男の本能(意味浅)

作者:久澄零太

「女は既婚者に限る」
 唐突にとんでもない事を言いだした今回の鳥さん。なんかもう、モテないオーラが凄いけどその辺はスルーしてあげよう。
「浮気は文化だ、芸術だ、男の義務だ! 恋をするなら既婚者、愛するなら人妻! 左手薬指の指輪はターゲットの証!!」
 凛々しい下衆顔でひっどい事をのたまう鳥オバケは、多分若い頃そういう趣味だったんだろうなーって気がしないでもないけど、ほら、大人の雑誌的な何かについてはそっとしておいた方がいいだろう。多分下手につつくと勧誘されるから。
「行くぞ同志達! 世の男性に浮気を勧め、既婚者女性に浮気を推奨するのだ!!」
『イェス人妻! ゴー不倫!!』

「皆大変だよ!」
 大神・ユキ(鉄拳制裁のヘリオライダー・en0168)はコロコロと地図を広げて、とある屋敷を示す。
「ここに恋愛は既婚者相手が最高ってビルシャナが現れて、信者を増やそうとするの! 信者はちゃんとしたお付き合いの良さを語ると目を覚ましてくれるみたい」
「じゃあ私とアルベルトの馴れ初めを……」
 ドゴンッ!!
「現場はもう放棄されたお屋敷だから、細かい事は気にしなくていいと思うよ!」
 アウレリア・ノーチェ(夜の指先・e12921)が何かを語り出そうとすると、ユキは四夜・凶(泡沫の華・en0169)を殴り飛ばして壁に叩きつけ、その衝撃で彼女を止めた。
「何故俺を殴る……?」
「ノーチェさんに手を出せないでしょ?」
 長くなる前に口で言うという選択肢がなかったユキは続けて。
「敵は浮気の炎? を吹きつけてきたり、既婚者に恋をする洗脳をしたり、未婚の相手を隙になったら、他の人と結婚されたっていうショックを植え付けてきたりするよ!」
 人間関係がドロドロしそうな戦闘が予想される。と、ここで凶が虫の息ながらも。
「一盗二卑三妾と言って、男性は人妻を抱くことに最も興奮するとされています。今回の敵はそういった心理面に働きかける能力があるらしく、男性は注意が必要ですよ……」
 などと割とマズイ情報を吐いた。
「今回はある意味愛の力の戦いだからね! 皆の熱い想いでやっちゃって!!」
 ユキに見送られる番犬だが、これはある意味公開処刑になるのでは? と一部の番犬は赤面したという。


参加者
アリス・セカンドカラー(腐敗の魔少女・e01753)
ケルン・ヒルデガント(ジャンパーのやべー奴・e02427)
シィ・ブラントネール(フロントラインフロイライン・e03575)
アウレリア・ノーチェ(夜の指先・e12921)
卜部・泰孝(ジャンクチップ・e27412)
カテリーナ・ニクソン(忍んでない暴風忍者・e37272)
アルベルト・ディートリヒ(昼行灯と呼ばれて・e65950)

■リプレイ

●先手必殺
「女は既婚者に限……」
 ガッ! ドスッ、チャカ。
「な、なんだ貴……」
 ダンダンダンダンダンダァン……。
「貴方達、そんなに死に急がなくても良いでしょう」
 開幕早々異形を蹴り倒すなり脳天にリボルバーの全弾を叩きこんで致命傷を刻んだアウレリア・ノーチェ(夜の指先・e12921)は、実に自然な動きで弾丸を込め直す。
 この光景だけ見るとただの危ない人だが、本来グラビティに実弾は必要ない。つまり、彼女は信者にグラビティを使わないために鉛弾を込めたのだ。何が言いたいか分からない? この女、話が通じないなら手加減と称して信者に弾丸ぶち込むつもりなんだよ。
『きょ、教祖様がやられた!?』
「あら、何故そんなに不思議そうな顔していらっしゃるの?」
 疑問っていうか恐怖に染まり切った信者達へ、アウレリアは銃口を向ける。
「浮気は死に値する大罪。命に等しい愛を奪おうというのであれば……当然、命を捨てる覚悟も出来ているのでしょう?」
 アウレリアの刃にも似た視線に射すくめられ、信者は死神の大鎌を首にかけられたような顔を……これ比喩じゃねぇよ。だってアウレリアの銃口がさっきから「どの人から撃とうかしら?」っていったり来たりしてるもん。
「私も夫に手を出そうなんて輩は徹底的に排除したわよ」
 ふふ、うふふ……ハイライトの消えた瞳で微笑みながら、そっと元最愛の夫、現背後霊のアルベルトを抱き寄せてその喉元を撫でる。愛玩人形を愛でるかのような様にアルベルトがアウレリアを拒む……かと思ったら妻のようにアウレリアの腰を抱き寄せて、恋人のように彼女の頭を肩に乗せて、娘のように髪を撫でる……一見すると愛が深すぎて危ない二人なんだけど、旦那の方が照れ笑いを隠せてなくて口元が震えてるのは秘密だ!
「たまたま好きになった相手が人妻だったとかならまだしも、人妻だからイイなんて不純だし不潔だし最低よ!!」
 ノーチェ夫妻がねっとりした夫婦の世界に沈んでしまった為、シィ・ブラントネール(フロントラインフロイライン・e03575)にバトンタッチ。
「きちんと気持ちを通じあわせて愛し合うほうがずーっとずぅーっと幸せなんだから! そう、例えばワタシと夫みたいに……エヘヘ♪」
 おい馬鹿やめろ。惚気話始める気か? 知っているぞ、貴様の恐ろしさを……具体的には三人組の女子会において、残り二名が虚ろな目で口から砂糖を垂れ流しにした事件の事を……! 誰かこいつを止め……。
「朝は彼のコーヒーの香りで目覚める幸せな一時……あ、勿論ワタシが先に起きた時は紅茶で彼を起こしてあげるのよ♪」
 遅かったー!!
「朝、覚醒しきる前に触れる手の温度が愛おしくて幸福に目覚めるの。起きるまで見守る寝顔に笑みが零れて……」
 表情をほころばせて緩む頬を支えるように両手を添えて、その左手薬指に指輪を光らせるシィに触発されたのか、アウレリアは夫を抱きしめてぽつぽつと語り始めてしまう。
「お昼の間は彼もお仕事だからずっと一緒ってわけじゃないけど、彼が好きな食事の材料を買ったり、彼が喜びそうな服を探したり……」
「二人で肩を並べて歩くだけで周囲の背景全てが煌めいたものになるわ。些細な日常も二人でいるだけで特別で大切なものに……」
 え、これまだ続くの?
「夜には彼においしいご飯を作ってお仕事の疲れを吹き飛ばして二人でゆっくりして、それからそれから……」
「ベッドはあえて二人で分けたわ。寝床にまで愛しい彼がいたら、この胸が愛しさで苦しくなって眠れないもの。でも、いざ別のベッドに入ってみて気づいたの。同じ部屋に居るのに触れ合えない距離の寂しさに……その日の内に二人用のベッドに買い替えたわ」
 時系列的に夜まで来たんだ。そろそろ終わ……。
「ベッドを買い替えたら、今度はリビングのソファが大きすぎる事に気づいたの。二人で座ってもゆったり過ごせるけど、微妙に肩が触れなくて寂しくて……」
「分かるわ! 家具は少し小さいくらいにしないといけないわよね! テーブルだって大きい方が色んな料理が置けるけど、その代わりに対面に座った彼との距離が遠のいちゃうもの!」
 らない!? むしろシィとアウレリアの話題が変な噛み合い方して、惚気話家具編に突入しちゃった!?

●今回まともな奴がいない
「失礼な! 妾のお父様はまともじゃぞ!」
 などと憤慨するケルン・ヒルデガント(ジャンパーのやべー奴・e02427)。じゃあそのお父様について、既に若干二名の惚気話で精神性過剰糖症候群的な何かに陥り、全身から砂糖を噴き出してる信者に説明してみろよ。
「よかろう……聞くがよい信者共!」
「誰か……誰かブラックコーヒーを……」
 苦みに飢えた信者に向けて、ケルンが指をつきつける。
「不倫なんていけないのじゃ、妾の父様を見習え! 父様は、各地で旅をして、恵まれない子を拾っては養子にして、悲しんでいる女性を見たら抱いて、求められたら抱いて、求めては抱いてるが、人の家庭の幸せを壊すような真似だけはしないカッコイイ父様なのじゃぞ!」
『ゴフッ』
 死んだー!? 信者の半分くらいの精神が死んだ!!
「な、何故じゃ!?」
 冷静に考えろよ、今回の教義は既婚者との恋愛が至高って言ってんだぞ?
「うむ?」
 小首を傾げるケルン。多分頭の中ではお父さんが女の人を抱っこしてる映像と、人妻趣味の教義が噛み合わなくてエラー起こしてるんだろうな……ケルン、依頼書読み直してみ?
「今回は『既婚者との恋愛こそ至高な鳥オバケ』じゃろ? それがどうし……あっ」
 気づいたか? 人妻趣味を推奨してるのは信者を増やす為の手段であって、人妻との恋愛そのものが教義なわけじゃねーんだよ。
「つ、つまり妾は、教義を加速させてしまったのかの?」
 イェス。
『真・教祖様!!』
「きゃう!?」
 珍しい鳴き声を上げたケルンはおめめくるくるしながら迫りくる信者を宥めて。
「か、かっこいいお父さんなんだよ!? ちょっとシェリー母様がいつも目に光がないというか少し病んでる気がするけど、それでも二人とも互いのことが好きだって……刺激的でとかなんとか……とにかく不倫はだめだって!!」
 そこで「刺激になるかもしれないけど、嫁が死んだザルバルクの目になる」みたいな事が言えればまだ違ったのだろうが、混乱するケルンにはこれが精一杯。
『イェスヒルデガルド! ゴー人妻!!』
「やーめーてー!?」
 ケルンは文字通り、信者達に担ぎ上げられてしまった。
「バッキャロウ、その時点で敗北者になっている事に何故気付けない!」
『なに!?』
「ぷぎゅ!?」
 卜部・泰孝(ジャンクチップ・e27412)が変な事いうから信者がケルンを取り落とした。
「人妻ってことは養ってる旦那がいる、つまりはお前らは女性一人養えない甲斐性無しって事を暗に認めてしまっているようなもの……それに、仮に離婚成立からお前らが結婚すればその時点でお前らの家内、つまり人妻ではなくなる! 人妻を求め自ら結ばれたとしても属性がかわる、それでいいのか、いいやよくない!」
 何故だろう、泰孝の両手が羽に見えてきた……。
「そんな薄氷の恋よりもっとすばらしいものがある、それは! 円満離婚されたよきお年を経たお姉さまにお小遣いを貰う生活か、若い経済力を持つ娘のヒモになる生活」
 フッ、クールに笑う男は髪をかき上げて、勝者の目で信者を嗤う。
「オレは既に三食昼寝つき、お小遣い支給もある生活だ……共に理想を追求しないか?」
『え、それただのニートじゃない?』
「誰がニートだ誰が!?」
 割と冷静な信者に泰孝は食らいついた。
「いいか!? ヒモになるって事は貢ぎたくなるいい男って事だ。つまり、女にとっても悪い話じゃない。いつまでも親の脛を齧るだけの屑とは違う!!」
 必死に自分を正当化しようとする泰孝だが、冷ややかな視線が止まらない。
「人妻という事は、結ばれずに終わるんだぞ? くっついたらそれはもう人妻じゃないからな! つまり……」
 ヒモならその関係がずっと続く! 泰孝がそう述べようとして、一瞬。吹き抜ける風が幼さの残る声を届けた気がした。

 ――じゃあ私とはくっつく気があるんですね……ふふ……いいこと聞いちゃいました……。

「そ、ソノウチネー」
 ガタガタ、泰孝は急に寒気を覚えて自らを抱くと、猫に追われる鼠のように辺りをきょろきょろ。お前、何やらかしたんだ……?
「いや、待ってくれ、違うんだ。普段はぞんざいに扱うけど大事に思ってるよ、本当だよ……?」
 その言葉は俺じゃなくて、ご本人に言ってあげるといい。

●日本恐い
「まあ、条件の違う複数の畑に種をばらまいてというのは、種を増やす面ではメリットもあるでござろうが、知性ある生き物のすることかといえば疑問符がつくでござるな。今の時代、考えなしに増やしたら負担も大きくなるでござるよ」
 うんうん、と頷くカテリーナ・ニクソン(忍んでない暴風忍者・e37272)。経済的な話でも始まるのかなーって期待してたら。
「ママ以外の女にエレクチオンするなんて、パパったらサイテー!」
 いきなり何を言い出すんだこの娘は!?
「私だって夜の街に繰り出して遊んでやる! どうせ悪い男に騙されて売り飛ばされたって、ほかの女がいいんだから、私なんてどうでもいいでしょ!」
 突然の叫びに信者が呆然。その姿にクククと笑うカテリーナ。
「分かるでござるか? お主らが不倫するという事は、娘にこんなこと言われても文句言えないのでござる……人の女を汚すのなら、人に女を汚される覚悟も必要なのでござるよ!」
「最近はその程度じゃ済まないけどね」
 ボソッ。呟いたアリス・セカンドカラー(腐敗の魔少女・e01753)はどこかへ連絡。
「え、なに、警察?」
「ううん、ママ達」
「ママ『達』?」
 疑問形の信者にアリスがくすり。
「スワ   グもセ  シェアも飽きたし、たまには知らないゴミにNTRれてみたいんだって。で、その上でそのゴミを旦那にNTRさせたいんだって」
『What do you say!?』
 やたら流暢な言い方する信者にアリスはネットの海から拾ったとある漫画を見せる。
 それはそれとして、毎回音声加工するこっちの身にもなってくれませんかねぇ!?
「じゃあ労いにこの特性ドリンクを……」
 嘘ですごめんなさい……。
「遠慮しなくていいのよ?」
 うるせー! それ飲み物じゃねぇだろ!?
「んもう……あ、内容は、妻をNTRされた男が復讐に間男拉致って女装させて雌化調教して、呼び出した元妻の前で幸せな穴 して逆NTRで間男サンド♪ ちな、鍋釜男女逆転夫妻もおってな? NTRした人妻が実はツイてることもあるんやで。人妻ならそれでも美味しくいただくの?」
「間男もNTRされる覚悟……なんと! 間男を夫婦の間に挟んで、サンドイッチのハムのように文字通り間男にするでござるか!?」
 カテリーナが口元を隠して「うわぁ」って引く中、信者の一部が気づく。アリスは『呼んだ』のだと。
「こ、こんな所に居られるか! 俺は教団を抜けさせてもらう!!」
 と、脱走した信者の前に胴長の車が止まったかと思うと、音もなく拉致して再び走り出す。
『同志ぃいいい!?』
 綺麗な体では帰ってこないであろう同志を想い、信者達が嘆く。そんな姿を眺めて、カテリーナが苦笑。
「拙者、サンドイッチはハムサンドやカツサンドが好みでござるが、これにはさすがに苦笑いでござる。まさかのBLTサンドがお好みでござったか……」
「「つまり、夫の身が危ない!?」」
 理想の我が子編の惚気話をしてたシィとアウレリアがバッと振り向いた。
「あの人に限って浮気なんてしないと思うけど……」
「素敵な旦那様だからこそ、彼『は』浮気しなくても他所の女がすり寄って来てもおかしくないわ」
 アルベルトをぬいぐるみのように抱きしめ、「これは私のモノよ」モードに入ったアウレリアに、シィは稲妻を受ける。
「そんなッ! 大変、今すぐ帰らなくちゃ……!」
 オイコラまだ終わって……本当に帰りやがった。

●今回のオチ?
「皆さん人妻に対して随分と熱を上げておいでのようですが……人妻にとっては、独身男性との恋愛は遊びでしかありませんよ?」
 クノーヴレット・メーベルナッハ(知の病・e01052)は信者に向かって、じっと視線を投げる。
「人妻ということは当然、旦那様がいて、子どももいる場合も多いのですし。言わば常に本命は旦那様。その実例を、今まさにご覧になったでしょう?」
 寄らば撃つと言わんばかりに愛妻オーラが死神を描くアウレリアと、惚気るだけ惚気て仕事せずに帰ったシィ。まぁ確かに凄い。
「皆さんが旦那様よりも男性としての魅力で上回るのであれば、本気になって貰える可能性もありますが……今「男としての魅力なら負けない」と思った方。私にその魅力、見せて頂けますか?」
 クノーヴレットの言葉に、小さく笑いを浮かべた信者がいた。その余裕ともとれる表情に、薄い唇が迫る。
「私はフリーの身の上ですから、人妻を攻略するおつもりならまず私を落とせませんと……ね?」
 どういう理論なのか分からない。だが、それを指摘するだけの思考は淡く感じる吐息に飲まれ、挑発だと叫ぶ理性は頬を撫ぜる指先に攫われた。欲望が鎌首をもたげ、伸ばした腕がクノーヴレットの体に絡み付き、くびれた体から、柔く膨らむ腰元へと手が滑っていく。
「ふふ、どうぞかかっておいで下さいな♪」
 クノーヴレットは小さく笑みを溢し、別室へと信者を連れて消えていく……。
「ぁ……ん……」
 やがて、衣擦れの音がしたかと思うとクノーヴレットの艶めかしい声に水音が混じる。
「ふふ……私はまだ、落ちていませんよ……?」
 肉を打つ音、水が弾ける音……激しく二つの肢体がぶつかり合う様子が伝わってくるが、やがて静かになる。
「何か忘れてないか?」
 壁の向こうに釘付けになっている信者達にため息を溢し、アルベルト・ディートリヒ(昼行灯と呼ばれて・e65950)は着物の袖を合わせて手元を隠す。
「平気で浮気する女には、別の男のあんな体液やこんな体液がこびり付いてるって事をな!」
 クワッと効果線が入りそうなくらい叫んだアルベルト……。
「旦那が何か?」
 ちげーよアウレリアの背後霊じゃねぇよ。お前はそこで惚気てろ。
「いいの? じゃあ通算十五回目のデートの時の話を……」
 泰孝、任せた。
「俺!?」
「あの日は生憎の天気だったけど、曇天の中でも彼の笑顔は太陽のようで……」
「あ、今日は用事が……」
 ガッ! ストン。逃走を図る泰孝だが、「まぁ聞けよ。思い出を語る時の妻もまるで絵本の読み聞かせをする母のようでありながら思い出を話す子どものようでもあり美しくも可愛くもありつつそこはかとない儚さもあって……」と無言で語り始めるアルベルトに捕まった。
「やめろ、やめてくれぇえええ!?」
 アウレリアから嫁視点の、アルベルトから旦那視点の惚気話を聞かされる泰孝の心が死んだ。
「尊い犠牲だったな……それはさておき」
 ディートリヒ、おめーばっさり仲間を切ったな?
「女性陣の刃のような視線に比べれば、俺の扱いなぞまだまだ鈍だ」
 さて、話を戻そう。そう切り出したディートリヒ。
「お前らはそんな女と本当にいたしたいのか? 風呂じゃ性病は防げんぞ性病は。俺ならそんな女、指一本触れたくないね」
 大事な事なのか二回言ったディートリヒ。汚物を見るような目で信者を見下すと。
「どうしてもしたいと言われたら皮膚が赤剥けになるまで汚れを落とし、プールの浄化槽に小一時間漬け込まないと気がすまんな」
「お風呂に入るところからご一緒したいんですね?」
 クノーヴレットが腕に触れた。
「あ、あれ……信者はどうした?」
「ダメみたいです」
 何がダメなのかは詮索しない方がいいだろう。だって連れ込まれた信者が帰ってこないんだもん。
「ふふ、私は何人相手でも構いませんよ?」
「だ、そうだ」
「ふぁい!?」
「次は貴方ですね」
 クノーヴレットを信者に押し付けると、その信者は彼女と別室へ……聞こえてくる生々しい音は、気にしてはいけない。
「もし無理矢理の場合はそんな真似せずに労り、男を嬲り殺しにするが、合意の上なら姦通罪で二人纏めてぶった斬る」
「この流れで話を続けるのか!?」
 最後の信者にツッコまれつつ、ディートリヒはその信者の胸倉を掴み上げると異臭の塊とでも言うべき、黒い泡を取り出して。
「つーかお前らを今ここで女敵討ちだヒャッハー!」
「おい馬鹿やめ……」
 泡を口に突っ込まれた途端、信者は口から黒い閃光を吐き出し意識を手放した。鳥オバケ? ほら、シュピールに脚を食われてた所をレトラにデンプシーロールされてるだろ?
「じゃあ最期にこれね♪」
 アリスが指を鳴らすと異形が霧に包まれる。
「ぐふふ我が妻に手を出すとはいい度胸だ……」
「お前誰!?」
 囚われた幻覚の中、スリングショットにグラサンのオッサンは素早く背後を取ると、異形の腰を抱き。
「さぁ、調教の時間だ」
「ちょ、当たって……」
「当たっているのではない、入れるのだ」
「痛い痛い痛い!?」
 苦痛と嫌悪の中、鳥オバケは果て、アリスがむふー。
「……アリね!」
 何が!?
「それはもち……」
 番犬達は鳥さんをやっつけました、まる。
「聞くなら語らせなさいよー!!」

作者:久澄零太 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年10月11日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 4/キャラが大事にされていた 5
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