
●某教会
「俺は常々思うんだ! 金髪バナナヘアーこそ至高である、と! だって、そうだろ! 見ろ、これ! 金髪のカツラに飾り付けられたバナナのアクセサリー! すごく……オチャレだろ? それに、ほら! 全身バナナ! ある意味、俺がバナナで、バナナが俺でって感じに思えないか?」
羽毛の生えた異形の姿のビルシャナが、10名程度の信者を前に、自分の教義を力説した。
ビルシャナ大菩薩の影響なのか、まわりにいた信者達は、ビルシャナの異形をまったく気にしていない。
それどころか、信者達は金髪バナナヘアーのカツラを被り、バナナルックに身を包み、美味しそうにバナナを頬張るのであった。
●都内某所
「難駄芭・ナナコ(爛熟バナナマイスター・e02032)さんが危惧していた通り、ビルシャナ大菩薩から飛び去った光の影響で、悟りを開きビルシャナになってしまう人間が出ているようです。悟りを開いてビルシャナ化した人間とその配下と戦って、ビルシャナ化した人間を撃破する事が今回の目的です。このビルシャナ化した人間が、周囲の人間に自分の考えを布教して、信者を増やそうとしている所に乗り込む事になります。ビルシャナ化している人間の言葉には強い説得力がある為、放っておくと一般人は信者になってしまいます。ここで、ビルシャナ化した人間の主張を覆すようなインパクトのある主張を行えば、周囲の人間が信者になる事を防ぐことができるかもしれません。ビルシャナの信者となった人間は、ビルシャナが撃破されるまでの間、ビルシャナのサーヴァントのような扱いとなり、戦闘に参加します。ビルシャナさえ倒せば、元に戻るので、救出は可能ですが、信者が多くなれば、それだけ戦闘で不利になるでしょう」
セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
「ビルシャナは破壊の光を放ったり、孔雀の形の炎を放ったりして攻撃してくる以外にも、鐘の音を鳴り響かせ、敵のトラウマを具現化させたりするようです。ただし、信者達はバナナ第一主義なので、説得は難しいかも知れません」
そう言ってセリカがケルベロス達に資料を配っていく。
「また、信者達はビルシャナの影響を受けているため、理屈だけでは説得することは出来ないでしょう。重要なのは、インパクトになるので、そのための演出を考えてみるのが良いかもしれない。また、ビルシャナとなってしまった人間は救うことは出来ませんが、これ以上被害が大きくならないように、撃破してください。それでは、よろしくお願いします」
そして、セリカはケルベロス達に対して、深々と頭を下げるのであった。
参加者 | |
---|---|
![]() 難駄芭・ナナコ(爛熟バナナマイスター・e02032) |
![]() 阿木島・龍城(錬成せし鉄槌と碧刃の主・e03309) |
![]() 彼方・悠乃(永遠のひとかけら・e07456) |
![]() ジュディス・トゥルーシャフト(閃光弾丸・e18548) |
![]() アンナ・シドー(ストレイドッグス・e20379) |
![]() 細咲・つらら(煌剣の氷柱・e24964) |
![]() リリベル・ホワイトレイン(怠惰と微睡・e66820) |
![]() 外村・瑠璃(地球人の妖剣士・e67063) |
●教会前
「つーか、金髪バナナヘアーってなんだよ」
アンナ・シドー(ストレイドッグス・e20379)は思わずツッコミを入れながら、仲間達とビルシャナが拠点にしている教会の前に立っていた。
ビルシャナは金髪バナナヘアーこそ至高であると訴え、信者達と一緒に金髪バナナヘアーのカツラを被り、バナナな日々を送っているようだ。
そのためか、教会の外観もバナナ仕様になっており、一見するとオシャレな青果店のような感じになっていた。
「確かに、バナナヘアーって何ですかね? 正直、人類学的な学術的興味はありますが……本当に何なのでしょうね」
阿木島・龍城(錬成せし鉄槌と碧刃の主・e03309)が、不思議そうに首を傾げる。
さすがにバナナを吊るしたカツラではないと思うが、やりかねないと思えてしまうところが実に怖いところであった。
「全くもーっ! いよいよもって意味が分からなくなってきちゃいましたっ! バナナが好きなのは良いとしてっ! えぇっ、確かに片手で食べられる栄養満点あまーい果実っ、とってもとっても魅力的ですともっ! まったく意味が分かりませんっ!」
細咲・つらら(煌剣の氷柱・e24964)が、混乱した様子で口を開く。
一体、どういった経緯を経て、このような教義に行き着いたのか分からないが、その理由を考えるだけで頭が痛くなってくるレベルである事は間違いない。
「まさかこのアタイの髪型ってワケじゃないよな……?」
難駄芭・ナナコ(爛熟バナナマイスター・e02032)が、気まずい様子で汗を流す。
とりあえず、心当たりは幾つもある。
あの時の信者か、それとも……あの時の信者か。
考えれば考えるほど、嫌な汗が溢れてきた。
もちろん、それが原因だと決まった訳ではないのだが、今まで引き金になるような行動をしてきたため、完全に否定する事も出来なかった。
「とにかく、ビルシャナを排除して変な教義が流行らないようにしましょうか」
外村・瑠璃(地球人の妖剣士・e67063)が、乾いた笑いを響かせる。
色々と分からない事ばかりだが、おそらく考えたら負け。
いや、考えるべきではないだろう。
「それじゃ、バリカンを準備しますね。もしかしたら使うかもしれませんから、しっかりと手入れもしておきますね。よく切れるようにしておかないと……」
彼方・悠乃(永遠のひとかけら・e07456)が、思わせぶりな態度でバリカンを握り締めた。
もしかするというよりも、確実に……使う。
そう確信してしまう程、その手に力が籠っていた。
「まあ、いつも通りにやるだけ! それでいいはず……多分!」
リリベル・ホワイトレイン(怠惰と微睡・e66820)も、サクッと気持ちを切り替えた。
何やら良く分からないが、考えるだけ時間の無駄。
そもそも、理解しようと思う事が間違いなのである。
「これがケルベロスとしての初任務でいいんだろうか、あたしは……。とりあえず、バナナパワーでなんとかしよう」
そんな中、ジュディス・トゥルーシャフト(閃光弾丸・e18548)が頭を抱えて、教会の中に入っていった。
●教会内
「いいか、お前等! 金髪バナナヘアーこそ至高ッ! 俺達はバナナに祝福された存在! 故にバナナ……バナナヘアー! つまり、俺達はバナナ! いや、バナナそのものだァ!」
教会の中にはビルシャナがおり、信者達を前にして、自らの教義を語っていた。
ビルシャナ達は金髪バナナのカツラを被っており、室内も沢山のバナナで埋め尽くされ、香ばしいバナナの匂いに包まれていた。
「髪型にこだわるなんて大変だなー。私なんか伸ばしっぱなしで、髪型作る気もないから常にロングだよ。これがまた楽、超楽ッ! 面倒なセットも、複雑な散髪も必要なし! 寝転んでも暴れても髪型が崩れる心配も無し! 実は自然な髪型で過ごすのが至高なのでは? 皆も面倒な事はやめて自然体で過ごそう!」
そんな中、リリベルがビルシャナ達に対して、自分なりの考えを述べる。
「伸ばしっぱなしなど、愚の骨頂! どうせ伸ばしているなら、バナナヘアーにすべき! バナナだ、バナナッ! いっそバナナになれ!」
その途端、ビルシャナがムッとした様子で叫ぶ。
まわりにいた信者達も、殺気立った様子で『そうだ、そうだ!』と叫び声を響かせた。
「時代錯誤……いや、同族にすら齧られそうなファッションですね。しかも、その格好って動きにくくないですか? ……暑いですし、ダサいですし、何から何までダメですね」
龍城がチョコバナナを食べつつ、ビルシャナ達に冷ややかな視線を送り、鏡をグイッと突きつけた。
「これがダサイ……だと!? お前の目は節穴か! これこそ、時代の最先端! パリで話題のファッションだぞ!」
ビルシャナが何の根拠もなく、上から目線で答えを返す。
まわりにいた信者達も、その言葉を鵜呑みにしているのか、何かの一つ覚えの如く勢いで『そうだ、そうだ!』と連呼した。
「とりあえず、バナナ萌えなのはわかりました。でも、カツラに萌えているのは、どうなんでしょう。一見オシャレに見えるかも知れませんが、私にはコスプレにしか見えないんですけど……。それより皆さん、本物のバナナを愛でて食べませんか?」
瑠璃が思わせぶりな態度で、美味しそうにバナナを頬張った。
「……というか、これ。本物のバナナだぞ? ほら、美味いッ!」
ビルシャナがカツラからバナナを引き千切り、モグモグと食べ始めた。
まわりにいた信者達も同じようにバナナをもぎ取り、『やっぱ、これが一番!』とばかりに笑顔を浮かべた。
おそらく、バナナホルダーなのだろう。
きちんと次のバナナがストック出来るような造りになっているようだ。
「……ですが、バナナになりたいとは、これいかにっ! そんな奇特な願いを抱くなんてアナタ達くらいのもので……あ!」
つららがハッとした表情を浮かべ、横目でナナコの顔を見た。
果たしてこれは言うべきか、否か。
そのため、時間ばかりが無駄に過ぎていく。
「なーにが『俺がバナナで、バナナが俺で』だ! おめーの掲げる教義はどうもインチキ臭いな! ナナコちゃんこそがバナナ! クイーン・オブ・バナナ! 見よ、この金髪サラサラヘアーにかわいいバナナ飾り! とてもアラサーとは思えないよ? そろそろBBA入ってるあたしには真似できない」
そんな空気を察したのか、ジュディスが何となくフォローを入れる。
「なんて言うかコレって、バナナ塗れになっているだけで、バナナに喰われてるようにして見えねえだろーが! 第一、バナナだらけでバナナが多すぎてダメだ! アタイのように程よくバナナを嗜んでバナナとの調和性を生かしたファッションを心掛けねぇとな。そこでまずはバナナ一本から始める至高のバナナファッションを伝授してやろう」
ナナコがバナナの達人の如く雰囲気を漂わせ、ビルシャナ達に駄目出しをし始めた。
その言葉に信者達が興味を示しているようだが、ビルシャナだけは御立腹。
『俺が世界の中心!』と言わんばかりに、イライラモード。
「お前等、騙されるな! 正しいのは、俺だッ! 俺だけだァ!」
ビルシャナが自らの怒りを押し殺し、恨めしそうに呟いた。
おそらく、ここで感情的になれば、『負ける』と判断したのだろう。
「……とは言え、バナナは皮を剥かれるもの。中身の真っ白さこそが至高。まずはつるつるに……そして皮も丁寧に剥いてあげますね」
すぐさま、悠乃がナイフとバリカンを構え、ビルシャナのカツラを剃り上げた。
「よくも、やったなァァァァァァァァァァァァ!」
これにはビルシャナもブチ切れ、バナナをイメージしたのと思しき破壊の光を放ってきた。
「バナナ? 三日月? まあ、どっちでもいいか」
それに気づいたアンナが、ギリギリのところで、破壊の光を避けるのだった。
●ビルシャナ
「お前等! こいつ等は敵だァァァァァァァァァァ! 俺達を惑わず歪んだバナナ! それがこいつ等の正体! 唯一無二のバナナは、俺! この俺だあああああああああああああああああ!」
ビルシャナが色々な意味で危機感を覚え、まわりにいた信者達を嗾けた。
まわりにいた信者達も訳が分からず、特攻モード。
そうしなければ済まないほど、ビルシャナはお怒り気味の様子である。
「えぇいっ、こんなに言っても分かって下さらない信者さんにはお仕置きですっ! 手加減攻撃で眠っててもらいましょうねっ!」
それを迎え撃つようにして、つららが手加減攻撃を仕掛けていく。
信者達も好きで戦っている訳ではないのだが、この状況を終わらせるにはこれしかないと言わんばかりに捨て身の覚悟。
そのまま滑り込むようにして、次々と床に突っ伏していった。
「お前等、もっと根性を見せろ! バナナか? バナナが足りんのか?」
それでも、ビルシャナは殺気立った様子で、傍にいた信者の口にバナナをグイグイと押し込んだ。
だが、信者達は目覚めない。
それどころか、余計に意識が深いところに沈んでいった。
「……と言うか、その格好……ださっ――い!」
瑠璃が冷ややかな表情を浮かべ、ビシルャナの服を引き千切る。
「これもいりませんね」
それに合わせて、悠乃がバリカンでビルシャナの羽毛を剃り、ハサミでカツラを切り刻み、何となく包丁でザクザクと突き刺した。
「ぐぬぬぬ、俺のバナナが……グググッ……」
ビルシャナがズタボロのまま、悔しそうにクチバシを震わせた。
「どう至高の存在から堕とされていく気分は?」
しかし、瑠璃は容赦なく、ビルシャナのカツラを奪い、目の前でグリグリと踏んだ。
「や、やめろおおおおおおおおおおおおおおお!」
それはビルシャナにとって、心を……心臓を踏まれているようなモノ。
怒りが恐怖に変わり、恐怖が絶望に変わっていった。
「まだまだ、こんなものじゃないぞ。クソ鳥にお仕置きの開始だ! オラオラァ喜べクソ鳥オバケ!」
その間に、ジュディスが間合いを詰め、ビルシャナに鞭を振り下ろす。
ビルシャナはボロボロと涙を流しながら身を守っているものの、心がポッキリ折れて、真っ白状態のようだ。
「まさか、この程度か? 大した事が無いな、バナナ愛も……」
アンナが呆れた様子で、ビルシャナに旋刃脚を繰り出した。
「来たれ我が刃よ、奔れ光の如く」
続いて、龍城が長大な紺碧の刃を持つ太刀を鞘ごと手元に召喚し、居合の構えから閃くが如き速さで振りぬき、ビルシャナの四肢を切り裂いた。
「俺はバナナが……バナナが……バナナナナァァァァ……っ!」
その一撃を食らったビルシャナが、血反吐を吐いて息絶えた。
「バナナを愛するのでなく、バナナに取り込まれた事が、そもそもの間違いだ。バナナの暗黒面に魅入られた時点で、アンタは終わっていた」
ナナコがクールな表情を浮かべ、ビルシャナに背中を向けて、バナナの皮を剥いていく。
この様子では、バナナが好き過ぎるあまり、バナナに取り込まれている事にすら、気づく事が出来なかったのだろう。
「……と言うか、バナナの暗黒面って……。熟し過ぎた感じ?」
リリベルが真っ黒なバナナを思い浮かべ、不思議そうに首を傾げた。
おそらく、腐っていると言う意味。
もしくは、喰えないヤツと言う意味かも知れない。
「……ん?」
そんな中、ナナコがのほほんとした様子で、美味しそうにバナナを頬張るのであった。
作者:ゆうきつかさ |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
![]() 公開:2018年10月12日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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