リリエの誕生日~戦いの日々よ、まだ見ぬ宿敵たちよ

作者:のずみりん

「皆の冒険記録を教えてくれないか」
 山と積まれたレポートを前にリリエ・グレッツェンド(シャドウエルフのヘリオライダー・en0127)はケルベロスたちに呼びかけた。
「人生五十年、私も二十六で折り返しの年だ。ここらで情報を一度まとめておくのもいいかと思ってな」
 第二次大侵略期の始まりから三年余、デウスエクスとの戦いは激しさを増し、その多彩さも過去に例を見ないほどとなり、またケルベロスとの因縁も深く広く増していった。
「まだ見ぬ因縁を追っていたり、邂逅の予感を感じているものもいるだろう。ケルベロス」
 直接戦った思い出や戦闘の記録はもちろん、情報交換はまだ見ぬ強敵への備えにもなるはずだとリリエは言う。

「会場だが、近くの合宿場を確保した。荒事はご法度だが、資料集めには十分な広さだ。食堂もある」
 折角の誕生日だ、協力してくれた皆にはささやかだが手料理をご馳走しようとリリエ。
「美味い酒と食事は口を軽くしてくれるともいうしな……安心しろ、料理は普通にできる」
 予防線を張るようにメシマズはないぞ、とつけ加え……もちろん手伝いや差し入れは歓迎するとも。
「……コホン。話をもどすが、格式ばったレポートじゃなくてもいいんだ。もちろん詳しい情報は有難いが、それこそ食卓での話題くらいでも十分だ。写真やイラストのような記録でもいい」
 強敵との戦いの記録、襲われた人々の救助や、あるいはデウスエクスと関係ない冒険、人助け……リリエは手製のスクラップブックのページをめくり示していく。
「別に話は宿敵以外でもいい。こういう強敵にあった、こんな体験をした……そんな現場の生の声を集めてみたいんだ」
 そういうリリエの声は、ある種の憧憬を少なくなく含んでいた。


■リプレイ

●猟犬たちの記憶
「リリエは誕生日おめでと~……っと、取り込み中だった?」
 会場のドアを開けた因幡・白兎(因幡のゲス兎・e05145)はリリエ・グレッツェンド(シャドウエルフのヘリオライダー・en0127)と彼女を囲う仲間たちに、少し声のトーンを落とした。
「いや、木遣いは不要だ。こちらこそ協力ありがとう」
「ならいいけど。あ、これは差し入れのアイスバイン……こっちでいいかな?」
 そう言うなら、と白兎は気にしない事にして圧力鍋の包みを置く。背中越しには彼女とケルベロスたちの語りが聞こえてきた。
「こんな話を聞いてもらうのも心苦しいのだけど……親しい人には言えなくて」
「いいさ……そのダモクレスは万里の師匠が作成したのか」
 暁・万里(迷猫・e15680)が語るのは、数奇な運命をたどった人形の少女の話。
 アド・ピアと呼ばれた人形は恋人を亡くした万里の師匠が作った、アド・ピアの模造品だった。愛されるために作られ、しかし創造主は愛する事を拒絶し……彼女はダモクレスとして万里と邂逅した。
「仲間と共に僕は彼女を撃破した……でも本当にそれで良かったのかと、まだ迷ってる」
 ダモクレスのアド・ピアが求めたものは万里の生命は、かつての万里を救ってくれた『約束』
「最初から最期まで『レプリカ』なんかじゃなかった。アド・ピア、いや彼女を模した……」
 彼女だけの名前くらい付けてあげればよかったと、万里は自嘲する。
「辛いな、間違っている者がいないのは」
 重くなる空気に黒澤・薊(動き出す心・e64049)がふぅ、と息を吐く。
「正解なんてどこにもなくて、あるいは誰もが間違っていたのかもしれない」
 彼女が差し出したノートのコピーに触れられているのは、関わった第四王女の勇者選定事件の一角。
 事件はデウスエクスを殲滅し、一応の解決を見たが、関わった誰もに悔恨を残す結末だった。
「はるか……事件に巻き込まれた女性はエインヘリアルになり、自分を追い詰めた男を殺した。その時、私は心とはとても難儀なものだと思ったし、どうすれば彼女を助けられたのかものすごく悔やんだ」
 彼女を追い詰めた男は女性の心身全てを弄び、利用する……およそ最低の部類だが、人間だった。どうすればよかったのか。
「……結論は、出たのか」
「今は。旅団のみんなのお陰で持ち直したが直後は相当荒れたよ」
 淡々と話す薊は声を落とし、しかりきっぱり言う。
「……殺すよ。彼女にまた会えたら私は彼女を殺すだろう。それが助けてやれなかった私なりの償いだ。それが唯のエゴだとしても」
「敵を知るのも善し悪しだね……なんていうかさ」
 その決意に白兎がぽつりと呟く。集中する視線に、別に自分はそんな大したことじゃないと手を振りつつ。
「封印検索術式の開発、魔竜達が復活する原因となったドラグナーがいたじゃない」
「あぁ……中村・裕美だったな」
「他人の空似かもしれないし……大して親しかったわけじゃないけど、知り合いだったかもしれない」
 目を見開くリリエの反応に、ドラグナーの遺した『妄執の螺旋鏡』を置いて彼は自分の知る限りを語る。
 高校の頃にクラスでも周りと壁を作って誰とも打ち解けなかった子。いつの間に不登校になっていて、消えていた眼鏡の少女。
「仮定に仮定を重ねる話だけど……もっと親しくなれてたら、あんな事は起こさなかったのかなって」
 違えた道は戻せない。けれど自分が起こした事の顛末は見届けてもらおうと思うと、白兎の掲げた螺旋鏡をそっと覗き込む影。
「いいじゃないか。エゴでも、勝手でも……向こうだって、そう思ってるくらいの方がやりやすい」
「言うねぇ。キミのとこも関係者が?」
 白兎に促され、果汁水を一息。雑賀・真也(英雄を演じる無銘の偽者・e36613)は、まだ先の話だがと前置きして続ける。
「俺は元少年兵でな。当然、上官がいたんだが……俺のことを『最低最悪の偽善者』と蔑んでいるそうな。残酷で戦闘狂な、俺を冷酷な少年兵に仕立て上げた張本人さ」
 戦争屋『スレイブ』。多くの犠牲を生み出した数々の事件の裏に、その名は見え隠れしているという。
「因縁の親族か……それはそれで色々気負いそうだね」
「まぁね。向こうは俺の事をよく理解しているだろう。俺もそれを承知の上で戦っている……覚悟はあるさ」
 彼も中村と同じ、大事件に繋がりうるデウスエクスだろう。何か戦争を起こす準備をしているなら、躊躇わず撃てるのは望むところだ。

●予感と備えと
 親子。肉親、血縁の有無をとわずその縁は強い。
「ごめんね、クルス。いつか会ってもらうって約束だったけど守れないから」
「謝らないで大丈夫ですよ」
 前置きに心配そうな白銀・クルス(しろがねのメイド・e40671)に、だから今たくさん話そうと思うと那磁霧・摩琴(医女神の万能箱・e42383)は言う。
「とーさんこと『ナジューム・アレクトル』は戦場医で孤児だったボクを育てて、医学を教えてくれた人。厳しいし無口で表情をあまり変えなかったけど、ホントにやさしかった」
 両親を憶えていない摩琴に唯一人の父。だが彼は立ちはだかった。ダモクレスとして、その意志に反して。そして摩琴は、彼の願いを叶え、討った。
「本当に……本当に良いお父様だったのですね」
 頭を撫でられ、摩琴はただクルスに抱き着く。
 そんな彼に重なるものを感じ、シフカ・ヴェルランド(血濡れの白鳥・e11532)もまた似たようなものだとリリエに言った。
「さる螺旋忍軍の組織の長で、一年ほどの短い間ながら母のように……最後は円満に、直接破門を言い渡されました」
『再び逢えたら、その時は敵として戦う時だ』
 金狐を彷彿とさせる彼女の姿は忘れようもない。いつか自分も決着をつける日が来るだろう。
「一年……あら? そうしますと彼女は」
「知っていたと思います。私の力を間近で研究する為と申していましたが、どこまで本当やら……」
 疑問へのシフカの答えを、空木・樒(病葉落とし・e19729)は不思議ではないでしょうと肯定する。
「不倶戴天とは言いますが、攻性植物など幾らかのデウスエクスのような関係もあります。情愛と同程度にはあって不思議ないと思いますよ」
「樒らしいな」
 同族のウィッチドクターの言に、リリエは彼女ならそういうと思ったと笑みを歪めた。
 善き常識人としてふるまう樒だが、その本質はどこまでも中道中立だ。彼女が相対する敵に感情を露にしたのは、リリエが知る限りでは唯の一度。
「そう言っていただけるのは光栄ですよ。さて私の御話ですが、担当したすべて情報を纏めて保管しています……けれど」
 そんな話ではありませんよね? と見透かすように微笑む樒。取り出されるや仕舞われる分厚いファイルに、叶わないなとリリエは思う。
「降参だ……今日はどんな話を?」
「追いかけていますのは攻性植物、インペラトルという名の御仁……デウスエクス全体の中でも最も強い毒を生み出す方だそうですよ」
 薬毒学を極めんとする彼女らしい。語る顔にあるのは興味、ある意味での憧れ。
「不死のデウスエクスが最強を噂するとは、単なる殺傷毒ではなさそうだな」
「なるほど、そういう考え方もできますね……」

 考察にうつるケルベロスたちに哀、怒の情色はない。
 それらが不思議でベリザリオ・ヴァルターハイム(愛執の炎・e15705)はテーブルを挟んだ西院・織櫻(櫻鬼・e18663)に問いかけた。
「織櫻は暗殺組織時代の師について悪感情を持っていない……何故だ? お前を苦しめた組織の人間だぞ? 同じような話を聞いてもわからない」
「師を恨まないのかと言われても……そうですね。役に立たねば私は組織に殺処分ですし、師に与えられた技術思想があったればこそという意味では命の恩人ですから」
 至高の刃は師の悲願。鍛えた全てを以ての死合いと死こそが恩返しという織櫻の縁は、シフカのそれに近いかもしれない。
 だが自分には無理だ。ベリザリオは思う。
「……ヴァルターの復讐は私も手伝います。記憶はなくとも我が一門の仇であればとるのが筋と言うもの」
 燃え上がるベリザリオの愛執さながらの殺意を察し、織櫻は彼の組んだ手を取り言う。
「……母は殺した。残るは我が父と兄弟、そして関わった全て。ヤツは暴力の権化、破壊の化身だ。子を作った理由も自らが取り込むために過ぎない……」
「相手が破壊の化身であれば尚の事。我が刃の良い糧となるでしょう」
 耳目に響く狂気を帯びた地獄へ、織櫻は静かに声を絡めた。

 縁は既に結ばれたものだけではない。今、このとき新たに結ばれる縁もある。
「誕生日おめでとう、リリエ。それに初めまして」
「ありがとう。改めて、リリエ・グレッツェンドという、よろしく……『Alex Ackroyd』、私も見覚えはないが読み覚えはある名だ」
「光栄だ。俺は俺であり、私であり、僕であり、我輩である。他にも名義は多々あるが……ケルベロスとしてはこの名で通す。今日はお前さんのノートを厚くする話を持ってきた」
 今日を縁によろしくと名乗るアレックス・アクロイド(物書き・e61588)の話は、一人のドラゴンの物語。
「『傾国のヘレイヤ』。直接あったわけではないが、彼女の巫女を名乗る奴に話を聞いた」
 今思えば、その巫女もドラグナーだったのかもしれないと補足し、アレックスは話を続ける。
「その力は未来視。穏やかな谷に住む蒼く黒く美しい竜には、同じ力を持つ番の竜がいたが、彼の者は人を愛し、恋し、裏切られ、駆け落ちたのだという」
 片割れを裏切った人々を深く憎んだヘレイヤは以来、自らを信仰する異郷の巫女のみを侍り人へ己の見た絶望の未来を伝えているという。
「……ありがとう。お伽話めいた話だが、その出会った巫女がドラグナーだとして、なぜそんな話をしたのだろうな」
「物語としては色々思いつけるね。だが真実はどうか……ここで今話している事こそが絶望の未来なのかもしれない」
「見取った絶望を為すため、か」
 そうであるなら、近いうちにリリエか彼女は傾国の竜に関わる事となるのかもしれない。

●戦いが宿縁を呼ぶ
「ドラゴンの話か。私も一つ噛ませてもらえるかな」
「喜んで。知る事は何よりの財産だ」
 アレックスの話に興味を持ったのか、レフィナード・ルナティーク(黒翼・e39365)も、己の竜との因縁を話し出す。
「昨今のドラゴンの活発化などありますが……奴は暗躍派、でしょうね。主の仇であり、私を天涯孤独の旅人とした陰謀の黒幕はノエルという名の白竜と聞きました。その美しさと、暗躍や策を好み、悲劇を楽しむ冷酷さで知られていると」
「白のノエルか……厄介な相手だな」
 一見して穏やかな、しかし言葉を選ぶレフィナードの顔に因縁の深さを察し、リリエはその名を記録する。多くにおいて後手に回らざるを得ないケルベロスたちにとって、戦場に現れぬ敵ほど厄介なものはない。
「みんな、向こうから来てくれれば考えずに済むのにねぇ」
 冗談めかして月岡・ユア(孤月抱影・e33389)が笑う。
「ボクの探してる死神もそう……蘇らせた非業の死者と、死者が愛おしく思うものを殺しあわせて愉しむ……ボクの大切な妹を殺した外道。ボクはその死神がとても憎い。すぐにでも見つけて、この手で葬りたいくらいに」
 彼女の宿敵はレフィナードのそれより幾分か姿は見えているが、あまり良い意味ではない。
「以前に配下っぽいデウスエクスと対峙する事があってさぁ……倒したそいつは『再び絶望が訪れる』って暗示をして、消えていったの」
「愛おしく思うもの……まさか」
 強く握られる拳に漏れた激情の炎を感じ、彼も自分と同じだとユアは感じ取る。デウスエクスの手で奪われた唯一の存在、その心身が弄ばれ、自分に向けられたら……。

「過去のデータから、より素早く、具体的に事件を予知はできないのか?」
 途切れる会話に踏み込んだのは、九条・カイム(漂泊の青い羽・e44637)だった。
「……そうだな、例えば?」
「暴走族の違法改造車がダモクレス化するのを素早く倒しに行けないか? 有名人を自殺に追いやったデウスエクスや病魔が居ないかを調べ追う事は? 大昔に戦争や災害、デウスエクスの手でで多くが亡くなった場所の残霊……」
 その目に宿るのは焦燥、怒り、哀しみ。
「そうだな、情報収集が進められれば……どうした、大丈夫か?」
 俯くカイムにリリエの声は届いたか。
 あの頃、自我すら持てず血の涙を流しながら剣を振るってきた。一緒に泣いていた仲間も思い出せない。下腹部に残る古傷。失ったもの……紅い。
「そうだ、あの頃は俺の髪と目と翼はこんな色じゃなかった、そして……!」
「カイム! カイム!」
 溢れ出した感情の洪水を堰き止めたのはレリエル・ヒューゲット(小さな星・e08713)だった。
「……あ、レリエル、姉さん……大丈夫」
 抱き止められ、椅子へと腰を下ろす。気づけば席には二人の差し入れた菓子詰めと水出しハーブティーが、硝子カップと並べられていた。
「よければカイムも飲まないか。先に口をつけさせてもらったが、落ち着くよい香りだった」
「すまない……ちょっと昔の事を思い出して……」
 リリエの気遣う様子にうなだれるカイムへ、レリエルはそっと寄り添う。
「カイムはヴァルキュリアだったもんね。残霊の元となる時期は一番辛く苦しい記憶……そうでなくても過去の自分のコピーが人を襲うなんて考えたくもないよね」
「……割り切るに難いのは想像できるよ」
 それでなくとも、最近は死神などが他の勢力と手を組み取り込もうとする動きがある。
「死神って残霊も手駒に出来るのかな? ワイルドハントみたいに……仮定だけどエインヘリアルやシャイターンと組んだりしたら……」
「大丈夫。過去の自分に……打ち勝たなきゃいけない、文字通り」
「……時間も頃合いだ、夕飯にしようか」
 食は心を鎮め、明日への力になる。自分に言い聞かすように呟く碧眼のヴァルキュリア、そうリリエは声をかけた。

●食卓に思い出を
 丁寧に分けられた白兎のアイスバイン……豚脛肉の煮込みと並ぶグヤーシュ、肉とシチュー、香辛料の香りが食欲をそそる。
「誕生日おめでとう、グレッツェンド。ドイツの家庭料理は楽しみだったんだ」
「ありがとう、腕を振るった……というほどではないが、そう言ってもらえると何よりだ」
 アンセルム・ビドー(蔦に鎖す・e34762)と蔦屋敷の面々の祝福、少し気恥ずかし気にリリエは微笑む。
 彼女曰く、華はないが、よくいえば質実剛健。時間を取られず作り置きが聞くのが地元のいいところだそうだ。
「そう、さっきの話題だけどボクも自分と戦ったことがある。『蔦に倣う』という依頼で……ボクが皆を攻撃しているみたいに見えて、すごく怖くてね」
「アンセルムさん……大丈夫です。あなたはあなた、なのですから」
 にじみでた複雑な感情に、そっと霧山・和希(碧眼の渡鴉・e34973)がフォローする。たとえ姿を似せても、比べられぬほど彼は強い。
「アンセルム殿も夢喰いとの戦争で……その長い耳を狙う者達を討ち取っておったよな」
「寓話六塔の? いやあの時、ボクは運が良かった。それだけだよ。『生かして帰すか』ぐらいしか考えてなかったし……そんなに語る事はないよ」
 イグニスを追う一之瀬・白(闘龍鍛拳・e31651)からも振られ、謙遜含みに笑い返す。
「白の追うイグニス……それに和希に大怪我させた十九の魔竜、『ヘルムート・レイロード』だっけ。アレも早くお礼参りがしたいね」
「えぇ。あの時は奴を足止めするのが精一杯でした……半ばで重傷を負わされ、情けない話で」
「目的は果たせたなら、十分立派さ。だが次こそは決着をつけたいところだな」
 復活した魔竜は一筋縄でいかない謎多き相手だ。シャイターンから螺旋帝として蘇ったイグニスはひとまず倒せたが、魔竜の生き残りは今も災厄をもたらし続けている。
「余はどうしても…イグニス討たねばならぬ理由があった。シャイターンだった頃……余の、その大事なものは奴隷だったヴァルキュリアでな」
 うまく表現できないと言いつつ言葉を濁す白に、機理原・真理(フォートレスガール・e08508)が皆まで言うなと指を振る。
「因縁は様々ですが、少しずつでも戦って、倒していくまでです」
 父の代からの『ヤになっちゃう位』因縁を抱えているという彼女は、力強く言う。
「輝きの軍勢とかはまだ倒せたかあやしいですけどね。あれが最後の輝きとは……」
「まるで怪談か怪獣映画ですね……いや笑いごとではないですが」
 リリエの資料整理を手伝ってきたジュスティシア・ファーレル(エルフの砲撃騎士・e63719)は食後にと甘いワインと菓子を皿へ飾り、真理の言い分に笑う。
「マキナ・ギア・ファクトリアの一件もあります。あそこで手がかりを得られるかも知れない」
 彼女自身の宿敵……『ラファエル・ミゼーリオ』の事も、あるいは。軍の戦友を奪い、屍隷兵生産にも携わったという悪魔のような天使。
「ならば壮行会も兼ねていこうか。何か進展があればいいな」
「えぇ、リリエさんも。本日は素敵な時間をありがとうございました」
 控えめな掲げ杯に声が唱和する。誕生日の夜はもう少し続きそうだ。

作者:のずみりん 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年10月18日
難度:易しい
参加:20人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 1/素敵だった 5/キャラが大事にされていた 2
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