バンブー・サバイバル!

作者:雷紋寺音弥

●竹人分隊現る!
 大阪府大阪市。
 街のシンボルの1つでもある大阪城。未だ攻性植物によって支配されたままの地と、そこに連なる緩衝地帯。
 そんな危険と隣り合わせの市街地を、何やら蠢く影が8つほど。
「…………」
 一見、人間のようにも見えるそれらは、しかし何も言葉を発しなかった。ただ、無言のままハンドサインで指示を出し合い、周囲を警戒しつつ進んでいる。
 彼らの纏った衣服は緑。そして、その肌の色も同じく緑。竹刀のような武器を持った者を中心に、一糸乱れぬ無駄のない動きを展開している。時に物陰に身を隠し、時に姿勢を低くして地を這いずり。まるで軍隊か何かのようだが、彼らは決して人ではない。
 彼らの顔や身体は、その全てが竹だった。軍服を着た、8体の竹の攻性植物は、しばらく周囲を索敵した後、やがて建物の影に隠れて見えなくなった。

●竹人迎撃戦!?
「大阪城への潜入作戦では、貴重な情報を持ち帰ることができたようだな。まずは、決死の覚悟で調査に向かった者達の勇気を讃えたいところだが……敵も、こちらに休む時間を与えてくれるつもりはなさそうだ」
 ケルベロスの侵入を許したことで、敵も警戒のレベルを上げた。そのため、大阪城周辺の警戒区域に、新たに竹型の攻性植物の軍勢が出現したと、クロート・エステス(ドワーフのヘリオライダー・en0211)は集まったケルベロス達に、現在の状況について説明を始めた。
「連中の目的は、大阪城へ接近するケルベロスを警戒すると同時に、大阪市街地への攻撃を行い、支配エリアを拡大させる事だろう。敵は8体で1つの部隊を作り、隠密行動をしつつ索敵を行っている。迂闊に正面から仕掛けたところで、このままではお前達に勝ち目は無いぞ」
 大阪市街地への被害を防ぐためには緩衝地帯で迎撃する他にないが、しかしそこは敵のテリトリーにも極めて近い。普通に戦いを仕掛けても、待ち伏せをされて奇襲を受けるのが関の山。
「敵が索敵行動を取っている以上、こちらも隠密行動を取りつつ、索敵によって先に敵を発見する他にないだろうな。個々の戦闘力は、お前達より多少強い程度で、総合の戦闘力ではほぼ互角……。つまり、先に敵を発見して奇襲を仕掛けた側が、圧倒的に有利な展開になるということだな」
 大阪城周辺の緩衝地帯は無人の市街地となっているので、その地形を上手く利用すれば、有利に戦えるかもしれない。だが、条件は敵も同様なので、油断して逆に奇襲を受けないよう気をつけろと、クロートは改めて釘を刺し。
「敵の部隊の構成は、指揮官が1体に爆破兵が1体。そして、突撃兵と狙撃兵が3体ずつの、合わせて8体だ。指揮官は後方から回復をしつつ部隊の指揮を取り、爆破兵は火力担当。突撃兵は味方の盾になりつつ槍による攻撃を繰り出し、狙撃兵はライフルによる長距離射撃で牽制して来るようだな」
 まとめて相手をすることになれば、連携行動も相俟って、なかなか手強い敵となるだろう。だが、この攻性植物を駆逐する事が出来れば、大阪城への再潜入も夢ではない。
 いかに敵に補足されず、先に敵を発見するかが勝負の分かれ目だ。最後に、クロートはそれだけ言って、ケルベロス達に依頼した。


参加者
新城・恭平(黒曜の魔術師・e00664)
彼方・悠乃(永遠のひとかけら・e07456)
アビス・ゼリュティオ(輝盾の氷壁・e24467)
アデレード・ヴェルンシュタイン(愛と正義の告死天使・e24828)
速水・紅牙(ロンリードッグ・e34113)
死道・刃蓙理(野獣の凱旋・e44807)
クロエ・ルフィール(けもみみ少女・e62957)

■リプレイ

●強行偵察
 巨大なビルとビルの谷間にて。ガラスは破れ、壁面に亀裂の走った建物の隙間を、無言のまま進む一団が。
(「サーチアンドデストロイ。さて、どちらが先に敵を見つけるか」)
 建物の影に身を隠しつつ、新城・恭平(黒曜の魔術師・e00664)は油断なく大通りの様子を窺った。
 廃墟ビルの立ち並ぶ緩衝地帯。人影は見えず、気配もないが、それだけに大通りを歩くのは目立ち過ぎる。条件は敵も同じなのだろうが、だからこそ容易に姿を見せないのだろうか。
(「通信機の類は……やはり、使えないようですね」)
 被った段ボール箱から顔を覗かせつつ、死道・刃蓙理(野獣の凱旋・e44807)は通信機器をそっとしまった。
 ここは敵の勢力圏に最も近い場所。故に、偵察や潜入に対する妨害の体勢も、万全に整えられているに違いない。
 こうなったら、頼りになるのは身振りと手振り、それに各々の持ち得る特殊な能力だけである。ふと、顔を上に向ければ、数名の仲間達が飛行しつつも、進路の安全を確保しているのが目に留まった。
(「地図と航空写真は……あまり、参考になりませんね」)
 変わり果てた街の様子と、持ち込んだ地図や写真を見比べつつ、彼方・悠乃(永遠のひとかけら・e07456)は相違点を自分の手帳に書き込んでいる。倒壊した建物や、無人の廃墟と化した商店街。大地の隆起で舗装道路が大きく裂けてしまった場所などもあり、事前に入手したはずの情報とは差異も多い。
(「ここもかつて人で賑わった大都市であったと聞いておるが……今では見る影もないのぅ……」)
 斜めに傾いた交通標識の後ろに身を隠しつつ、アデレード・ヴェルンシュタイン(愛と正義の告死天使・e24828)もまた、慎重に街の様子を窺っていた。
 翼の類で飛行できる高度は、せいぜい50mが限界だ。ビルの高さで考えれば、15階から20階程度。加えて、オラトリオやドラゴニアン等と異なり、光輝く彼女の翼は隠密行動を取るにしては目立ち過ぎる。
 無防備を晒して飛び回れば、敵の良い的になってしまう。それは、他の者達も解っているのか、迂闊に道の真上へと身を晒す者はいなかった。
(「……レヴォはきっちりやってるかなぁ。いや、今は偵察に集中しないと……」)
 割れた窓ガラスの破片を避けつつ、クロエ・ルフィール(けもみみ少女・e62957)は敵の潜伏を警戒し、主に屋内を探索している。だが、音に対して警戒しているのは敵も同じなのか、先程から何の気配も感じ取れない。
(「集音デバイスは……ちっ、駄目か。ビル風の音が強すぎるぜ」)
 屋上から索敵を続ける速水・紅牙(ロンリードッグ・e34113)が、飛行中の仲間達にハンドサインで状況を伝えた。これが夜間の屋内戦であれば役に立ったかもしれないが、屋外の、しかも強い風が吹き抜けやすい状況下では、雑音ばかり拾ってしまう。
 互いに気配を消したまま、敵の居場所を探る索敵合戦。殆ど音もしない無人の廃墟で、時間だけが刻一刻と過ぎて行く。ともすれば焦りも出始める頃合いではあったが……そんな中、アビス・ゼリュティオ(輝盾の氷壁・e24467)だけは至って冷静なまま、とある点に意識を集中させていた。
(「街は死んでも、街路樹や道路の植え込みは、まだ一部が生きている。だったら……それを利用して身を隠している可能性は高いはずだよね」)
 そう、今回の敵は攻性植物。姿形や行動こそ人間の軍隊を模しているとはいえ、それでもあくまで植物なのだ。
 街路樹や植え込みほど、彼らが周囲の景色に姿を同化させやすいものはない。果たして、そんな彼女の読みは正しく、それを伝えられて最初に異常に気が付いたのはルヴァイド・レヴォルジニアス(黒竜・e63964)だった。
(「……見ツケタ。街路樹に匍匐前進しているヤツが……3匹!?」)
 もっとも、自分の予想に反して敵の数が多かったことで、ルヴァイドはしばし面食らった表情になり、改めて周囲を見回した。
 敵の姿は、他には見えない。恐らく、近くに潜伏しているのだろうが、その場所まで厳密に予想した通りという訳には行かなかったようだ。
 ここで仕掛けるべきか否か。判断の迷うところではあったが、先手必勝という言葉もある。
「3…2…1……。イマだ! 奇襲をかけロッ!!」
 敵が射程に入った瞬間、ルヴァイドが叫ぶと同時に、前進を続ける竹人達へと殺到する攻撃の嵐。
「ふふ……わが領域へようこそ! 待ち伏せ機関銃兵の本領発揮さ! 自慢の7.62mmガトリング弾をお食べ!」
 ガトリング砲を固定し、クロエが牽制弾を撒き散らせば、紅牙もまた高所からライフルを構え、敵の頭を狙って狙撃する。
「よし、やった! スナイパーと言えば、やっぱハード&クールだろっ!? だろっ!?」
 狙い通りに頭を撃ち抜いて御満悦の紅牙だったが、しかし敵もこの程度では倒れない。攻撃を受けた頭に手を添えつつ、素早く体勢を立て直して来る。
(「やれやれ……。名乗りなんぞ、上げている暇はなさそうじゃの」)
 敵の残りが戻って来るまでの時間は、およそ1分。奇襲の効果を最大限に生かすためには、1秒たりとも無駄にはできない。
 身を隠していた交通標識の裏から飛び出して、アデレードが振るったハンマーの一撃が、豪快な音と共に槍兵の身体を吹き飛ばした。

●脅威の竹人部隊
 緩衝地帯を哨戒中の敵を発見し、先手を仕掛けたケルベロス達。だが、程なくして敵の残りが集まって来たことで、戦況は早くも膠着状態に陥っていた。
 敵の隙を突いて、一方的に攻撃を仕掛ける。初動としては、間違いではない選択だ。しかし、それでも敵の槍兵達は、防御に長けた者ばかり。だからこそ、一点突破の集中砲火を仕掛けるべきだったのだが、ともすれば無防備な敵を目の前にして、ヒールグラビティによる自軍強化に一手を使ってしまった者達がいたのは拙かった。
 奇襲というのは、敵が反撃できない状態で、一方的に攻撃できるからこそ奇襲なのだ。だからこそ、求められるのは迅速な行動による短時間での殲滅。平時の戦闘と同様に、初手をあれこれと準備で消費してしまっては、奇襲のメリットを生かせない。
「俺は黒竜……。恐怖ニ怯エルがイイ植物ドモヨ。グヲォォォ――ォ!!」
 混戦になり始めたことで、隠れる意味も失ったからだろうか。ルヴァイドが真正面から飛び込み、その爪で槍兵を引き裂いて沈めるものの、残りの槍兵が反撃とばかりに竹槍を天高く投げて分裂させた。
「……その程度? 数が多いだけで大したことないね」
 すかさず、ボクスドラゴンのコキュートスと共に身を挺して槍の攻撃を庇うアビスだったが、真に恐ろしいのは敵の手数である。サーヴァントを連れていない以上、単純な単体の瞬間火力だけであれば、敵の方が上手なのだ。おまけに、こちらの動きを執拗に封じるような技ばかり使われては、それだけで戦いのペースが崩されてしまう。
「させませんよ、それは」
 この地に眠る惨劇の記憶。大地に刻まれた痛みより魔力を抽出し、刃蓙理が仲間達に突き刺さった竹の断片を取り除く。それに続き、今度はクロエが手榴弾を掴み、敵の群れ目掛けて投げ付けた。
「手榴弾投擲! ふーせーてーっ!!」
 爆発と共に、周囲に広がる凄まじい冷気。全てを凍らせる絶対零度の爆風に、さすがの竹人達も完全に凍り付いた……と、思ったのだが。
「よし! これで少しは効いたはず……って、何かこっちに飛んで来た!?」
 残念ながら、点ではなく面の制圧を目的とした広範囲攻撃では、さすがに仕留め切れなかった模様。おまけに、敵の爆破兵が投擲した爆弾が、あろうことかクロエを狙って飛んで来たのだ。
「やばっ!? 避けな……きゃぁぁぁっ!!」
 哀れ、ビルの一室諸共に吹き飛ばされたクロエは、そのまま瓦礫と共に真っ逆さま。敵味方の位置がめまぐるしく移り変わる戦場において、固定砲台として戦うのというのは、さすがに不利も否めない。
「こいつら! あんまり調子に乗るなよ!」
 ハンマーの柄を銃に見立てて構え、竜砲弾で敵を牽制する紅牙。しかし、狙撃が得意なのは彼女だけではない。敵もまた、優秀な狙撃手を、3体も揃えているのだから。
「…………」
 あれを狙え。無言のまま竹刀の先を向けることで示し、敵の指揮官が狙撃手達に命じた。一糸乱れぬ、無駄のない動き。その命令を受け、敵は一斉にライフルを構えると、先程から味方の壁として立ち回っていた、ルヴァイドの方へと銃口を向けた。
「……ッ!? グゥゥオァァァッ!!」
 次々と飛来する光線の雨。さすがに、これだけの集中砲火を浴びせられれば、守りに徹していてもただでは済まない。ボクスドラゴンのボクスちゃんがフォローに向かうも、それ以上に苛烈な敵の攻撃の前に、とうとうルヴァイドが耐え切れず倒れ伏した。
「やってくれおったな、下郎どもめ! その頭、今度こそカチ割ってくれるわ!」
 全身を貫かれ、前のめりに倒れたルヴァイドと入れ替わるようにして、アデレードが飛び出し一気に距離を詰める。そのまま槍兵の顔面へハンマーを叩き付けるが、しかし敵もまた黙ってやられているままではない。
「いい加減、ここに居座るの自体やめて欲しいんだけどね。まあ植物だから話通じないだろうけど……」
 敵の指揮官が掲げた竹刀の力によって、再び立ち上がる槍兵達。それを見たアビスは辟易した様子で拳を構えると、今しがた起き上がったばかりの槍兵の身体へ、超高速の拳を叩き込む。それだけでなく、コキュートスもまた体当たりで応戦し、敵の体力を徐々に削ぎ。
「沈んでください!」
 竹片を散らして体勢を崩した槍兵目掛け、炸裂したのは悠乃の蹴り。衝撃で首が吹き飛び、壊れた人形の如く崩れ落ちる槍兵だったが、それでも3体目の槍兵は未だ健在だ。
 後方に狙いを定め、残る槍兵が再び竹槍を投擲せんと身構える。だが、それよりも早く、敵の身体に巻き付いたのは、恭平の駆る鎖だった。
「行儀が悪いな」
 これ以上は、好き勝手にはさせない。全身に巻き付いた鎖を払おうと暴れる槍兵を前にして、恭平は不敵に笑って見せる。
 戦力差的には、ほぼ互角。早くも混戦となりつつある状況だったが、それは互いに解っているのだろう。
 ここで退けば、確実に負ける。それでも、徐々にだが確実に敵の頭数を減らしていることで、ケルベロス達は少しずつだが、勝利に近づいているのを確信していた。

●一進一退
 無人の廃墟と化した市街地にて、繰り広げられる攻防戦。敵は既に全ての槍兵を失っていたが、消耗の度合いが大きいのは、ケルベロス達もまた同様だった。
「熱っ! こいつら、後ろから先に狙うつもりか!?」
「明らかに、私を潰そうとしていますね……。集団戦における戦い方を知っている……」
 爆破兵の投げ付けた爆弾により、瞬く間に広がって行く炎の海。徐々にだが確実に焼き殺さんと、それらは紅牙や刃蓙理の身体に纏わり付いて行くが。
「……無駄だよ」
 熱には冷気を、炎には氷を。幾重にも重ねた氷盾を展開し、アビスが後方に広がる炎を消し去って行く。それでも不足する分は、コキュートスの力も借りて。
 もっとも、そんな彼女自身、既に現状では立っているのがやっとな状況。持ち前のタフさが幸いして致命傷こそ受けていないが、時間をかけ過ぎるのは得策ではない。
 槍兵がいなくなった今、次に狙うべきは爆破兵。敵の火力の要を潰さねば危険だと、クロエは雷撃を纏った斧を手に、近くの壁を蹴って跳び。
「これがあたしの十八番だ! ブリッツベイル!!」
 そのまま超重量の一撃を、爆破兵の頭目掛けて振り下ろす。その様は、まるで空を照らし大地を焦がす落雷の如く。全身を爆装した巨漢の竹人の身体を、真正面から叩き割った。
「よし、これで4体目……って、うわわ! ちょっと、待って!?」
 もっとも、大技を使った隙を見逃してくれるはずもなく、今度は残る狙撃兵達が、一斉にクロエ目掛けて攻撃を仕掛けて来た。すかさず、コキュートスが庇いに出るが、長引く戦闘による消耗により、既に限界を迎えており。
「拙いですね……。ここで一気に反撃しないと、後がありません」
 自らの気をアビスに分け与えながらも、刃蓙理の顔に焦りの色が浮かぶ。クロエは倒れ、コキュートスも消滅し、こちらも戦力は確実に削られている。
 互いに遠距離から撃ち合う銃撃戦。敵の狙いは百発百中。それだけに、なかなか一方的に攻めるのは難しい状況だったが、苦しいのは敵も同様だ。
「さあ、行くがいい、黒の鎖よ」
「こっちでも援護するぜ! その間に、指揮官をブッ飛ばしてやれ!」
 恭平の操る暗黒の鎖が敵を絡め取ったところで、紅牙の放った氷結の螺旋が、とうとう指揮官の身体を凍結させて、木っ端微塵に粉砕した。
「今じゃ! 司令塔が倒れたぞ!」
 翼を広げて接敵するアデレードの言葉に、他の者達も次々と続けて攻撃を仕掛ける。こうなってしまえば、後は時間の問題だ。数の差で勝っている以上、ここで負ける要素はない。
 部隊を指揮する者さえいなければ、もはや敵は烏合の衆。殴られ、撃たれ、斬り刻まれ、次々と数を減らして行く狙撃兵達。とうとう、最後の1体になったところで、さすがの竹人にも逃げるという選択肢が思い浮かんだようだが。
「見ていました。今、そこにいるあなたを」
 残念ながら、その未来は成立させない。敵の挙動から動きを先読みした悠乃の一撃が、最後の竹人の身体を真正面から粉砕した。

●任務完了
 戦いの終わった緩衝地帯は、再び静寂を取り戻す。相変わらず、辺りには人の気配もなく、殺風景な無人の廃墟が連なるのみ。
「敵の連携も中々だったね……疲れたぁ」
「連戦デ疲れているデショウ……? 時には休息も必要ダヨ……?」
 満身創痍になりつつもクロエを気遣うルヴァイドだったが、当のクロエは、こちらは完全に目が死んでいる。戦力的に、ほぼ拮抗した部隊との集団戦。強敵を複数で相手取る普段の戦いとは違い、別の意味で苦しいものだったのかもしれない。
「これ以上、長居は無用だ。撤退しよう」
「そうだね。増援とか来られると困るし、さっさと撤収するよ」
 未だ周囲へのヒールを続けようとする者達を、恭平とアビスが諭して止めた。彼らの言う通り、ここは敵地だ。先程の騒ぎを聞きつけて、別の部隊が現れないとも限らない。
 ならば、せめて今回の戦いを参考に、具体的な敵地周辺の資料を作成してみようと、悠乃は心に決めて手帳を閉じた。
 先人達の残して来た過去。自分達の歩んで来た現在。そして、これからも集め続ける未来の記憶が、必ず一筋の光明になると信じて。

作者:雷紋寺音弥 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年9月30日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。