●
宮崎県は郊外のイベント会場。
「みんな〜けむりんに逢いにきてくれてありがと〜〜♪」
地下アイドルの立添煙が、滅多にない地方営業というチャンスを掴むべく、小規模ライブを行っていた。
日毎に寒さを増す秋空の下、バンドの生演奏が響く。
「けむりーん!」
重なるファンの歓声が、演奏を搔き消すほど多くはないのが何とも侘しい。
「倦まれ魘され押し潰されて〜今すぐ消えてしまいたい〜♪」
それでも、大切なファンひとりひとりの為に、心を込めて歌う煙。
少ないながらファン達も盛り上がり、会場の熱気は最高潮に達した、その時。
「はぁ〜い☆ 【四季】のギター、クロちことブラックウィンターで~っす☆」
突然、美々しく飾り立てた衣装の闖入者が現れた。
「みなさぁ〜ん、クロちの初ソロ曲、『寒い水曜日』聴いてくださぁ〜い♪」
ブラックウィンターと名乗ったアイドル螺旋忍軍は、取り巻きのオタゲイジャー2体へマイクのセッティングを任せると、勝手に持ち歌を歌い始めた。
「Close my eyes with your hand〜♪」
唖然とする煙とバンドメンバー、そして撤収を迫るイベントスタッフにも構わず、ブラックウィンターは歌うのを止めない。
「クロち頑張れーっ!」
「クロち可愛い〜」
「クロちの歌最高!!」
「みなさんありがとうっ、クロちをこれからもよろしくね〜♪」
終いには、何の催眠か洗脳か、けむりんファンをごっそり宗旨替えさせたブラックウィンターは、彼らを引き連れてイベント会場を後にしたのだった。
●ファン争奪戦
「アイドルとして地球社会に潜伏していた螺旋忍軍が、とうとう動き出したみたいであります」
小檻・かけら(麺ヘリオライダー・en0031)が困った様子で説明を始める。
「彼女たちは、他のアイドルのライブに乱入して、罪もないファンを略奪して連れ去ってしまうのでありますよ」
この連れさられたファン達は、山下・仁(ぽんこつレプリカント・e62019)が危惧していた通り、黒幕であるシャイターンの元へ送られ、シャイターンの選定を受けるという。
「即ち、死ぬかエインヘリアルにされてしまうかの二択であります……」
それを阻止する為にも、どうかイベント会場へ向かって螺旋忍軍を撃退してください——頭を下げるかけら。
「戦場となるイベント会場では、元々ライブをしていたアイドル、立添煙殿が螺旋忍軍の手によって気絶させられてるであります」
代わりに場を乗っとったアイドル螺旋忍軍『ブラックウィンター』は、そのコケティッシュな雰囲気に合った頽廃的な歌詞を、ゴスロリ衣装にぴったりなハードロックの調べに乗せて歌う、V系バンド風のアイドルである。
「立添煙殿の方も、人生を呪うような暗く陰鬱な歌で数少ないファンを繋いでいただけに、ブラックウィンターと方向性は同じであります……だから、ファンを奪い易いと思って狙われたのでありましょうかね」
かけらはそう推測した。
「ブラックウィンターは、背負った黒揚羽の羽から鱗粉を飛ばして攻撃してくるであります」
その鱗粉攻撃『甘美な誘惑』は、遠くの敵複数人を催眠状態に陥れる、理力に満ちた魔法である。
「他にも、『終末の鐘』なる持ち歌を歌って、近くの敵単体へ強い威圧感を与えるでありますよ。頑健性に優れた破壊グラビティであります」
更には、『裁きの鉄槌ギター』を振り回して、敏捷性に長けた射程自在の斬撃を敵単体へ浴びせる事もあるという。
「取り巻きのオタゲイジャー2体は、両手にそれぞれ持ったケミカルライト2本を用いて日本刀そっくりのグラビティで攻撃してくるであります」
また、ブラックウィンターは、ケルベロスが攻撃を仕掛けてもオタゲイジャーに応戦を任せて、自分は新たに得たファン達を連れて逃げ出そうとするようだ。
これを阻止するなら、戦闘を行う前にステージへ『アイドルとして乱入』して、ファンを奪い取る必要がある。
「会場の一般人はブラックウィンターに幻惑されている為、正常な判断力を失っていますが、その分『アイドルの魅力を判断する能力』が高まっていますから、ブラックウィンターを上回るパフォーマンスをなされば一気にファンを奪い取れるでありましょう」
ファンを奪い取った場合、ブラックウィンターはケルベロスを撃破した後に再度ファンを取り戻さねばならなくなり、撤退しなくなる。
「もしもファンを奪えなかったら、ブラックウィンターは隙を見てファンを連れて逃げ出そうとしますので、それを阻止する作戦が必要となりましょう」
かけらはそこまで説明すると、ふと溜め息をつくも、彼女なりに皆を激励した。
「シャイターンの目的は、本星を失って困窮状態にある螺旋忍軍を利用して、選定へ必要な人間を大量に用意させる……全くもって悪辣なものであります。どうかこれ以上の犠牲を出さない為にも、螺旋忍軍を撃破してくださいましね」
参加者 | |
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シェミア・アトック(悪夢の刈り手・e00237) |
日柳・蒼眞(落ちる男・e00793) |
キサナ・ドゥ(カースシンガー・e01283) |
ラーナ・ユイロトス(蓮上の雨蛙・e02112) |
愛沢・瑠璃(メロコア系地下アイドル・e19468) |
朱藤・環(飼い猫の爪・e22414) |
風戸・文香(エレクトリカ・e22917) |
禍芋・野鳩(紛い物ハート・e36800) |
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小規模なイベント会場。
「You surely will be back〜」
ブラックウィンターがノリノリでギターをかき鳴らし、洗脳したけむりんファンを前に歌っている。
「ニッチの谷間に咲く花を、摘んで浚うは山颪か!」
そこへ、ばん! と乱入し返したのがキサナ・ドゥ(カースシンガー・e01283)。
「同じ菓子なら美味い方を、同じ歌詞なら可愛い方を!」
真正面から喧嘩を売るキサナを、ばん! と愛沢・瑠璃(メロコア系地下アイドル・e19468)のウイングキャット、プロデューサーさんがドラムで援護した。
「だ、誰っ!?」
ブラックウィンターが悲鳴を発し、オタゲイジャー達は彼女を守るべく立ちはだかる。
「優れた方が『選ばれる』のは、逃れ得ぬアイドルの宿業よ!」
構わずキサナはステージの真ん中へ進み出て、前口上を続けた。
ばばん! と響くドラムに合わせ、ギタリストとして舞台に上がった瑠璃自身も、弦を弾く。
「そう、誰がなんと言おうが、世はアイドル戦国時代なのだからな!」
どじゃーん!
キサナが見得を切ると共に、瑠璃のギターも唸りを上げる。
(「アイドルを自分たちの野望に利用するだなんて、サイテーな奴ね! 絶対許せないわ!」)
激しい音色は、瑠璃の憤懣やるかたない胸中の表出なのかもしれない。
また、禍芋・野鳩(紛い物ハート・e36800)もベーシストとして、バンドの一端を担って音を奏でていた。
(「私には己の心がない。だが、キサナ殿や瑠璃殿、シェミア殿の心をファンたちに伝えることが出来るのであれば、私は彼女たちの道具となろう」)
緑色の無骨な装甲と桃色に光る単眼からは意外に思えるほど殊勝な心がけの野鳩は、あくまでサポート役の自分がアイドル達より目立ってはマズいと考え、この日ばかりは珍しく人型の外装を纏っていた。
確かに、彼女の現時点での身長から6とcを抜きたくなるような巨大ロボット然とした姿では、見る者のインパクト絶大であろう。
ちなみに野鳩の人型は、鮮やかな橙色の髪と緑色のタンクトップというビタミンカラーな取り合わせが体に良さそうである。
一方、
「あの人達、危なくないか」
「けむりんみたいに危害加えられたら」
「止めなくて大丈夫かな?」
ステージの袖でひそひそとさざめくイベントスタッフへは、日柳・蒼眞(落ちる男・e00793) がプラチナチケットで関係者を装い、説明に回っていた。
「4人はケルベロスだから心配無用だ。あの蝶を背負ったデウスエクスからファンの方を助けるには、サプライズのアイドル対決イベントをやり切る必要がある。照明等の演出を続けて貰えないだろうか」
簡潔かつ丁寧にイベント続行を願い出る蒼眞。
アイドル対決を一般人に邪魔されたくないと思うのも、ファンを無事に助け出したいからであり、彼らスタッフやバンドメンバーを戦闘に巻き込みたくないからである。
「わ、解りました」
蒼眞を関係者だと思い込んだ故の信頼の強さか、素直に頷くスタッフ達。
「にしても、久しぶりですねけむりんの家司さん」
「ああ」
「僕、けむりんが来るって聞いてこのイベントの設営願い出たんですよー」
中には、以前煙を助けた蒼眞の顔まで覚えているスタッフもいた。
「ファンの方々の避難誘導など裏方を担当致します風戸です。宜しくお願いします」
次いで、風戸・文香(エレクトリカ・e22917)がぺこりと頭を下げる。
敵含めた全員がキサナの乱入へ気を取られている隙に、出入り口や非常口付近で避難の妨げとなる荷物かないか、しっかりと確認してきた文香。
「こちらこそ宜しくお願いします。では、音響の用意を……」
避難誘導開始まで時間のできた彼女は、キサナのアリアデバイスや瑠璃のギターを拾う為の機材を繋ぎ出すスタッフの手際を、見るともなく見ていた。
何せ、電器店生まれな生粋のメカフェチでAV機器については専門家並みに詳しい文香だけに、ライブ音響のノウハウも熟知している。
(ここで変に口出しをしすぎても大変、ガマン、ガマン……」)
それ故、ミキサー係によるどことなく拙いコンソールの操作を眺めて、必死に口を挟むまいと堪えていた。
さて、舞台上では、変わらずキサナがマイクパフォーマンスの最中。
「ああ、クロちのやり方に文句はねえぜ。逆によくもまあここまで入念に準備したと褒めてやりたいくらいだ――だが!」
ビシィ! とキサナはブラックウィンターを指差すや、ヒメロペーの十字架をマイクがわりに構え直した。
「それなら自分が同じことをされても、当然文句はねぇよなあ、クロち!」
言葉に詰まるブラックウィンターの代わりに、おおおおお、とけむりんファン達が歓声と拍手で応える。
「私は、悪意の不在を信じない」
瑠璃、野鳩、プロデューサーさんが一斉に演奏を始めるは、キサナの新曲『蚕の誓い』。
キサナ曰く、全編日本語歌詞に拘った歌らしい。
「人の優しさは偽り」
現に、キサナは初めて聞く者にも解り易いよう、一語一語をはっきり歌い切っている。
「けど、すがれるものはキミの」
迫力のダンスパフォーマンスこそ無いが、キサナは歌詞に合わせた身振り手振りを織り交ぜ、今も縋りつくように天へ手を伸ばしてみせた。
「折れる杖に似た眼差し」
己のどうしようもない弱さや人間の持つ底知れない悪意に怯えながらも、私はあなたにすがって生きていく——デディケーション・ブランクの白が殊更眩く見えるような、切なく澄んだ歌声を響かせるキサナ。
自らの素を隠さず、それでいてけむりんファンへ合わせて暗めの曲に寄せたバランス感覚が見事だ。
余韻嫋々と曲が終われば、大きな拍手が会場を包んだ。
「アンコール! アンコール!」
けむりんファン達はすっかり『蚕の誓い』に酔い痴れ、キサナへ好感を抱いたようだ。
続いて。
「乱入は、多い方が盛り上がる、よね……?」
プリンセスモードでアイドルっぽい美々しい衣装に変身したシェミア・アトック(悪夢の刈り手・e00237)が、普段通りに醒めた声音を響かせ、舞台へ上がってきた。
青と黒を基調にしたゴシック調のドレスと敢えて晒した右腕の地獄が、シェミアのクールな佇まいと相まって、彼女が生来持つダークな雰囲気を高めている。
「あ、可愛いですー!」
裏方としてステージへパフォーマンススモークを投げ込んでいた朱藤・環(飼い猫の爪・e22414)も、シェミアの衣装が琴線に触れたのか見入っている。
彼女はラーナ・ユイロトス(蓮上の雨蛙・e02112)と共にイベント会場の出入り口へ陣取って、ファンの洗脳が解けた際スムーズに避難誘導を行えるよう準備していた。
(「他者のファンを奪い取る姑息な手段……許し難いね……」)
と、ブラックウィンターへ沸々怒りが沸くシェミアだから、無表情も僅かに強張っていく。
「この世界が地獄なら……死すら救いになるのでしょう……?」
シェミアは憂いを帯びた歌声をマイクに乗せて陰鬱な空気を醸し出しながら、なんと蒼き炎獄の裁首を振るって踊り始めた。
「地獄はいつでも口を開けて貴方を私を待っている~」
瑠璃がギターを弾きながら、その透明感ある美声でバックコーラスもこなしている。
(「片手にマイク、片手に鎌……キレのある蒼炎の演舞を魅せてあげる……」)
機内でこそ当惑していたものの、腹を括ったら吹っ切れたのか、元より与えられた任務は全力でこなす真面目さ故か——内心やる気満々で蒼い炎纏いし鎌の刃先をバトントワリングのようにくるくる振り回すシェミアだ。
蒼い炎が散るスタイリッシュな演舞に見惚れて、おお……と思わずファンらも驚嘆の息を洩らす。
「生きるも地獄死ぬも煉獄……何度堕ちれば底が見えるの……?」
本当は希望の篭った歌の方が好きというシェミアだが、怨念もとい心のこもった歌はファンのハートをがっちり掴んだようで、
「さっきの歌もこれも凄く良いな!」
会場の盛り上がりはまさに最高潮に達した。
「アンコール、アンコール♪」
皆に拍子を合わせて手を叩いているラーナも、ともすれば任務を忘れそうなほど、キサナや瑠璃、シェミアのライブへ熱狂していた。
●
「このままじゃマズいわ……行くわよオタゲイジャー」
ブラックウィンターは、シェミアの歌が終わる頃に出入り口から逃走を試みたが、
「あら、どこへ行くんですか?」
「簡単に逃がしはしないわよ!」
奴らの動向へ目を光らせていたラーナと環が、行く手を阻んで立ち塞がった。
「みんな、こいつらを……?!」
数の暴力で邪魔者を退かそうとしたのか、くるりと振り返って愕然とするブラックウィンター。
「どうして!? クロちの大切なファンが!」
洗脳していた筈のファンは誰一人、逃げようとするブラックウィンターへついていこうとしなかったからだ。
「キサナちゃん超可愛いー!」
「瑠璃ちゃん愛してるー!」
「シェミアちゃんこっち向いてー!」
今や、会場のけむりんファン21人は、新たに乱入したアイドルケルベロス達に夢中で、ステージから離れようとしない。
「貴方たちもクロちの魅力にシビれるがいいわ!」
ブラックウィンターは逃げるのを諦めると同時に、蝶の羽をバサバサ動かして鱗粉を撒き散らしてきた。
「アイドルの直接対決、だね……」
ステージから飛び降り、縫う程もいないファンの間を突っ切ったシェミアが、ラーナを背中に庇う。
「皆さん、この非常口から落ち着いて避難をお願いします」
懸命に声を張り上げる文香は、プリンセスモードで黄色いドレス姿に変身済みだ。
ふんわり広がるスカートと重なったフリルが姫系魔法少女風なショート丈ドレスは、ウエストとブーツが編み上げになっていて流行りの趣である。
(「……また、この格好するとは思いも寄りませんでした……」)
——ファン達には黄色のアイドル衣装……に見えなくもないかしら?
我知らず胸の高鳴りを覚えつつ、避難誘導へ勤しむ文香。
「みなさぁぁぁん、非常口はこっちですーっ! どうか慌てず騒がず避難してくださいねーっ!!」
環は割り込みヴォイスでイベント会場の隅々まで避難指示を届ける傍ら、逃げたくてもまごつくファンらをてきぱきと先導している。
「皆さん、押さない駆けない戻らないの精神でよろしくお願いしますね」
他方、エイティーンによるキラキラした輝きを目印に使うのはラーナ。
環の大音声や文香の誘導に加えて、文字通り眩く光っているラーナのお陰でファン達は非常口の位置を特定しやすくなり、彼らのスムーズな避難へ一役買ったのだが。
(「これが9年前の私ですか……元の方が落ちつくような。戻ったら戻ったで憂鬱になりそうな」)
18歳当時の肌のハリや髪のコシなどを体感したせいか、にこやかに見える表情の裏では複雑な気分に陥っていた。
「ここは我々が守る」
野鳩は重武装モードを発動していつもの身なりに変身、逃げるファンらへ具に声をかけて励ましていた。
「頑張ってね隊長さん!」
彼女のどっしりと頼もしい風貌に安心したのか、野鳩の呼びかけに応えるファンも。
こうしてファンらが非常口から外へ出る間、ブラックウィンター達の足止め役として応戦していたのは、アイドル3人と蒼眞だ。
「けむりんにゃー頑張って欲しいが、獲ったファンはただじゃあ返さねえぜ……!」
キサナは上機嫌ににやりと笑って、オタゲイジャーへ肉薄。
大地をも断ち割るが如き強烈さの一撃をぶち当て、奴の息の根を止めた。
「アイドルはファンに夢を与える者。決してファンの未来を奪う存在ではない」
野鳩はガトリングガンを両手で構えて、まるでマシンガンのように大量の弾丸を連射——別に巨大な薬莢が落下したりはしないが。
魔力こもった弾の群れはもう1人のオタゲイジャーを爆炎で包み、見事撃墜もとい撃破してみせた。
「残念だったわね。あんたの企みもここまでよ」
瑠璃は砲撃形態へと変えたドラゴニックハンマーをブラックウィンターに突きつけて断言する。
「逝く前になんで負けたか教えてあげる。アイドルのライブってのはね。アイドルとファンが一体になって初めて完成するもんなのよ。あんたの歌をファンへ一方的に垂れ流すだけのノイジーリサイタルをライブだなんてよく言えたもんね!」
ムッとしたブラックウィンターへ向かってハンマーを振り下ろせば、瑠璃の糾弾に負けない勢いで竜砲弾が発射。
「さあ、あたしのファンになって逝っちゃいなさい!」
そのまま弾は吸い込まれるようにブラックウィンターの腹部を撃ち貫いた。
プロデューサーさんは瑠璃の指示通り、パタパタとリズムよく清浄の翼を羽ばたかせ、後衛陣の異常耐性を高めた。
「絶望もいつか希望に変わる……あなたの歌ごと、刈り散らす……!」
静かに言い放って、『夢幻』の力宿りし蒼き炎獄の裁首を振り下ろすのはシェミア。
「その昏き想念……刈り祓って、逝け……!」
ブラックウィンターの胸を深々と斬り払うや、奴の霊体のみを刈り取り浄化して、妙な解放感を与えた。
蒼眞は、逃走中のファンらの目をも楽しませようと、軽快に歌って踊りながら戦っていた。
もっとも、雷刃突でせっせとブラックウィンターの衣装を突き破っている辺り、相変わらず欲望に忠実な男である。
「俺の道はおっぱいダイブ、そして落下と共にある!」
今は、召喚した残霊の小檻へおっぱいダイブを仕掛け、石英から蹴り落とされる定番の光景を再現。
ブラックウィンターの露出した胸へ飛び込み、強烈な顔面突撃によって激痛を与えた。
流石に敵でもアイドルの胸を揉むのは自重した模様。
ちなみに現場へ来るまでの間は、いつもおっぱいダイブではマンネリだとでも考えたのか、小檻の胸を背後から揉んでいたりする。
「これで、歌がうまい、とか、楽器が出来る、とかの才能があれば良かったのですが」
文香が魔女っ娘ステッキの代わりとばかりに、ブラックスライムをクロちへ嗾ける。
「辛うじて自信のあるのが、『耳』……これが役に立てば!」
結局ミキサー係へツッコめなかった鬱憤を晴らすかの如く、彼女を黒い塊に捕食させた。
「アイドル勝負ならともかく洗脳でファンを奪うなんて、よほど、アイドルとしては自信がないのでしょう」
回復の合間に攻撃へ移ろうとしたラーナは、息をするみたいに生来の毒舌さを発揮。
「ところで本業はなんですか?」
そう問うなり、歌で呼び寄せた怪雨をブラックウィンターへ浴びせ、苦痛と毒を全身に染み渡らせた。
さて、オタゲイジャー達相手には魔導金属片含みの高熱蒸気を噴射して、豪快に立ち回っていた環。
「まだまだいきますよーっ!」
全身に溜めた力と元々の筋力を黒曜石の両手槍に載せ、超高速斬撃を見舞って、遂にブラックウィンターの息の根を止めた。
「本業は……螺旋忍軍【四季衆】の頭領よ……」
ラーナへの返答が彼女の最期の言葉だった。
作者:質種剰 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2018年10月24日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 5/キャラが大事にされていた 1
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