ファクトリア突入作戦~紫閃の魔人

作者:澤見夜行

●新たな作戦
 その日、番犬達に新たな作戦の報せが届いた。
 概要を聞くために集まると、早速、クーリャ・リリルノア(銀曜のヘリオライダー・en0262)が説明を開始した。
「海底基地破壊作戦の結果、ダモクレス基地では資材が不足し、その不足資材を補う為に、各地の工場で資材を奪おうとするライドロイド事件が発生していたのです。
 このライドロイド事件も、皆さんの活躍によって解決した事で、ダモクレス基地に大きな打撃を与えることができたようなのです」
 クーリャの言葉に続きモニターの映像が切り替わる。映されたのは巨大な基地を思わせる建物だ。
「この状況で、ウォーグウォーグ・レイヘリオスさん、アビス・ゼリュティオさん、オリビア・ローガンさんの三名が、瀬戸内海の無人島で、ダモクレスの巨大基地を発見したのです。
 巨大基地の名は『マキナ・ギア・ファクトリア』。
 本来は、人間の機械化を行い、特に対ケルベロスを想定した『試作戦闘型ダモクレス』の開発を行っていたようなのです。
 現在は資材不足により開発が中断されており、更に、基地防衛及び作業用ライドロイドの多くが破壊されたことにより、防衛力も大きく低下しているようなのです。
 このチャンスを利用すれば、最小限の戦力で『マキナ・ギア・ファクトリア』の撃破が可能なはずなのです!」
 グッと拳を握ったクーリャが、続けて実際の作戦概要を伝える。
「基地の突入方法は、ミッション破壊作戦に近い『ヘリオンを利用した高空からの降下作戦』となるのです」
 予知情報によって特定し出された突入ポイントに直接降下し、工場の外壁を破壊、中枢を守る『試作戦闘型ダモクレス』と呼ばれる戦闘型ダモクレスを撃破して、工場から脱出する作戦だ。
「全チームの脱出を確認後、中枢を破壊した巨大工場型ダモクレス『マキナ・ギア・ファクトリア』を、全チームの最大火力で破壊する手順となるのです」
 『マキナ・ギア・ファクトリア』の中枢を守る試作戦闘型ダモクレスの数は九体。
 つまり、今回の作戦は九チームによる強襲作戦となる。
「こちらのチームで戦うことになる『試作戦闘型ダモクレス』はSR11魔人と呼ばれるダモクレスなのです」
 敵は一体、配下などはいないが、人魔融合体であるこのダモクレスは強敵だ。
「装備した日本刀での攻撃の他、防具を破壊する強酸性の液体を放つ攻撃に、高い毒性を持った砲撃を行ってくるのです」
 高いグラビティ感知能力も持っているようだ。侍のような外見だが、オールレンジに対応してくるだろう。
 クーリャは周辺状況についても知らせてくる。
「多くのライドロイドが破壊された事で、基地の防衛能力は大きく低下しているのです。
 けれど、全く戦力が無いわけでは無いようなのです」
 シモーベや作業用ライドロイドと工場内で遭遇したり、或いは、駆けつけてきた戦闘用ライドロイドと戦闘になる可能性もあるようだ。
 それを避ける為には、できるだけ早く中枢地区に移動し、試作戦闘型ダモクレスを破壊、そして中枢システムを破壊して脱出する必要がある。
「中枢地区は、予知で割り出した突入ポイントからそれほど離れていないので、地道に探索すれば見つける事は難しくないのです。
 ただ、作戦をスムーズに進める為には、中枢を素早く見つけ出す事が必要なので、なんらかの工夫が必要かもしれないのですよ!」
 資料を置いたクーリャが番犬達に向き直る。
「今回の基地破壊のチャンスは、これまでの成功の積み重ねがあったからなのですね。このチャンスを逃さず、確実に撃破して欲しいのです!
 そういえば海底に資源採掘基地が存在するという情報もあるのです。
 ダモクレスとの戦いは続いていくでしょうが、まずは、目の前の作戦を確実に成功させて欲しいのです! どうか、皆さんのお力を貸してくださいっ!」
 ぺこりと頭を下げたクーリャは、そうして番犬達を送り出すのだった。


参加者
喜屋武・波琉那(蜂淫魔の歌姫・e00313)
露切・沙羅(赤錆の従者・e00921)
空飛・空牙(空望む流浪人・e03810)
鏡月・空(ツキが最近ない・e04902)
パトリシア・シランス(紅蓮地獄・e10443)
鞘柄・奏過(曜変天目の光翼・e29532)
ザベウコ・エルギオート(破壊の猛獣・e54335)
ジュスティシア・ファーレル(エルフの砲撃騎士・e63719)

■リプレイ

●降下突入
 雲と風を切り、番犬達が降下する。
 眼下に臨むは瀬戸内海の無人島、その一端――『マキナ・ギア・ファクトリア』。
 予知された突入ポイントは確認できている。このままの降下であれば調整の必要も無いだろう。
 周囲を見渡せば、別の突入ポイントを狙う他チームの姿も確認できる。その数計九チーム。
「なかなかの大部隊ね」
 他のチームの姿を確認すれば心強く思う。喜屋武・波琉那(蜂淫魔の歌姫・e00313)は余裕を浮かべ微笑んだ。
「それだけに、僕達も失敗できないね。
 ファクトリアが動いたら……被害も出ちゃうし。
 抑えられる被害は最小限に。僕らは最大限の働きをしないとね」
 落下中ながら身振り手振りの元気がいい露切・沙羅(赤錆の従者・e00921)。沙羅のいうように、この作戦は全部隊の協力とその結果が重要だ。気負う必要はないが緊張感は必要に思われる。
「まあこれだけの部隊だ。きっと上手くいくぜ」
「ええ、そうなるように力を奮いましょう」
 空飛・空牙(空望む流浪人・e03810)が気合いを入れ勝利を信じれば、鏡月・空(ツキが最近ない・e04902)が一つ頷き同意する。
「ふふ、頼もしいわね。
 手早く片づけて一杯行きたいところ、ね、ソーカ?」
 口元の寂しさに手を添えて。目を細めて隣に並ぶ鞘柄・奏過(曜変天目の光翼・e29532)を流し見れば、パトリシア・シランス(紅蓮地獄・e10443)は勝利の美酒の味わいを想像する。
「気が早いですよ、パトリシア。
 まずは目の前の仕事をしっかりとこなしましょう」
 嗜めるように言葉を零す奏過だが、パトリシアの言い分もよく分かる。二人は酒友達だ。
「見えてきやがったな!
 ヒャッハー! ばっちりぶっ壊してサクッと帰るぜェーッ!」
 テンションの高いザベウコ・エルギオート(破壊の猛獣・e54335)が拳を叩いて気合いを入れる。ザベウコの言葉通り、突入ポイントはもう間近に迫っていた。
「突入はあの外壁を破壊して……ですね。
 ダモクレス――これ以上奴等をのさばらせる訳には行かない」
 決意を固めるジュスティシア・ファーレル(エルフの砲撃騎士・e63719)は先日のダモクレスの襲撃によって資材を奪われたことを悔やんでいた。そうでなくともダモクレスには並々ならぬ因縁がある。ここでダモクレスには一矢報いたい考えだ。
 『マキナ・ギア・ファクトリア』の外壁が迫る。
 番犬達はそれぞれの得物を構えグラビティを高めていく。
「ぶっ壊れちまいな――!」
 ザベウコの放つ業火の渦が外壁に直撃し瞬間的に熱すると同時、仲間達のグラビティが放たれ爆発を引き起こした。
 それは『マキナ・ギア・ファクトリア』の各ポイントでも同時に起こる。番犬達の一斉突入が始まったのだ。
 外壁が崩壊し、内部への進入口ができるのを確認した番犬達は、降下の勢いままに突入していく。
 着地の衝撃はかなりのものだが、番犬達には些細なことだ。そんな中、奏過だけはしっかりと光翼を広げ衝撃を軽減していた。ただ、翼を晒すことを好まない奏過はすぐに翼をしまい込んだようだ。奏過にとって幸いだったのは外壁を壊して爆煙の広がる中で、その背の翼を見る者はほとんどいなかったということか。
 警報が鳴り響く。
『マキナ・ギア・ファクトリア内部に侵入者確認。試作戦闘型ダモクレスは、侵入者の排除を行ってください』
 機械的な音声によって全基地に通報がされた。
「邪魔してんぜ機械ども! とりあえず押し通らせてもらうが、拒否権はねぇから諦めな!」
「それじゃいくよ! 迅速にね!」
 空牙が目の前にいたシモーベを撃破し、沙羅が元気に我先にと走り出す。その周囲に纏うは隠密なる気流に他ならない。
 気配を遮断する沙羅を先頭に、番犬達はそれぞれの役割をもって中枢区画を目指す。
 波琉那は通路や通路に設置された端末をよく調べ情報を吸い上げて共有していた。これはとても効果的で、侵入したポイントから中枢とおぼしきポイントまでの道のりを導き出すことができた。大きな時間短縮と言えるだろう。
 先頭を進む沙羅は、的確に敵を見つけその数や様子をハンドサインで伝えていた。やり過ごすことや、奇襲を持って即時撃破を行うことができた。
 空牙の提案で面白スポットを探すようなこともあったが、これは寄り道であった。ダモクレスが製造している物を面白スポットと呼べるならそうなのかもしれないが、あまり有益ではなかった。
 奏過は的確に移動したポイントをマッピングしていく。
 絵心ある手際の良い記入は進行の妨げとならず、その地図のお蔭で複雑なファクトリア内を迷うことなく進むことが出来たと言える。
 探索中大いに活躍したのはザベウコだ。
「よォーし、この何か良い感じの何かは慎重かつ大胆に……そォーい!」
 閉じられた扉や、障害物などをその怪力を持って”穏便”に破壊した。また遮蔽物を作り上げたり、セキュリティ機器を破壊するなど、自慢の怪力をここぞとばかりに披露した。
 殿を務めるのは『糸』を垂らすジュスティシアだ。
 軍人だったこともありハンドサインや索敵はお手の物だ。垂らした『糸』により帰路の心配もなくなっていた。
 しかし、順調に中枢へ向かっていても、避けられない戦闘は何度もあった。
 空やパトリシアの火力役を中心に、続々と現れるシモーベを撃破する。
 番犬達はやや火力に偏重した編成だったが、遭遇戦での被害はそう大きくなく、想定通りに進めたと言っていいだろう。
 そうして、時に探索し、時に敵を撃破しながら進んだ番犬達の前に、一つの大きな扉が姿を現す。
「見えた、中枢区画――その一つの扉よ」
 駆けながら自分の持つ情報と照らし合わせて言う波琉那。波琉那の言うようにそこは九つある中枢の一つ。ダモクレスの製造を担うコンピュータールームに他ならない。
「どいてな! どうせ開かないのはわかってるんだ、ぶち壊すぜ!」
 ザベコウがその怪力を持って扉をへし曲げ無理矢理こじ開ける。
 人が通れる隙間ができれば、番犬達は一斉に内部へと侵入した。
 そして――。
「来たな。侵入者――」
 一振りの刀。その刀身が煌めきを反射する。
 結び上げた紫の長い髪を靡かせて振り返ったのは、一見すれば人間の少女のようにも見える。
 しかし、その身体、細部にいたるまで戦闘を行う機兵とされた少女は――ダモクレスに他ならないのだ。
 冷たい冷気のような殺気が、殺界となって中枢区画を覆う。瞬間、経験敵に危険を判断した番犬達が武器を構えた。
 ゆらりと、少女が手にした刀を構える。低い駆動音と共に重心が落ち、にじみ出る圧倒的な力が全身を包み込む。
「やれやれ、これはまた大仕事になりそうですね」
 空の軽口は張り詰めた気配に掻き消され――静かに、機械的に少女が口を開く。
「SR11魔人。――侵入者を排除する」
 戦いが始まった――。

●紫閃の魔人
 糸引くように伸びる紫の髪が、閃光のように踊り靡く。
 紫電一閃。
 機械的な身体からは想像できない柔軟かつ卓越した刀捌きで、魔人が番犬達を圧倒する。
 疲労という物を見せない機械の身体は、どのように傷付こうともそのパフォーマンスを下げることはない。常に全力の斬撃の嵐が巻き起こる。
 目を見張るのはその侍染みた立ち合いだけに留まらない。ダモクレスらしい、機械的なグラビティが、距離を取る番犬達を苦しめる。
 これに対し番犬達は防備を固め、小細工抜きの火力のぶつけ合いを選択した。元々火力偏重な編成である以上想定通りと言えたが、その戦いは熾烈を極めた。
 互いに引くことのないグラビティの応酬。激しさを増す戦いはしかし、敵ながら見事と言う他ないダメージコントロールにより、長引いていく。互いに看過出来ぬ傷痕がその身を蝕んでいった。
「相手も限界が見えてくる頃合いです!
 今一度体勢を立て直しましょう――!」
 奏過の操る治癒のグラビティによって仲間達が今一度戦う力を得る。蓄積された疲労を消すことはできないが、まだ限界ではない。
「これなら、どうです――」
 肉薄する空が炎纏う蹴りを叩きつけると、勢いを殺さずさらに蹴り飛ばす。神速の疾走は吹き飛ぶ魔人の背後を捉え、更なる蹴撃を見舞う。繰り返される蹴りの応酬、その数実に二十。蒼龍のオーラ纏うかかと落としを止めとし放つ。しかし魔人は地面に叩きつけられる寸前に受け身の機動をとって衝撃を軽減し、すぐさま反撃の突撃を見せる。
「やらせねぇよ――!」
 ザベウコが反応して魔人の行く手を阻む。横薙ぎに振るわれる紫電一刀をその身を盾に防ぎ切れば、手にした火炎放射器を密着させる。
「燃やしてやるから、逃げんなよォーッ?」
 火炎放射器を持つ腕から伸びた角が炎熱し弾丸となる。火炎放射器より放たれ相手を穿つ燃魂の一撃が魔人の身体を燃焼させていった。
「本当に強いけど――動きが鈍ってきているよ!」
 沙羅が手にしたリボルバー銃の引き金を連射する。放たれた弾丸は魔人に迫り――その悉くを刀で受け流していく。
 だが、グラビティ纏う弾丸はついにその刀を持つ腕を弾き刀振るう腕の精密さを奪い取る。
 表情を変えず、体勢を戻そうとした魔人の視界が閃光に染まる。
 極限の集中より放たれた沙羅の遠隔爆破によるものだ。すぐさま爆煙より身を躍らせる魔人はくるりと回る沙羅を目撃する。
 ――にこり、と沙羅が微笑んだ。
 招来するは赤錆を纏う無数の刀。沙羅に気を取られた魔人は頭上より降り注ぐ刺突の嵐を為す術無くもらい受ける。
 刀の雨から抜け出た魔人に空牙が迫る。
「そんじゃ、狩らせてもらうぜ? 悪いが悪く思うなよ機械魔人!」
 空牙は刀身のある旋棍で突き刺しを行うと、左手に持つ旋棍と組み合わせ槌へと帰る。噴射するドラゴニック・パワーの勢いままに振り抜けば、加速した槌が魔人を叩き飛ばす。
 追撃を逃れようとする魔人だが、その動きは予測済みだ。気を咬むオーラの弾が魔人に吸い込まれるようにして炸裂した。空牙は得意げにズレたヘッドホンを直した。
「――追い込む」
 足止めが効果的に機能していると判断したジュスティシアが、火力重視の攻撃へと切り替えていく。
 携行式ランチャーと対物狙撃銃を器用に使い、フロアを疾駆する魔人を追い詰める。ランチャーより放たれる弾丸による爆風が魔人の神経機能を麻痺させて、狙撃銃より放たれた凍てつくグラビティが、その傷付いた身体を氷結させ蝕む。
 追撃が見込めると見れば、無数の弾丸を跳弾させ、魔人の身体に傷を付けていった。
 番犬達の猛攻により、魔人の俊敏な動きに翳りが生まれた――チャンスだと誰もが確信した。
「その隙、見逃しはしないわ――!」
「終わりにするよ!」
 パトリシアと波琉那が同時に疾駆する。
 迎え撃つ魔人の一刀がパトリシアの靡く髪を攫う。紙一重の回避を見せたパトリシアが、その勢いままに身体を捻りそのしなやかな脚を振るう。電光石火の蹴りが叩き込まれたかと思えば、息もつかせぬ連続攻撃で相手の魂を喰らう拳を放った。
 魔人が体勢を崩す、その刹那の間に一足飛びに飛び込む波琉那。肉薄したその間合いで、美しい弧を描く斬撃が閃いた。魔人の手から刀が弾け飛ぶ。
 一歩、さらに波琉那は踏み込んで、オウガメタル纏う渾身の一撃を叩き込んだ。
 壁面に叩きつけられた魔人。各部パーツから火花が舞い、その機能を停止させていた。
 魔人がゆっくりと、壁に背を付けて倒れていく。その氷のような表情が変わることは終ぞ無かった。

●崩壊
 魔人を倒した番犬達は、すぐさま中枢区画の機能を破壊した。
「長居は無用だ、ずらかろうぜ?」
 魔人との戦闘でかなりの時間をロスしてしまっている。一行は全ての機器を破壊すると、急ぎ脱出へと向かう。
「――と、壁が壊れてるわね……来た道で帰るのは難しそうかしら?」
「糸を辿るのは難しそうですね……」
「なら正面の出入り口を目指しましょう。きっと他の皆も――」
 遠回りになるが仕方が無い。基地内各地で起こった戦闘の影響で内部はかなり崩壊している。
 番犬達は来たときと同じように極力敵との接敵を避けながら、『マキナ・ギア・ファクトリア』内を駆ける。
 そうして、正面出入り口に近づいたとき、前方に同じように出口を目指す仲間達の姿を見つけることが出来た。後ろからは同じように苦戦したのか、別班の番犬達の姿があった。
「見えた、出口だ」
 番犬達が、揃って出口から飛び出す。
 だが仕事はこれで終わりではない。最後の仕上げ――『マキナ・ギア・ファクトリア』の破壊を全員で行う必要がある。
「さあ、最後の仕上げだよ!」
 疲労を見せず元気に言う沙羅に続き、番犬達がグラビティを迸らせる。
「よォーし! 派手にぶち壊してやろうぜ!」
 手にした火炎放射器にグラビティを籠め、ザベウコが哮る。放たれた赤熱がファクトリアの壁面を焦がし、溶かし、その熱を基地全体へ伝えていく。
「これで目論見は一つ潰えましたね。
 仕上げです――!」
 装備した火気をファクトリアに向け一斉射撃を行うジュスティシア。幾つものグラビティを纏った弾丸が、ファクトリアの中心分に向けて放たれる。
「決着はキミの手で――決めろフウメイッ!」
 別班の仲間の誰かが声を上げた。この巨大な敵に因縁を持つ者がいたのだろう。番犬達の視線が集中する。
「悪しきインネンを断ち切るデース! フーメイ!!」
 促された李・風美が手にした巨大バスターライフルに渾身の力を籠めて放つ。周囲の番犬達もそれに力を貸すようにグラビティを重ねた。
 その流れにこちらも負けてられないと、パトリシアがグラビティを高めた。
「――これで終わりよ!」
 愛用のリボルバー銃に焔の魔力を籠めて、弾丸が射出される。
 弾丸は番犬達のグラビティとともに飛び、ファクトリアの壁面を穿ち、内部通路を破壊しながら一直線に進んでいく。
 中心を突き進んだグラビティの塊はやがてファクトリアの心臓部、溶鉱炉へと至りそれを破壊することに成功した。
 行き場を失った膨大なエネルギーが爆発し、『マキナ・ギア・ファクトリア』――そのダモクレスの身体を千切り爆裂させた。
 パトリシアは咥えていたタバコに、火を点す。そうして破顔し言葉を零した。
「おー、つっかれた!
 ね、ソーカ、約束の――一件行かない?」
 微笑みながらクイっと手を動かすパトリシアに苦笑して、奏過がスキットルを取り出して、
「構いませんけど、先に一杯やらせてもらいますよ」
 と、スキットルに入ったウイスキーを呷った。
「あ、こら! まだ帰ってないんだから飲んじゃ駄目だよ!」
 腰に手を当てた”まだ飲むことの出来ない”沙羅が、飲んだくれな二人を嗜めた。
 そんな光景に仲間達が苦笑して――、
「さぁ、帰りましょう――」
 爆炎に沈み行くファクトリアを背に、番犬達は帰路へと付くのだった――。

作者:澤見夜行 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年10月18日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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