狼狽えるアイドルやファンを他所に、彼女はマイク片手に自前の歌を歌い始め。
「さあ、ここからは私のステージよ! あなた達のハートを、私の流れ星で撃ち抜いてあげるわ!」
先程までのアイドル達とは、比べ物にならない程のハイクオリティなパフォーマンス。時に激しい動きを加えながら、過激な台詞の入った歌詞を歌いあげる。付き添いの仮面男達も手にしたライトを振り回し、その盛り上がりに拍車をかけ。
「うふふ♪ まあ、こんなものかしら? さて……それじゃ、引き上げるとしましょうか」
そう、少女が告げると同時に、次々と彼女の後ろに着いて行くアイドルファン達。やがて、彼らの去ったライブ会場では、残された機材から流れる音楽だけが空しく周囲に響いていた。
●望まざる選定
「招集に応じてくれ、感謝する。アイドルとして地球社会に潜伏していた螺旋忍軍が、色々と動き出しているらしい」
彼女達の目的は、他のアイドルのライブに乱入し、そのファンを略奪して連れ去ること。だが、真に恐ろしいのはここからだと、クロート・エステス(ドワーフのヘリオライダー・en0211)は集まったケルベロス達に、事の詳細について語り始めた。
「山下・仁(ぽんこつレプリカント・e62019)が危惧していた通り、このまま放っておけば、連れ去られたファン達は黒幕であるシャイターンのところへ送られ、選定の対象とされてしまう。選定を受けた者達の末路は……まあ、お前達が考えている通りで間違いはない」
選定に失敗して死ぬか、それとも新たなエインヘリアルとして転生するか。どちらにしても、連れ去られた者達に未来はない。それを阻止するため、敵が出現するであろうライブハウスに向かい、螺旋忍軍を撃破して欲しいとクロートは告げた。
「敵の螺旋忍軍は、ステラ・コメットスター。『暗殺アイドル』という、随分と物騒な通り名を持っているぜ」
そんな名前に反し、彼女の歌は典型的なティーンズポップ。もっとも、暗殺者を名乗るだけあって、歌詞の内容や演出等は、セクシーさとは別の意味で豪華に過激な雰囲気らしい。これもある種の、ギャップ萌えというものなのだろうか?
ちなみに、元から歌っていたアイドルは気絶させられ、ライブハウスの隅に転がされている模様。放っておいても大丈夫だろうが、問題なのは敵の戦闘力と布陣である。
「ステラの武器は、一言で言うなら『星』だな。踊りながら星型の手裏剣を投げ付ける、星型のオーラを蹴り込むといった技の他、自らを彗星に見立て、敵に突撃して粉砕するという技も使って来るぞ」
手裏剣は広範囲に拡散して敵の動きを封じ、それ以外の技は、強固な防具でさえも一撃で斬り裂いて防御力を低下させてくる。加えて、ステラはオタゲイジャーと呼ばれる従者の螺旋忍軍を2体連れており、彼らを盾にしつつ、後方から的確な狙撃でこちらを狙って来る。
なお、オタケイジャーの武器は手にした2本の蛍光ペンライト。強烈な光を纏って光剣のように使ったり、繋げてヌンチャクのように振り回したりする他、癒しの光を発することでステラの受けたダメージを回復させようとするようだ。
「戦闘になると、ステラは戦いをオタゲイジャーに任せ、魅了したファンを連れて逃げ出そうとするみたいだな。これを阻止するには、お前達もライブハウスのステージに『アイドルとして乱入』した上で、ファンを奪い取ればいい」
会場の一般人達は正常な判断力こそ失われているものの、その代わりに『アイドルの魅力を判断する能力』が高まっている。つまり、この状況を利用してステラよりも優れたパフォーマンスを行えば、一気にファンを奪い取ることが出来る筈。ファンを奪い取られたステラは、再びファンを奪い返そうとケルベロスを排除する行動に出るため、撤退することもなくなるだろう。
万が一、ファンを奪えなかったり、そもそもアイドル勝負を仕掛けず戦闘に突入したりする場合には、こちらはファンを連れて逃げ出そうとするステラを阻止するための作戦が必要になる。
「シャイターンの目的は、本星への帰還手段を失って困窮している螺旋忍軍を利用して、選定に必要な人間を大量に用意するという悪辣なものだ。これまでの事件を見る限り、第四王女の作戦では無さそうだが……いったい、黒幕は何者なのだろうな?」
どちらにせよ、このまま犠牲が増えるのを、これ以上は見逃せない。
集まったファンに夢を与える、アイドルのライブに涙は不要だ。そう言って、クロートは改めて、ケルベロス達に依頼した。
参加者 | |
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立花・恵(翠の流星・e01060) |
イピナ・ウィンテール(剣と歌に希望を乗せて・e03513) |
皇・絶華(影月・e04491) |
ゼフト・ルーヴェンス(影に遊ぶ勝負師・e04499) |
リーナ・スノーライト(マギアアサシン・e16540) |
サロメ・シャノワーヌ(ラフェームイデアーレ・e23957) |
ルフ・ソヘイル(秘匿の赤兎・e37389) |
リアナ・ディミニ(謎のシンガー歌手ベロス・e44765) |
●参上、獰猛なるアイドル達!?
ライブハウスに広がる熱狂の渦。先程まで舞台の上で行われていた、学園祭レベルのものとは比べ物にならないパフォーマンス。
「うぉぉぉっ! ステラちゃ~ん、こっち向いて~!!」
「俺、ステラちゃんにだったら、殺されたって幸せだよー!!」
暗殺アイドル、ステラ・コメットスター。可愛さと過激さの相反するギャップ萌えを利用した彼女の雰囲気に、既に会場にいた観客達はメロメロだ。
「うふふ……さて、こんなものでいいかしらね。それじゃ、そろそろ引き上げ……」
両脇を固める仮面のオタ芸男達に目配せし、ステラは意味深な笑みを浮かべた。だが、彼女が観客達を連れ去ろうとした瞬間、唐突に部屋の照明が落ち。
「……っ! なんだ!?」
「おいおい、これもパフォーマンスなのか!?」
途端にざわつき始める観客達。そんな中、ステージの中央を突如として照らすスポットライトの明かり。そして、その中央に立っていたのは、シルクハットに白い仮面と白い服を身に纏ったリアナ・ディミニ(謎のシンガー歌手ベロス・e44765)と、何やら猛獣系の動物をイメージした装飾品を付けた集団が。
「謎のシンガー歌手ベロス、友達と共に飛び込み参戦、だよ!」
呆気に取られるステラや観客達を余所に、まずはリアナが元気よく挨拶。続けて、虎耳と虎尻尾を付けた皇・絶華(影月・e04491)が、ステラに向かって堂々の宣戦布告!
「悪いが、ここからは私達の……猛虎猛虎団のステージだ。同じアイドルとして、お前に勝負を挑む、ステラ・コメットスター!」
その瞬間、流れ出すのは光の意志と希望の歌。多少、恥ずかしく思いつつ、立花・恵(翠の流星・e01060)も精一杯に声を出し。
「み、みんなー! 暗殺アイドルなんかよりも! もーっと、盛り上げてみせるからね!」
まあ、何故か衣装が女物であり、どう見てもポジション的に男の娘扱いだったが、それはそれ。
「さあいくよ、がーお!」
猛獣風の演出を織り交ぜながら、サロメ・シャノワーヌ(ラフェームイデアーレ・e23957)がギターで演奏を盛り上げる。その後ろではゼフト・ルーヴェンス(影に遊ぶ勝負師・e04499)が光の輪でジャグリングを繰り出して、果てはおまけに風船も飛ばし。ルフ・ソヘイル(秘匿の赤兎・e37389)もまた、天井部分から盛大に花を降らせて仲間達の演出を盛り上げて行き。
「な、なによ、こいつら! あなた達、ぼ~っとしてないで、もっと私のことを盛り上げなさい!」
ステラも負けじと従者のオタゲイジャー達の尻を叩いて挽回しようとするが、残念ながらバックミュージックの主導権は、既にケルベロス達が握っている。
「まだまだ、この程度じゃ終わりません! 皆さんのハートも、ふわふわのもこもこにしちゃいますよー♪」
過激な歌詞の曲で応戦してくるステラに対し、イピナ・ウィンテール(剣と歌に希望を乗せて・e03513)はファンシー要素を前面に押し出し真っ向勝負。
漢字で書けば猛虎猛虎団。恰好は、どれも猛獣系の動物ばかり。しかし、実態はゆるふわ系のアイドルという、正にステラとは真逆の意味でのギャップ萌えを押しまくり。
「そろそろ、クライマックスかな? お客さんのハート……もらったよ……」
ステージの上で、衣装を早着替えしつつ花を撒き、華麗なステップを踏みながらリーナ・スノーライト(マギアアサシン・e16540)が告げる。見れば、既に観客達の心にステラの存在は欠片もなく、誰もが猛虎猛虎団の虜になっていた。
「流れ星で撃ち抜くには、ちょっとパワーが足りなかったみたいだな!」
勝利を確信し、にやりと笑う恵。ライブハウスに響き渡るコールも、もはや猛虎猛虎団を応援する声一色だ。こうなれば、もはやステラに観客達を先導する術はなし。ただ一つ、ケルベロス達を力技で排除して、再び観客を魅了する以外には。
「……やるわね、あなた達。でも、私のことを、ただのアイドルだと思わないことね」
マイクを降ろし、その手にはいつの間にか星型の手裏剣を握り締め、ステラは静かにケルベロス達へと告げた。
「私の二つ名は暗殺アイドル。私の邪魔をするアイドルには、悪いけど消えてもらうわよ……永遠にね!」
オタゲイジャー達がステラを守るようにして前に立ち、ステラ自身も螺旋忍軍としての本性を現した。が、それはケルベロス達も同じこと。実力行使の戦闘であれば、アイドル勝負以上に彼らの十八番。
ここからは、第二ラウンドの始まりだ。アイドル勝負は真剣勝負。文字通り、ステージの上は刃と刃がぶつかり合う、真の意味での戦場へと姿を変えた。
●激突、暗殺星!
格上の相手を暗殺によって排除する、非情なるアイドル、ステラ・コメットスター。だが、暗殺という姑息な手段を用いなくとも、彼女の実力は相応に高い。
戦闘においても、それは同じことだった。二人のオタゲイジャーに守られた彼女は、正に鉄壁の盾を手に入れた狙撃手に等しい。
「アイドル対決に勝って、ファンの皆さんも助けて見せます! そのためには……」
「まず……親衛隊をやっつけないと……」
それぞれの刃を握り締め、オタゲイジャーと対峙するイピナとリーナ。イピナの長剣が星辰の加護を広げて行けば、リーナのナイフが光剣と化した敵のペンライトと激しく斬り結ぶ。その度に、ステージの上で稲妻にも似た凄まじいエネルギーが迸り、天井に備え付けられていた照明の一部が砕け散った。
「二人とも、離れて! 撃ちまくるからな!」
スカートを翻し、敵の懐に飛び込んだ恵が、舞うような動きと共に銃弾を乱射する。恰好が未だに女物のステージ衣装のままだが、細かいことは気にしたら負けだ。
「ぬぅっ! やるな、こやつら!」
「しかぁし! 我らとて、腐ってもステラ嬢の親衛隊! ここで退くわけには行かぬでござる!」
脇腹に銃弾を撃ち込まれ、果ては頭が燃えているにも関わらず、それでも退かないオタゲイジャー達。どうにも邪魔で仕方がないが、しかし彼らを排除しなければ、いつまで経ってもステラに有効な攻撃を仕掛けられず。
「歌姫さんは、後ろで高みの見物か? だったら、いいものをくれてやるよ」
指輪より生み出した光の輪。それをステラ目掛けて投げつけるゼフトだったが、何故かリングはステラの頭を大きく逸れて、まるで明後日の方へ飛んで行く。
「なに、それ? もしかして、私を馬鹿にしてるの?」
舐められたと感じたのだろう。思わず憤慨するステラだったが、次の瞬間、盛大に何かが割れる音と共に、ステラ達、螺旋忍軍の頭上から、赤い色をした粉末が降り注いだ。
ゼフトは端からステラなど狙っていなかった。彼が攻撃したのは、先程のパフォーマンスの際に飛ばした風船だった。
「実は、中に唐辛子の粉末が仕込んであったのさ。しかし、こんな罠に引っかかるとは……って、痛ぇっ!?」
もっとも、ドヤ顔で決める暇もなく、飛んで来たのはステラの蹴り出した星型のオーラ。おまけに、顔面に食らって防具もズタズタにされたところへ、オタゲイジャー達まで殺到し。
「笑止! その程度の小細工で、我らを止められると思ったか!」
「代償は、己の命で償うがよいわ!!」
ヌンチャクのように連結させたペンライトで、ゼフトのことをフルボッコ! だが、よくよく考えれば、これは無理もない話である。
デウスエクスは、グラビティ以外ではダメージを受けない。当然、唐辛子粉末などステラ達にとっては何の効果もなく、ましてや二人のオタゲイジャー達に至っては、仮面で顔を覆っているために粉末が目や鼻に入ることさえない。
「大丈夫? さあ、気を取り直して立て直すよ!」
無残にも殴られ、倒れているゼフトに声を掛けつつ、リアナが紙兵を散布して行く。もっとも、味方に加護を与えることを優先した技である以上、これだけではゼフトのダメージを癒し切れない。
「こっちで牽制するっす! その間に、早くゼフトさんを!」
「分かった。彼のことは、私達に任せてくれ」
ステラと同じ星型のオーラ。それを蹴り込むことでルフが敵の目を引き付けている間に、サロメが桃色の霧を散布して、なんとかゼフトを集中攻撃のダメージから回復させる。それでも不足する部分は、テレビウムのステイがお手伝い。
正直、いくら防御に特化した間合いを取っていても、それだけで安心できるほどステラ達も弱くはなかった。ましてや、肝心の防御を脆くされたところに、オタゲイジャー達の集中攻撃を食らい続ければひとたまりもない。
「暗殺か……。私も、多少の技は知っているぞ」
故に、こちらの命を容易く狩れると思わないことだと、絶華はナイフ片手に念を押して言った。そのまま、何もない空間を刃で斬ったように見えたたが、それはほんの見せ技だ。
刃の先端から放たれた特殊な弾丸。それが着弾した瞬間、オタゲイジャーの身体が瞬く間に凍り付いてゆく。
「今だ! 奴を砕け!」
ここで体勢を整えさせるわけには行かない。絶華の叫びに他の面々も答え、オタゲイジャーの内の1体を集中攻撃!!
「ぬぅ……む、無念……」
ガラスの砕け散るような音がして、凍結したオタゲイジャーの肉体が粉々になった。
これなら行ける。勝利を確信したケルベロス達だったが、だからと言って油断はできない。
敵は狡猾なる螺旋忍軍。いつ、どこで、だれが姑息な手を使ってくるかもしれない以上、一瞬たりとも気を抜くことは許されなかった。
●星屑アイドル
激戦続く、ステージの上。気が付けば、二人のオタゲイジャーは倒されて、後はステラを残すのみ。
このまま行けば、押し切れる。勝利まで後一歩と確信するケルベロス達だったが、しかし彼らの消耗も、また大きい。
ステラの繰り出す星の技は、どれだけ強固な防具であろうと、触れるだけでズタズタにするだけの威力を持つ。だが、対するケルベロス達は、耐性を付けることに気を取られ過ぎて、肝心の回復が追いついていない。
「はぁ……はぁ……。つ、次は……」
癒し手のリアナは、既に息が上がっていた。まずは全員に耐性を付与できるよう、それだけに意識を集中させる。確かに、悪い戦い方ではないのだが……その分、リアナ自身の行動も制限され、更には範囲回復の宿命故、回復量が心許なくなってしまう。
「このままじゃ、お互いに無駄な命の削り合いだ。そろそろ、決めに掛かった方がいいかもしれないね」
ステイと共に大きなダメージを負った仲間の回復フォローへ回るサロメだったが、彼女とて、いつまでも守りに回って勝てるとは思っていない。本業が守り手である上、サーヴァントの維持に力を割いている状態では、やはりリアナ同様に、個々の回復量の問題が生じる。
互いに苦しい状況では、攻撃こそが最大の防御。ステージの上でアイドルを名乗る以上、締めも、散り際も共に鮮やかに。
「さあ、ゲームを始めよう。運命の引き金はどちらを選ぶかな」
敵との間合いを一気に詰めてゼフトが問い掛けたのを皮切りに、恵とルフもまた銃を抜き構える。
「一撃をッ!ぶっ放す!!」
「我撃ち出すは白銀の蛇。その蛙をむしゃっと残さず食らい尽くせ!」
瞬間、矢継ぎ早に撃ち込まれる、銃弾、銃弾、また銃弾。驟雨の如く降り注ぐ鉛弾を避けるべく、ステラも必死に手裏剣を投げて応戦しようと試みるが、さすがに3対1では分が悪く。
「……っ! きゃぁぁぁっ!!」
手裏剣は打ち砕かれ、前後左右からハチの巣にされて、ステージの奥へと吹っ飛んでゆく。それでも、辛うじて踏み止まりはしたが、しかし既に衣装はボロボロだ。
「まだまだ! これも、オマケに持っていきなさ~い!」
ここに来て、今まで支援に回っていたイピナも攻撃に回った。ステラが気付いた時には既に遅く、彼女の足元に撃ち込まれた弾丸は、時間でさえも凍結させて。
「私は知っている……アイドルとは即ち闘いであると。闘い武を挑むのであれば、私もまた全霊を以て抗するのみだ」
遊びは終わりだ。ここから先は、武人として挑ませてもらおうと、絶華はついに禁忌とも呼べる、自らの奥義を解放した。
「我が身……唯一つの凶獣なり……四凶門……『窮奇』……開門……! ……ぐ……ガァアアアアアア!!!!」
全身にハリネズミのような毛を生やし、牛の頭を持った怪物の影が絶華に重なる。襲い来る破壊の衝動を水際で制御しつつ、狂戦士と化した絶華は、本能の命じるまま目の前の獲物に襲い掛かり。
「そ、そんな……この私が、速さ負けしている!?」
未だ体勢を立て直すこともできていないステラを、手にした刃で滅多斬り! 思わず、退路を探して後ろを向いたステラだったが、そこに立っていたのはリーナだった。
「貴女はここで仕留める……絶対に……」
そちらが暗殺アイドルなら、こちらは暗殺魔法少女だ。同じ暗殺者として、正々堂々真っ向勝負。黒き4対の翼を広げ、リーナは漆黒の魔力刃を生成し。
「目覚めよ力……わたしの刃は全てを断ち、全てに死を与え討ち滅ぼす……! 黒死に呑まれ滅びろ……!」
躊躇うことなく、そのままステラに一直線。対するステラも、自らの身体を流星に見立て、真っ向からリーナへと挑んで行く。
激突する光と影。凄まじい爆発が二人を包み、やがて煙が静かに退くと……スポットライトの照らす下、立っていたのはステラだった。
「うふふ……。この勝負、私の勝ちみた……っ!?」
黒刃を床に突き立てて膝を折っているリーナを見下ろし、勝ち誇った表情浮かべるステラ。だが、唐突に脇腹を抑えたかと思うと、その表情は瞬く間に苦悶のそれに代わり、肉体が黒き魔力の奔流に飲み込まれ、消えて行く。
「同じ暗殺者同士……好き勝手できると思わないでね……」
片腕を抑えつつ立ち上がるリーナ。肉を斬らせて骨を断つ。報復者の刃の名を冠した一撃を前に、流星は地に落ち、消え去った。
●さらば、猛虎猛虎団!
戦いが終わり、周囲の片づけを済ませたところで、ケルベロス達は気が付いた。
ライブハウスに広がる熱気は最高潮。そこかしこから、猛虎猛虎団への声援が聞こえてくる。
「最っ高のステージパフォーマンスだったぜ~!!」
「「もっこもこ! もっこもこ!!」」
どうやら観客達は、先の戦いも含め、全てパフォーマンスだと思っているようだ。まあ、それはそれで後腐れなさそうだが、しかし今宵の主役は本来であれば、ケルベロス達でも螺旋忍軍でもない。
「ありがとー! それじゃ、またどこかで会う日まで、さようならー!」
最後まで謎の歌手を自称するリアナを先頭に、颯爽と去って行くケルベロス達。そんな中、未だ気を失っている本来のアイドルに、ルフは少しだけ目配せしつつ立ち去った。
(「君の歌も、頑張っていけば皆を引き寄せる歌になるっす。素敵なアイドルになれるよう応援してるっすよ!」)
作者:雷紋寺音弥 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2018年10月24日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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