●ラブソングに込めた想い
「わーたしーはー、あーなたーにー♪」
ゆるふわのポニーテールをぴょこぴょこ揺らして、ステージ上で快活に歌い踊る地下アイドル。
「フォーリン☆ ラヴッ!」
彼女、ユミカは元気良く歌うと、30人ほどのファンが集まる会場に、マイクを向けた。
「フォーリン☆ ラヴッッッ!!」
レスポンスを会場内のファン達が力強く返した、その直後、不意に伴奏が止んだ。
「駄目ですね」
舞台の袖から、ギターケースを手にした女性が現れる。
「歌唱技術も、歌に込めた想いも、何もかも足りません。あるのは勢いだけ。これでは、本当に人の心をつかむなどできませんよ」
教え子を諭すような言い方で、女性は口にする。その傍らには、螺旋の仮面をつけている、ケミカルライトを持った男が2人。
「え? え?」
困惑するユミカからマイクを奪うと、女性は言い放つ。
「聴いてください。『この恋は金木犀』」
それから、よく通る透明感のある声で歌い始めた。ギターケースは開けず、無伴奏である。
「――隠せないこの恋情は、あの花の香りと同じ。ああ、気づかれてしまうの」
彼女の左右に立った男の動きに合わせて、会場内の人々が、一人、また一人と、ゆっくりライトを振り始める。
彼女は、螺旋忍軍『歌田・恵子』。その催眠効果を伴う歌声は、会場内のユミカのファン達を、熱狂的な、恵子のファンへと変えていった。
やがてライブは終わる。ファン達は、ぞろぞろと恵子の後について会場を出て行くのであった。
●ヘリオライダーは語る
「地球社会に潜伏していた螺旋忍軍が動き出しました。彼女達は、アイドルのライブに乱入し、罪なきファンを奪い、連れ去ってしまいます」
白日・牡丹(自己肯定のヘリオライダー・en0151)は言う。
「連れ去られたファン達は、山下・仁(ぽんこつレプリカント・e62019)さんが危惧していた通り、黒幕のシャイターンの元に送られ、シャイターンの選定を受けてしまいます。もしそうなったら、死ぬか、エインヘリアルにされてしまうでしょう。……どうか、そんなことは阻止してください。ライブハウスに向かい、螺旋忍軍の撃退を、お願いします!」
牡丹は頭を下げ、それから説明を続ける。
「ライブをしていた地下アイドルのユミカさんは、キュートなダンスを交えた、明るく元気な曲を得意としていたようです。マイクを奪われた直後、配下であるオタゲイジャーによって気絶させられています」
一呼吸置いてから、牡丹は今回の敵について説明する。
「乱入する螺旋忍軍の『歌田・恵子』は、無伴奏で、しっとりとした歌を歌います。ユミカさんとのジャンルの共通点は、J-POPのラブソングであるということでしょうね。ポジションは、スナイパーです。催眠効果のある歌声で攻撃し、歌によるヒールも使ってくる他、ギターケース内に隠し持ったガトリングガンでの攻撃も行います。オタゲイジャー2体は、ディフェンダーに布陣して恵子を守ろうとする他、ケミカルライトを振ってぶつけて攻撃します」
牡丹はこう続けた。
「歌田・恵子は、ケルベロスが攻撃を仕掛けてきた場合、オタゲイジャーにケルベロスを任せ、ファンを連れて逃げ出そうとします。これを阻止するためには……戦闘を行う前に、皆さんがステージに『アイドルとして乱入』し、ファンを奪い取る必要が、あります」
つまり、ケルベロスが、約30名いる会場の一般人を、アイドルとしてのパフォーマンスで魅了する……という作戦が考えられる、ということである。
「会場の一般人は歌田・恵子に幻惑され、正常な判断力は失われています。ですが、その分、『アイドルの魅力を判断する能力』が高まっています。歌田・恵子を上回るパフォーマンスを行えば、一気にファンを奪い取ることが可能でしょう。それに成功すれば、恵子はケルベロスの撃破後にファンを取り戻さねばならなくなるので、撤退することがなくなります」
もしファンを奪えなければ、恵子は隙を見て、ファンを連れて逃げ出そうとする。その場合、阻止のための作戦が必要になるだろう。
「シャイターンは、本星を失い困窮している螺旋忍軍を利用し、選定に必要な人間を大量に用意しようとしています。悪辣ですね……。これ以上の犠牲を出さないために、螺旋忍軍の撃破をお願いします!」
牡丹はそう締めくくり、再び頭を下げた。
参加者 | |
---|---|
アルトルージュ・ストラトス(詩歌紡ぐ夜天の覇王・e02678) |
リコリス・セレスティア(凍月花・e03248) |
イルリカ・アイアリス(灯火と影歩き・e08690) |
ソル・ログナー(陽光煌星・e14612) |
チェリー・ブロッサム(桜花爛漫・e17323) |
葛之葉・咲耶(野に咲く藤の花のように・e32485) |
リンスレット・シンクレア(サキュバスのギャル系螺旋忍者・e35458) |
一比古・アヤメ(信じる者の幸福・e36948) |
●ケルベロス・アイドルライブ
歌田・恵子は、静かに歌い終える。拍手が会場を包んだ。
ファンを連れ出すという恵子の目的は、このまま達成されるかに見えた。
まさに、その時であった。不意に、スポットライトが、恵子とは別の者達に当てられたのは。
照明を操作したのは、リンスレット・シンクレア(サキュバスのギャル系螺旋忍者・e35458)である。
眩い光の中に立つのは、6名の女性ケルベロスだ。
(「さァ、ショータイムだ。バシっと頼むぜ、女性方。……野郎は、目一杯応援するからな!」)
観客に紛れて着席している、ソル・ログナー(陽光煌星・e14612)は、口元に笑みを浮かべる。
ざわめく周囲の観客に向けて、隣人力を用いながらソルは言った。
「あの子達はな。ケルベロスにして、素晴らしい歌声を持つ乙女達さ。可愛いから純朴、ギャルから清楚まで選り取り見取りだぜ? さ、よーく見な」
――そして聴き惚れろ。魂の歌を、恋する乙女の歌を、旋律を!
熱く願うソルと対照的に、ステージ上で、リコリス・セレスティア(凍月花・e03248)が静かに唇を開く。
「皆様、突然の乱入で失礼致します……私は、リコリス・セレスティアと申します」
眼下にはおよそ30名の人々。リコリスは、戦いの時以外に人前で歌うのは、不得手である。
(「ですが、これも人々を守るための戦い、ですから」)
そう意識を切り替えて、リコリスは宣言する。
「僭越ながら、メドレーの形で歌わせていただきます」
すぅ、と息を吸い込んで、アカペラによるリコリスの歌唱が始まった。
「遥か遠い貴方 私の声、届いていますか」
それは、落ち着いた印象を持つラブソング。メドレーの最初は、恵子が作った空気をいきなり壊さないよう、配慮しているのだ。
「貴方がくれた、優しい言葉 握り締めた約束に、まだ貴方の体温が残っていて 冷たい記憶に、涙する日々」
まるで、彼女の藍の瞳のように、悲哀の色を湛えた歌詞である。
「けれど それでもいつか、貴方と――」
未来への意志を表す言葉で、リコリスの即興歌は終わる。銀の髪をさらりと揺らして一礼し、リコリスは後方へ下がった。
入れ替わるように、アルトルージュ・ストラトス(詩歌紡ぐ夜天の覇王・e02678)と、イルリカ・アイアリス(灯火と影歩き・e08690)の2人が前に出る。
2人で共に立つ、初めてのステージ。
(「大丈夫。イルリカがいるなら、どこまでだって飛んでみせる」)
(「大好きな人と一緒に歌う。大好きな人に見てもらう。こんな幸せなんてないんじゃないかな」)
それぞれの想いを抱えた、彼女らの胸の鼓動が、一つに。
「悲しいことがあったり、辛いことがあったり」
「時には、そんな日もある」
デュエットが始まった。出だしは、リコリスの歌の余韻を継いで、ゆっくりとした静かな曲調だ。
「でもね」
「けれど」
「「恋は、それでも」」
次第にテンポが上がってゆき、サビへ。
「楽しくて」
「嬉しくて」
「「そう、温かい!」」
歌声と共に、白い手が伸ばされ、重ねられる。
「大好きな人と」
「一緒にいられる」
「「この、幸せ!」」
恋心が明るいリズムと共に歌い上げられて、二重唱が幕を閉じた。
一比古・アヤメ(信じる者の幸福・e36948)は、恵子へと視線をちらりと向けた。
(「他人の歌を貶すために使われる歌には負けないよ」)
それからアヤメは、チェリー・ブロッサム(桜花爛漫・e17323)、葛之葉・咲耶(野に咲く藤の花のように・e32485)の両名と共に前に出る。
アヤメは、歌は戦いに使うと決めているため、今回の作戦では演奏に徹することにしていた。
「すりーとぅーわん!」
チェリーの声と共に、キーボードの上をアヤメの指が走り、明るい前奏のメロディを奏でた。
プリンセスモードを発動し、ふわふわのフリルのついた衣装になった、チェリーと咲耶。
「……ねぇ、チェリーちゃん、これ変じゃないかなぁ!? 大丈夫だよねぇ!?」
「だいじょうぶだいじょうぶ、ちゃんと可愛いよ!」
「うう、こんなヒラヒラフリフリ落ち着かないよぉ……」
そんな初々しい掛け合いをする2人の姿を見た、会場の観客達が。
「……萌え」
「……可愛い」
そう呟いた。
「さあ! 今、届けるよぉ♪」
「ボク達のメロディを、キミのハートへ!」
咲耶とチェリーの歌が始まる。明朗でキュート、アップテンポなミュージック。
――ワアァーッ!!
歓声が上がった。
メドレーで、段々と場を温め、ユミカのような明るい曲へと持って行くという、ケルベロス達の作戦は、見事に成功したのである。
「さーて、そろそろ私の出番だねぇ♪ ……って、マジヤバっしょあれ!」
乱入のタイミングを見計らっていたリンスレットが気づいた。恵子が、ガトリングガンを咲耶に向けている!
ファンをケルベロス達に奪われたことを察し、向こうから戦闘に入ろうとしているのだ。
「そうはさせないかんねぇ、ケーコちゃん!」
地味なツナギを脱ぎ捨て、アイドル衣装を露わにしたリンスレットが、黒い翼を広げて両者の間に飛び込む。銃口から吐き出された弾丸は、咲耶に届く前に、リンスレットの体に阻まれた。
●始まった戦い
「ケーコちゃん、私のこと、覚えてないっしょー?」
血を流しながらも、恵子に向けて笑ってみせるリンスレット。恵子は彼女に、冷たい目を向けて答える。
「知りませんね、あなたのことなんて」
「とーぜんだよねぇ、私も好きくなかったしぃ♪」
チェリーの気力溜めによるヒールを受けながら、リンスレットはなおも笑って言った。
回復は十分と判断した咲耶が、紙片を取り出した。それは、葛ノ葉印の、便利な御札。シュレッダー代わりに作られた御札の、その失敗作だ。
「四つ裂き八つ裂き! 裂かれに裂かれて咲き誇れ!」
御札から解き放たれた呪は、空間ごと、オタゲイジャーの1体を無数に切り刻む。『彼岸割断呪』によるその傷跡は、幾重にも重なり、まるで彼岸花のよう。
安全な場所に避難してゆくファン達を横目に、ソルは恵子の前に立ち塞がる。
「地獄行きのアンコールは、まだこっからだぜ?」
親指を立て、勢いをつけて下に向けると同時に、カラフルな爆発が起きた。ブレイブマインによる爆風が、前衛の仲間達の士気を高める。
リコリスは清らかな声で歌い上げた。奇跡を願う禁じられた歌、『悠久のメイズ』を。オタゲイジャー2体に向けられたその歌は、うち1体に呪縛を与えた。
「同じアイドルとして、ファンの心を無理やり奪うなんて見過ごせない。……イルリカ!」
「はい、アルト! わたしも、許せません……正々堂々、なぎ倒してやりましょう!」
アルトルージュとイルリカが息を合わせて、各々の武器から、巨大光弾と竜砲弾を恵子へと放った。それらはオタゲイジャーがかばったものの、敵が受けた被害は決して少なくない。
「ゴザル!」
「ゴザゴザッ!」
オタゲイジャー達が振るったケミカルライトは、ソルを、アヤメを、打ち据えた。
「強化が解除されてしまったね……まあいい」
アヤメは、自らが受けていた士気向上効果の消失を感じながらも、冷静に呟く。それから、オラトリオの翼を広げた。
「白雪に残る足跡、月を隠す叢雲。私の手は、花を散らす氷雨。残る桜もまた散る桜なれば……いざ!」
飛翔し、死角から、翼の推力を加え急降下。手に螺旋の力を集め、オタゲイジャーに叩き込む。アヤメの我流攻撃忍術、『スプリングレイン』である。
「ケーコちゃん、あの曲、私の方が良い感じに歌えるかんねぇ♪」
リンスレットの言葉に、恵子は彼女へと視線を向けた。自分を狙う氷結の螺旋が、恵子の目に映る。
「隠したくないこの恋心、あの花の香りで隠して君へ。ああ、もう! どーして気付いてくれないの!」
リンスレットによって、アゲアゲな曲調で歌われる『この恋は金木犀』。彼女がステージで披露するつもりだった歌である。
明るい積極的な恋心を歌った、リンスレットの歌声と共に、螺旋氷縛波が放たれる。恵子の体の一部が、ぱきりと氷に覆われた。
「繊細な想いを表した歌を台無しにして……音楽への冒涜ですか?」
恵子はリンスレットへとそんな言葉を投げる。
「また注意するんだねぇ? ぶっちゃけそーゆーとこさぁ、やっぱ嫌い!」
はっきりと言ったリンスレットから、恵子は視線を逸らして、傷ついたオタゲイジャー達を見やった。
「LuLaLaLa LuLaLa――雫が今日も降り落ちる」
ヒールの手段である歌、『雨粒のまにまに』が歌われる。癒しを受けたオタゲイジャー達が、まだ頑張れるとばかりにケミカルライトを構えた。
●歌田・恵子の最期
恵子の回復支援もあり、ディフェンダーであるオタゲイジャー達はそれなりに粘った。だが、彼らはそう長くは耐えられなかった。まず1体が、リコリスのナイフの刀身に映った鏡像を見て、派手にひっくり返り死亡。もう1体もやがて、アヤメの『スプリングレイン』によって、散る花弁を思わせる血飛沫を上げ、命尽きて倒れた。
「くっ……」
悔しげに歯噛みした恵子は、催眠を与える歌で攻撃を行う。『この恋は金木犀』の歌詞とメロディが、前衛のケルベロス達の脳髄に染み渡る……だが。
「咲耶ちゃん、準備はオッケー? イケるよね! うんうん!」
「まだ何も言ってないんだけどねぇ!? ……まあ、なんとかするよぉ♪」
大きなロップイヤーを揺らし、とん、とん、と、愛らしいダンスステップをチェリーが踏む。花びらのオーラがふわりと降り注いだ。フローレスフラワーズである。
それに合わせる形で、咲耶が御札を宙に舞わせ、キュアウインドを吹かせた。
御札と花びらが、清々しい風に乗って、戦場となったライブハウスを舞い飛び、仲間達を癒していった。
「其の光は陽光の如く、傷付きし者を包み込み、痛みを癒すモノ!」
仲間を幾度もかばい護り、負傷の蓄積したソルは、天から擬似的な太陽の光を生み出し、自ら浴びた。暖かな『サンライズヴェール』が、ソルの心身を浄化する。
ケルベロス達の、回復の態勢は、万全と言って良かっただろう。
残りのケルベロス達による集中攻撃が、じわじわと恵子の体力を削ってゆく。
やがて、余裕を奪われた恵子は……。
「……雨粒のまにまに、聞こえるのよ、あなたの声が――」
自分に対するヒールを、行った。
「チャンスだねっ! 勇往邁進! ……避けられるかなっ!」
グラビティチェインで身体を一時的に強化したチェリーが、恵子に勁を打ち込んだ。その速度は、まるで雷。『雷鳴拳聖の発勁』である。
「キヒヒ♪」
奇妙に笑った咲耶のブラックスライムが、動く。意志持つその泥濘は、ごくりと恵子を丸呑みにした。
『別天津渾沌泥濘』から這い出た恵子を次に襲ったのは、ソルがばら撒いた見えない地雷。エスケープマイン、起爆――爆破。
さらに、アルトルージュが、足先から練り上げた力を利用し、拳打を放った。取り戻した過去の記憶の一部、教えられたことを思い出した技だ。顔も名前も思い出せない『あの人』……しかしそれでも、その教えは、アルトルージュの中で生きているのだ。
「か、はっ……ぐ……っ」
アルトルージュの格闘戦技能、『断空』をまともに受けた恵子が喀血して苦しむ。
「正直、お前の作戦はあまり好きじゃない。だから、容赦はしない」
螺旋忍者として、恵子へと言い捨てるように言葉を発したアヤメは、凍結の弾丸を精製し、射撃した。かろうじてそれを回避した恵子だが、直後にイルリカの攻撃が待っていた。
「全ての物も、全ての能も、1へと帰って泥となる――さあ、最悪の災厄を始めましょう?」
『虹彩術符/天災の十六番・全テノ災厄(アルカナイーリスナンバーシックスティーン・ピトス)』。イルリカの、『塔』のカードの力で、小さな箱がどこからともなく現れ、中から災厄を撒き散らした。
「恵子様。――貴方に、葬送曲を」
リコリスが歌うのは、『氷哀の葬送曲』。はるか昔に滅んだ一族の歌、静謐なる旋律。その歌詞は理解不能な言語だが、唯一、深い悲しみの想いだけは伝わる。それを聴いた恵子の頬を、涙が一筋伝った。
「私、には……使命が、あるのに……」
「ケーコちゃんケーコちゃん。そんなのさぁ、忘れちゃってもいいんだってぇ♪」
リンスレットが、秘密の道具を構えた。
「ギャルの本気、見せちゃうかんねぇ♪ 良い感じにデコっちゃうからさぁ、大人しくしてなよぉー?」
シュババッ――恵子の衣装は、一瞬のうちに改造された。ナチュラルで清楚な服は、露出が多くなり、ものの見事にギャル系スタイルに。これぞ、『デコりティブ』。
「い、嫌ああぁ、こんな恥ずかしい格好……こんな死に方、嫌あぁー!?」
それが、恵子の最期であった。
●あなたにフォーリン☆ラヴ
「イルリカもアイドルデビューしてユニット……いいかも?」
ステージを思い返したアルトルージュが、小声で呟いた。イルリカが少し頬を赤らめる。
「でも、アルトが歌ってるのを見るのが好きなので……」
まんざらでもなさそうに、けれども濁して、イルリカは答えた。
かくして、歌田・恵子を倒したケルベロス達は、ライブハウスを後にしたのだった。
……が、まだ場に残っているのが1名。ソルである。
ステージをヒールし終えた後に、彼は倒れているユミカに歩み寄り、起こす。
「怪我はないか?」
「う、う~ん……。えっ、ファンのみんなは!?」
がらんとした会場に愕然とするユミカ。
「あー、それはな……」
かくかくしかじか。
「そっかぁ……」
肩を落とすユミカに、ソルは言う。
「……その、なんだな、歌、聴いてたいんだが」
じゃらり。ソルの手で取り出されたのは……いつゲットしたのか、ユミカのグッズである。
ユミカはきゅぴーんと目を輝かせる。
「喜んで! ユミカ、歌いまーすっ!!」
かくして、ステージにユミカの元気な歌声が再び響き始める。
観客席に独り座ったソルは、ライトをリズム良く振り始めたのであった。
「フォーリン☆ ラヴッ!」
「フォーリン☆ ラヴッッッ!!」
1対1のコール&レスポンスが、楽しげにライブハウスに響いていた。
作者:地斬理々亜 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2018年10月24日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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