竹の闇這う

作者:幾夜緋琉

●竹の闇這う
 大阪府、市街地の一角。
 攻性植物の侵略の際にある緩衝地帯を歩く……竹の攻性植物達。
『……』
 言葉は無い。
 アイコンタクトと、ハンドサインを用い、進軍、停止の意思疎通を行う彼らは、何処か軍人の様な動きをしている。
 そして、建物へと侵入……人が居ない事を確認した上で、次なる建物へ。
 少しでも、攻性植物の支配域を広める為、彼らは前哨部隊として、陣を広げるべく大阪市内を索敵するのであった。

「ケルベロスの皆さん、集まってくれたッスね! それじゃ早速ッスけど、説明させて貰うッスよ!」
 黒瀬・ダンテは、集まったケルベロスらに元気な挨拶と共に。
「先日のケルベロスの皆さんの大阪城への潜入作戦、無事に成功して貴重な情報を持ち返る事が出来たッス。この情報は、今後大阪城の攻性植物との戦いに活かされると思うッス。本当、ケルベロスの皆さん、有り難うございますッス!」
「ただ、大阪城への侵入を許したことにより、攻性植物の警戒レベルも上がってしまった様ッス。その為、現在大阪城周辺の警戒区域には、竹型の攻性植物の軍勢の展開が確認されているッス」
「彼らはどうやら、大阪城へと接近するケルベロスを警戒すると共に、大阪市街地への攻撃を行い、支配エリアを拡大させる事を目的としている様ッス!」
 更にダンテは。
「この竹型攻性植物、一小隊が8体で行動している様ッス。そして軍隊が如く連携を取り、隠密行動をしつつ索敵を行っているッス」
「彼らは大阪城周辺の市街地の探索を行った後、ケルベロスの侵入が無い事を確認すると、大阪の市街地への攻撃を開始する模様ッス」
「つまり、大阪市街地の被害を防ぐ為には、緩衝地帯で迎撃する事が重要ッス!」
「敵は隠密行動をしつつも、索敵によりケルベロスの皆さんを発見しようとしているッスから、こちらも隠密行動をしつつ、索敵により攻性植物を発見する事が必要ッス」
「ちなみに、8体の攻性植物は連携した戦闘を仕掛けてくるッスから、戦闘力としてもケルベロスの皆さんとほぼ互角ッス。つまり……先に敵を発見し、奇襲を仕掛けた側が圧倒的に有利になるという事ッス」
「大阪城周辺の緩衝地帯は、無人の市街地になっているッスから、その地形を上手く利用出来れば、有利に戦う事も可能だと思うッスよ!」
 そして最後にダンテが。
「量産化された兵士の様な攻性植物……一体一体は強くは無いッスけど、数が揃えば脅威ッス。ケルベロスの皆さん、宜しく頼むッス!!」
 と、力強く拳を振り上げるのであった。


参加者
尾守・夜野(虚構に生きる・e02885)
彼方・悠乃(永遠のひとかけら・e07456)
スミコ・メンドーサ(グラビティ兵器技術研究所・e09975)
ティリア・シェラフィールド(木漏れ日の風音・e33397)
ナナツミ・グリード(貪欲なデウスエクス喰らい・e46587)
霊ヶ峰・ソーニャ(コンセントレイト・e61788)
クロエ・ルフィール(けもみみ少女・e62957)
リリベル・ホワイトレイン(怠惰と微睡・e66820)

■リプレイ

●夜の帳
 大阪府の市街地の一角。
 一般人の居ない、攻性植物の侵略の緩衝地帯……静けさだけに包まれたその場所は、何処か不安を煽る空気。
 ……しかし、そんな空間を、軍隊の如き行動で侵略行為を企てし攻性植物が一派、竹の攻性植物達。
「うーん……こういうシチュエーション、ゲームではよくあるけど、実際にやるとなると結構緊張する。せめて、足を引っ張らないようにせねば、せねば……」
 とリリベル・ホワイトレイン(怠惰と微睡・e66820)が、誰へと言う訳でも無く呟くと、それにティリア・シェラフィールド(木漏れ日の風音・e33397)とナナツミ・グリード(貪欲なデウスエクス喰らい・e46587)も。
「うん。竹の攻性植物か、それもこんなにたくさん。何処に潜んでいるか不安だけど、私達の実力を見せてあげよう」
「そうだねぇ。ま、潜んでいたとしても、見つけ出して食らうだけなんだけどねぇ」
 何処かナナツミは、嬉しそう……でも、一方のティリアは僅かながらに不安もある様で。
 ……そんな仲間達の機微に、彼方・悠乃(永遠のひとかけら・e07456)が。
「そういえば、前回の依頼では、事前調査で得た情報と、実際に見た現状に差異がありました。それは必然的な事だと思いますし、仕方ありません。ですからその時、その現状も記録し、資料に加えています。今回も勿論異なる『現状』はあるでしょうから、それを更に解明し、照らし出して行きたいと思います」
 と、それに霊ヶ峰・ソーニャ(コンセントレイト・e61788)は。
「……分かった。そう言えば、出てくる敵……8体。その内指揮官は1体。指揮官を倒せば、崩れるかな?」
「んー……どうかなぁ。まぁ軍隊では指揮系統が崩れたら総崩れなんて良く聞く話だけど。まぁ実際の所は自暴自棄になって破壊活動に傾くなんて事もありそうだから、指揮官だけを狙うのは危険かもねぇ」
「そうだね! 取りあえず先手を取れる様にしないと、不利な戦いを強いられるのは間違い無いだろうし、索敵はしっかりとしないとね!」
 尾守・夜野(虚構に生きる・e02885)にクロエ・ルフィール(けもみみ少女・e62957)がぐっと拳を握りしめ、そしてスミコ・メンドーサ(グラビティ兵器技術研究所・e09975)が。
「まぁ何にせよ頑張らないとね! さーてさて、うまく飛んでくれよボクのかわいいおもちゃちゃん」
 と、宙空に浮かぶドローンに微笑む。
 ……勿論その手元のスマホには、ドローンに載せたウェアラブルカメラの映像が流れており……今の所は順調。
 そしてその映像と共に、クロエは。
「そうそう、これを持ってきまたよ! ここの詳細な地図! ここここ、ここの建物が敵の拠点にしやすい感じで怪しい感じがする!」
「確かに……それじゃドローンは、まずはその辺りを集中的に索敵させようか。勿論自分達が見つからないのが第一だけどね」
「そ、そうだな。余り時間を掛けても居られないし、そろそろ始めるとしよう!」
 と、リリベルが仲間達を促し、そしてケルベロス達は作戦領域へと足を踏み入れるのであった。

●闇に潜む影は
 そして、作戦領域。
 静けさに包まれた地域は、何処か不気味な雰囲気……竹の攻性植物達は、息を潜めて潜入工作をしている。
 ……しかし、ケルベロス達も同様に。
「……うーん……何処に居るのかなぁ?」
 周囲をきょろきょろと見渡しつつも、足音を忍ばせながら歩く夜野。
 彼だけでなく、ティアラを除く全員が隠密気流を纏い、迷彩柄などを利用して、気配を消して緩衝地帯を歩き回る。
 更に、この周囲の地図と航空写真を仕入れた悠乃が、それを皆に渡しつつ。
「取りあえず……白の純潔撃破戦の結果も踏まえて、ここら辺が怪しいと思います。後は上空から見えない場所とかは潜むに都合の良い場所でしょうから……この辺りも怪しいと思います」
 と、幾つかの場所に赤丸を付けて、認識を合せる。
「了解よ。ああ、後は意思疎通出来る様にハンドサインを決めておきましょう……時計も合わしておかないと」
 と、ティリアは各々の時計を秒単位まで合せ、更に様々なハンドサインを示し合わせて声が無くとも会話出来る様に認識を合せる。
 そして、暗視ゴーグルを被り、音を立てぬ様に靴には発泡ゴムの靴底を貼付け、ホシハミのランプを点し、視界を確保。
 ……勿論、それで完全である保証はないし、相手から不意に奇襲される可能性は十分ある。
 出来うる限りの対処を行い、そしてケルベロス達は、緩衝地帯を進む。
 リリベルと悠乃の二人は翼飛行を使い空からの捜索。
 残る仲間達は地上から捜索し、二面作戦を展開。
 ……そんなケルベロス達の隠密作戦に対し、竹の攻性植物の動きは……見えない。
 緩衝地帯に立つ、廃ビルに侵入……暫し立ち止まり、微かな音の違いを聞き分け、在不在を判断。
 勿論ケルベロス達も声を出さず、ハンドサインだけで相互に連絡を取り合う事で、敵に音を察知されない様に工夫する。
 一方、スミコはサーマルセンサーを活用し、周囲の熱源反応をチェック。
 仲間達の他の熱源反応があるかを確認し、そこにナナツミがドローンを飛ばす事で、敵を誘き寄せる様に細工も行う。
 ……互いの索敵行動、どちらが上手かの勝負。
 一般人も居ない、静寂の空間。
 そして……幾つかの廃ビルを次々と捜索していくと共に。
(「……ん? あれは……? 緑のシルエット……敵を見つけたかも?」)
 と、クロエの覗き込んだ双眼鏡の中に、向かいのビルの割れた窓から一人、また一人、と姿を現す竹の攻性植物『バンブーランスソルジャー』。
 槍を持ったその敵は、周囲を警戒しつつ、その窓から周囲警戒。
 ……それをハンドサインで仲間達に知らせたクロエ。
 ケルベロス達が、その動きを窓枠に隠れながら暫し観察するも……それ以上の目立った動きは無い。
 ただ、見かける姿はバンブーランスソルジャーの三体のみで、それ以外の影は……窓枠から現れる事は無い。
 そしてクロエは、仲間達にハンドサイン。
 ……ガトリングガンを窓枠から僅かに出して……そして、夜野が。
「行くよ」
 極小さい声で指示……その指示に合わせ、クロエが。
「狙い撃つ……! 7.62mmガトリング弾の威力を……! ガトリングデストラクション!」
 と、狙い澄ました照準で、ガトリングをスナイプ。
 同時に夜野も、投げナイフを投擲し、バンブーランスソルジャーへ狙い澄ます。
 ……しかし、その攻撃はギリギリの所で回避されてしまう。
 姿を隠したバンブーランスソルジャー……と、その瞬間。
『!!』
 ほど近いビルの上層階の方から、『バンブーガンソルジャー』3体が反撃の一斉掃射。
「っ……!」
 咄嗟にナナツミがドローンを飛ばし、その銃弾の盾とする。
 そして、バンブーボムソルジャーが。
「……手榴弾投擲! ふーせーてっ!!」
 と、クロエの叫ぶ通り、爆弾をケルベロス達の居るビルの中へ投げ込んでくる。
「大丈夫……任せろ!」
 と、リリベルが祝福の矢を放ち、更に悠乃がライトニングボールで視界を確保しながらキュアウインド。
 更にランスソルジャーと、『バンブージェネラル』が一斉にケルベロス達のビルの中へ突撃。
「あっちも陽動作戦をしてきたか……ふぅん、面白いねぇ」
 とニヤリ笑みを浮かべたナナツミが、突撃してくるランスソルジャーへ降魔真拳。
 同時にクロエも。
「機関銃兵の恐ろしさは弾幕の数に有り! さぁ……蜂の巣になるがいいよっ!」
 と、接近の陣へバレットストームで迎撃する。
 クラッシャーの効果もあり、ダメージは多め。
 しかしながら、そんなケルベロス達の攻撃をものともせず、更に前進。
 ケルベロス達の元へとたどり着くと共に、竹槍を撃ち貫く。
「はっは! そんな攻撃、甘い甘い! つかまえてごらんよー!」
 とペイルウイングで戦場を駆け回り、敵陣を攪乱。
 それを補助する様に夜野が御霊殲滅砲。
 ジェネラルを目的……とはしたが、流石にそのまま攻撃を通す様なランスソルジャーではない。
 身を呈して受け止めたランスソルジャーはうっ、と其の場に蹲る。
 が、残る二体のランスソルジャーは、ジェネラルの指示の元に更に前進していく。
 そして、後衛のティリアとソーニャが。
「連動しての素早い動きだね。でも、私のこの蹴りを、避けられるかな!」
 とティリアがスターゲイザーで蹴撃し、ソーニャも轟竜砲で攻撃。
 全ての攻撃を、身を呈して受け続けたランスソルジャー一体は、最早瀕死の重傷。
 その体力状況を見て、次の刻……ナナツミがレゾナンスグリードを一閃。
 流石に一体が崩れ墜ち、残る2体のランスソルジャーは僅かに戸惑いの表情。
 しかし、ジェネラルは仲間達へ竹刀を振り抜き、更に攻撃を指示。
 それに応じ、後衛からボムソルジャーが爆弾を投げ、ガンソルジャーは射撃。
 ……そしてランスソルジャーが前に立ち、特攻を繰り返す。
 中衛の位置でのジェネラルは、仲間に指示を与え、鼓舞する。
 そんな竹の攻性植物達の攻撃、ディフェンダーのスミコとリリベルのウイングキャットのシロハがカバーし、それを悠乃とリリベルが回復に傾注。
 残る仲間達が、先ずはランスソルジャーの防衛陣を崩す為に、集中砲火。
 そして、数分の内にランスソルジャーの残る二体を仕留めると……ジェネラルはケルベロスから距離を取る。
 そして入れ替わる様に、ガンソルジャー3体が前線へ。
 とは言え、ガンソルジャー前衛に立てど、攻撃方法は後衛時と変らない訳で……。
「ガンで前に立ち塞がるだなんて、まぁ、指揮官がいなくなれば後は瓦解するだけ、だからね」
 とナナツミは肩を竦める。
 そして、そんなガンソルジャーにあえて間合いを詰めて、ナナツミがスパイラルゲッタービームに、クロエが。
「これがあたしの十八番だ! ブリッツベイル!!」
 と『ブリッツベイル』を叩き込む。
 ……流石にクラッシャーの全開攻撃を二重で受けて、ガンソルジャー一体が間もなく倒れる。
 更に一体、またも一体……元々後衛の彼らは次々と崩れ墜ちる。
 そして、残るはジェネラルと、ボム。
 ボムの位置まで下がるジェネラルだが、それを追撃するケルベロス。
 ……ボムの爆弾は、流石に前衛位置に投げ込めば己を巻き込む事にもなりかねない為、後衛のソーニャ、ティリアに向けて投げつけるのだが。
「……」
 静かにその爆弾をはね除けて、違う場所で爆発させる。
 そして……ボムの守護は用意にくぐり抜けたクロエが。
「逃がすと思ってる?」
 とジェネラルを包囲し、渾身のブリッツベイル。
 逆側からナナツミが。
「楽しい~愉しい~パーティータ~イム!!…玩具はキミで、御馳走もキミなんだよぉ~♪」
 何処か嬉しそうに、『飛散する悪意』を飛ばし、ジェネラルを飲み込むブラックスライム。
 そしてスミコが。
「これでも食らえ!」
 『フリージング・バースト』の一撃を叩き込み、ジェネラルを仕留める。
 そして、指揮官を失い、攻撃の手も真っ当に仕掛ける事が出来ないボムは、ティリアが。
「炎の螺旋よ、敵を焼き尽くせ-!」
 と黒炎の竜巻、更に夜野のマジックミサイルが決まり、全ての竹の攻性植物達を仕留めるのであった。

●風の動き
 そして……どうにか侵略を押さえ込んだケルベロス達。
「……ふぅ。どうにか終わったみたいだね」
 と汗を拭いながら夜野が息を吐くと、リリベルも。
「ああ、どうにか終わったな。奇襲を受けた時はどうなるかとは思ったが、問題無かったな」
 と豪快に笑う……ものの、内心ではとてもひやひやしていた訳で。
「うん、そうだね。取りあえずは良かった、かな?」
 とクロエが微笑み、それにソーニャがこくり、と頷く。
 ……とは言え、ここはまだ緩衝地帯。
 いつ、どこでまた別の敵が現れるかは分からない。
「取りあえず、ここから離れようか。奇襲に連戦を受けて、全滅したんじゃ話しにならないしねぇ」
 とナナツミの提案にケルベロス達は頷き、取り急ぎ緩衝地帯から脱出。
 ……敵の気配が失せて、取りあえずは一安心。
「ここまで来れば良さそうだね。いやぁ……ちょっとはしゃぎすぎたかな」
 後頭部をぽりぽりと掻きながら苦笑したスミコに、ティリアも苦笑為つつ。
「そうね。スミコさん、凄く嬉しそうだったしね」
 そんな仲間達の声を聞きながら、悠乃は……ちょっと瞑目。
「……いまは小さな歩みでしかない、通り道のり。でも、いつか、ユグドラシル・ゲートにまで到り、勝利をつかみ取る為に……一つ一つこなしていかなければなりませんね」
 と言うと、夜野が。
「そうだねぇ……緩衝地帯がどちらの手に渡るか、まだ分からないもんねぇ……」
 と肩を竦めつつ……仲間達の傷をキュアウインドで癒すのであった。

作者:幾夜緋琉 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年10月9日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 2
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。