死龍、雷襲

作者:のずみりん

 雲海を突き破る巨大な影は二つ。来訪者たちの起こす乱流もそよ風のように受け流し、『先見の死神』プロノエーは静かに形ばかり頭を下げた。
「御丁寧に痛み入る、『先見の死神』よ。彼の者を連れてきた」
「こちらこそお待ちしていました、ジエストル殿。そちらの身が此度の贄でしょうか」
 促され、魔竜ジエストルは連れてきたものを前に出す。彼よりもやや小さいが、今は薄汚れた金鱗は相応に力あった雷竜の証か。
 だがそれも今は昔。定命化に苛まされた身体は弱り、かの雷竜は既に言葉すらも失っている。
「彼奴の覚悟は聞いている。お主の持つ魔杖と死神の力で、この者の定命化を消し去ってもらいたい」
「承知しました。これより、定命化に侵されし肉体の強制的にサルベージを行います。あなたという存在は消え去ります。残されるのは、ただの抜け殻にすぎません。よろしいですね?」
 ジエストルの言葉と死神の少女の定型的な確認に、雷竜からバチリと雷が爆ぜた。自らが勝利への礎となれる事に、ドラゴンはわずかな躊躇いもない。
「……かしこまりました。誇り高き意志に祝福あれ」
 何の感情のこもらぬ礼事だが、儀式は速やかになされた。天空に描かれる巨大な魔法陣、その中心に浮かぶ雷竜の肉体が溶けていく。
 苦悶の声と共に、儀式はゆっくりと進行していく。
「……サルベージは成功しました。この『獄混死龍ノゥテウーム』に定命化部分は残っておりません。ですが」
「皆まで言うな。この者はすぐにも戦場に送ろう。完成体の研究は急いでもらうぞ」

 集まったケルベロスたちにリリエ・グレッツェンド(シャドウエルフのヘリオライダー・en0127)は駆け足気味で予知について報告した。
「緊急事態だ。千葉県幕張近郊にドラゴン……『獄混死龍ノゥテウーム』と呼ばれる個体が出現する」
 襲撃までの時間はわずかで、避難は間に合わない。予知によればドラゴンは九メートル弱とやや小柄、知性はなく戦闘力は低めだというが、状況が状況だ。
 ケルベロスたちが阻止しなければ、その力は幕張の街一つを灰燼に変えて余りあるだろう。
「すぐにヘリオンを出す。ドラゴンを迎撃し、街を守ってくれ」

 予知された獄混死龍ノゥテウームはドラゴンだが、少々風変わりな点が見られるだという。
「禍々しい骨のような姿は死神にも似ているが……種族としてはドラゴン、この個体は雷竜の一種のようだ。あるいはドラゴンたちの何らかの実験体なのかもしれないな」
 リリエがそう推測した根拠は、予知に見られた獄混死龍の挙動にある。
「この獄混死龍だが、戦闘開始から八分ほどで自壊……つまり死亡する。理由は不明だが、撃破が難しそうなら自壊まで耐え続けるという選択もありだろう」
 ただし、とリリエはつけ加える。
「行動時間を見越してかはわからないが、ドラゴンの攻撃力は激烈だ。また攻撃の手が緩んだ場合、市街地に攻撃が及ぶ可能性も高い」
 獄混死龍は骨化した鉤爪によるブレイク効果の斬撃の他、集束と拡散、二種の電撃ブレスを放ってくる。
 拡散型はパラライズ効果の広範囲攻撃、集束型は追撃を伴う超高威力……いずれもケルベロス以外に放たれれば、一瞬で人命と都市機能を破壊して余りある代物だ。
「有効打を与えている限り、こちらを無視して街を狙うことはないようだが、自壊を狙って守りを固める場合は注意してほしい」
 撃破だけならひたすら耐えればいいが、そうすると市街地を守れない。厄介な相手だ。

「戦闘力は低いといえ、ドラゴンである事に変わりはありません。周辺の被害も気がかりです」
 ソフィア・グランペール(レプリカントの鎧装騎兵・en0010)は武具を握る手に力を込める。
「油断なく、全力で迎撃いたしましょう」


参加者
クリム・スフィアード(水天の幻槍・e01189)
アリシア・メイデンフェルト(マグダレーネ・e01432)
志穂崎・藍(蒼穹の巫女・e11953)
アーニャ・シュネールイーツ(時の理を壊す者・e16895)
マーシャ・メルクロフ(月落ち烏啼いて霜天に満つ・e26659)
根住・透子(炎熱の禍太刀の担い手・e44088)
ガートルード・コロネーション(コロネじゃないもん・e45615)
エリアス・アンカー(ひだまりの防人・e50581)

■リプレイ

●死龍落来
 幕張の空を覆う暗雲の中を、ケルベロスは降りた。
「おぉっ、でけぇ……!」
 広がる地上の光景にエリアス・アンカー(ひだまりの防人・e50581)が楽し気な声を漏らす。まさに危機一髪、まさに邂逅。
「……!」
 着地するケルベロスたちと並走する『獄混死龍ノゥテウーム』の姿。ドラゴンとしては小柄というが、郊外のショッピングモールにほど近い空き地に立つ九メートルは、聞いた以上に大きく見えた。
「まさに青天のヘキレキが形となったようでござる」
 その朽ち行く不気味な姿はマーシャ・メルクロフ(月落ち烏啼いて霜天に満つ・e26659)の心をも震わせてくるが、ここで躊躇う時間はない。
「まずは挨拶代わりだ! 将軍、マーシャ!」
 メタリックバーストの輝きをまとい、空中を蹴って九十度垂直に二段ジャンプ。変則軌道でエリアスの『旋刃脚』が着陸したばかりの死龍を蹴り飛ばす。
「ナノ……!」
「承知もうした! そこでござる!」
 同時、顔と同じほどに濃いナノナノ『剣豪将軍ナノテル様』の声に応じ、妖精弓『【麗器】三味線坊-雅-』がべんっと弦を鳴らし、ハートクエイクアローを飛ばす。
「!? !」
 ガイドレーザーの如き『めろめろハート』に導かれ、喉だった場所に突き立つ矢じり。
 うつろな顔が仰け反り、視線がぐるりと回される。やったか?
「効果……ダメです……!」
「まぁ、そうだろうね!」
 だがそこは腐ってもドラゴンだ。
 着弾観測中のソフィア・グランペール(レプリカントの鎧装騎兵・en0010)が飛ばしたヒールドローンを起点に、クリム・スフィアード(水天の幻槍・e01189)のライトニングウォールが吐き出される雷を迎え撃つ。
「防御はこちらで行います! 攻撃を、アーニャさん!」
「ありがとうございます! ここで……死守しますっ!」
 押し込まれかけたドローンの障壁を重ねて支える紫水晶の盾。フローネ・グラネット(紫水晶の盾・e09983)の助太刀を受け、アーニャ・シュネールイーツ(時の理を壊す者・e16895)のゼログラビトンがさかのぼる。
 着弾、突き刺さった矢玉までを焼き払った電撃のブレスが瞬間凪ぐ。
「今です、足止めを!」
「あわせます、このまま開発地区まで……!」
 アリシア・メイデンフェルト(マグダレーネ・e01432)の放つスターゲイザーにあわせ、根住・透子(炎熱の禍太刀の担い手・e44088)の気咬弾が獄混死龍へと喰らいつく。
「かつての誇り高き竜……その残滓、ですか。身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ……その選択を否定する気はありませんが……!」
 だがそのドラゴンの暴虐を許せば、背に見える幕張の街は死ぬ。抵抗する獄混死龍に、アリシアは流星と化した蹴り脚を強く押し込む。
「!!」
 ボクスドラゴン『シグフレド』の白の属性が吐息のようにインストールされ、力の限りに蹴り抜く。なおも踏ん張る脚を、透子の気咬がつかんだ。
「あの時から私はどれだけ強くなれたでしょうか……」
 透子とドラゴンとの縁は失伝救出の戦い、ワイルドスペースで出会った残霊の竜までに遡る。あの時のドラゴンより、この死龍は強力だろうか? 自分はどうだろうか?
「敵もこちらを脅威と認識しているのでしょうか……ともあれ、通しません」
 もがくように振り下ろす爪を『支えの盾』を差し込んだガートルード・コロネーション(コロネじゃないもん・e45615)の声が、透子を迷いから振り払う。
 少なくとも自分たちはドラゴンにとって脅威だ。あの時はワイルドスペース、今は幕張の市街、あの時も今も、それだけあれば護る事は出来る。
「私がやらないと……!」
「そこはボクたちが、でしょ?」
 気負いそうになる心だが、つけ加えられる志穂崎・藍(蒼穹の巫女・e11953)が助けてくれる。護るというが、倒してしまってもかまわないのだろう? と混ぜっかえして大地を蹴る。
「そうですね。これ以上は……!」
「貴方の好きには、させないにゃ!」
 死龍を足場に、再跳躍。足を絡められた死龍めがけ、打ち込まれた藍の旋刃脚。
 通り一つぶん、死龍の身体が大きく跳ねた。

●雷、跳ねる
「そのような姿になってまで、同胞のために……」
 朽ち落ちる身体をばらまき暴れる獄混死龍に声を漏らしつつも、アーニャはライフルの銃爪を引き続ける。電撃とフロストレーザー、血を舞わせぬ静かな殺傷が交錯して命を削る。
 周囲の安全は確保できたが、手を休める時間はお互いないのだ。
「まるで怪獣でござるな……!」
 未来的な幕張新都心を背に、獄混死龍が大きく首をもたげる姿は、マーシャにいやな既視感を感じさせる。
 二十一世紀初め、第二次大侵略期が始まる前の幕張開発地区では多くの映像作品が撮影された。かつての開発区は派手な爆破と破壊がお約束だったが、いまここでそれをされるわけにはいかない。
「ソフィアも覚えがあります。幕張を襲う怪獣、ですが……」
「そういうのはフィクションで間に合ってるんでな!」
 ソフィアの言葉を継いで、エリアスが拳を叩きつける。都会の舗装は固く冷たいが、黒手袋という地球文明の利器はその手を守り、より力強く大地に伸びる無数の角を打ち込ませてくれた。
「シュァ!?」
「鬼しか渡れん針山だ! ドラゴンと言えど……気を付けろ!」
 正にはなたれんと雷溢れる死龍の口を、飛び出した『棲鬼針山』の無数の角が縫い付けた。逃れようともがく脚から肉がはがれ、飛び散る電光が飛び散っていく。
「おぅわっ!?」
「漏れ散った力でこれか……!」
 漏れ出た雷はかわしきれず、クリムの鎧に衝撃が貫く。
 ケルベロスたちが怯むやいなや、骨のような鉤爪が辺り一面を薙ぎ払う。
「敵は強大です、今一度立て直しを」
「ドローン復調。星辰結界、展開します」
 咄嗟、飛び込むマリアン・バディオーリ(蓮華草の花言葉・e62567)の双掌裂界撃が身を挺して猛攻を挫く。引き裂かれたエンチャントを立て直しに、ソフィアの剣が何度目かのスターサンクチュアリを描いた。
「けっこうする特注品だぞ、この野郎がっ……!」
 動きの鈍った瞬間をつき、エリアスはつかまれた『特注加圧Tシャツ』を脱ぎ捨てる。腕に巻いた『W-4000』が四度目のアラームを鳴らす中、ほおられたTシャツは、大地にどすりと鈍い音を立てた。
「ふぃ……楽になったところで、一気にいくか」
 既に時間は半分を過ぎたが、死龍の目は街とケルベロスを交互に見据え続ける。構うまでないと感じられれば、かのドラゴンは幕張の街へと身を向けるだろう。
 最強のデウスエクスに驚異を与えるには、殺しきる気で攻めるしかない。
「耐え凌ぐだけでは人々が狙われる。脅威であり続けるため……存分に振るおう。異形の力を!」
 脅威を感じとった獄混死龍の次の一手は、ケルベロスの排除。今までと違う、口腔の密度の高まりを感じてガートルードは『アロイガントレット』が覆う左腕からワイルドスペースを呼び起こす。
「シュッ」
 鳴き声とも言えぬ、死龍の口元から空気の漏れるような音。
 暴走の様相を覗かせるほどの励起『ワイルド・リジェネレーション』の治癒付加を感じつつ、ガートルードは両手の盾を重ね合わせた。
「ここは通さない!」
 真っ向勝負と放たれる超高圧電流。雷の吐息が支えの盾を抜き、『M.W.H.type-S』多用途防盾を揺るがす。集束された吐息の圧力は、彼女がかつて戦った魔竜の紫闇を思い起こす程。
 一点集中とはいえ、これほどのドラゴンがまだ数を為しているというのか!
「それでも、誰ひとり……」
 懐にある『ドラゴンオーブの欠片』の感覚は、竜の同胞を歓迎しているのか否か。考える間もなく、反射的に少女は足を強く踏み込んだ。
「あと少し、頼んだにゃ!」
 視界の端に翻る藍の『白南風の小袖』が見える。
「倒れ、させないっ」
 閃光が空へと駆けあがる。
 両の盾でも足りず、半身を痛々しく焼かれながらもガートルードは使命を果たした。
「見えたっ、そこ!」
 狙うは大顎、撃ち抜くは二指。ブレスを吐き切ったまさに瞬間、藍の指天殺が高校を深々と突き刺した。

●稲妻より早く
「シグ、彼女をお願いします」
「ハゥッ」
 倒れるガートルードをシグフレドに頼み、アリシアは漆黒の鷲を止まらせた『Die Strafe』を構える。
 硬化のは吐息を吐き切った死龍の四肢がよろめくのを彼女は見た。
 死神と化してなお、気脈を断つ指突は効果があったようだ……攻めるなら今しかない!
「誇り高き翼よ、我が声を聞け。そは一筋の矢にして、災禍を貫くものなり……足を!」
「委細承知にござる、棋聖活刃流奥義!」
 胸の意匠を輝かせ、漆黒の鷲が雄々しく羽ばたく。アリシアのファミリアシュートが、マーシャの呼んだ氷の茉莉花を舞い上がらせる。
「!? !」
 しゃらくさいと振るわれる死龍の大爪が大鷲のファミリアを弾き飛ばす。余りある威力が舗装を剥がし、音を立てて街路樹が倒れる。
 だが全ては計算済みだ。
「銀将とは軍師であり、囮……逆もまた然り。ジャスミンの花が熱を奪うでござるよ」
 今回はこちらこそが本命。がら空きになった獄混死龍の下腹部が音を立てて凍っていく。逃れんともがくたび、肉体が裂けて削れていく。
「口は止めたらこちらか!」
「気を付けろ、触れるには少々痺れるぞ!」
 そしてその裂けた隙間からも溢れる雷。『形見の短刀』で切り払いながら連脚を打ち込むエリアスに頷き、側面からゲシュタルトグレイブを突き付けるや即座に離脱。
 間一髪、しぶとく跳ねる電光が彼が飛び退いた場所を焼く。
「守るにも攻めるにも、電撃が邪魔か……」
「でしたら……全火器開放!」
 一撃離脱では攻め切れない。呻くクリムに、ならばとアーニャは力押しの切り札を切る。
「私の切り札、一点集中で撃ち抜きます」
 展開されたアームドフォートよりミサイル、砲撃を雨とばらまき、更に突進。迎撃の電撃を死龍が咆える瞬間、身に秘めた力を彼女は一気に開放した。
「時よ凍って! テロス・クロノス!」
 六回目のアラームが耳鳴りのように木霊する。この瞬間から、アーニャの『月光を収める懐中時計【桜金】』が示す時間は仲間たちの時計から秒針で四半回りほどずれていく。
 ごくわずか、しかし貴重な数秒を制止させこじ開ける事こそが彼女に与えられた必殺の能力。
「テロス・クロノス! デュアル……バーストっ!」
 ありったけのガトリングガンとバスターライフルのフルオート射撃。声に合わせて時間が再び動き出す。
「ナナノッ!」
「今、アーニャさんの!? お願い劫火、力を貸して……!」
 巻き起こる爆発と暴風。透子は剣豪将軍ナノテル様の展開した『ナノナノばりあ』を盾に、声に応えるように妖刀『火焔野太刀 劫火』へ手をかけた。
「私がやらないと……滅殺剣っ」
 刃渡り六尺、透子の心火を火口と燃やした蒼炎が大気を焦がす。爆風の向こう、電光を放とうとする死龍めがけて透子は飛んだ。
 雷のように、より早く。魂を焼き尽くす一閃。
「灰燼……焔薙!」

●死龍避雷
 魂喰いの炎が死龍を裂く。
 死神の力で定命化をサルベージされた獄混死龍の肉体も、魂ごと焼き尽くす透子の妖刀には耐えられない。燃え上がる肉体へ、葬送の鐘のように七分目のアラームが鳴り響く、が。
「まだ動けるのか!」
「いいえ、あの様子ではもう……ですが、まだ来ます!」
 死なばもろとも、そういうことか。道連れを探す死龍めがけ、アリシアの助言にクリムは行動で答える。
 すなわち突貫。
「穿て。穿て。穿て。咲いた花が散るように。満ちた月が欠けるように――」
 魔力によって身体能力を限界まで、強引に神速へと加速したクリムは自らを必中の弾丸へと変える。
『急進『ダート』』
 その月から逃れられるものはいない。
「!!!」
「あいにくと負荷には備えている! このまま貫ち抜かせてもらう!」
 咄嗟、身を庇った鉤爪とゲシュタルトグレイブが激突、電撃と火花をまき散らして突破する。急進の魔術に含まれる身体強化と生命維持は死にかけといえど、ドラゴンの一撃を耐えきったのだ。
 一方で運動エネルギーを減じたクリムの突きも中枢までは届かなかったが、鉤爪が砕け落ちたこの瞬間、獄混死龍の敗北は確定していた。
「ナノ……」
「武士の情けを……かしこまりもうした。獄混死龍、おぬしの時間は尽きたでござる」
 彫りの深い『剣豪将軍ナノテル様』の顔が頷くのに、マーシャは悟ったように告げる。八分目のアラームは鎮魂の鐘。
 獄混死龍の肉体は崩壊をはじめ、完全な死を迎える間に攻撃を放つ時間はない。
「およばずながら、介錯させてもらうにゃ」
 どのような形であれ、魔竜の夢を残すわけにはいかない。藍は言うと、短く目を閉じた。
「形あるもの必ず壊れる。それがボクらがもたらす新たな理だニャ」
 開いた瞳が蒼穹の色に輝き、無限の長さの槍と化す。静かに放たれた『殺意の瞳』の呪いが死龍の自壊を加速させ、跡形もなく溶かしていく。
「骨は残さねぇつもりで来い、とはいうが……本当に何も残らねぇとなぁ」
「溶けた……ですが、まるで燃え尽きたようです」
 後に残ったのはわずかな染みと破壊の爪跡のみ。ソフィアの言葉に、エリアスはほぅ、と息を吐いた。
「ぎりぎりでしたが、被害は抑えられたみたいですね……」
「えぇ……ですが、まだ……もう少しっ」
 アーニャの肩を借りて、ガートルードが立ち上がる。
 獄混死龍はその全てを吐き出して逝ったが、生き残った自分たちにはまだ止まれない。
「こんなドラゴンが何体も……脅威的ではありますが、ここまでの戦力を投じなければいけないくらい、敵もこちらを脅威と認識しているのでしょうか」
 戦場となった開発地を仲間たちとヒールしながら、自らに残された傷にガートルードは思う。
 ドラゴンたちとの死闘は、まだ今しばらく続きそうだ。

作者:のずみりん 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年10月8日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 6/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 0
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