ファクトリア突入作戦~燃えたぎる灼熱の炎

作者:天枷由良

●状況説明
 ――瀬戸内海の無人島に、ダモクレスの巨大基地が発見された。
 ミィル・ケントニス(採録羊のヘリオライダー・en0134)はそう切り出した後、この情報がウォーグ・レイヘリオス、アビス・ゼリュティオ、そしてオリビア・ローガンの三名によってもたらされたものであることを付け加えて、現状の説明に入る。
「近頃のダモクレス勢力は、駿河湾での『海底基地破壊作戦』を受けて資源不足に陥った状況を打破すべく、各地の工場に目をつけていたわ。けれど、派遣された物資強奪部隊による『ライドロイド事件』も皆の活躍によってあらかた解決され、ダモクレス基地は資源を補えなかったばかりか、さらに損失を重ねてしまったようなの」
 こうした流れの中で、先の三名によって発見されたのが無人島の巨大基地。
 その名も『マキナ・ギア・ファクトリア』である。
「マキナ・ギア・ファクトリアでは、人間の機械化……特に、対ケルベロスを想定した『試作戦闘型ダモクレス』の開発が行われていたようだわ。今は資源がないから、開発作業も中断されているみたいだけれどね」
 おまけに、防衛と諸々の作業に従事していたライドロイドやシモーベの多くを失ったことで、基地の防衛力までもが低下しているようだ。
「この機会に攻め込めば、マキナ・ギア・ファクトリアそのものを破壊することも出来るでしょう。……そこで、複数チームによる突入作戦を行うことになったわ」

 基地への突入は『ヘリオンを利用した高空からの降下作戦』で行われる。
「ミッション破壊作戦の時と似たようなものね。まずは予知によって特定されたポイントへと降下しつつ基地を攻撃、外壁を破って内部へと侵入してもらうわ」
 侵入後は基地システムに関わる中枢地区を目指す。目標は突入ポイントからそれほど離れていないので、見つけ出すことは難しくないはずだ。
「とはいえ、闇雲に探索をしては時間を浪費するばかりか、基地に残っているシモーベや作業用ライドロイドと遭遇したり、戦闘用ライドロイドが駆けつけてくる可能性もあるでしょう。中枢地区へと素早く辿り着くためには、探索方法にも少しばかりの工夫が必要かもしれないわね」
 無事に辿り着けたならば、中枢地区を破壊するのだが――。
「その前に立ちはだかるのが『試作戦闘型ダモクレス』よ。基地防衛に当たっているのは全部で九機。皆は、そのうちの一機『SR03ブラッド』と戦闘になるはずだわ」
 SR03ブラッドは大剣と炎を自在に操り、猛火の如く攻めかかってくる。
「炎を纏った大剣の一撃。強化術すらも焼き尽くす炎の奔流。全身を炎で覆い、不死鳥のように突撃して力を吸い取る技。どれも強力に違いなく、攻撃属性に偏りもないのが厄介ね」
 しかし、SR03ブラッドも試作戦闘型ダモクレスの一機にすぎない。突出した攻撃力にさえ対応できれば、必ず撃破できるだろう。
「SR03ブラッドを倒したら、中枢地区を破壊して基地の正面口より脱出。全チームの脱出後に、マキナ・ギア・ファクトリアを最大火力の総攻撃で粉砕して作戦完了よ」
 この総攻撃以外、つまり突入から脱出までは各チームごとの行動となる。
「自分たちの任務を――皆の場合は、SR03ブラッドの撃破と中枢地区の破壊を確実に達成できるよう、全力を尽くしましょう」


参加者
陶・流石(撃鉄歯・e00001)
鈴木・犬太郎(超人・e05685)
マーク・ナイン(取り残された戦闘マシン・e21176)
レミ・ライード(氷獄騎兵・e25675)
園城寺・藍励(深淵の闇と約束の光の猫・e39538)
イーシャ・ナオシアーノ(超実践派独学医療術師・e41404)
エドワード・リュデル(黒ヒゲ・e42136)
黒羽・陽(絶壁のゴールデンスパイン・e45051)

■リプレイ


「いいですか皆さん。敵地潜入の心構えとして重要なのは――」
「おかしもでござるな」
「そう、そうです。おさないかけな……って違います!」
 黒羽・陽(絶壁のゴールデンスパイン・e45051)は慌てて首を振った。緊張ゆえの多弁を見透かされたのか、エドワード・リュデル(黒ヒゲ・e42136)がニタリと笑っている。
「そうじゃなくてですね!」
「降下が始まった! 俺たちも行くぞ!」
 気を取り直す間もなく、鈴木・犬太郎(超人・e05685)がヘリオンから飛び出した。
 それに次々と仲間たちが続いていくものだから、陽も空に身を躍らせるしかない。
 白い建屋を乗せた逆四角錐は、すぐに目前まで迫りくる。
「世界の為、人々の為、そしてかけがえのない友の為……参りましょう、手術開始ですッ!」
 イーシャ・ナオシアーノ(超実践派独学医療術師・e41404)が竜砲弾を放つと共に、ケルベロスたちは外壁へとグラビティを叩き込んだ。

 ――けたたましい警報音を伴って、そこかしこから機械音声が響く。
『マキナ・ギア・ファクトリア内部に侵入者確認。試作戦闘型ダモクレスは、侵入者の排除を行ってください』
「当然だな」
「当然でござるな」
 マーク・ナイン(取り残された戦闘マシン・e21176)とエドワードが頷く。
 外壁をぶち破られて無反応な軍事施設が在るはずもない。
「急ぐ、です」
 翼に反応するものがないことを確かめたレミ・ライード(氷獄騎兵・e25675)も言う。
「全くその通りなのですが……」
「上空から見た限り、中央に向かうのは此方でござろう」
 ぐるぐると回る磁石に戸惑うイーシャを制して、エドワードが通路の一方を指し示す。
「じゃあ、行くよ」
 園城寺・藍励(深淵の闇と約束の光の猫・e39538)が動物変身で小さな白猫の姿となり、密やかに進み始めた。
 しかしその形で防具特徴を使うことはできない。代わりにレミがアリアドネの糸を垂らして続き、此方も動物変身でヤマアラシとなった陽、隠密気流を纏ったマークが後を追う。
 それから少しの間を置いて、同じ気流を使う陶・流石(撃鉄歯・e00001)と犬太郎が後方の警戒に当たり、エドワードはイーシャの助力を得ながら地図を作り始めた。

 敵に見つからないことを第一とした慎重な進軍。写真撮影まで行うマッピング。
 ケルベロスたちの行動は確かに闇雲な探索の対極であったが、しかし中枢に素早く辿り着くための速さを欠いている。
 緩やかな歩みとなってしまった彼らが、戦力不足の基地内を慌ただしく駆け回るシモーベと鉢合わせてしまうのは、避けようのない事態であった。
「見つかったからにはしょうがねえ。たった一体だ、ブチのめして行くぞ」
「了解。SYSTEM COMBAT MODE」
 拳を鳴らす流石に応じて、戦闘状態に移行したマークが砲撃を仕掛ける。
 命中。さらに続けて流石の跳弾射撃、レミの“氷獄槍”と威力も精度も十分な攻撃が敵を打ち砕く。たかがシモーベと軽んじることは出来ないが、しかし八対一では勝負にならない。
 退けるのは造作も無いことだった――が。
「また敵発見! もうバレてる!」
 動物変身を解いた藍励が声を上げる。
 前方からは、新たにシモーベ二体と作業用ライドロイドが迫っていた。


 かくして消耗を強いられたケルベロスたちは、半ば逃げ隠れるように転がり込んだ区画から、これまでと違う雰囲気を感じ取る。
 だだっ広い空間にはバルブと計器の付いたパイプが柱のように連なる一方で、何かの基盤や配電盤らしきもの、意味不明な数値の表示されたモニター、円筒形やら直方体やらの容器などが並んでいた。
 なにより、暑い。蒸し風呂とまでは行かないが、此処に至るまでの通路よりも空気が重く、肌に纏わりつく。
「ただのボイラー室……ってわけじゃなさそうでござるな」
「もしかして、ここが中枢区画の一つ……? なんかすごいね」
「ああ、すげぇだろ?」
 エドワードと藍励の呟きに対する不意の返答が、ケルベロスたちの足を止めた。
 ――上だ。
「遅かったじゃねぇか」
 一際太いパイプに女が腰掛けていた。
 身の丈ほどもある大剣を軽々と担ぎ、身体のそこかしこから赤い炎を揺らめかすそれは、ケルベロスたちが討つべき試作戦闘型ダモクレス――SR03ブラッド。
「アタシが出るまでもなく野垂れ死んだのかと思ったぜ?」
「いやいや、てっきりそちらが尻尾巻いて逃げたものとばかり!」
 陽が挑発を返す。
「あっはっは! 言うねェ、威勢の良いやつは嫌いじゃないぜ」
 哄笑を響かせながら下りてきたブラッドが、朗らかな顔で陽を見据えた。
「折角だ、名前くらいは聞いといてやるよ」
「これから殺す相手に名乗るなんて、無駄だと思いませんか?」
「……そうかい。なら、始めるとすっか」
 依然として余裕を伺わせたまま、大剣と背から一際大きな炎が噴き上がる。
 それを見るなり、犬太郎も張り合うように鉄剣を構えて言い放つ。
「大剣も炎も、お前の専売特許じゃねぇ。それを証明してやるよ」
「ハッ、面白ェ」
 ブラッドの瞳に、危うい光が宿った。

「RED EYE ON」
 マークのカメラアイが赤く輝く。
 同時に流石は敵側方へと回り込むように走る。
 二者の動きをブラッドが見やった、その一瞬。
「喰らえ!」
 犬太郎が一気に間合いを詰め、鉄剣を横薙ぎに振るった。
 質量に任せた単純な暴力が、受けたブラッドの左腕に傷をつける。
「おっ、と……。なるほどなァ、まあ、悪かねェが」
「それなら――こういうのは、どうかな!」
 やや緩慢な敵の動作に付け込み、犬太郎の剣を潜り抜けて藍励が懐に踏み込む。
 得物は家宝の妖刀。刃そのものに宿る呪詛を溢れさせて、下から斬り上げた一撃は敵の赤い装甲を大きく裂いた。
 さらに続けざま「く」の字を描くようにして流石が横から接近。超至近距離から拳撃と蹴りを繰り返し――引いた腕で再び殴りかかると見せかけてから一転、リボルバー銃を抜く。
 そして飛び出した弾丸は――敵の頬を掠めて彼方に消えた。
「何処撃ってんだよ」
 ブラッドがせせら笑う。
「てめぇこそ何処見てんだよ」
 流石もニヤリと笑う。
 その態度を、ブラッドが虚勢と断じた刹那。
 流石が敵意を注いだ弾は幾重にも絡んだパイプの隙間を跳ね回り、戦場に舞い戻ると敵の背を穿った。
「ッ! ……アハハッ! なんだよテメェやるじゃねェか!」
「そりゃどうも」
 互いに笑みを湛えたまま、しかし視線に殺意を込めて。
 二人は飛び退き、離れていく。
 それを待っていたかのように背後から迫ったのは、陽。
 高密度に圧縮したヤマアラシの針毛を、力一杯に殴りつけることで突き刺して体内で爆裂させる。
「デュフフ、足下にも気をつけた方がいいですぞ」
 ほくそ笑むエドワードは遠目から、じっと敵の姿を見つめる。
 瞬間、爆発。地球人のケルベロスが極限まで集中することで起きる超常の現象が、ブラッドの炎を飲み込み――。
「!」
 いち早く事態に気づいたレミがヒールドローンを撒くと同時に、ケルベロスたちの視界で揺れていた爆炎が急激に形を変えた。
「炎ってのはなァ、こう使うんだよォ!」
 自らの熱で爆破攻撃を阻んだのか、焦げ跡一つ見当たらないブラッドの元から紅蓮が蛇の如く波を打って押し寄せる。
 最前に向けられたそれに、犬太郎とマークが盾となって仲間を庇う。しかし猛烈な熱量にケルベロスたちは一時視界を奪われ、散らしたばかりの小型無人治療機は尽く焼き尽くされて塵と化していく。
「……いっひ、うひひぃーっ! ヒィィヤッハァァッ!」
 熱波と戦場の空気に当てられたか。カッと目を見開いたイーシャが、絶叫しながら仲間のカルテを作り始めた。
「すみません此処が友人に縁ある施設なのも相まって少々昂っております! すごいです、すごイーシャです!」
「うるせェなァ」
 ふと聞こえた声は後ろから。
 手を止めずに振り返るイーシャ。だが声の主の姿は既に無く、ただそこに居たことを示す熱だけが背から首元を撫でる。
「喧しくて興醒めしたぜ。テメェは後回しで、まずは――」
 煌々と背の炎を迸らせながら、天井いっぱいにまで飛び上がっていたブラッドは犬太郎に狙いを定めた。
「“証明”してもらうとするかァ!」
「ッ――!」
 猛火を滾らせた大剣が真上から降る。
 犬太郎は咄嗟に後方へと跳躍するも、炎を翼の如く広げたブラッドが再び距離を詰める。
 一閃。斬るのでなく叩き潰すように振られた刃が、大の男を容易く壁際まで吹き飛ばす。
「WARNING! WARNING!」
「ヒャッハァ! ブッ救うゥゥッ!!」
 マークの警報じみた呼びかけに応じて、イーシャがすぐさま治療に向かう。
「おいてめぇ!」
 流石は声を荒らげると共に、鋭く敵を睨めつけた。
 その視線には恐れを抱かせる効果がある――はずだが、ちらりと目を合わせた敵は不敵な笑みを湛えるだけ。
「LOCK ON! FIRE!」
 すかさずマークが主砲を斉射するも、弾丸は燃える大剣によって受け流される。
 ならばと藍励が身の丈ほどもある大剣で斬りかかって、ようやくブラッドを捉えた。
 しかし、より正確な一太刀をと選んだ技に付与される効果はジグザグでなくブレイク。悠然と耐え凌いだブラッドは藍励を蹴り飛ばし、犬太郎へと剣先を向けて僅かに腰を落とす。
「はあああああッ!!」
 裂帛の叫びと共に噴き上がる炎が、ブラッドの全身を包んでいく。
 レミがアームドフォートに取り付けた砲撃形態のハンマーで、エドワードがバスターライフルからの速射で攻めかかるも、紅蓮の勢いは衰えず。陽が解き放った混沌の波も単体の敵相手には効果が薄い。
 やがて不死鳥は翼を翻し、獲物を喰らうべく翔び立つ。
「来るなら……来い!」
 イーシャの治療で僅かに傷が癒えた犬太郎は、拳に魂喰らう降魔の力を込める。
 そして突き出した拳は――虚しくも逸れ、炎の中に飲み込まれた。
 怒りを誘発する大剣の一撃。降魔の拳。どちらも肉体の頑丈さや力の強さによる技であり、続けて用いれば簡単に見切られてしまう。
「ハッ、口ほどにもねェ」
 苛立ちを露わにしながら、ブラッドが炎を鎮める。
 その足元で、全ての力を吸い取られた超人は、無残に崩れ落ちていた。


 さらにブラッドの矛先は、赤い輝きで怒りを植え付けたマークへと向けられる。
 彼を生き存えさせるためにジャマーのエドワードが頻りに武器封じでの攻撃力低下を狙い、マーク自身もグラビティ中和弾で応戦する。しかし如何せん、一人で盾役を務めるには早すぎた。作戦が実を結ぶよりも早く、猛火がマークを蝕んでいく。
「EMERGENCY! EMERGENCY!」
「喧しいんだよ、出来損ないがッ!」
 炎迸る大剣での殴打から、流れるように不死鳥が羽ばたく。
 業火に灼かれるマークの身体や側面防御用の盾から悲鳴とも似た異音が響く。
「TAR――TARGET……IN……IN、SIG――」
 銃口を向けたまま、声がぷつりと途切れた。
 程なく頑強なレプリカントは崩れ落ち、カメラアイを弱々しく明滅させて動かなくなる。
「ヒ……イヒヒィ……!」
 狂乱状態にあるイーシャだけが奇声を漏らす中、他の者たちは息を呑んだ。
 道中での消耗も影響しているとは言え、戦況はどう見ても芳しくない。

 だが、幾ら猛火で煽られようとも、彼らに退くつもりはなかった。
 レミが槍を構える。とりわけ重要な『ドクター』の撃破に向かった仲間を始め、共同作戦を展開する全てのケルベロスたちが全力を尽くしているはず。
「こちらも、やる事、確り、こなさないと、です」
「まだ諦めねェか。いいぜ、だったら何処までも燃やし尽くしてやらァ!」
 ブラッドが叫び、己が炎の全てを紅蓮の奔流として解き放った。
 盾役を欠いた前衛を通り越し、戦場を駆け抜けた炎はレミにイーシャ、陽と後衛を担う者たちを次々に襲い、肌も肉も血も纏めて焼き払う。
「ヒィイイイ! 火傷の処置はスピードが大事ィィィ!!」
 相も変わらず叫び続けながら、イーシャが果てそうな自分自身に緊急手術を始める。
 レミは地獄の翼で自らを覆うようにして耐え、辛うじて堪えた陽は反撃に黒鎖を放って敵を締め上げた。
 それを見て対角線上に動いたエドワードが妨害工作を兼ねた援護射撃を行い、藍励が突撃。呪詛纏う刃での渾身の一太刀が、正しく呪いのように獲物を追って喰らいつく。
「クソがッ!」
 吐き捨て、ブラッドは藍励を葬るべく己に炎を纏わせる。
 ――が、此処に来てエドワードの仕込みも成果を上げ始めた。
 いざ攻撃を繰り出そうとした途端、炎が萎んでいく。不死鳥の羽ばたきからただの突進と化したそれにも十分な威力があったが、しかし藍励が耐えられないほどではない。
「アタシの炎が……!? いいや、まだッ!」
 ブラッドは剣を構え直す。しかし繰り出す攻撃と炎は先に二人を葬ったのとは比べ物にならないほど弱化著しく、ケルベロスたちを倒しきれない。
「おう、粋がんのもそのくらいにしとけよ」
 幾度かの攻撃を凌ぎ、流石が視線でブラッドを怯ませる。
 その瞬間。
 まだ猛火が燻る翼を思い切り広げて、宙に舞い上がったレミが“氷獄槍”を投げた。
 冥府の冷気を封じられた槍は敵を穿ち、瞬く間に全てを氷蒼色で塗り替えていく。
「なっ……」
「貴女が、炎で、燃やす、なら、その、炎ごと、凍らせる、です」
 レミは囁き、翼を翻して一気に間合いを詰めた。
 そしてブラッドから槍を引き抜くと、稲妻のような速さでトドメの一撃を刺す。
 微かに揺らいでいた冷たい色の炎翼が、ふっと吹かれた蝋燭のように呆気なく消えた。


 ブラッドの死を確かめてから、レミは仲間たちに目を向けると小さく頷く。
 一先ずは勝利を得たが、これで終わりではない。
 ケルベロスたちは機械、素材、配管と目につくものを片っ端から壊していく。割れたパイプから蒸気が噴き出し、砕けた直方体から用途不明の液体が溢れ、何処からか生じた炎に破壊も十分と判断した後は、倒れた仲間を介助して反転、大急ぎで退路を駆けた。
 それを阻むものはなく、八人は無事に脱出を果たす。
「さあて、もう一仕事でござるな!」
 エドワードが言って、手元の起爆装置を操作する。
 撤退の最中で撒いた爆薬が次々と炸裂して、ファクトリアの一角から爆炎が噴いた。其処を目標地点にレミが氷槍を投げ、イーシャが竜砲弾を撃ち、流石はリボルバーの弾丸を残さず叩き込む。
「――TARGET IN SIGHT」
 ふと目覚めたマークも全弾を吐き出した。
 着弾点に新たな爆発が起きる。それは他班の攻撃で生じたものと混じり合い、凄まじい勢いで広がっていく。
「終わり、です、ね」
「ああ」
 レミが呟き、流石が頷く。そしてケルベロスたちの見つめる先で、マキナ・ギア・ファクトリアは炎に彩られながら崩壊していくのだった。

作者:天枷由良 重傷:鈴木・犬太郎(超人・e05685) 
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年10月18日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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