あなたとわたしと

作者:あかつき


「なんで、優奈ばっかり!」
 バタン、と勢いよく扉を開けて教室に入ってきたのは、奥山・雪奈。優奈は、彼女の双子の妹だった。見た目は良く似た一卵性双生児。だけど、今、成績優秀者として職員室に呼び出されたのは妹の優奈だけ。優奈は、何をやらせても器用で、そつなくこなしていく。勉強だって、部活のテニスも。それを本人に一度ぶちまけたことがあるけれど、そうしたら優奈は、雪奈だって良いところがある、と返した。何事もひたむきで、努力家で、真剣で、尊敬してると言っていた。だけど、その真剣に努力したとしても、優奈には勝てないのだ。
「……もう、やだ」
 と雪菜は呟く。優奈は生まれた時から一緒だから、自分の一部みたいなものだ。だから、嫌いという訳ではないけど、だけど。
「もう、負けたくない……比べられたく、ないよ……」
 ぽろりと雪奈の目尻から、涙がこぼれたその時。
「それなら、あなたは、身近な人の中では誰のようになりたいの?」
 かけられた言葉に雪奈が振り返ると、そこには生徒会長のような外見の女子高生がいた。不思議に思いつつも、雪奈は少し考えて、それから。
「優奈みたいになりたい」
 その答えに、女子高生ーフューチャーは、頷く。
「それなら良い方法があるわ。理想の自分になるには、その相手から理想を奪えばいいのよ」
「え?」
 目を瞬く雪奈の胸に、フューチャーは徐に鍵を突き立てる。がくりと膝から崩れ落ちる雪奈。そして、そこに雪奈そっくりの姿をしたドリームイーターが現れた。目を閉じていたドリームイーターはゆっくりと瞼を開く。
「優奈……私は、優奈みたいに……優奈に、なりたい」
 ドリームイーターは自らの意思を確認するように小さく頷くと、優奈のいる職員室へ向け、歩き出した。


「ステラ・フォーサイス(嵐を呼ぶ風雲ガール・e63834)の予知を元にした調査により、埼玉県の高校にドリームイーターが出現するらしい事が判明した。今回狙われたのは、奥山・雪奈。同じ高校に通う優秀な双子の妹に嫉妬し、理想の自分と現実とのギャップに苦しんでいたらしい」
 雪村・葵は、集まったケルベロス達に今回の依頼の説明を始める。
「被害者から産み出されたドリームイーターは、強力な力を持つが、この夢の源泉である、『理想の自分への夢』が弱まるような説得ができれば、弱体化させる事が可能だ。理想の自分になっても、良い事は無いのだと説得したり、あるいは、雪奈さんは今のままでも魅力がある! といった説得などが有効だ。元々妹の優奈との仲は悪くなく、優奈も雪奈の事を大切に思っており、尊敬もしていたらしい。その辺りを上手く伝えることが出来れば、きっと彼女も前向きになれるんじゃないかと思う。なお、ドリームイーターを弱体化させる事ができれば、戦闘を有利に進められるはずだ」
 ドリームイーターは一体で、配下などはいない。テニスラケットの形をした心を抉る鍵を持っている。増殖させたモザイクをテニスのボールのようにラケットで打って攻撃をしてくるらしい。また、ドリームイーターはケルベロスが現れた時点で、ケルベロスを優先して襲ってくるという特徴があるので、攻撃目標である優奈や職員室にいる教員、他の生徒の救出、及び避難は難しくない。
「理想の自分が、双子の妹であるというのは、きっと想像より辛いことなんだろう。だが、彼女には彼女の良さが、きっとある。だから……彼女がこれからも前向きに生きていけるよう説得して、ドリームイーターを撃破してきてほしい」
 それから、葵はケルベロス達に頭を下げたのだった。


参加者
春花・春撫(プチ歴女系アイドル・e09155)
宇原場・日出武(偽りの天才・e18180)
細咲・つらら(煌剣の氷柱・e24964)
ライガ・アムール(虎さん・e37051)
ユリス・ミルククォーツ(蛍火追い・e37164)
斬崎・糸(地球人のブラックウィザード・e49868)
クロエ・ルフィール(けもみみ少女・e62957)
ステラ・フォーサイス(嵐を呼ぶ風雲ガール・e63834)

■リプレイ


「優奈……」
 囁くようにその名を呼びながら、がらりと扉を開けるドリームイーター。
「雪奈?」
 扉の方を振り向く優奈。しかし、優奈は双子の姉のいつもと違う様子に気が付き、首を傾げる。
「おい奥山! 職員室に入る時は、ノックしてから失礼しますと一言……」
 そう注意する教員を無視して、ドリームイーターは職員室へ入ってくる。その手には、巨大なテニスラケット型の心を抉る鍵。
「なんだ……それは……」
 眉間に皺を寄せ立ち上がる教員を、手で制しながら、クロエ・ルフィール(けもみみ少女・e62957)は職員室へと入っていく。
「待っていたよ、ドリームイーター」
 プラチナチケットで一般人に成り済ましていたクロエの出現に、ドリームイーターは怪訝そうな顔で振り返る。
「ケルベロス……」
 僅かに口角が上がったかと思うと、ドリームイーターはその手にテニスボール型モザイクを作り出した。
「いきなり喰らおうとするなんて手荒い歓迎だね」
 増殖していくモザイクを見つつ、クロエは呟く。
「他人をうらやむ気持ちも、自分が嫌になる気持ちも、むちゃくちゃわかる……わかる、が!!」
 ラケットを構えるドリームイーターへ向け、宇原場・日出武(偽りの天才・e18180)は職員室の扉を駆け抜けて、向かっていく。
「今、目の前にあるものが全てに見えるかもしれない! だがおまえはまだ若い!人生はまだまだ始まったばかりだ! 今は自分が負けてると思うかもしれない! だが、あと5年後、10年後はわからないぞ!」
 叫びながら、走る勢いそのままに、日出武はオウガメタルで覆われた拳をドリームイーターへと叩き込む。
「ぐっ!!」
 日出武の拳を諸に食らったドリームイーターは、僅かに姿勢を崩し、それと同時にぞうしょくしていたモザイクも消え失せた。
「うるさい……うるさい! 若いからってなんなの、私が辛いのは今なの!!」
「雪奈……そんな……」
 突然の出来事に騒然とする職員室の中、優奈の呟きが妙に大きく響く。
「なんなんだ?」
 そう呟くのは状況の飲み込めない教員達。それを見て、ざわざわと互いに何か言い合う高校生達。職員室へと駆けつけたユリス・ミルククォーツ(蛍火追い・e37164)が、そんな彼らに声を掛けていく。
「避難して下さい、ここにいては危ないのです」
 がくりと膝を降り、床に座り込む優奈の手を掴み、ユリスは力強く言う。
「雪奈さんの事は、僕たちに任せて。あなたは逃げてなのです」
 ユリスの言葉に、優奈は数秒その瞳を見詰めた後、泣きそうな顔で小さく頷いた。
 職員室前の廊下でも、プラチナチケットで学生達に紛れ込んだ斬崎・糸(地球人のブラックウィザード・e49868)が避難誘導に当たっていた。
「え、小学生……?」
 戸惑いを浮かべる高校生達。
「危ないんだよ! ドリームイーターが暴れてるの!! 今、ケルベロスが戦ってるんだから!!」
 しかし、糸の只ならぬ様子に、高校生達ははっとして互いに顔を見合わせる。
「なんか解んないけど……小学生がこんなに頑張って避難誘導しててくれてるのに、ぼーっとしてたら情けないよね?」
 隣人力もあってか、糸の話を聞いていた高校生の一人か、そう言い出す。その一言で、高校生達はそれぞれに避難を始めた。小学生の話を高校生や先生達が聞いてくれるか心配していた糸だったが、問題は無さそうだった。
「ほら、君も逃げないと!」
 ほっと息を吐いた瞬間、捕まれた手首に、糸は目を瞬き、叫ぶ。
「えっ……、私もケルベロスなの!!」
 慌てた糸は、首をぶんぶんと横に振った。

「よし、行こうか」
 職員室へ向かったケルベロス達からドリームイーターと会敵、交戦中との連絡を受け、ステラ・フォーサイス(嵐を呼ぶ風雲ガール・e63834)はグラウンドの学生達を避難させるべく、行動を開始する。
 校門前で待機していたステラは、人手が足らないからと避難誘導を手伝ってくれる事になった春花・春撫(プチ歴女系アイドル・e09155)と細咲・つらら(煌剣の氷柱・e24964)に声を掛け、相棒のシルバーブリットに跨がった。そして、校庭の真ん中へと向かっていく。
「なんだ?」
 校舎での騒ぎに気付いていた校庭の高校生や部活の顧問達は、現れたステラを不思議そうな顔で見つめる。グラウンドにいる人々の視線の中で、ステラは殺界形成を発動する。
「ドリームイーターが暴れてるよ! 危ないから、避難して!!」
 ステラの言葉と殺気に、その場の人々は互いに顔を見合わせ様子をうかがいながらも、次第に校舎や校庭から離れるよう動き始める。
「みんな、落ち着いて避難してくださいね」
 春撫は動き始めた人々に声を掛け、校門へと安全に誘導していく。
「大丈夫ですよ! つららちゃんもついてますからっ!!」
 つららは不安そうな高校生にそう声を掛け、背中を押したのだった。


「こっちだよ!!」
 ライガ・アムール(虎さん・e37051)はドリームイーターの視界に入ると、素早く職員室から昇降口の方へと移動する。それを追いかけるように、日出武とクロエも昇降口の方へと走り出す。
「ッチ……ちょこまかと……!!」
 テニスラケットとボールを手にしたまま、ドリームイーターは走る。
「あたしは、妹が8人いるけど、私より優れているなら自慢の妹で……だから、あの子達なら誇りに思えるし何処まで行けるか応援するけどな~。まあ、人それぞれだろうけど」
 わざと聞こえるよう、大きな声で独り言をこぼしながら、グラウンドへ続く昇降口でドリームイーターを待つ。
「あんたにっ……何が、わかるっていうの……私の、何が!!」
 昇降口にたどり着いたドリームイーターは、テニスボールを前に掲げ、ラケットを振りかぶる。
「自分の妹を手にかける様な姉には、なるのだけは見過ごせないね」
 だから、絶対に止めてあげる。ライガはドリームイーターに向け、走る。ローラーシューズを履いた足は、床を蹴る度に摩擦で熱くなっていき、そして。
「いくよっ!!」
 ライガは炎を纏った蹴りを、ドリームイーターへ叩き込む。
「うぐっ」
 姿勢を崩したドリームイーターへ、避難誘導を終えたユリスは駆ける。
「身近な憧れの人と比べられるのは、とても辛いでしょうね。でも……きっと――相手も貴女の事をきっとそう思ってる。貴女にしかない物がある。それはただの励ましなんかじゃない……ぼくは、そう思うのです」
 そして放たれた電光石火の蹴りは、ドリームイーターを昇降口とグラウンドの境目まで吹き飛ばす。グラウンドから僅かに見えたドリームイーターの影を認め、同じく避難誘導を終えたステラは小さく呟く。
「まるで……鏡に写った姿の自分との葛藤、か」
 きっと、辛かったのだろう。今も、多分。でも、だからこそ、救ってあげないと。ステラはすっと目を細め、拳銃形態のガジェットを構え、銃口をドリームイーターへと向ける。むくりと起き上がったドリームイーターへ、ステラは照準を合わせた。
「鬼さんこっちらー、手の鳴る方へ……っと」
 ステラの威嚇射撃に、ドリームイーターは素早く身をグラウンドへと滑らせるようにして回避行動を取るが、射撃は間違いなくドリームイーターの体と足元へと撃ち込まれていく。
「この……鬱陶しいなぁっ!!」
 叫び、ドリームイーターはステラへと走り出す。そんなドリームイーターへ、シルバーブリットは炎を纏い、突進した。
「昔は雪奈ちゃんの方がテニスの成績が良かったんだってね? もしかしかしたら、優奈ちゃんは尊敬している雪奈ちゃんを目標に努力したんじゃない?」
 しかし、ドリームイーターの足は、ステラのその問いにぴたりと止まる。
「なんで、それを」
 ステラは情報の妖精さんで調べた、とは言わず、ただ肩を竦めた。
「小さい頃に大会をダブルスで優勝した事は覚えてる? 記事には絶妙な息の合ったプレイだったって褒めてたよ。双子なんだもの、優奈ちゃんが居てこその雪奈ちゃんだよ」
 ステラは検索で出てきた情報を思いだしながら、そう語りかける。二人は双子で、優奈がいて、雪奈がいて、だからこそ今の二人がいる。だからこそ辛いのかもしれないけれど、それでも、今の優奈の成績は即ち雪奈自信の努力の結晶でもあるのではないか。ステラは、彼女自信の価値を認めてもらいたくて、ぐっと唇を噛み締めた。
「もしそうだとしても!! 最後に勝ってると、優れていると思われるのは優奈なんでしょう?! 私は……私の努力は、何のためのものなの?!」
 そう泣くように顔を歪ませながら、ドリームイーターは地面を蹴り、ステラの方へと向かっていく。
 そんなドリームイーターへ向け、廊下の避難誘導を終え、グラウンドへと移動してきた糸が、駆ける。そして、地面を蹴って、流星の煌めきと重力を宿した飛び蹴りをドリームイーターへと叩き込む。
「っ?!」
 完全に背後からの攻撃に、ドリームイーターは前のめりにバランスを崩し、転がった。
「だめだよ!!」
 そう言う糸を、ドリームイーターはくるりと体勢を立て直しつつ、睨み付ける。
「わたしもお姉ちゃんだけど、妹と比べられることがある上に『お姉ちゃんなんだから、しっかりしなさい!』ってお母さんに言われるの……だから、気持ちはわかるの。でも今のままじゃダメだよ!!」
 必死に訴えかける糸に、ドリームイーターは小さく息を吐く。そして、返す。
「きっと、わからない」
 そして、ドリームイーターは立ち上がり、ラケットを構える。
「あなたには……きっと」
 ぐ、と歯を食い縛ったドリームイーターは、くるりと向きを変え、振り上げたテニスラケットをステラへ向けて振り下ろす。
「絶対に、守る!!」
 そこへ身を滑り込ませたのは、クロエ。心を抉る鍵による攻撃をその身で受け止めたクロエは、がくりと膝を突き、頭を抱える。
「あ……あ、あぁ……や、め……!!」
 過去の記憶に苦しむクロエに春撫は手を伸ばし、オーロラのような光で回復を施していく。クロエの苦しみが無くなったのを確認してから、春撫はドリームイーターを真っ直ぐにみつめる。
「辛かったですよね。でも、雪奈さんはそのままで大丈夫だと思います。完璧じゃなくても大丈夫です」
「……だい、じょうぶ……?」
 呆気に取られたように繰り返すドリームイーター。
「苦しんでる人の気持ちをわかってあげられるのは、苦しんだことのある人だけ。同じように苦しんでる人や、努力してる人がいたときに、助けになれるのは雪奈さんの方だと思いますよ。その経験は、優奈さんにはない経験です。失敗だって、立ち直れる強さになってるはずです。その強さに、気づいてください」
 そう続ける春撫に、ドリームイーターは目を瞬く。
「……本当に?」
 そんなドリームイーターに、つららは頷く。
「赤の他人ならばいざ知らず、血を分けたばっかりに、それも双子となれば必然、比べられる事も多いといった所でしょうかっ! けれども双子とはいえ、顔や背丈は似てるとはいえ、アナタと妹さんは結局のところ別人なのですよっ? 何をそんなに思い悩む必要がありましょうっ!」
 説得を続けつつも、消耗の激しいクロエへとウィッチオペレーションで回復を施すのは忘れない。そんなつららを、ドリームイーターは信じられないとでも言うように、みつめる。
「私と優奈は別人……本当に、それでいいの……?」
 迷いと躊躇いを瞳に浮かべるドリームイーターへ、ライガは金色のガントレットを構え、肉薄する。
「あたしの爪はどんな物でも切り裂くよ!」
 隙を突き、ライガは金色のオーラを纏った爪でドリームイーターを薙ぐ。
「あぐっ……」
 がくりと膝を突いたドリームイーターへ、日出武は走る。
「努力を続けていれば、いつか追いつき追い越すこそだってあるだろう! そのためにも今の自分を否定しちゃあいかん!」
 日出武の脳裏を過るのは、辛く苦しかった過去の記憶。嫌なものを思い出した苛立ちを乗せ、日出武は拳を構える。
「新しい秘孔の究明だ」
 フィストオブザノーススターウワラバスタイルを叩き込まれ、ドリームイーターは吹き飛ばされてグラウンドに倒れ込む。しかし。
「わ、わた……私……は……」
 ドリームイーターは地面に手を突き、立ち上がる。そんなドリームイーターへ、ユリスは半透明の幽体化させた腕を伸ばす。
「一番大切な物だけをもらって行く」
 その存在の一番核となるものへと腕を伸ばすユリス。
「くっ……!!」
 それを見て、ドリームイーターは咄嗟に身を捩り、ユリスの腕はドリームイーターを掠めただけに留まった。
「っ……!!」
 止めを指し損ね、顔を歪めるユリスの横を、クロエが駆け抜ける。
「わたしは……最後まで、兄の死を見届けた……あの宿業は、断ち切った!!」
 先程見たトラウマを振り切るように、クロエはルーンアックスを構える。一秒にも満たない瞬きの間に思い出すのは、兄の振るう剣の軌跡。それを辿るように、ユリスは雷撃を纏う斧を振るう。
「ブリッツベイル!!」
 叩きつけられたルーンアックスは、ドリームイーターを真っ二つに斬り裂く。そして、ドリームイーターが消滅すると共に、クロエは力尽き、ぱたりとその場に倒れたのだった。


「あたし、雪奈さんを探してくるね!」
 そう言って、クロエは校舎の方へと走り出す。まだ倒れたまま動けないクロエに気遣いの声を掛けてから、他のケルベロス達はヒール作業に取りかかる。
「姉妹かぁ……まったく羨ましいなっ! でも、守れてよかった」
 数分後、起き上がったクロエは、先に校舎やグラウンドのヒール作業に取りかかっていた仲間達に合流する。
 そして粗方ヒール作業を終えた頃、校門の外から優奈が歩いてきた。
「助けていただき、ありがとうございました。それで、雪奈は?」
 たずねる優奈に、ケルベロス達は校舎の方を指差した。すると、タイミング良く雪奈が校舎から姿を表す。
「……優奈」
 複雑そうな顔で呟く雪奈の元へ、優奈もヒール作業を終えたルベロス達も走っていく。
「心配したんだから!!」
 抱きつく優奈に、雪奈は目を丸くした。
「姉妹は仲良しが一番だよ」
 にっこり笑って、糸は言う。その言葉に頷いて、ステラはテニス部の部室から拝借してきたラケットとボールを取り出す。
「負けたくないからって切磋琢磨するのも良いけど、たまには勝ち負けを忘れて純粋にテニスを楽しんでみない? ほら、キャッチボールは人間関係を直すコミュニケーションの万能薬って言うじゃん。テニスコートも大丈夫そうだし……ほらほら♪」
 おんなじような表情をして、互いに顔を見合わせる見合わせる双子の姉妹の腕を引き、ステラはテニスコートに向けて歩き出す。
 そして、テニスコートに着いたケルベロス達は、二人が何処と無く照れ臭そうな顔でラリーを始めるのを、微笑ましい気持ちで見守るのだった。

作者:あかつき 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年10月21日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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