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「海底基地破壊作戦の結果、ダモクレス基地では資材が不足して、その不足資材を補う為に各地の工場で資材を奪わんとする、ライドロイド事件が発生していました……」
小檻・かけら(麺ヘリオライダー・en0031)が資料片手に真面目な顔で語り出す。
「そのライドロイド事件も皆さんのご活躍によって解決を見まして、ダモクレス基地へ大きな打撃を与えられたであります」
時を同じくして、ウォーグ・レイヘリオス(山吹の竜騎を継ぐもの・e01045)、アビス・ゼリュティオ(輝盾の氷壁・e24467)、オリビア・ローガン(加州柳生の伝承者・e43050)の3名が、瀬戸内海の無人島で、ダモクレスの巨大基地を発見したという。
「巨大基地の名は『マキナ・ギア・ファクトリア』」
本来は、人間の機械化を行う工場で、特に対ケルベロスを想定した『試作戦闘型ダモクレス』の開発を行っていた。
「現在は資材不足により開発が中断されていまして、更に、基地防衛及び作業用のライドロイドの多くが破壊されたことで、防衛力も大きく低下してるであります」
このチャンスを利用すれば、最小限の戦力で『マキナ・ギア・ファクトリア』の撃破が可能でありましょう——かけらが言い切った。
「巨大基地への突入方法でありますが、ミッション破壊作戦に近い『ヘリオンを利用した高空からの降下作戦』となります」
まずは予知情報によって特定した突入ポイントへ直接降下し、工場の外壁を破壊。
内部へ突入後、中枢を守る『試作戦闘型ダモクレス』と呼ばれる強敵を撃破して、工場から脱出する作戦だ。
「全チームの脱出を確認後、中枢が機能停止した巨大工場型ダモクレス『マキナ・ギア・ファクトリア』を、全チームの最大火力で破壊する手筈となります」
『マキナ・ギア・ファクトリア』の中枢を守る試作戦闘型ダモクレスの数は9体。
「という訳で、今回の作戦は9チームによる合同強襲作戦となります」
補足するかけら。
さて、多くのライドロイドが破壊された事で防衛能力の大きく低下した巨大基地だが、かと言って全く戦力が無いわけでは無い。
「シモーベや作業用ライドロイドと工場内で遭遇したり、或いは、駆け付けてきた戦闘用ライドロイドと戦闘になる可能性もあります」
それを避ける為には、できるだけ早く中枢地区に移動して試作戦闘型ダモクレスを撃破、中枢システムも破壊して脱出する必要がある。
「中枢地区は、予知で割り出した突入ポイントからそれほど離れていませんので、地道に探索なされば難なく見つかるかと存じます」
だが、作戦をスムーズに進める為には、中枢を効率よく見つけ出せる素早さが必須となるので、なんらかの工夫を要求されるかもしれない。
「中枢への移動後でありますが、皆さんには『SREXドクター』と率先して戦っていただきます」
SREXドクターは、四六時中研究に没頭しているのか身なりに構わないらしく、汚れた白衣を着て眼鏡の曇りすら拭わない有様の女性型ダモクレスだ。
「SREXドクターは、手にした解剖用のメスで『改造用切開』なる頑健性に満ちた斬撃を繰り出してきます。近距離の敵1体にしか当たりませんが、身体を痺れさせる効果にはご注意を」
他にも、硬い外板を活かした『スピンキック』を仕掛けてくる。
「こちらは敏捷性と射程に優れ、破壊力のある鋭い蹴りで敵複数人の守りを崩してくるであります」
そして、自らの体力を消耗した際には、『即効性タブレット』を噛み砕いて傷の治療をするという。
「異常耐性を高める効果もあるタブレットでありますが、基本的に深手を負わない限り取り出さないようであります」
かけらはそう説明を締め括って、彼女なりに皆を激励した。
「海底に資源採掘基地が存在するとの情報もありますし、ダモクレスとの戦いは続くでありましょうが、まずは、目の前の作戦を確実に成功させてくださいませね」
参加者 | |
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月枷・澄佳(天舞月華・e01311) |
スノーエル・トリフォリウム(四つの白翼・e02161) |
ミリム・ウィアテスト(リベレーショントルーパー・e07815) |
瀬部・燐太郎(ジャックランタン・e23218) |
アビス・ゼリュティオ(輝盾の氷壁・e24467) |
李・風美(胡乱でチャイナな瓶底眼鏡・e40773) |
ヒメカ・ベイバロン(空虚な女・e42130) |
オリビア・ローガン(加州柳生の伝承者・e43050) |
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マキナ・ギア・ファクトリアの周縁部——予知で割り出した突入ポイント上空。
「仲間の因縁も絡み合う、人を機械にする恐ろしい工場破壊する機会、逃す筈ないでしょう!」
まずはミリム・ウィアテスト(リベレーショントルーパー・e07815)が、落下の勢いに任せて溜め斬りを繰り出す。
全身に力を溜め、己が筋力も載ったブルーフレイムソードを、工場の外壁へ鋭く突き刺した。
「見つけちゃったものは仕方ないしね。さっさと全部片付けて帰ろうか」
アビス・ゼリュティオ(輝盾の氷壁・e24467)は、至って平静を保ったままヘリオンより降下。
光の翼の暴走によって『光の粒子』と化した体で、ファクトリアの装甲目掛け突撃した。
「人間の機械化を行う工場か、きっと今までにも被害を受けた人がいるんだよね。
スノーエル・トリフォリウム(四つの白翼・e02161)はピンクの瞳に憂愁の色を湛えて、マシュと共に飛び降りると、
「きっちり破壊して、ドクターも倒して、こんなこともう二度とできないようにしなきゃだね」
白詰草のブーツから理力籠もった星型のオーラを蹴りつけ、外壁へ深々と突き刺した。
「さて、みなさんをスマートにエスコートできますかどうか」
復讐心と憤怒に我を忘れぬよう態と軽口を叩きながら宙空へ身を躍らせるのは、瀬部・燐太郎(ジャックランタン・e23218)。
地獄の炎と混沌の水を外壁へぶっかけ、反発力で突入ポイントの破壊を試みた。
「あそこを守るのはSRシリーズですか……以前に倒した彼女達も此処から来たのですね」
月枷・澄佳(天舞月華・e01311)は、黒い瞳を揺らして巨大工場を見つめていた。
試作戦闘型ダモクレスとの因縁浅からぬ澄佳だけに、外壁を突き破る電光石火の蹴りからも、この任務へかける決意の強さが伺える。
「ここはワタシにオマカセ……ハッ!」
オリビア・ローガン(加州柳生の伝承者・e43050)は、いつになく張り切って上空からのダイブを敢行。
抜き払った愛・ミー・典太が空を切って、空の霊力帯びた白刃は外壁を打ち砕くべく硬質に閃いた。
「フウメイ……あれがオリビアの見つけたというキミの“実家”か。なるほど、こいつは魔的だ」
ヒメカ・ベイバロン(空虚な女・e42130)は、降下前にふと振り返り、仲間へ感慨深そうに語りかける。
「——なら、破壊しなくっちゃな。さぁ、征こうか!」
かと思えば颯爽と風圧へ身を預けて、指一本へ神経を集中。
マギナ・ギア・ファクトリアの気脈を断ち切る気概で指天殺を仕掛け、外板へ打撃を加えた。
「せやで。さあ……最初で最後の『里帰り』や」
李・風美(胡乱でチャイナな瓶底眼鏡・e40773)は、ヒメカへ深く頷いてみせるや、チャイナドレスの膨らんだ袖をひらりと翻してヘリオンの床を蹴った。
「ほな挨拶がわりに一発かますで!」
因縁深いマギナ・ギア・ファクトリアを前にして感情が昂っている為か、風美は関西弁で啖呵を切るや、高速演算で突入ポイントにおける脆い箇所を見抜き、痛烈な一撃を叩き込んだ。
かくて、他班同様に巨大工場の外壁をぶち抜き、突入を果たした8人。
『マキナ・ギア・ファクトリア内部に侵入者確認。試作戦闘型ダモクレスは、侵入者の排除を行ってください』
彼らを待ち受けていたのは、けたたましい警報音と共に響く機械音声であった。
「警報にビビっていては始まりマセーン!」
オリビアは赤茶の体毛眩いコヨーテに変身するや、斥候としてずんずん先行を始めた。
「ともかく破損箇所から離れましょう」
と、身を屈めて早足になるのはミリム。
通った通路をメモする筆記具や、曲がり角の先を偵察する為の手鏡の準備も万端だ。
「我が身に映すは、忍ぶ乙女の隠密歩法」
澄佳は以前討ち取ったSR05マーダーの事を脳裡に浮かべ、特殊な気流を纏って静かに歩みを進める。
一方、黒いレザーに銀のスタッズが映えるボディースーツに身を包み、浮いたまま斥候組を追跡するのはヒメカ。
「ドクターの居場所に近づいていると思いたいけど……」
妙な静けさの増した区域へ突入した事で、決戦の予感をひしひしと感じていた。
「は、ハ……」
やはり隠密気流を用いて気配を殺していた燐太郎は、ふと鼻がムズムズして肝を冷やした。
ブラックボックスはGPSが使えない為、アクアグラスに頼って前方を見通しつつ探索範囲を広げている燐太郎だ。
「こんな巨大基地を僕たちが見つけたのか……」
アビスは中枢部発見を意気込むも顔色に出さず、監視カメラやセンサーが無いか光の翼の飛行と隠密気流を併用しながら警戒している。
(「もうこれ以上『同胞』が産まれへんように、ウチの身体を産んだこの場所を破壊せんと……」)
風美の心境は複雑だ。
息を殺す為の隠密気流だけでなく、『実家』に対する復讐心と試作戦闘型ダモクレスへの憐憫、一般人を同じ目に遭わせたくないという義憤が小柄な体躯に渦巻いている。
「警報の所為で周囲の音が聞き取りづらいんだよ……相手も同じだと思えば悪いことでもないかな?」
殿を務めるスノーエルは隠密気流に包まれながら、懸命に耳をそばだてて後方からの敵の襲来へ備えた。
●
鳴り続けている筈の警報が微かに遠のく。
防音設備のある区域に入ったと気づき、8人は緊張した。
防音設備を必要とする敵——日がな研究に没頭しているというSREXドクターに他ならない。
現に、透明な壁が連なる迷路を抜けた先、まるで自分から狭い檻に入ったかの風情で、彼女はいた。
「やあやあ、新しい実験台の人達かい?」
薄汚れた白衣にミスマッチな、鈴を転がす声で無邪気に問いかけられれば、それが本気か皮肉かの判断もつかない。
「実験はもうおしまいだよ!」
早速、剣を抜いて血気盛んに飛びかかるのはミリム。
緋色の闘気纏いしラグナロクブレイドが、複雑な花紋を描きながらドクターの胸を斬り刻んだ。
「あんまり時間かけるつもりはないんだけど……!」
いつでも仲間を庇えるよう気を張っているアビスは、小型治療無人機の群れを操作。
統率された動きで浮遊小隊を展開し、前衛陣の守りを固めた。
「悪いけど手が離せないから脚でいくねー?」
SREXドクターは明るく言い放つと、白衣の中にブースターでも仕込んであるのか滑空して、横回転蹴りを仕掛けてきた。
「キミを志半ばで継戦不能にさせる訳にはいかない。ここはボクが引き受けよう」
前衛が立て続けに守りを崩される中、ヒメカが余裕の笑みを浮かべて、風美を背中に庇う。
そして、地上の忌まわしい者たちの母による緋い龍の幻影を前面へ展開してスピンキックを受け止めた。もっとも、何で受け止めようとダメージに変わりはない為気分の問題であろう。
「どうか、みんなに力を……!」
スノーエルは純白の翼を広げて、オーロラに似た光の膜を放射。
燐太郎、アビス、ヒメカの打撲を癒し、彼らの打たれ強さをも元に戻した。
「クールな女性は好みだが、冷たすぎるのもちょっとねえ……」
短時間での撃破を狙って、バトルオーラから弾丸を撃ち出すのは燐太郎。
気咬弾は狙い澄まされた軌道でドクターの身体へ吸い込まれるように飛ぶや、ガブリと喉元に喰らいついて激痛を与えた。
「これ以上の研究はさせません」
ピシャリと言い切る澄佳の声音には、仲間と同じかそれ以上の怒りが滲んでいる。
『砲撃形態』に変じたドラゴニックハンマーから撃たれた竜砲弾も、澄佳の意志を表したかの如き力強さで、ドクターの腹を撃ち貫いた。
「燃えろ燃えろ! 全部燃えてしまえデース!!」
いつのまにかグラサンをかけていたオリビアは、妖刀マサクゥル丸の刃へ正義の心を込めて轟々と炎上させる。
その勢いのままに燃える刀身でドクターを斬りつけ、大爆発を引き起こした。
「戦歴の浅いボクでも仲間のために出来ることはある筈」
仲間に負けじと戦意を燃やして、ドクターへ肉薄するのはヒメカ。
容赦なくドクターの下腹部へ電光石火の蹴りをぶち当て、強い衝撃と痛みに苦悶させた。
「ウチはもう、ダモクレスでもなければ失敗作でもないんや……!」
風美もまた、澄佳とは別の因縁を晴らすべく、自らの体術だけでドクターを打ち負かすと決意。
流星の煌めきと重力を宿した飛び蹴りを炸裂させ、ドクターの硬い脚部をへし折った。
●
戦いは続いた。
「増援が来ても困るし、早めに弱らせないとだね!」
ずっと後方から一気に距離を詰めてドクターへ斬りかかっていたミリムは、ここぞとばかりに虚無魔法を詠唱。
不可視の『虚無球体』を投げつけて、ドクターの脇腹を内蔵ごと消滅させた。
「もう、鬱陶しいなぁ。実験結果の打ち込みに集中できないよ」
SREXドクターは両手で操作していた端末を放り投げると、キラリと光るメスを手に飛びかかってきた。
「ふーん、この程度ならどうって事ないね。もうちょっと体鍛えて出直してきなよ」
燐太郎を庇ったアビスがクールに嘯く。
同時に、幾重にも重なった六角形の大きな氷の盾を宙へ展開、メスで斬られた肩を迅速に治療した。
「信じられたのは、そう……あなたがいたから……」
夫の残霊を召喚して、希望に満ちた唄を優しい声音で歌うのはスノーエル。
優しく、強く、真っ直ぐな調べはヒメカを鼓舞し、彼女が何度も食らった蹴りの痛みを消し去った。
「ちぢこまってんじゃあねえぜ!!」
燐太郎はヴィジランスをしっかと両手で握り締め、その刃の重みに負けぬ卓越した技量でドクター目掛けて振り抜く。
鋭い剣戟と共に凍てつく刃風がドクターを襲い、一瞬ではあるものの子どもみたいな奴の顔色を失わせた。
「ヤギュウのワザマエお見せしマース!」
妖刀マサクゥル丸を構え直して、無慈悲な斬撃を繰り出すのはオリビア。
エンジン音らしき唸りを上げる刃はドクターの白衣のみならず、青い外板をも容赦なく斬り破った。
「見事だオリビア。ボクも後へ続こうか」
ヒメカも素早くドクターの前へ躍り出て、人差し指を突き出す。
ドクターの体内を巡る気の流れを絶ち切り、ズシリと石のような重さを四肢へ齎した。
「値千金……乾坤一擲……全霊よ! ここに! ハイィィィ……ヤアァーーーーッッッ!!」
体内の“気”を極限まで片手に集中させた後、至近距離から掌底を打ち込むのは風美。
掌を通して自身の気をドクターの体内へ浸透、装甲を貫き炸裂させた衝撃で身体を吹っ飛ばし、壁がわりの防護ガラスへ叩きつけた。
「そこ今です! 月枷さん!」
ミリムが叫ぶ。
「これで終わりにしましょう」
澄佳は凛とした声で言い放つや、SR07神薙の魂を巫術で制御、巫女を思わせる白と緋の装甲や武装を具現化させる。
翼状ユニットによる加速で檻の中を舞うように駆け抜け、突撃狙撃長銃をぶっ放すと共に、盾の先端より伸びた5本の光刃を振り下ろし、ドクターの胸を深々と斬り裂いた。
「折角……研究が順調だったのに……」
SREXドクターがリノリウムに似た床へ倒れ臥して事切れる。
彼女の生への執着は、己が研究の完遂に尽きるようだ。
(「SRシリーズとの宿縁、これで断ち切れた……」)
宿命から解放された虚脱感に襲われる澄佳だが、それでもドクターの魂を喰らおうとするのは降魔拳士の性か。
●
ともあれ、8人はドクターの居たガラス檻の奥、中枢区域の一角へと辿り着いた。
そこは、ぐるりとコンソールが張り巡らされたサーバールーム。
ドクターが取り落とした端末を拾い上げ、『人間の機械化記録及び試作戦闘型ダモクレスの設計データ』を探す風美。
燐太郎も何やら探し物があるらしく、中枢と檻を行き来している。
とはいえ、適当なコンソールや部品をぶちぶち引きちぎる為、内部データを物理的に破壊しているようなものだった。
澄佳は分厚い研究日誌を素早く拾うと、ゲイボルグ投擲法でゲシュタルトグレイブを広範囲へ投げつける。
マシュのコットンブレスに合わせて時空凍結弾を撃つのはスノーエル。
ミリムは星座の重力宿したラグナロクブレイドの刀身を、メインのコンソールへ突き立てる。
「さてと……こんなところに長居は無用だね。他にも敵が残ってるかもしれないし」
abs-frostに覆われた拳を音速でマザーメモリへ叩きつけるのはアビス。
コキュートスも主の意思に忠実に氷の息を吐き出した。
ヒメカは降魔真拳、風美はレガリアスサイクロンをぶちかまして、サーバールームを破壊し尽くした。
すぐさま工場の外へ脱出する8人。
ドクターのいた区画から真っ直ぐ正面玄関を目指せば、幸いシモーベ達と遭遇せずに済んだ。
(「海底基地破壊、資材略奪阻止、今回の工場破壊上々の出来です。いや、上手く行き過ぎてる……?」)
心配性なのかミリムは謎の不安に駆られつつ、ディスインテグレートを紫の四角錐へ見舞う。
「さあ、あと一息だ。大勢のケルベロスによる一斉攻撃だね」
アビスは地を蹴って側面の歯車へ飛びかかり、翼の暴走から変じた光の粒子化した身体で突進した。コキュートスが極寒の吹雪を吐いて援護する。
「あと少しだから頑張ろうね、マシュちゃん」
スノーエルは星型のオーラを三連ローラーへ蹴りつけながら、マシュへもふわもこを吐くよう促している。
「ほんの悪意(きもち)だ。お口に合わないかも分からんが……とりあえず喰らっておけッッ」
地獄の炎と混沌の水を正面の白璧へ向けて盛大に飛ばし、互いへの反発力で内部からの破壊を引き起こすのは燐太郎だ。
「神薙刃、出力最大。発射します」
澄佳はSR07神薙の武装だった突撃狙撃長銃の照準を合わせて、工場底部に光る赤い目玉を長距離狙撃した。
「決着はキミの手で――決めろフウメイッ!」
ヒメカは事前の打ち合わせ通りに牙籠―666―から降魔の一撃を繰り出すも、降魔真拳の射程の短さとスナイパーではない立ち位置が災いして、目玉の奥までは破壊力が届かない。
「悪しきインネンを断ち切るデース! フーメイ!!」
幸い、オリビアの加州柳生殺法:焔零将が目玉の奥のオレンジ色の外板を焼き尽くしてくれた。
最後は、2人に促された風美が、決戦兵器・超級破星砲(ギガントバスター)から凍結光線を渾身の力で発射。
丸い外板が焼けて剥き出しになった溶鉱炉へと命中させ、誘爆を引き起こすと、遂にマギナ・ギア・ファクトリアを機能停止させた。
そこへ他班の遠距離攻撃が重なり、次第に爆発の規模が広がっていく。
轟沈するマギナ・ギア・ファクトリアを前に、独り感傷に浸る風美。
因縁の終結、失った過去、工場と共に散ったかつての同胞達——達成感だけでは割り切れない様々な想いを抱えて。
「キミの”実家”は確かに破壊されてしまった。けれど、キミには温かい芋煮のある家が……帰れる場所があるだろう?」
そんな風美の肩を叩き、ヒメカはふーめい印の手作り肉まんを差し出した。
作者:質種剰 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2018年10月18日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 6/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 1
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