紅葉に紛れる不気味な蛇

作者:ハル


 高尾山口駅を下りれば、清涼な風と紅葉が、紅葉狩りに訪れた客を出迎えた。
 東京都高尾山。神社や寺など、日本古来の風景と見事な調和を示す美麗な光景は、見る者を圧倒していた。
「見て見てー!」
「写真撮ろうよ、写真!」
「すっごいねっ!」
 その日は、三連休も重なり、人も多かった。
 家族連れ、カップル、写真目当て、外国人、客層も実に様々。
 だが――ふいに異変。鮮やかな紅とオレンジが、霞むようにして緑に変色する。緑はやがて、鱗のような小片状の形状を見る者に伝えた。
「この程度群れてくれれば充分であるか。では、狩りの時間である。ニンゲンどもよ、グラビティ・チェインを我が主に捧げるのだ!」
「ああしかし、若い女は殺さずにおいてやっても構わんぞ。女であれば、生きたまま捕らえて献上しても、我が主は大いに喜ばれるであろう!」
 異変はそれだけに留まらず、紅葉の中にギョロリと不気味な目。悪意の込められた声が観光客達の耳に届いた瞬間!
「わああああああああっっ!!」
 耳を劈くような悲鳴が轟いた。
 姿を現したカメレオンに似た存在――堕落の蛇は真っ赤な長い舌を覗かせると、人々の虐殺を始めた……。


「東京都の高尾山にて、『堕落の蛇』と呼ばれるドラグナー2体の出現が予知されました。堕落の蛇は、紅葉狩りに訪れる人々の虐殺を画策しているようですので、すぐにヘリオンで現場に向かって下さい!」
 山栄・桔梗(シャドウエルフのヘリオライダー・en0233)が、息を荒げながら会議室に飛び込んだ。シーズン最盛期という事もあり、放っておけばそれだけ被害が甚大なものとなるのだろう。
「ドラグナーの出現場所が変更となってしまうため、事前に避難勧告は行う事ができません。予知が外れてしまえば、やはり甚大な被害が予想されていますから」
 ただし、ケルベロスが高尾山に到着し、ドラグナーの出現を確定できたなら、警察などの機関に避難誘導のために動いてもらう事も可能だ。それらの機関に避難の誘導をある程度引き渡した後は、戦闘に集中できるだろう。
「現場は高名な観光スポットであるため、非常に多くの人で賑わっており、移動すらも困難を伴うこともあるようです。そこで、元々数人の警備員が高尾山には配されているのですが、皆さんの内の何名かが警備員に扮することで、ある程度自由に動き回れるかもしれません」
 また、
「堕落の蛇は、紅葉の中に潜伏しています。一般の方の目での判別は不可能ですが、皆さんであれば、注意深く探索を行う事で、隠密行動中の堕落の蛇を発見する事も不可能ではないでしょう」
 その際は、堕落の蛇が行動を起こすのに先んじての先制攻撃が可能となる。避難はもちろん、有利な状態で戦闘を進められるだろう。
「先程も言いましたが、こちらで確認できた堕落の蛇は2体です。隠密偽装能力に特化しており、戦闘力は通常のドラグナーよりも下と考えて間違いないでしょう」
 桔梗が、一息つく。
「今年も紅葉シーズンを狙うデウスエクスが現れましたね。せっかくの三連休を邪魔させる訳にはいきません!」


参加者
機理原・真理(フォートレスガール・e08508)
エリオット・アガートラム(若枝の騎士・e22850)
リュリュ・リュリュ(仮初の騎士・e24445)
櫂・叔牙(鋼翼朧牙・e25222)
植田・碧(紅き髪の戦女神・e27093)
瀬入・右院(夕照の騎士・e34690)
ベルローズ・ボールドウィン(惨劇を視る魔女・e44755)
黒澤・薊(動き出す心・e64049)

■リプレイ


「綺麗な紅葉なのです……こういうのを観賞する気持ち、デウスエクスには無いのですかね」
 大勢の観光客に紛れた機理原・真理(フォートレスガール・e08508)が、周囲と同じく感嘆の吐息を溢す。
「隠密行動が得意なんて、厄介だわ」
 気配を消しながら、植田・碧(紅き髪の戦女神・e27093)は風にそよぐ赤髪を払った。
「それでも、私達がしっかりしないとね」
 判断を誤れば、これだけの人混みだ。どれだけ被害が出るか想像もつかない。周辺を油断なく、注意深く碧は確認する。
 その日――10月某日。
 度重なる台風の暴風雨にも負けじと、東京都高尾山では今年も紅葉が鮮やかな色彩を主張していた。
「手配初が少しでも役に立てれば……と思ったのだがな」
 手配書での位置探索は不発に。それでも、黒澤・薊(動き出す心・e64049)に落胆はない。サバサバとした様子で、薊はスマホを使って散らばる仲間に状況を報告する。
「お一人ですか?」
 ふいに、薊は声をかけられる。自分と同年代……大学生ぐらいの女性だ。
「ああ、一人旅が好きなんだ」
 薊がそう告げると、彼女は自分もそうなのだ、と笑った。その笑顔を見て、薊は『堕落の蛇』を発見しなければならないという決意を強くする。
(「若い女性が、多いところは……。この辺り、でしょうか?」)
 いかにも登山客といった格好をした櫂・叔牙(鋼翼朧牙・e25222)が、立ち止まって団体の女性客に目を付けている。とはいえ、叔牙の視線は件の団体客ではなく、その上部……紅葉に向けられていた。
(「虐殺はもちろん、若い女性を攫って貢ぎ物にするなんて……まるでオークの所業じゃないか……!」)
 ちょうどその時、エリオット・アガートラム(若枝の騎士・e22850)も、同じ場所に注意を払っていた。ケルベロス達は共通の認識として、風の影響で不自然に揺れる紅葉、もしくは逆に、そこだけ揺れない枝葉、色合い、境目のズレに注意を払っている。
「『了解よ』……と。やっぱりウォンテッドで発見は無理みたいね。まぁ、それで見つかれば苦労はない……か。――と、そこの人、前の人を押さないように!」
 薊に返信しながらも、プラチナチケットを使って警備員に潜り込んだリュリュ・リュリュ(仮初の騎士・e24445)が、ごった返す人波を整理している。
「それにしても、綺麗な紅葉……」
 風流という言葉が、これ程相応しい場所も早々ない。
「ここに血の色を混ぜるのは、いくらなんでも無粋が過ぎるというものね」
 リュリュが、最悪の光景を想像して眉根を寄せた。
(「さぁ、どこですか、虐殺の機を窺う邪竜の下僕ども」)
 仲間と連絡を交換しつつ、ベルローズ・ボールドウィン(惨劇を視る魔女・e44755)は、徐々に探索の範囲を狭めていった。警備員の作業服に身を包み、不自然さを悟られないようにベルローズは帽子を目深に被る。予知された条件に合う場所に、堕落の蛇は必ず息を潜めているはずなのだ。
「この辺りも的の姿はなし……だね。でも、近くにまで迫っているはずだ」
 標識ロープを手に、ケルベロスの中で最も高尾山深部を探索している瀬入・右院(夕照の騎士・e34690)が、息を吐く。ここは、無知な新人を装って先輩の警備員に聞いた、穴場のスポット。比較的新しい足跡を辿ってきたが、空振りに終わった。
「さすがに大勢の人間の殺戮を狙っている堕落の蛇が、人が踏みいらない場所に潜伏しないか」
 となれば、やはり堕落の蛇の潜伏場所は――。
 その時、右院の無線に連絡が入る。
「本当!? すぐに行くよ!」
 それは仲間からの、堕落の蛇発見の報せであった。

 エリオットと叔牙が、不自然な場所を注視している。
 他の仲間にはすでに連絡済みであり、リュリュと碧が中心となって避難誘導の手筈を整えているはずだ。
「若い女性が、多いところを注意していたのが、良かった……のかもしれません」
 叔牙の言葉に、エリオットが頷く。女性の誘拐は堕落の蛇の主目的ではないが、それでも手がかりの一つであった事は間違いない。警備員組程自由には動き回れなかったため、発見のタイミングとしてはギリギリだが。
 秋風が高尾山を抜けていく。
「……なる程、私の方でも目視しました」
 ベルローズはそこで、風にザワメク枝葉の中で、ある一カ所だけ静止したままの部位を発見した。
「一度気付いてしまえば、一目瞭然だな」
 薊が、紅葉を見上げる。堕落の蛇の魔の手が届く範囲には、薊と言葉を交わした女性の姿もあった。
「……私が先陣を切るですよ」
 真理が、スマホに内蔵されているカメラの焦点を堕落の蛇に合わせながら、ゆっくりと近づく。やがて、お互いの間合いに踏み言った瞬間!
「ギピィィッッ!!??」
 白いカモミールの花を咲かせた攻性植物を堕落の蛇に絡みつかせ、真理は先制攻撃を。
 エリオットは、鮮やかな紅葉の世界から突如抜け出してきたかのようにその全容を露わにした緑の鱗、ギョロリと不気味な目と長い舌を振り乱す堕落の蛇に、オーラの弾丸を浴びせながら、
「ここは危険です。警備員の指示に従って避難してください」
 事情を知らなければ、きっと自分もそうなっていただろう……呆然と、何が起こったのか理解すらできない紅葉狩り客達に向かって、告げるのであった。


「リュリュさん、警備員の人達を集めてきたわ!」
「ナイスよ、碧! なら――デウスエクスの襲撃よ。ケルベロスが相手をするから、警備員の指示に従って避難して頂戴!」
 騒然とする高尾山に、リュリュの叫びが響き渡る。
 エリオットの最終決戦モードでの呼びかけも功を奏しているのか、今の所その場でへたり込むような者は見受けられない。
 同時に、碧が協力を要請した警備員が、メガホンでこのまま落ち着いて下山するよう紅葉狩り客達に呼びかけていく。
「向こうにもわたしの仲間がいる! あなた達もそっちに急ぐんだ!」
「さぁ、走って!」
 薊と右院の声が聞こえると、奥からまた数人の紅葉狩り客が逃げ出してきて、リュリュ、碧、警備員に迎え入れられた。
 と!
「それは、ビフレスト北方に住まう氷獣の爪であったとも、絶海の島に眠る深淵を闊歩する犬の足爪であったともいう――」
 薊の声の元――戦闘が繰り広げられている現場では、完全に不意を突かれた堕落の蛇が、今まさにケルベロスコートの裾を翻した右院に蹴りを喰らわされ、呪われた野獣の爪の威力を体感している所であった。
「美しい自然を、愛でる場を。荒さないで……頂きたい物です」
 蒼の放出フィンを展開した叔牙が、星型のオーラを堕落の蛇に叩き込む。時折牽制を交える事はあるが、狙いは徹底してDfに。
「あなた方がどう堕落するのか、しているのかは知りません。知る必要もないでしょう。あなた達の行く末は、一つなのですから」
 堕落よりもさらに下方、地獄という果ての無い闇に堕ちろと、ベルローズが生み出した「虚無球体」は堕落の蛇の肩口を跡形も容赦もなく飲み込んでいく。
「ケルベロス!! 貴様ら!!」
 文字通り消失した自身の一部に、堕落の蛇は激昂を露わにした。
 しかし、ケルベロスは堕落の蛇の激昂など一顧だにしない。今この時ケルベロスにとって重要な事項は、紅葉狩り客の避難が無事に進んでいるか、否かだけである。
 薊の装甲から光輝くオウガ粒子が放散され、堕落の蛇の攻撃に身構える。
「我が主への供物を横取りするとは!」
「恐れを知らんようだな、ケルベロス共よ!」
 次の瞬間、態勢を立て直した堕落の蛇が襲い来る。
 Jm堕落の蛇が、同胞の風景同化能力を強化させ、ケルベロスの目を欺いて間を生み出し、身を苛む影響を緩和させる。その隙に、Df堕落の蛇が、前衛へと一斉に背後から不意打ちを喰らわせようと迫った。
「プライド・ワン、頼むです!」
 エリオットへの不意打ちをプライド・ワンが、叔牙が躱して間一髪、難を逃れる。
「なるほど、です……ね」
 その一連の攻防に、叔牙は堕落の蛇が通常のドラグナーより戦闘力が劣ると説明を受けた事を思い出す。
 さらに――!
「待たせたわね。この辺りの人達は警備員さんに引き渡したわ!」
「遅ればせながら、戦乙女二人、参上……といった所かしら?」
 響き渡る碧の戦乙女の歌が奏でられる中、碧とリュリュが合流を果たす。スノーも、翼を羽ばたかせて援護する。
 リュリュがブラッディ・バディから粒子を放散する事で、ケルベロスは十分すぎる命中の補正を得た。
「……よくやってくれた、二人とも」
 被害が出ていない事を知り、薊の口元が少し緩む。
「そういう薊も、随分と力をつけたじゃない?」
 努力の成果だと、リュリュは素直に称賛を。
 綺麗な景色を見て感動する、それを他の誰かと共有する……そういった感情を少しづつ薊は理解し、新しい世界との出会いに感謝した。


「汚い舌で触らないで!」
「ゲゲッ!!?」
 リュリュの肢体を真っ赤な長い舌が拘束する。対しリュリュは、大型の機械騎兵槍――バスターランサーに凍気を纏わせて応戦する。
「だから好き勝手にさせないと言ったはずです!」
 自身の片腕に走る赤い舌の痕跡、感触を振り払うように、真理は自ら改造して出力を上げたチェーンソー剣を唸らせた。爬虫類は、舌に臭いを感じる器官があるという。似た見た目とはいえ、デウスエクスに特性が適用されているかは不明だが、女を攫う事を目的の一つにしている奴らだ。伸びる舌に味見でもされているようで……。
「気味が、悪いです、ね」
「……女性の敵ですね」
 ドラゴニック・パワーで加速した叔牙が、チェーンソー剣の一撃で血を噴き上げる堕落の蛇に、ハンマーを叩き込む。
 ベルローズは、理知的な色を宿す瞳を細め、露骨に嫌悪感を示した。
 右院が、武装に空の霊力をを帯びさせて振り抜く。手に伝わる手応えは、右院に戦況が優勢な事を伝えるに十分なもの。
(「避難の方は順調に進んでいるだろうか……」)
 ふいに、右院の脳裏を自分に良くしてくれた警備員が過ぎる。本当に短い間であったが、彼を含めて無事であって欲しいと右院は願い……。
「植田さん達も気を付けて!」
「ええ、分かっているわ、瀬入さん」
 碧に注意を促した。ベルローズと薊は、Df堕落の蛇によって、怒りの感情を増幅されてしまっている。ケルベロスの戦術上、大きな障害とはならないが。
「一旦、落ち着きましょうか」
 碧が、カラフルな爆風を発生させる。
 スノーが、尻尾の輪を飛ばした。
 その時!
「櫂さん!」
「ッ!?」
 エリオットの警告も間に合わず、周囲と同化していたJm堕落の蛇が、ナイフで叔牙の褐色の肌を切り裂いた。
「虐殺、不意打ち、あげくは女性を貢ぎ物に……外道め……騎士の矜持に誓って、僕は絶対に許しません!」
 稲妻を帯びたゲシュタルトグレイブが、堕落の蛇を貫く。
「我が主への献上品如きが、調子に――グフッ!」
 強気に睨み付ける堕落の蛇だが、ついにダメージの蓄積により、黒々とした体液を吐き出す。
「上手く機能したみたいね、今よ!」
 怒りを隠れ蓑に、Jm堕落の蛇からDf堕落の蛇への徹底したヒールの効果が、比較的早い段階で追いつかなくなったのは、リュリュと右院の功績でもあった。
 リュリュが呼びかけると、ケルベロスが畳みかける。
「怨嗟に縛られし嘆きの御霊達よ。ここに集いて、我が敵を貪るがいい!」
 【死霊魔法】――スペクターハンド。ボールドウィン家に伝わる禁断の書物が魔を紐解く。死者達の怨念満ちる「惨劇の記憶」が具現化し、海指された漆黒の腕が堕落の蛇を絡め取り、地の底へと導こうとする。
 魔に囚われようとする堕落の蛇の霊体を、薊は斬霊刀で斬り刻む。
 真理が、炎を纏い特攻するプライド・ワンに搭乗し、コンビネーションでチェーンソー剣を振るった。
「櫂さん、受け取って!」
「碧さん、感謝、です。……この位なら、まだ……いけます!」
 碧からのオーラを受け取り、叔牙が放出フィンからエネルギーを噴き上げる。
「撃ち抜く……!」
 エネルギーは、後方に大きく振り上げられた叔牙の手を硬質、鋭利化させ、一閃!
「ガァッ……!」
 Df堕落の蛇を貫く。
 さらに、追撃として叔牙の前腕フレームが伸縮して奥までねじ込まれると、堕落の蛇は断末魔の叫びを上げた。
「よ、よくも同胞を!」
 残った堕落の蛇は、舌を伸ばしてケルベロスの行動を抑制しようと試みる。
「刻む――」
 だが、元々戦闘力に特化しておらず、リュリュのルーンを刻んだ右手で氷の祝福をを受けると、攻撃のみならず防御面でもさらに弱体化を強いられる。
「さぁ、終わりの時間です」
「地獄とあなたの元同胞が、手ぐすねを引いてお待ちですよ」
 エリオットの空の霊力を帯びた斬撃、ベルローズの「水晶の炎」に堪えられるはずもなく、もう一体の堕落の蛇も、程なく息絶えるのであった。


 周辺のヒールを終えたケルベロス達は、右院案内の元、穴場スポットに移動し、まったりと紅葉狩りを楽しんでいた。
「あまり味に自信はないですが……良かったらどうぞです」
 真理が、少し迷いながらも自作した王道と呼べる食材で彩られた弁当を勧めると、
「実は私もおにぎりを用意してきたのです。お弁当がない方は、お分けしますよ」
「紅葉を見ながら、皆で共に食べようではないか、遠慮は無用だぞ」
 ベルローズと薊も、それぞれ弁当を。特にベルローズのものは、鮭に梅干しに昆布佃煮にきのこおこわ、栗ごはん、高菜巻きおにぎりと、実に多用であり、手にも取りやすい。
(「……あれ、もしかして女性陣の中で何も用意していないのって、私だけ?」)
「こんな絶景の中にいるのだから、写真で残しておかないと損よね?」
 カッコいいお姉さんを目指し、自称する碧は密かに失態に冷や汗を流すが、そうとは露とも知ないリュリュに、引き攣った笑みを記録として残されてしまう。
 だが――そうか。ヒラリと、碧の髪に紅葉が舞い落ちる。
 指先で抓み、空を見上げると、それは小さな事だと思い直す。絵画の世界にいるかのような景色に、自然と笑みが浮かんだ。
「リュリュさん、次は、僕が」
「ええ、お願いするわ」
 しばらくすると、リュリュに変わって、叔牙がカメラを構える。
(「何かあったのかな」)
 カメラに移るために隣に陣取るリュリュの口調の変化に、今更ながら右院は首を捻るが、空気は読める方だ。
 叔牙の掌の中には、見つけた一番鮮やかで綺麗な紅葉が。元気溌剌な彼女が喜んでくれる様を叔牙は想像しつつ、シャッターを切った。
「十分美味しいですよ、真理さん。もちろん、ベルローズさんのおにぎりも、薊さんのお弁当も」
 エリオットが告げると、幸せそうな笑みが帰ってくる。
(「ああ、この美しい世界と、人々をこれからも……」)
 満ち足りた心地に浸りながら、エリオットは行儀良く箸を伸ばすのであった。

作者:ハル 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年10月17日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 3
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