群れる春の色

作者:ヒサ

 かつてはのどかな住宅地、今は朽ち行く無人の市街。その一画に、全身を緑に染めた部隊があった。幾ばくかの植物は辺りに自生していれど、彼らの姿が此処の景色に溶け込んでいるとは言い難い。だがそれでも彼らは、瓦礫の陰に潜み、抉れた地に伏し、叶う限りに音を、気配を殺しながら周囲の警戒にあたっていた。
 指揮官が手振りで出した指示に従い、原形を残していた集合住宅の一つを慎重に検める──異常は無し。脆い家屋が崩れた後とて、こうして形を保っている建物は幾つもある。考え得る限りの可能性を潰すべく彼らは、周辺の地形を見定めつつ次の目標物を目指し静かに進んで行った。

 以前、ケルベロス達が大阪城への潜入作戦を成功させた事により、攻性植物側が警戒を強めているのだという。
「お城周辺に、竹型の攻性植物の部隊が展開されているのですって」
 地図片手に篠前・仁那(白霞紅玉ヘリオライダー・en0053)が唸る。彼らはケルベロス達を警戒をしつつも、隙あらば付近の市街地を襲撃して支配領域を拡大しようとしているのだという。
「なので今回あなた達には、市街地の襲撃を計画している部隊を一つ、壊滅させて来て欲しいの」
 敵は、指揮官らしき剣使いが一体、支援に長けていると思しき爆薬使いが一体、槍と身軽さゆえの機動力を武器とする者が三体、得物が銃である以外は槍兵らと同様と思われる軽装の者が三体、計八体から成る部隊。
「彼らは連携して行動しているようで、身を隠しながら敵を探して、辺りに侵入者が居ないようなら市街を襲いに……とするみたい」
 警戒活動はともかく、人々が住む街への襲撃は、実行されては困る。攻性植物達が巡回している放棄された市街──緩衝地帯の中で決着をつけて貰いたい。彼らが索敵を試みるのならば、同様に隠密で以て接近し、奇襲で応えてやれば良いだろう。
「敵の隙をついて奇襲を仕掛けられれば、有利に戦えるのではないかしら」
 戦場となるのは昼間の、無人となった市街地。敵とてそれは承知の上で行動するが、その全員が歩兵。翼を持つ者が空を、などは危険を伴う事となるが、建物等を利用しての高所からの作戦等は、場合によっては検討する価値があるかもしれない。
「まあ、いくらあなた達でも、八体纏まって動く敵に少数で先行して奇襲、とかをすると危険だとは思うのだけれど……、武装に頼るだけでない隠密と索敵と、あと、状況が許せば連携を、上手く出来れば安心だと思う。
 近くの街に住むひと達を、あなた達の力で、護ってあげて欲しい」


参加者
シグリッド・エクレフ(虹見る小鳥・e02274)
罪咎・憂女(刻む者・e03355)
森光・緋織(薄明の星・e05336)
葛篭・咲(珈琲ロマン・e12562)
ヨル・ヴァルプルギス(グノシエンヌ・e30468)
滝摩・弓月(七つ彩る銘の鐘・e45006)
蟻塚・ヒアリ(蟻の一穴天下の破れ・e62515)
肥後守・鬼灯(毎日精進日々鍛錬・e66615)

■リプレイ


 穏やかな晴天の下。静まり返った地上に紛れる微かな緊張。
(「これが訓練でしたら、楽しゅうございましたでしょうけれど」)
 白翼を隠し金髪を纏めたシグリッド・エクレフ(虹見る小鳥・e02274)が瓦礫の陰に。
(「風が無いね。向こうが積極的に動いてくれれば助かるが」)
 センチピードを腕に抱いた蟻塚・ヒアリ(蟻の一穴天下の破れ・e62515)の囁きにゆるり頷いたヨル・ヴァルプルギス(グノシエンヌ・e30468)はケリドウェンを従え周囲へと意識を。彼女達の傍で息を詰めている滝摩・弓月(七つ彩る銘の鐘・e45006)が、通りを挟んだ向かいに居る四名の動きに気付きそちらを注視する。
(「南の、交差点から、左折を。……なるほど、あの建物を調べるのですね」)
 解読した手振りを彼女は周囲と共有する。音声にも電波にも頼れない今、意思疎通はゆっくりと慎重に為されていた。
 四名と二体から了解が返るのを待ち、罪咎・憂女(刻む者・e03355)は問題の交差点を窺う。合図と共に葛篭・咲(珈琲ロマン・e12562)と森光・緋織(薄明の星・e05336)がまず移動を。付近に敵の姿が無い事の確認が取れ、肥後守・鬼灯(毎日精進日々鍛錬・e66615)らが続いた。
(「あちらも移動しているのでしょうが……持久戦を覚悟した方が良いでしょうか」)
 痕跡らしきものも見つからず、少年は密かに嘆息する。
 互いに離れ過ぎぬよう、少しずつ動く。手分けして全方位へ注意を向ける。緑地は特に警戒しつつ。高所から探す事も考えはしたが、危険が伴う以上思い切るのは容易く無い。大きく二班に分けて動いているから、たとえ不覚を取って包囲されても対応自体は可能だろうけれど。
 それでも無謀はし難くて、索敵は慎重に。その甲斐あってか、静穏が続く。注意深く視線を走らせ、補助に音を探しながら。ただ、要す時間ゆえ、次第に疲労も覚えつつあった。
「……!」
 それを押し、意思の力で維持した緊張下。ある時、耳を澄ませていたシグリッドがはっと伏せていた目を見開く。同じものを聞き取ったヨルは、とある方角を指し示した。
 まず視認出来たのは指揮官の姿。次いで、こちらへと進軍する竹部隊達。ケルベロス達に気付いて、という風では無い。だが下手に動けば気取られる、とはいえ注意を逸らそうにも猶予は無い。
 ──ならば、気付いて対応される前に。
 まず瓦礫の陰から駆け出したのは咲。合わせて憂女が挟撃を試み宙へ舞った。反撃を警戒して続いた緋織は己が身を楽器に歌を奏で敵の注意を惹く。彼らに気付き戦闘態勢を取る敵陣の只中にヨルが素早く気弾を撃ち込み、全体の状況を確認したシグリッドが雷杖を振るい加護を撃つ。それが爆ぜるのは、二刀を抜いた咲の腕。振るう刃が生んだ衝撃が、先の攻撃に怯んだ支援兵を狙い、間を置かず憂女の短刀が傷を抉るべく閃いた。
 だが、許されたのはここまで。更なる追撃は間に合わず、布陣を終えた敵達に凌がれる。
「これはまた……」
 鬼灯の声が張り詰めて、されど冷静さを失う事は無く澄んだ色を。ケルベロス達の動きを見ての事か、散開する敵達は、拡散する攻撃で纏めて一気に、など容易く狙わせてはくれなさそうだ。
「そうですわね。でも、皆様でしたら」
 翼を露わにし解いた髪を背に流し、肩が凝りましたこと、などとたおやかに首を傾げ。彼と共に皆の補佐を務めんとするシグリッドは、常と大差ない穏和さで微笑んだ。


「緋織、無茶はしないでくださいね」
「ん、頑張るよ」
 盾役をと動く友が返して来た微笑みに、ほんの少しだけ困ったような色を見て取って、咲の口角が僅かに下がった。より受け容れ易いのは、なんて、腹が読めてしまう以上、強くは言えないのだけれど。
 まず降すと決めた支援兵は中衛に。散る前衛達の壁をすり抜け追う事は難しく無いだろう。が、彼らを追い込むよう鎖を広げた緋織は、標的の近くに位置する槍兵の一体が、他と比べると捕捉し難い相手である事に気付き仲間達へ警告を発す。
 では他は、と質す必要は無かった。鎖撃を受けた支援兵と銃兵がそれぞれ動く。その後衛へ爆ぜる鼓舞の色濃さと、光弾を間近で浴びたヨルの体が答えを教える。
「騒ぎ立てルほど痛むものデは無いわ。ケれど、捨て置くには厄介ネ。役に立てなくなるノは嫌だわ、癒して頂いテも良いカシラ?」
「はい、すぐにでも」
 彼女の手元で、首を傾げるに似て金髪の人形の巻き毛が揺れた。操る力を幾重にも鈍らせられたままでは十全に力を発揮する事は難しいと。応じて為された医術が彼女を癒し、重視する火力を活かす態勢を整える。弓月が描く星術が前衛達の為、憂う事無く駆けられるようにと加護を織る。
 敵の動きを観察しながら長銃を御す憂女を厭うたか、前衛の銃兵から反撃があった。盾役の隙間を通して抜けた氷弾が爆ぜる。突き刺さる凍気ゆえに薄れる知覚に、かの兵の攻撃力は侮って良いものでは無いと悟る。
「お待ちくださいませね、急ぎ護りを固めますわ」
 彼女ら中衛へ向けシグリッドが雷壁を展開する。それでひとまず自陣全体へ加護が施された。残りは個別対応になろうか、と彼女は視線を巡らせる。
(「皆様を信じてお支えするのがわたくしの務め。落ち着いて……的確に」)
 まずは一体へと攻撃を集中させる形で、ほどなく。ヒアリが撃った気弾が、件の支援兵を沈めた。前衛の槍兵が盾と動いた事や、後衛の銃兵からの治癒があった為に多少時間を要したはしたが。
「急所を狙ってと試みるよりは、補助を貰って力押しの方が早いだろうか。彼らはやはり、連携あってこその部隊のようだね」
 見届けて、ヒアリがごちる。個々は脅威とは言い難い相手。数を減らす事に主眼を置いたケルベロス達の作戦は有効と言えよう。攻撃役達が存分に力を発揮出来るよう補助役達が尽力しているのだから尚更だ。
(「敵の回復は皆さんの力なら問題にならなさそうですから……やはり『する側』を止める方が早い気がしますね」)
 治癒力を低減する毒の用意も考えたけれど、と戦況を見つつ鬼灯は思考する。支援兵が倒れた事で、警戒すべきは敵の攻撃力への補助では無く、此方の攻撃への抵抗となっていた。
「シグリッドさん、手が空いたら攻撃を頼めませんか」
 ケルベロス達の次なる狙いは、枷砕く力弾を撃つ銃兵達の殲滅。とはいえ数を思えば難儀する。ゆえに少年はそう、共に治癒織る少女へと依頼を。自力で成せぬ事ならば仲間を頼る──皆の様子に気を配り、己に出来る事で仲間達を支えるべく、彼は自身の考えを伝えた。
「皆さんへのヒールはなるべく僕が。敵がヒールを使えなくなれば戦い易いかと」
 そう追い込む事が容易い事では無いのは皆知っている。だが、力を合わせられれば決して不可能では無い。シグリッドは頷き、手始めに近くの仲間へ協力を乞うた。
「では、お手をよろしいですか?」
「まあ、有難う存じます」
 まず微笑んで応じた弓月が手を差し伸べた。攻撃の力を増幅する祈りを籠めた紋様を相手の肌へと描く。
 とはいえ試みるならば余裕のある範囲で。攻撃役達は極力手を緩めぬまま中衛の銃兵を狙い続ける。敵射手達の攻撃が厄介と歌を奏で注意を惹いた緋織が、自陣後衛からの依頼を受けその瞳に魔力を籠める。
「──動かないで」
「神話の蠍の輝きを──」
 前後衛に位置する銃兵達へ呪縛が。その効果を増大すべく補助を試みるのはブレスを操るボクスドラゴンと藍刃を振るう憂女。
「──どうぞ、御覧あれ!」
 無邪気な笑顔と共に弓月が次いで描いたのは、大河の激流とも一面の花畑ともつかぬ美しい幻惑。それが前衛銃兵の目を奪う間に、瀕死に追い込まれていた中衛が倒された。援護に長けた二体が倒れ、後衛の指揮官が得物を振り回し何やら指示を。槍兵が盾役達を牽制に動き、その間に残る銃兵達が、後衛のケルベロスへ狙いを定め。
「させない……!」
 主の命を受けたケリドウェンの援護を受けて束の間身軽になった緋織が、凍弾の前へと身を晒す。咄嗟の事ではろくに防御など出来ず、冷えた体が内側から壊されるに似て痛む。細いその身にそれはどれほどの苦痛か。けれど倒れるわけにはと彼は地を踏みしめて、己が護った少年の無事を確認して、ほっと笑う。傷は、彼らが癒してくれるから、大丈夫。
「っ、よくもやりやがりましたね──叩っ斬ります!」
 それに、報いは友が代わりに。雷を纏い冴えて輝く刀が二つ。目にした深手に焦燥を抱き、けれどそれでも、否、だからこそ殺意に換えて精密に。咲の狙いは過たず、銃兵の一体を両断した。


 後衛の銃兵は癒し手を務めていたが、回る痺れに動きを縛られてしまえばただただ無力。彼が護られたところで、敵がどう出て来ようとも対処が叶うよう備えたケルベロス達の攻撃が届かぬわけもなく、彼らはあっさりと最後の銃兵を倒した。
 残る敵の内。序盤、巻き添えに遭って消耗していたのは中衛だったが、戦いの中で味方を庇いに走った前衛の方が疲弊は大きい。あとは正面から討ち砕いて行くだけで足りるだろうとケルベロス達の行動は早い。
 守りの堅い敵を真っ向から突き崩す。その足を止めさせて、ヨルの詠唱が宙へ。
「──出でませ、異界の傀儡師」
 きらり、光るは実体持たぬ魔糸。魔女自身を操り人形と成す術が、黒色纏う姿をしなやかに踊らせる。くるくると風を切る四肢で、携えた得物で、連撃を見舞う。常人には再現の難しいその速さと軌道ゆえに、虚を衝かれた敵とて抗う事は叶わずに頽れた。
 空いた場所を轟砲の風圧が駆け抜ける。ケルベロス達とて容易くは捉え難い中衛が次の標的だった。撒かれた塗料が路面を染め、相手が鈍ったところへ刀使い達が切り込む。
(「確実に──」)
 緋翼で風を御し敵の目を惑わせる憂女の身は、その俊敏さゆえに刃をしかと届かせる。突き立てて、抉り裂き、掛かる枷を幾重にも──かの身を木偶へと。
「さて、何発保つだろうね」
 その的へヒアリの気弾が突き刺さる。逃れんとする身をそれでも追う弾丸は、射手の正確な狙いゆえもあり、脆い箇所を穿てば侮り得ぬ威力となる。目を慣らされたとて障害とはならず、立て続けの攻撃に敵はさほどの時を要さず沈黙した。
 歌の呪縛を受け、斬撃に煽られた敵達の狙いは既に緋織に集中していた。判り易く、対応し易い事は利点ではあるけれど、出来る事を冷静にと努める鬼灯はまだしも、集中砲火を受ける青年を案じずには居れないシグリッドの胸中は穏やかでは無かった。仲間の負傷を見、我が事のように唇を噛み、先送りにしては最早危ういほどに余裕が無いであろう彼へ、懸命に治癒を。
 同じく盾役を務めるサーヴァント達の援護が無ければ、彼とて保つまい。なのに、庇われればそれを憂うよう眉を寄せ、他の仲間達が傷を負わずに済む事に心から安堵したように、青年は笑うものだから。咲は遣り場の無い激情を刀へ込める。友を護る為に彼に出来るのは、急ぎ敵を殲滅する事。そして、それが他者と支え合い共に往く者達の道と、憂女は地を蹴り炎を放つ。
(「数で成す戦術をも覆し得るほどの個人の武……といったものには、未だ届かぬのだろうが」)
 憧れぬわけでは無い。彼女は思う。だが、それでもそれは最早、渇望と呼ぶには穏やかな想いとなっていた。
(「仲間と共に、と──私はそう選んだのだから」)
 遠く霞む背への感慨を、まみえたいつかの夢を、今は横に。意識は眼前へ。盾たる彼らの為、支えんと奮闘する彼女らの為、刃研ぐ皆の為。彼女自身は、加速担う翼となるべく。
「消されたって、何度でも描いてみせます! ──御願いしますね!」
 敵指揮官の剣によって吹き散らされる加護を、弓月の術が繕う。疲れ一つ見せずに笑んだ少女の筆が、攻め手の肌に力添える画を形作り、託す。無視し得ない障害は、けれど、ケルベロス達の歩みを止めるには至らない。翻るヨルの手が操る棍は軌道を結び、最後の槍兵の腹を言葉そのまま穿ち、葬った。
「あと一体ですね。皆さん、ご無理はなさらず」
 誰一人、倒れる事の無いように。鬼灯は祈りを治癒術と成し続けていた。彼らならばと信じながら、だからこそと全霊で。薬雨を散らし届かぬ箇所を補って、敵が態勢を立て直す兆候を見ては攻め手へ破呪を依頼する。そうしながら己でも援護に力を練る彼の視界の中、センチピードの突進とヨルの拳が敵を追い目論見を阻む様に、少年は安堵と感謝の息を吐く。
 最早覆らぬ有利のもと、ケルベロス達が敵を殲滅したのはそれから間もなくの事だった。


「竹やぶ焼けたぞ」
 沈黙と、疲労に荒れて漂う吐息の中、ヒアリの声は至極マイペースに。
「市街には出さずに済みましたね」
「ええ、何よりでしたわ。皆様、お疲れ様でございました」
 安堵に語調を和らげる憂女へ、シグリッドが笑顔で頷いた。そうして、深手を負った仲間の治癒を手伝うべく彼女はそちらへ足を向ける。
「鬼灯さん、わたくしにもお手伝い出来る事はございまして?」
「えっ……」
 その背へ彼女が声を掛けると、顧みた少年は驚き身を退いた。近い、と言うには未だ距離のある位置からの声ではあったが、少年は狼狽えたように頬を染めていた。戦いの緊張下にあっては抑えられていた、女性への純情さが顔を出したようで、彼はぎこちない動きで彼女へ場所を譲る。
「大体は、処置出来たと思います。診て頂いて……良いですか」
 幼さを残す少年の恥じらう様を見守りつつも緋織は、屈託と疲労の交じる微笑を浮かべ、医師達の診察を大人しく受けていた。
「ごめんね、手間掛けて」
「…………」
「……心配掛けたのもほんとごめん」
 脚を投げ出して座る己の隣。同じく地面に腰を下ろし、立てた膝を支えにしつつも背筋をしゃんと伸ばした咲の視線を受けては、謝るほか無かったが。単なる討伐、よりも長時間の緊張を強いられる任務は決して楽なものならず、だから尚のこと、未だ整わぬ息を音を殺して吐く友へ心労を掛けた事は申し訳無いと──侮っても軽んじてもいない事はお互いに解っていて、だからこそ案じ合うのだけれど。
「ヴァルプルギスさん達はお体に不調などはありませんか?」
「ええ。御気遣い、有難う存じます」
 ウイングキャット共々気遣われ、視線すら向けず澄ましたままの猫の分もだろうか、見上げて来る弓月を体ごと顧みて、ヨルは静かに頷いた。彼女もまた戦闘中とは様子が違い、必要な事を不足無く伝達する為の多弁さはなりを潜めていた。腕に抱えた人形達もしんと静まっている。
 なので、会話はすぐに終わってしまったけれど。
「……何方様も御無事で、よう御座いました」
 大過なく済んだ事を喜ぶ気持ちは、同じだった。

作者:ヒサ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年10月16日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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