ショタっこには可愛い服を着せるべきである！

■リプレイ

●教会前
「可愛いの定義とは……何か。その謎を探るべく、我々はビルシャナの本拠地へ向かった――」
　モヱ・スラッシュシップ（機腐人・e36624）はナレーション風の口調で、仲間達とビルシャナが拠点にしている教会の前にやって来た。
　そのせいか、何となく仲間達も、探検気分。
　どうやらビルシャナはショタっこに可愛い服を着せる事こそが至高であると訴え、己の欲望を満たすため何やら行動を起こそうとしているようだ。
「なんかこー。……性癖主張の激しいのしか出てこねーんだ、本当に……」
　アルト・ヒートヘイズ（写し陽炎の戒焔機人・e29330）が、呆れた様子で溜息をもらす。
　色々と思う事があるものの、ビルシャナとは、こういうモノだと思えば、不思議と違和感が無くなってしまうのが怖いところであった。
「まあ……ちびっ子は可愛い、わかる。でも、敢えて可愛い服着せる必要なくない？　そのままの姿で既に可愛いのに、半ズボンだのサスペンダーだの、あるいはリボンとかスカートとか着せた日にゃ、自然な可愛さは消し飛ぶわ」
　朱牟田・惠子（墨染乃袖・e62972）が、自分なりの考えを述べる。
　そういった意味で、ビルシャナは何も分かっていない。
　何ひとつ……分かっていないと言えるだろう。
「それでも、分からぬ訳ではないでござるが……鳥頭を放っておくわけにもいかぬでござる。さっさ終わらせるでござる」
　不動峰・くくる（零の極地・e58420）が、サクッと気持ちを切り替えた。
　色々とツッコミどころが満載ではあるものの、軽くスルーしておくのが最前の選択肢。
　それ以外の事はすべて無駄であると考えるべきだろう。
「……と言うか、これを着るんですか？」
　そんな中、霧島・蘇馬（この手に流星を宿し・e50380）が、気まずい様子で汗を流す。
　何故か、話の流れで可愛い服を着る事になってしまったが、ある意味でこれは自殺行為。
　狼の群れに、羊を放り込むようなモノである。
　それでも、何故か……拒否権はない。
「……当然よ！」
　霧島・トウマ（暴流破天の凍魔機人・e35882）が、全力オカマスタイルでイイ笑顔を浮かべる。
　トウマの瞳に、迷いはない。
　それどころか、純粋な程キラキラと輝いていた。
「何だか嫌な予感しかしないんだが……帰るか」
　リリベル・ホワイトレイン（怠惰と微睡・e66820）が、サッと踵を返す。
　おそらく、幾つも危険なフラグを踏み、このままだと巻き添えを食らう状態。
　それが分かっていながら、前に進む事は、地雷原の中をスキップで駆け抜けるようなモノである。
「……大丈夫よ」
　そう言ってエリザベス・ナイツ（目指せ一番星・e45135）が、リリベルの肩を掴む。
　だが、それは本当の意味で大丈夫ではなく、人数が多い方がロシアンルーレット的な状況では有利と言う事だった。

●教会内
「いいですか、皆さん！　ショタっこには可愛い！　ショタっこは天使！　マジ天使！　だからこそ、可愛い服を着せるべきなのです！」
　教会の中にはビルシャナがおり、女性信者達を前にして、自らの妄想……もとい教義を語っていた。
「ショタっこには、かわいい服をきせるべき……ふむ、分からぬでもない。可愛いものに可愛いものを着せる。素直なプラスでござる。が、それを至高などと抜かすとは思考停止もいいところでござるな！　聞くでござる。かわいいショタっこに、カッコいい恰好をさせる、これでござる。なぜなら、可愛いショタっこは何を着てもかわいいショタっこであることは揺るがず、カッコイイがスイカにかける塩の様に聞いて倍増されるでござる。これでござるよ！」
　そんな中、くくるがビルシャナ達に対して、自分なりの考えを述べる。
「……あら、何も分かっていないのね。そんなモノ、スイカに毒を掛けるようなモノよ。ショタっこは尊いモノなの。ほんの少しのキッカケで穢れてしまう程……ね」
　ビルシャナが妙に上から目線で、悲しげな表情を浮かべた。
　まわりにいた女性信者達も何やら心当たりがあるのは、『今度こそは失敗しない』と言わんばかりに瞳をキラリと輝かせた。
「ショタは可愛い、それは認めマス……ですが！　芋ショタやドSショタのような可愛いとは方向性の違うジャンルにまで可愛い服を着せるというのは、些かやりすぎだと思いマス。男子の服を着ているからこそ成立するショタ美（※造語）の冒涜デス」
　それでも、モヱが怯む事無く、自らの考えを述べていく。
「いえ、そんな事はないわ！　可愛い服を着れば、みんなキュート！　マジ天使なのだから……！」
　ビルシャナが円らな瞳をきゅるるんと輝かせ、自分の言葉を信じて疑わなかった。
「ふーむ、駄目駄目ですねー。本当にショタが好きだというなら、適当に可愛い服を着せるんじゃなくて、一人一人の特徴、良さをしっかり見て本当に似合う服を着てもらうべき。可愛さだけがショタの売りじゃない！　カッコいいショタ、生意気なショタ。本当にショタが好きだというなら、あらゆるショタを愛するべき」
　リリベルが呆れた様子で、ビルシャナ達に駄目出しをした。
「いいえ、ショタの売りは可愛らしさだけよ！　それ以外は穢れているの！」
　ビルシャナが何かに取り憑かれた様子で、キッパリと言い放つ。
　まわりにいた女性信者達も瞳を潤ませ、『そうよ、そうよ』と連呼した。
「……とは言え、ショタだって男子なんだから成長する未来があるんですよ、永遠じゃないんですっ！！　それなのに、うっかり可愛い服ばっかり着せてたら間違えて……ガタイばっかりよくなって……それでも可愛い服着て……可愛い服で楽しんでた頃が幻想のように崩れ去って……ね、ねえさん……こんななっちゃったけど、似合って……るかなぁ……」
　すぐさま、蘇馬がイケメンボイスでビルシャナに語り掛け、勢いよくマントを脱ぎ捨て、可愛らしい服を見せつけた。
「いやあー、キモイ～！」
　だが、ビルシャナの口から洩れたのは、嫌悪感むき出しの悲鳴……であった。
　まわりにいた女性信者達も、悲鳴を上げてパニック状態。
「いや、ショタって、そもそも成長するだろ？　しかも、可愛い服ばっか強制したら、成長しても可愛い服しか着なくなるだろ？　首尾よく男の娘辺りに落ちるならまだしも、だな。……ガタイ良く成長してオカマの如き存在が降臨したら、どうすんだよ」
　アルトが呆れた様子で、ビルシャナ達に生暖かい視線を送る。
「それはないわ。だって、ショタっこは天使……故に永遠なのだから！」
　ビルシャナが夢見る少女の如く勢いで、瞳をキラキラと輝かせた。
「……と言うか、ちびっ子は、ちびっ子ぽく遊んで、わがまま言ってるのが至高なのわかんない？　あんたらの言ってる事は、ちびっ子の可愛さヘの冒涜だかんね。ちびっ子の目に入って緊張させた時点で、可愛さを削り取ってる事に気づけよ。どうあがいても小さいのは今だけなんだし、それなら……その瞬間を目一杯楽しむべき。どうせすぐ、あんなんなるから……」
　惠子も不機嫌そうに、アルトを指差した。
「きっと、穢れてしまったのよ。何かがキッカケで。だって、ショタっこは永遠だもの……！」
　それでも、ビルシャナが考えを改める事無く、拳をギュッと握り締める。
「あら、イヤダ！　お姉さま方ァ！！　穢れているなんてヒドイ！　これは『成長』！　いわば最終形態ってヤツよ！　つまり、ショタっこ達の未来……！　あなた達が望んだ姿ってワケよ！」
　トウマが全力全開のオカマ口調で、ビルシャナ達に語り掛けていく。
「そんなの、あり得ないわ！　あり得ない、あり得ない、あり得ない……」
　ビルシャナが壊れた様子で、激しく目を泳がせた。
　まわりにいた女性信者達も、予想外の現実（？）を見せられ、思考停止状態に陥っているようだ。
「ふふふ、お姉さん達、この世にはギャップ効果というものがあります。例えば、とっても可愛らしい男の子が時折チラっと見せるとっても格好いい仕草って……とっても素敵だよね！？　それとね、可愛い男の子を恰好よくコーディネートするのって楽しいんだよ？　可愛い男の子の知り合いは沢山いるから、お姉さんもビルシャナのお話なんて無視して一緒に私とこない？」
　そう言ってエリザベスが、女性信者達にイイ笑顔を浮かべるのであった。

●ビルシャナ
「本当にアレが未来の姿……最終形態って言うのなら、私は……」
　眼鏡を掛けた女性信者が不安げな表情を浮かべ、エリザベスの所まで歩いていく。
　他の女性信者達もビルシャナをチラ見しつつ、エリザベスの後ろに隠れた。
「ワタクシを裏切る気！？」
　ビルシャナが信じられない様子で、クチバシを開く。
　だが、女性信者達は誰も目を合わせようとしない。
「まあ、仕方ないよね。あんな『現実』を見せられたら……」
　エリザベスが女性信者達を守るようにして、ビルシャナの前に陣取った。
　その間も女性信者達はエリザベスの後ろに隠れ、不安げな表情を浮かべていた。
「とりあえず、ショタオンリー同人誌即売会が近日開催されるので、一緒に行きマショウ。これは挨拶代わりデス」
　そんな空気を察したモヱが、女性信者達にショタ同人誌を配っていく。
　これには、女性信者達も、ほっこり顔。
　大切そうにショタ同人誌を抱き締め、幸せそうな表情を浮かべていた。
「もう許さない。みんな、御仕置きしてアゲル！」
　その途端、ビルシャナがブチ切れた様子で、破壊の光を放ってきた。
「御仕置きと言うか、殺しに来ている気が……」
　それに気づいたリリベルが、ウイングキャットのシロハと左右に別れ、ギリギリのところで破壊の光を避けた。
「ならば、拙者も……御仕置きでござる！」
　それと同時に、くくるが怒號雷撃を仕掛け、ビルシャナを壁際まで追い詰めていく。
「それじゃ、アタシも御仕置き……なのか、コレ？」
　続いて、惠子がグラインドファイアを放ち、ビルシャナの身体を炎に包む。
「イヤァァァァァァァァァァァァァァァ！」
　その一撃を喰らったビルシャナが断末魔を響かせ、ブスブスと煙を上げた。
「もう、絶対、やりま、せんからね……！！！」
　蘇馬が恥ずかしそうに頬を染め、そそくさと服を着替え始めた。
　……ある意味、トラウマ。
　早く忘れたい過去、もしくは黒歴史と言った感じである。
「あ、あの……色々とありがとうございます」
　大人しめの女性信者が、ケルベロス達に御礼を言った。
　何とか我に返ったようだが、洗脳された時の記憶が残っているのか、トウマだけは苦手のようである。
「ひょっとして、俺が本物のオカマだと思っていたのか？　そんな訳ねーじゃん」
　それに気づいたトウマが苦笑いを浮かべて、オカマである事を否定した。
　その言葉にホッとしたのか、女性信者達も苦笑いを浮かべた。

作者：ゆうきつかさ	重傷：なし 死亡：なし 暴走：なし
種類： 公開：2018年10月4日 難度：普通 参加：8人 結果：成功！
得票：格好よかった 0／感動した 0／素敵だった 0／キャラが大事にされていた 0
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