死龍は煉獄を招く

作者:天木一

 空高く雲の上に佇む『先見の死神』プロノエーの元に、ジエストルが定命化して今にも息絶えそうなドラゴン1体を率いて現れる。
「お待ちしていました、ジエストル殿。此度の贄となるのは、そのドラゴンでしょうか」
「そうだ。お主の持つ魔杖と死神の力で、この者の定命化を消し去ってもらいたい」
 ジエストルの背後から唸るようにドラゴンが声を漏らす。
「このまま朽ちるよりも……この命を使い、ドラゴン種族の礎となろう……」
 その言葉にプロノエーは頷き、ドラゴンを正面から捉える。
「――これより、定命化に侵されし肉体の強制的にサルベージを行います。あなたという存在は消え去り、残されるのは、ただの抜け殻にすぎません。よろしいですね?」
「二言はない」
 最後の確認をすると、プロノエーは雲の上に魔法陣を作り出す。
「があああああああっ!! ぬぐぉおおおおおおお!!!」
 ドラゴンの苦悶の声と共に肉体が溶け、姿が変貌していく。そこに居たドラゴンは姿を消し、代わりに異形の怪物が残っていた。
「サルベージは成功、この獄混死龍ノゥテウームに定命化部分は残っておりません。ですが……」
「わかっている。この獄混死龍ノゥテウームはすぐに、戦場に送ろう。その代わり、完成体の研究は急いでもらうぞ」

「皆さん大変です。横浜にドラゴン『獄混死龍ノゥテウーム』の襲来が予知されました」
 部屋に飛び込んだセリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)がケルベロス達に事件発生を伝える。
「襲撃の起きる時間まであまり猶予はありません。このままでは避難が間に合わず多くの犠牲が出てしまいます。急ぎヘリオンで現場に向かい敵を迎撃してもらいたいのです」
 すぐにヘリオンで向かえば何とか襲撃に間に合う。
「獄混死龍ノゥテウームは知性が無く、ドラゴンとしては戦闘力も低めです。ですが腐ってもドラゴンです。強力な力を持った強敵ですので気を付けてください」
 たとえ戦闘力が落ちていてもドラゴン相手に油断すれば苦戦は必至だろう。
「敵は全長10mほどで、炎のブレスを吐き、骨の腕で薙ぎ払ったり、体当たりといった攻撃をしてくるようです」
 知能が無く単純な攻撃のみだが、その火力は高い。
「出現場所は高架橋の高速道路で、そこで迎撃することになります」
 車は通行止めされるが、到着時にまだ完全に遮断はできていない。
「それと重要な事ですが、獄混死龍ノゥテウームは、戦闘開始後8分ほどで自壊して死亡する事がわかっています」
 つまり獄混死龍ノゥテウームを撃破するか、或いは8ターン耐えきれば勝利となる。
「自壊する理由は不明ですが、ドラゴン勢力の実験体である可能性が高いのかもしれません」
 だが自壊すると言っても油断してその前に負けてしまえば被害が出てしまうだろう。
「ケルベロスが戦闘を仕掛ければ、獄混死龍ノゥテウームは戦闘を優先する事がわかっています。ですので攻撃を続ければ敵の注意を引けるでしょう。8分間戦い続け、人々を守ってください」
 説明を終えたセリカがすぐにヘリオンの準備に向かう。ケルベロス達も真剣な顔で頷き合い、後を追って駆け出した。


参加者
藤守・景臣(ウィスタリア・e00069)
小早川・里桜(焔獄桜鬼・e02138)
ミルカ・アトリー(タイニーフォートレス・e04000)
鈴木・犬太郎(超人・e05685)
尾神・秋津彦(走狗・e18742)
レヴィアタン・レクザット(守護海神龍・e20323)
リョウ・カリン(蓮華・e29534)
交久瀬・麗威(影に紛れて闇を食らう・e61592)

■リプレイ

●ドラゴン襲来
 最高速度でヘリオンが晴れた空を疾走する。地上の高速道路では、警察が誘導し逃げるように道を逆走する車もあった。
「見つけた! あそこ! ドラゴンが地上に降りようとしてしてる!」
 窓から目を凝らしたミルカ・アトリー(タイニーフォートレス・e04000)が指差して仲間達に示す。その先には10mを超える、腐ったような溶けた体をした空飛ぶドラゴンの姿があった。
『ぐがああああああ!!』
 威嚇するように吠えながら急降下するドラゴンを追うようにヘリオンから飛び降りたケルベロス達は、眼下に伸びる高速道路に着地したばかりのドラゴンへと襲い掛かる。
「ドラゴン戦は何度か経験したことあるが今回も苦い戦いになりそうだ」
 だが負けるつもりはないと、鈴木・犬太郎(超人・e05685)は落下しながら英雄殺しの名を冠した大剣に炎を纏わせて振り下ろし、敵の胴体を深く斬り裂いて傷口を焼く。
「犠牲を出さぬよう最善を尽くしましょう」
 戦闘開始と共に交久瀬・麗威(影に紛れて闇を食らう・e61592)はタイマーを押してカウントを開始する。そして紙兵を仲間達を守るように撒いていく。
「作戦開始だよ!」
 同時に予備のタイマーを押した小早川・里桜(焔獄桜鬼・e02138)は飛び出して跳躍する。そして敵の顔を思い切り蹴りつけた。
「この様な屍になり果ててまで、同族の為に尽くすとは恐れ入ります。貴方の覚悟には敬意を表しますが……此方も守るべき人々の為に」
 敬意を持って眼鏡を外した藤守・景臣(ウィスタリア・e00069)が、淡く藤色に灯る瞳で龍と視線を交わす。
「――その尊厳、踏み躙らせて頂きます」
 そして敵の注意を引こうと直刃の刀を抜いて踏み込み、雷を纏わせると突きを放ち鱗を貫いた。
「命を捨ててまで仲間のために……ね。人もドラゴンも、変わらないじゃん」
 リョウ・カリン(蓮華・e29534)は人と変わらぬ自己犠牲の精神に感銘する。
「貴方の暴行を見逃すことはできないけれど、その想いに敬意を示し全力で闘うよ」
 全力で戦うのがその行動に報いる事だと、リョウは殺気を放って虚無球体を放ち龍の巨体にぶつけ肉を抉り取った。
「獄混死龍――悍ましい見た目ですが、自壊するというのも不気味ですな」
 事故って放置された車の上に着地した尾神・秋津彦(走狗・e18742)はオウガ粒子を展開し、仲間達の中に眠る超感覚を目覚めさせる。
「まだ近くに人が居る。注意を引き付けるとしよう」
 竜の翼を広げて減速したレヴィアタン・レクザット(守護海神龍・e20323)は敵の前に着地し、オウガ粒子を周囲に撒きながら一般人を射線に入れぬように動く。そのレヴィアタンに龍の視線が向けられる。龍の口が大きく開き、奥から火の渦が沸き起こる。ケルベロス達は散開し吐き出す炎のブレスを避けた。

●死龍
「今のうちに避難を! この場はケルベロスが引き受けます!」
 まだ見える範囲に居る人々に向けて声を張りながら景臣が蠢く幻影を生み出し里桜に纏わせて、グラビティ効果を高める。
「こっちだデカブツ!」
 懐に入った里桜は光の剣を長く伸ばして突き刺し、走り抜けながら胴を斬り裂く。そして人の居ない方向へと向かって振り向く。龍はそちらに向けて炎を薙ぎ払った。
「まずは注意を引き付けないと!」
 翼を広げたミルカは急降下し、巨大なハンマーを頭に叩きつけ口を閉じさせた。行き場を失った炎が口の端から漏れる。
『おおおおおおっ』
 唸り声を上げて龍が突っ込んで来る。間に入った犬太郎は大剣で受け止めようとするが、圧倒的質量の差に負けて吹っ飛ばされた。
「飛燕より俊敏に、猿より狡猾に、そして咽喉深くまで狼の牙を突き立てて見せましょう」
 高速道路を山に見立てた秋津彦は、防音壁を駆け上って跳躍しメタルを纏った拳を上から胴へ打ち込む。そして反撃が来る前に飛び退いた。遅れてきた尻尾が地面を削り取り壁を砕く。
「流石は最強種。腐ってもドラゴンか文字通りの強さってところか」
 起き上がった犬太郎は口の端の血を拭い、駆け戻って炎放つ拳を叩き込んで魂を喰らい己が命に変える。
「これだけの巨体だ、体当たりを受けただけでも相当なダメージとなるな」
 尻尾をばねのように使い高く跳躍したレヴィアタンは不安定に滑空しながら飛び蹴りを浴びせ、敵の顔を押しやってよそ見をさせた。
「この天鱗の切れ味を見せてあげるよ」
 青白い模様を皮膚に浮かび上がらせたリョウは駆け寄り、朱色の鞘から刀を走らせ紙でも裂くように敵の体を深く斬り裂いた。
『があああああっ!』
 吠える龍が炎を横薙ぎに吐き出し道路を火の海に変えていく。伝わる熱だけで皮膚が焼ける痛みを覚える。
「皆さんが攻撃に集中できるよう、回復は全て引き受けます」
 麗威は紙兵を重ねて撒き、仲間達を癒しながら敵の攻撃を受けさせ、燃え尽きながらも威力を減衰させた。
「これだけデカイと倒すのも苦労しそうだよ」
 里桜は黒い液体を広げて龍の顔に貼り付かせた。視界を失い龍は暴れ回って周囲を破壊する。車がひっくり返り、壁や地面に穴が開く。
「貴方の相手はこちらです。その命果てるまでお付き合いしましょう」
 前に出た景臣は刀に紅蓮を宿し、迫る攻撃を受け流しながら刃を走らせ身体を裂いた。
「知能は無さそうだけど、執念と言うか怨念と言うか、鬼気迫るものを感じるな……。だけど、それに気圧されたりするもんか!」
 振りかぶったミルカはバールを投擲し、回転したバールの尖った部分が敵の体に突き刺さった。
『ぎぎゃあああああ!』
 叫びながら龍は体をうねらせ尻尾でケルベロス達を薙ぎ払い吹き飛ばした。
「知能が無くとも、痛みがあれば体は勝手に反応するだろう」
 丸太を担いだレヴィアタンは車を踏み台にして跳び、頭上から叩き込み龍の目に星を散らした。
「自壊するらしいが、易々と自壊できると思うなよ。ケルベロスはドラゴンよりも強いってところを見せてやる」
 続いて踏み込んだ犬太郎は正面から炎の拳を叩き込み、鱗を突き破り肩口までめり込ませる。
『がああああああっ!』
 だが龍は体を持ち上げて犬太郎の体を擦り潰すように地面に叩きつけた。
「ただの特攻――にしても少し不気味ですな。しかし裏があろうと無かろうと、全力で屠るまで」
 車の上に飛び上がった秋津彦はライフルを構えて引き金を引き、放たれた光弾が敵のグラビティを中和して圧力を軽くし、その間に押し潰されていた犬太郎が抜け出た。
「一筋縄ではいかないってのは解ってるけど……さて、どうしたものか……」
 観察しながら麗威は鎖を地面に敷いて魔法陣を描き、仲間達を守る空間を作り出す。
「どれほど大きくっても、身体を動かす部分を切ればいいだけだよね」
 リョウは弧を描くように刀を振るい、鱗の隙間に通して関節部を深く斬って身体を曲げにくくさせた。
「腐ってもドラゴン。流石に強力ですが、思考が無ければ脅威足り得ません」
 景臣は傷ついた敵の体に刀を当て、引くように撫で斬って傷を広げた。
「デカイけど、頭は悪そうだ。獣の相手と同じだね」
 敵に飛び乗った里桜は光の剣を突き立て、身体の上を走りながら引き裂く。
『がぁぁあぁあっ!』
 それを追い駆けて龍が体をうねらせると里桜は跳躍して地上に降りる。勢い余った龍の顔が己の体に食らいついた。
『ぶぉおがあああああっ』
 龍は大きく口を開け、火花が散って炎の渦が吐き出される。
「拳法、砲術、そして太刀打ちもすべて古の戦場の技のうち。狗賓の兵法にて、冥土への案内を仕りましょう」
 次々と違う武器を巧みに操る秋津彦は、炎を避けるように壁を駆け上がり跳躍して宙返りしながら刀を抜き斬りつける。
「俺の地獄の炎とお前の炎、どちらが熱いか勝負だ」
 犬太郎は大剣の平を盾にして炎を受け止める。防ぎきれぬ熱が手足を焼くが、それでも引かずに前に出て燃え上がる拳を叩き込んだ。
「撃破するには先にこちらが崩れる訳にはいきません。凌ぎましょう」
 離れた位置から麗威は犬太郎に向けて拳を放ち、拳圧が届いてその身に受けた怪我を吹き飛ばした。
『がぁぁぁぁっ!』
 龍が尻尾を高く上げて振り下ろす。
「まともに当たれば危険な一撃だ。当たればだがな」
 横からレヴィアタンは跳躍し鋭い飛び蹴りを浴びせて攻撃を逸らした。叩きつけられた地面がひび割れて砕ける。
「大きすぎて見えない部分がたくさんあるよ」
 低く踏み込み死角に潜り込んだリョウは、下から刀を斬り上げ腹のあたりを斬りつけた。
「ドラゴン相手なら加減は無用! フルパワーで撃ち込む!」
 レーザー発振器の出力を極限にまで高めたミルカは飛び込んで至近距離から無数のホーミングレーザーを一斉発射し、閃光で埋め尽くし大爆発を起こして龍の肉片が飛び散った。

●煉獄の如く
 戦場に場違いなアラーム音が鳴り響く。それは5分経過を告げる合図だった。
『ぐがああああっ!』
 ドロドロと肉片の混じった体液を漏らしながら龍はブレスを周囲に撒き散らし、炎の海を広げていく。逃げ場のない場所でケルベロス達の体もオーブンの中のように熱で焼かれる。
「僕の後ろへ、炎の扱いには慣れています」
 上段に構えた景臣は刀を振り下ろして炎を真っ二つに断ち切る。だがその後を追うように突っ込んで来た龍の体当たりを刀で受けると、吹き飛ばされて壁にぶつかった。
「どんな姿になってでも、死ぬくらいならって気持ちは解らなくもないよ。でも、クソ死神に作られた存在っていうなら……アンタも私の敵で、灰も残さず焼き尽くす対象だ」
 深緑色の符を手にした里桜は般若の面を斜めに着けた幼い緑竜を召喚する。里桜が手にした弓を引くと、幼竜が魔力の矢を自動的に射続け、無数の矢が龍の体に突き刺さってゆく。
「腐ってもドラゴン、油断せずにキッチリ仕留める!」
 ミルカは緋炎の輝きを宿すアームドフォートから砲弾を放ち、敵に命中した弾は爆発と共に熱を吹き飛ばし凍結させた。
「それだけ大きいなら殴り甲斐があるってもんだ」
 跳躍して組み付いた犬太郎は拳を突き刺し、魂を喰らって己が傷を癒しながら何度も拳を打ち込む。すると敵は体を捻じって犬太郎の体を放り飛ばした。そこへ尻尾を横から叩きつける。
「そうはさせん。その攻撃を止めて総攻撃に移るとしよう」
 レヴィアタンは丸太を突き立てて敵の攻撃を受け止める。凄まじい衝撃を地面を削りながら耐え、尻尾を抑え込んだ。
「こちらの戦力は十分。このまま追い込み仕留めましょうぞ」
 敵の体に飛び乗って秋津彦は刀を振るい、その場に留まらずに自在に飛び回って巨体を斬り裂いていく。
「ここから一気に仕掛けていくよ」
 続いて跳躍したリョウは刀を横に一閃し、敵の胴の一部を上下に斬り分けた。体液がどろりと流れ肉も一緒に流れていく。
『ぎぃぃぃがあああががが』
 歯ぎしりのように唸りながら龍は頭を上げてケルベロス達を見下ろす。そして大きく息を吸って炎を口の中に溜めた。
 そこでもう一度アラームが鳴り、6分経過の合図が伝わる。
「さぁ、そろそろ時間ですよ。ここからは一気呵成に攻撃です」
 麗威が時間を告げ、守勢から攻勢に移り、鎖を猟犬のように操って敵の顔に絡みつかせた。
「目障りだから焼けて墜ちろ、デカブツ」
 そこへ里桜は真っ赤な釘バットを投げつけて龍の顔にぶち当てる。衝撃で口が半開きになり、漏れ出る炎が龍の口を焼いて溶かした。
『ぎぃぃぃあああああぁが!!』
 体液を撒き散らし龍は怯み悲鳴を上げた。のたうつ体が周辺を破壊していく。
「冥土の土産に一太刀贈りましょう」
 鞘に刀を納めた秋津彦は一足で間合いを詰め、絶殺の妖気を籠めた刃を抜き打ち龍の体を斬る。刀傷は窮陰極寒の波動に蝕まれて腐り落ちた。肉が剥げていくと硬い骨格だけが残っていく。
『があああぐがっ』
 口に残った炎を吐き出し、炎の壁を作り出す。
「朽ち果てる前ではなく、魂を持ったまま戦いたかったな」
 翼で己が身を覆ったレヴィアタンは炎を突っ切り、丸太をフルスイングで叩き込んで巨体を薙ぎ倒す。
『ぎぃがあああああっ』
 地面に寝そべりながらも顔を起こし、口を開け炎を圧縮する。
「押し切りましょう」
 そこへ雷を全身に纏った麗威は、雷光のように接近し地面に打ち込み破片を飛ばして視界を遮る。そして懐に入ると赤く高まった雷の一撃を拳に乗せて打ち込んだ。電撃が駆け抜け敵の体を痺れさせた。
「陰を守護せし影の虎、その牙は龍を噛み砕く!」
 リョウは左手に虎を型どった影を纏い、飛び掛かると左腕を打ち出し、虎の顎が噛みつき龍の腹を獰猛な獣が噛み千切ったように抉り取った。
『ああああがああががっ!』
 龍が巨大な炎を吐き出す。周囲を焼き払う炎が何もかもを燃やしてしまう。
「最後は腐り果てるのではなく、戦士として討ち取りましょう」
 己が身を紅蓮の炎で覆い尽くした景臣は切っ先を向けて炎を突破し、銀閃となって刃を深く胴体に突き入れた。
「ここで勝負を決める! 全エネルギーを解放だ!」
 敵の正面へ飛行したミルカは眩い程の数え切れぬホーミングレーザーを放ち、一瞬にして熱量を持った龍の体が赤熱して大爆発した。身体が千切れ半分程が道路に落ちた。
「一撃だ。この一撃に俺の全てを込めてやる」
 犬太郎は直感で前に飛び込み、攻撃の隙間を通って懐に入り込み、全身全霊の拳を真っ直ぐに打ち込んで敵の顎を打ち抜き、衝撃が頭の天辺から抜けて肉片が噴き出した。
 巨体は力を失い崩れ落ちた。タイマーを止めると8分になろうというところだった。

●撃破
 龍の死骸が溶けるように消えていく。
「敵だけど、その行動は敬意に値するよ……」
 リョウはじっと龍が消え去るまで最期を見届けた。
「何とか倒せたな……腐ってなかったら危なかったかも」
 ミルカは大きく息を吐いて緊張を解き、強い敵だったと戦いを振り返る。
「ドラゴン相手なら上手くやれた方だろう」
 レヴィアタンが頷き、己が傷を癒す。
「さて――ひとまず、ここは片付きましたな」
 残心して刀を納めた秋津彦が、一つ事件が片付いたと荒れた周囲を見渡す。そして仲間達と共にヒールを掛け始める。
「俺の炎の方が熱かったようだな」
 犬太郎は燃え残った火種にタバコを寄せて火を点けて吸い、火種を踏み消して消火した。
「……死神の行動の活発化。果して、何を考えているのでしょう」
 景臣は死神に殺された大切な人の事を思い出し、これ以上誰かが悲しむような真似はさせないと強く拳を握った。
「クソ死神が何を企もうとぶっ潰すだけだ」
 投げた釘バットを拾い上げた里桜は、ブンッと死神をぶん殴るイメージで素振りした。
 道路が元通りになると、ドラゴン相手に戦い抜き勝利を得たケルベロス達は、疲れきっていながらも満足そうな顔で迎えに来たヘリオンを見上げた。

作者:天木一 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年10月11日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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