●お前がクルーだ!
若者の集う街。今やメイド喫茶は数を増やし、多様を極めた。
ここ『海賊メイド喫茶』は、黒と赤が基調の海賊風のコスチュームで、従業員は『船長』、客は『クルー』となる。
「あのおっぱい! けしからん船長でござるな!」
「どれどれ……ほうほう、しかも童顔美少女とはたまらん!」
天井裏で鼻息を荒くする2つの影。螺旋忍軍の影羽衆だ。
「あの船長を改造すれば、さぞ優秀なクルーとして売り込めるでござるな」
影羽衆は頷き合い、表情を引き締める。
「逃げる者は追わぬ。しかし、邪魔する者は斬り捨てる」
「おっぱい船長以外にグラビティ・チェインも貰っていくのも悪くないでござる」
武器を握る手に力を込め、
「いざ──!!」
天井から2体の螺旋忍軍が降ってきた。
●影羽衆の企み
「今は色々なメイド喫茶があるようですが……海賊メイド喫茶に螺旋忍軍の一派、『影羽衆』が現れる予知が見えました」
祠崎・蒼梧(シャドウエルフのヘリオライダー・en0061)が集まったケルベロス達を見渡し、説明を始める。
影羽衆はサブカル系の美少女や美少年を誘拐して、洗脳・改造した後、他のデウスエクス勢力へ配下として売りに出そうとしているようだ。
「罪のない少年少女が襲撃されることも、どこかのデウスエクス勢力の手駒が増えることも、見過ごすわけには行きません」
影羽衆の企みを阻止してほしい、と続ける。
時刻は14時すぎ。店には3組の客とフロア・キッチン合わせて従業員4名がいるようだ。
事前に避難勧告をしてしまうと別の場所で事件を起こしてしまうため、避難誘導は影羽衆が現れてからしなければならない。
「この影羽衆は、好みの従業員1人を狙って誘拐しようとするため、そのような容姿のケルベロスがいれば、そちらを狙うと思われます」
囮を立て、そちらに気をとられている間に一般人を避難させるのが得策だろう。
「現れる影羽衆は、日本刀を装備した攻撃力の高い個体と螺旋手裏剣を装備した状態異常付与を得意とする個体の2体です」
それぞれ装備した武器と螺旋忍者同等のグラビティを使うようだ。
「誘拐され、デウスエクスの手駒にされる方を出すわけにはいきません。どうか、確実な撃破をお願い致します」
参加者 | |
---|---|
シルフィリアス・セレナーデ(紫の王・e00583) |
土竜・岳(ジュエルファインダー・e04093) |
アップル・ウィナー(キューティーバニー・e04569) |
シャルロット・フレミス(蒼眼の竜姫・e05104) |
淡島・死狼(シニガミヘッズ・e16447) |
盟神探湯・ふわり(悪夢に彷徨う愛色の・e19466) |
神無月・佐祐理(機械鎧の半身・e35450) |
ルリディア・メリーバ(ハッピークランベリー・e41388) |
●海賊メイド喫茶へようこそ
「う~……こ、これもハロウィン近いから、と言うことでよろしいでしょうか?」
体にぴったりとフィットさせたボディスで豊満なバストを強調し、ふわりとしたロングスカートが女船長らしさを際立たせる神無月・佐祐理(機械鎧の半身・e35450)が、困惑気味に呟く。
「バッチリなのデス!」
佐祐理にぐっと親指を立ててニカッと笑いかけたアップル・ウィナー(キューティーバニー・e04569)は、ショートパンツタイプの制服で脚線美を披露していた。
「それにしても影羽衆って……スケベなのか癒しを求めているのカ」
そして、ぼそりと吐き出す。
店側に事情を話し、万が一の事を考えて本来の従業員には奥に隠れていてもらう事にし、今日はケルベロスの4人が海賊船長──従業員となっていた。
「人の好みは様々っていうけど、どれがいいのかってなるとやっぱわからないわね」
入口近くのテーブルに座るシャルロット・フレミス(蒼眼の竜姫・e05104)が、避難経路を確認しながら従業員になりすます仲間達をそれぞれ見る。
「どのお宝を奪うか、決まったのー?」
そこへ、ブラウスの第二ボタンまで開いて、胸の谷間を強調する盟神探湯・ふわり(悪夢に彷徨う愛色の・e19466)がテーブルに座るクルー──客2人にメニューを尋ねた。
「あちしは船長のケーキにするっす」
シャルロットの向かいに座るシルフィリアス・セレナーデ(紫の王・e00583)が明るく答える。
「海賊メイド喫茶にようこそー♪」
ルリディア・メリーバ(ハッピークランベリー・e41388)が入店した客に満面の笑顔を向けた。
「これが海賊メイド喫茶ですか」
土竜・岳(ジュエルファインダー・e04093)が物珍しそうにしながらも、周囲の状況を確認する。
(「人を浚い改造し、更に奴隷として売り込もうとは……こんなふざけた話が通用しないことを判らせて、金輪際中止させる為にも皆さんを護り抜いて影羽衆さんをきっちりと倒しましょう」)
口には出さずに心の中でぐっと拳を握った。
「へー、皆似合ってて可愛いねぇ」
岳と共に入店したファラン・ルイ(ドラゴニアンの降魔拳士・en0152)が囮役の仲間達を見渡す。そして、客になっている仲間達の位置も確認し、目配せした。
(「予知でも天井裏とあったし、客には紛れてなさそうかな」)
螺旋隠れを使って物陰に潜む淡島・死狼(シニガミヘッズ・e16447)は店内の状況を注意深く観察する。
4人の誰を狙うかは分からない。客に紛れる仲間達はいい。しかし、一般人の客に被害を出すわけにはいかない。
(「何が狙いにしろ、やらせるわけにはいかない」)
ぐっと拳を握り込んだ。
●船長は渡さない!
──カタカタ……。
天井から小さな物音がし、ケルベロス達が内心気を引き締める。
ガタン!!
大きな音と共に天井の一部が外れ、そこから2つの影が降ってきた。
「おっぱい船長はもらいうけるでござる!」
螺旋仮面をつけた男2人──影羽衆が、瞬時にルリディアの前と後ろに移動する。
「!! 誘拐されるぅー! あはは、たすけて~♪」
ルリディアはどこか楽しそうにも聞こえる声を上げた。
すると、物陰から死狼が飛び出し、近くの席にいた一般人を背に庇うようにテーブルと影羽衆の間に体を滑り込ませる。
「ケルベロスです! 落ち着いて避難してください」
席から立ち上がった岳が店中に聞こえるように声を張り上げる。
「こちらよ! 慌てないで!」
入口付近の席にいたシャルロットが手を上げて一般人を誘導した。
「大丈夫です。刺激しないように速やかに入口へ」
プリンセスモードを発動している佐祐理が、影羽衆を背にして窓際の客を守るように入口へと向かわせる。
「童顔巨乳美少女が好きだなんてよくわかってるっすね。子供っぽい顔に大人の体つきというギャップがいいっすよね」
シルフィリアスがゆっくり影羽衆に近づき、同志を見つけたかのように笑いかけた。
「む? おぬし、わかっておるな」
「海賊という屈強な男がする格好を美少女がしてるのも得点が高いっす」
楽し気に会話を弾ませ、時間を稼ぐ。
「ってことは、そんなにあたしのこと気に入ってくれたんだぁー? えー、うれしーけど困っちゃうなー☆」
更に会話を長引かせるべく、ルリディアが輪の中に混ざった。
「待ちな!」
楽し気な会話にアップルの声が割り込む。
「うちの船長に手出すんなら容赦しないよ!」
おもちゃの銃を構えて威嚇した。
「邪魔する者は容赦しないでござる」
「……!!」
日本刀を構えたクラッシャー影羽衆がアップルに斬りかかり、咄嗟に顔の前で交差したアップルの腕は大きく斬り裂かれる。
「こっちにもいんだよ」
死狼が魔人降臨を使って邪悪な紋様を浮かべながら楽しげに笑いかけた。
「今のうちなの。皆が時間を稼いでる間に早く避難するの」
ふわりが奥の席にいた客達を安心させるように微笑みかけて共に入口まで向かう。
●海賊VS忍者
避難誘導をしていたケルベロス達は、時間稼ぎをしている仲間達の下へ合流する。
「ある時は情熱の踊り子、またある時は嵐を呼ぶ女海賊……」
アップルがおもちゃの銃を放り投げ、貴婦人や船長に早変わりしつつ、螺旋手裏剣を持つ影羽衆に連続攻撃を仕掛けた。アップルが後ろに飛びのくとすれ違いざまにライトニングボルトがヒットする。
「しかしてその実態は! 愛の戦士、キューティーバニー!」
「魔法少女ウィスタリア☆シルフィ参上っす」
謎の光に包まれたかと思うと、バニーガール姿になってたアップルと、魔法少女衣装に変身したシルフィリアスがそれぞれ可愛くポーズを決めていた。
「ヲタクというやつでしたっけ? 気持ち悪いタイプよね」
シャルロットが魂うつしを使いながらクラッシャー影羽衆に向かって言葉を投げかける。
「なんだと!?」
いきり立ったクラッシャー影羽衆がシャルロットに螺旋掌を放った。
「遊び半分な態度で本当に酷い事を企みますね。命の輝きが見えないとはお可哀想に……。我欲の虜囚である貴方方を倒すことで解放します」
眉を顰めた岳が嫌悪感を露わにしながら、ロッドを一振りし、時間稼ぎ中に傷を負ったアップルにエレキブーストをかける。
「ふわりはね、あなたの事も愛してるの。見えなくてもいつだって隣にいるし、いつだって愛してあげるの。いつでも、いつまでも……一緒なの」
突然ジャマー影羽衆の目の前に現れたふわりは、甘く囁いて柔らかく抱きついた。
「お?」
体に柔らかな感触を受けて思わず鼻の下を伸ばした次の瞬間、鳩尾に激痛が走りふらふらと数歩後ずさる。
「よくも……!」
ジャマー影羽衆が仕返しとばかりに、毒手裏剣をアップル目掛けて投擲した。
「海賊たるもの、仲間は私の家族も同然!」
すかさず佐祐理がアップルの前に立ちはだかる。
ダメージに眉を顰める佐祐理は殲剣の理を歌い上げた。が、クラッシャー影羽衆は後ろに跳躍しながら耳を塞いで回避してしまう。
「ヨーソロァーッ! 地獄へ向けて出航だァーッ!」
クラッシャー影羽衆の後ろからルリディアの威勢のいい声と共に、スターゲイザーがその腰に炸裂した。
「いくぜ!」
死狼が一気にジャマー影羽衆との距離を詰める。咄嗟に後ろに避けようとするも、体に走る痛みで動きが鈍り、電光石火の蹴りが急所を貫いた。
「……く」
ジャマー影羽衆は思わず片膝を折ってしまう。
「佐祐理!」
ファランは、敵が攻撃を受けているうちにと、分身の術を使って佐祐理の傷を塞ぎながら、その身を蝕む毒素を消し去った。
「行きマスヨ!」
壁や天井を足場に飛んで跳ねて撹乱させる動きをするアップルが、ガジェットウィップでジャマー影羽衆を打ち据える。
「────!!!!」
立ち上がって攻撃に備えようとしたジャマー影羽衆だったが、身構えるまでもなく攻撃を受けて顔面から倒れ伏した。
「気持ち悪いタイプも、あとはあなただけね」
シャルロットが尚も挑発しながら助走をつけて、クラッシャー影羽衆にスターゲイザーで重力の錘をつけた。
「く……っ! よくも──!!」
相棒を倒された事に加えて更なる愚弄をされたクラッシャー影羽衆は月光斬でシャルロットの腿や脛を斬り裂く。
「シャルロットさん!」
「じつはあちし、巨乳はほろぶべきだと思ってるっす。あなたたちとは考えが合わないんすよ」
岳がすぐさまエレキブーストを使ってシャルロットを回復する横、シルフィリアスがマジカルロッドから光とともにエネルギーの塊を放射した。
「あなたのこともぎゅーってしてあげちゃうの♪」
ふわりから伸びた鎖はクラッシャー影羽衆に絡みつく。
そこへ天高く飛び上がった佐祐理が虹を纏いながら急降下蹴りを浴びせた。
「……いけません! 何かだんだん『楽しく』なって参りました!」
軽やかに着地する佐祐理の頬がうっすら紅潮している。
体勢を立て直そうとするクラッシャー影羽衆にルリディアが飛び掛かった。
「キャプテンビィィィンタ!」
仮面に隠された頬目掛けて、持前の筋力と柔軟性をフル活用した超全力ビンタをきめる。
「!!」
あまりの勢いに、クラッシャー影羽衆は吹っ飛ばされた。
死狼がトドメを刺すべく飛んでいくクラッシャー影羽衆を追いかけ、
「終わりだ!!」
殆ど動けなくなっているその首に両腕の鎖で締め上げ、何度も何度も地面に叩きつける。
「ぐっ……ぅ……あ゛、あ゛………………」
苦し気にもがいていたクラッシャー影羽衆だったが、ピクリとも動かなくなった。
●海賊の勝利!
「何もないか……敵ながらあっぱれだったな」
倒れた影羽衆を調べていた死狼が顔を上げて一息吐く。
「この地球に生きる定命の者の平凡な幸せを知らしめる一撃……これが私達が戦う理由。地球の重力の元どうか安らかに……」
死狼の後ろから倒れた影羽衆を見下ろす岳が黙祷を捧げた。
「随分はちゃめちゃにしちゃったわね」
ふぅ、と肩の力を抜きながら店内を見回したシャルロットが苦笑してヒールに取り掛かる。
「お片付けっすねー!」
シルフィリアスがバックヤードから持ってきたホウキとチリトリを笑顔で掲げた。
「かしこまりマシタ!」
戦闘用スーツであるバニー服から囮役として着ていた制服に着替えたアップルもビシッと敬礼して店内のヒールを始める。
全員で分担してヒールや掃除をすると、あっという間に店内から戦闘の痕跡は消えた。
「アタシは店の人やお客さん呼んでくるよ」
仲間達に声をかけたファランが入口から外へ向かう。
「この制服、可愛いなぁ。ここでバイトしてみよっかなぁ……」
片付けがひと段落して、ルリディアが改めて自分の格好を見て呟いた。
「で、でも、こういう体型出る服はちょっと恥ずかしいですね~」
太って見られるし、と佐祐理が頬を染めながら眉を下げる。
「えー? 佐祐理ちゃん似合ってて可愛いよー!」
「そうなのー♪ 佐祐理ちゃん可愛いのー!」
ルリディアが瞳をキラキラさせて力説すると、ふわりも力いっぱい力説した。
作者:麻香水娜 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2018年10月18日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 3
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