血を分けたあなたへ~紅の炎刃

作者:つじ

●歪なる庇護
「ケルベロス……そうか、飽くまで邪魔立てするつもりか」
 褐色の肌、深い赤色の髪。そして仮面で覆った片目を細めて、そのシャイターンは呟いた。
「我等は同胞を……そして、虐げられたあの女性を救わねばなりません。参りましょう、ヘルガ殿!」
「ああ、分かってるさ。あんた達の『救済』は、弱い奴らには必要だからな」
 傍らの、純白の鎧を纏ったエインヘリアルを一瞥し、ヘルガと呼ばれた女はタールの翼を広げる。
「勘違いするなよ? 否定するつもりはないんだ。でかい面した男どもを生贄に使うところなんて、実に良い」
 なおも続く同行者の咎めるような視線に軽く手を振って応え、彼女は剣を手にする。揺らめく炎に似た、真紅の刃。
「それに、何より、こいつは我等が隊長の意向だ。手は抜かないから安心しろ――蹴散らすぞ」
 
●そして仲間のために
「皆さん大変です! また新たにシャイターンの選定が予知されましたよーっ!!」
 白鳥沢・慧斗(暁のヘリオライダー・en0250)が、集まったケルベロス達にそう呼びかける。
 不幸な女性を優先的に選定するそのシャイターンは、女性の不幸の原因である男を殺す事と引き換えに、エインヘリアルとなる事を受け入れさせようと画策しているらしい。
「この手の事件は既に何度か予知されていますが、今回はそれだけではないのです!!!」
 ハンドスピーカーを通した少年の声が、熱を帯びる。
 昨今、この勇者選定をケルベロスに邪魔されている状況を重く見たのか、敵は仲間を守ろうと、援軍として精鋭部隊を送り込もうとしているようだ。
「事件の解決に当たるチームは、現在ウサギの人……もといレプスさんの所で説明を受けているはずです! ここにお集まりいただいた皆さんには、敵側の援軍である精鋭部隊を迎撃し、可能ならば幹部と見られる敵の撃破をお願いしたいのです!」
 敵の援軍は、勇者選定の現場にケルベロスが駆け付けてから、特定のルートを通って移動し、戦場に向かっていく。
「この地点ならば確実に待ち伏せできるものと思います! 皆さんには隠れて待機していてもらい、敵がやってきたら立ち塞がり、迎撃をおこなってください!!」
 指定された場所は、片田舎の一区画。勇者選定の行われている場所から二分ほどの、竹林の間を通る小道だ。
「敵の構成はシャイターン一体と、エインヘリアルが一体です。このシャイターンが、『連斬部隊』の精鋭、幹部に当たる個体になります!!」
 部隊の隊長を慕う様子を見せる、ヘルガという名の赤い鎧の女。彼女はシャイターンらしく炎を使った攻撃、そして手にした深紅の剣での目にも止まらぬ連続斬りが主な攻撃手段になるだろう。その他に、自慢の肉体を見せつけることで自信を鼓舞する事もある。
 随伴しているエインヘリアルは白百合騎士団の一般兵であり、現在は主の命でヘルガの護衛として動いているようだ。こちらは壁役として前衛に立ち、バトルオーラを用いた行動を行ってくる。
「さすが幹部クラスと言うべきか、ヘルガはかなりの強敵です。ここでの撃破は難しいかも知れません。ですが今回は、勇者選定の事件が解決するまで敵を足止めする事ができれば、任務は成功と考えてください!」
 ここを突破されれば、当然勇者選定の妨害に向かった味方が窮地に陥る。とにかく耐え抜き、足止めを行うことが重要となるだろう。
 逆に、勇者選定の事件を素早く解決したケルベロスが救援に駆け付けてくれれば、大きな勝機となる。
「勿論、救援が来る前に出来るだけダメージを積み重ねておくのも重要になります! 別動隊の動きも見越しつつ、作戦を立ててください!!」
 威勢の良い声でそう言って、慧斗は一同を送り出した。


参加者
藤守・景臣(ウィスタリア・e00069)
ルース・ボルドウィン(クラスファイブ・e03829)
サイファ・クロード(零・e06460)
シフカ・ヴェルランド(血濡れの白鳥・e11532)
宝来・凛(鳳蝶・e23534)
フィルメリア・ミストレス(夜の一族・e39789)
萌葱・菖蒲(月光症候群・e44656)
村崎・優(未熟な妖刀使い・e61387)

■リプレイ

●援軍阻止
 日は傾き、時刻は夕暮れ、予知にあったその場所……竹林に囲まれた小道で、ケルベロス等は敵二体と対峙した。
「何だ、貴様ら、邪魔をする気か!?」
「待ち伏せされてたんだよ、分かるだろ? こうなるのも予測しておくべきなんだ、あんた達は」
 声を荒げる白甲冑のエインヘリアルに、炎の形の剣を下げたシャイターンが告げる。
「そうかも知れませんが、ヘルガ殿! レリ様の決意を汚すような真似はできません!」
 エインヘリアルの切羽詰まった声に、シャイターンはひらひらと手を振って返した。色々と関係性に問題はあるようだが。
「『救済』、か。ある側面では誤りではないんだろうが、オレには傲慢に見える」
「……アンタらが目ェ付けんかったら、今回の事は誰にも気付かれんままやったかもしれん。救済かって、勿論必要やと思う」
 サイファ・クロード(零・e06460)、そして宝来・凛(鳳蝶・e23534)が口を開く。この二体のデウスエクスが向かう先、そこでは身内からの暴力に苦しむ女性を、選定と不幸な未来から逃れさせるべく、別のケルベロス達が戦っている。
「せやけど、その遣り口は認められん」
 きっぱりとした凛の言葉に、藤守・景臣(ウィスタリア・e00069)とルース・ボルドウィン(クラスファイブ・e03829)も頷いた。
「その提言……一時の幸福の為に何時迄続くとも知れぬ戦いに身を投じなければならないならば……僕は止めなければなりません」
「倒さねばならぬ女が目の前で増えるのは……あまり喜ばしい事ではない。病巣の根を摘むのも重責だ」
 選定を止めに向かった部隊の無事のため、この二体をここに釘付けにする。それが彼等の選んだ道だった。
「平和的解決が望めないなら、戦うしかないよな」
「援護に向かわれると向こうの方々が大変でしょうし、ここでご退場頂きましょう」
 サイファ、そしてフィルメリア・ミストレス(夜の一族・e39789)がそれぞれに得物を手にする。そして一方で。
「ヘルガ……連斬部隊、ヘルヴォールの部下で間違いないわね」
「ああ? なんだ、やられた部下が何か喋ったのか? それとも――」
 シフカ・ヴェルランド(血濡れの白鳥・e11532)の言葉に、ヘルガは見下すように微笑んだ。
「――我々に、大事なオトコをやられたとか?」
「あんたを殺せばあの女は悲しむかしら。……戦闘準備完了、行くわよ」
 シフカの瞳が、胸中が、復讐に燃える。
「どいてもらうぞ、ケルベロスども!!」
「貴方たちの……事情は、知らない……。とにかく、倒す……わ……」
 萌葱・菖蒲(月光症候群・e44656)も武装を展開し、敵に迫る。
「懺悔の用意はできているか! デウスエクス!」
 そして、村崎・優(未熟な妖刀使い・e61387)の刀が風を切り裂き、戦いの幕を切って落とした。

●救済とは
「貴様等がここに居るということは、向こうも……!」
 一刻も早く、と急くようにして、白百合の騎士が盾を振るう。込められた闘気はその動きに伴い、シールドの動く延長線上へと放たれた。
 ルースを狙ったそこに、割り込んだ景臣が体を以てそれを受ける。白百合の騎士の表情は兜で見えないが、しかし。『仲間のために』というその意思を、景臣は感じ取ることができた。
「救済とは言うが、戦士になるという事は、戦い続けねばならぬという事……」
 その先に続く、己の殺めた者達の血で染まる道を、一生歩まねばならない。そのことこそが彼の懸念。
「与えられた暴力を、今度は彼女達が与える側になる。それは、果たして『救済』と呼べるのでしょうか?」
 景臣の手から伸びた鎖が陣を描き、前衛を固める。
 その間に、ルースと菖蒲の放った攻撃を、騎士は盾を手に弾き飛ばす。
「貴様らのせいで、マコトさんは亡くなり、レナさんは幸せを取り戻せなくなった!」
 先日、同様の事件を担当した際の記憶を、優は未だ鮮明に覚えている。
「多くの命が失われ、沢山の人が悲しんでいる! 誰一人も救われていなくて何が『救済』!? そんなもの、たかが貴様らクズに都合の良い屁理屈だけだ!」
 怒りを乗せた咆哮と共に、合わされた一対の刀身が軋みを上げる。刀から滲み出る魂の残滓を、上手く利用できるようクロードに回す。そんな彼に、白百合の騎士は兜の下で問うた。
「ならば理不尽な暴力にただ耐え続けろと? 弱き者は自死せよと?」
 彼女もまたレリ王女配下の白百合。同じ苦しみを負った者。
「貴様達の言う『救済』は何だ! 永遠に来ないものをそう呼びたいなら、勝手に空に唱えていろ!」
 その声に、同じく先日の被害者を思い返し、サイファが目を細める。
「違う、そうじゃない。そうじゃないんだ」
 あの時の彼女もまた、こう考えて戦場に出向いているのだろうか。そんな思いを胸に、言葉を重ねる。
「アンタ達は、その『レリ様』の救済のみが善行だと盲信してる。
 自死を望むほど視野狭窄に陥った人に、死が救いと誑かすのは道義に反する……オレ達はそう言ってるんだ」
 そうしながら視線はもう一人、連斬部隊のヘルガの方へ。『聖杯』、どろりと歪んだ空気の層が、シャイターンの動きを阻害する。
「鎖陣渦巻き、闇は去り、後に残るは骸のみ……と」
 そこにシフカの仕掛け、大量の鎖が伸びていき、ドームを形成、敵の身体を包み込んだ。内部ではさらに鎖が対象を襲う。逃れるのは困難な技だ。
 そこで悠然と前に出たルースは、白百合の騎士に向けて喰霊刀を振り下ろす。無造作なそれは呪詛を纏い、純白の鎧を黒く蝕んでいく。
「件の女の事は知らぬが、俺はアンタらの事こそ捨て置けない。救済と言いながら重すぎる見返りを要求するのは何故だ?」
 盾の上からもう一撃、そう振り上げた、そこで。
「そのケチ臭さが気に入らぬ。まるで下等な神気取りではないか」
「ふん……そろそろ良いか?」
 鎖のドームに赤光が走る。熱と共にそれを割り開いて、ヘルガが姿を現した。
「……チッ」
 無傷か。確かに手ごたえはなかったが、そうシフカが歯噛みする。そんな様子を視線で一撫でして、その女は自分の肉体を見せつけるように前へと進み出た。
「続きはないのか、と問うているんだが」
「ヘルガ殿……!」
 咎めるような白百合の騎士を片手で制し、彼女は続ける。
「構わない。好きなだけ吠えろ。それでお前達は気分良く戦えるのだろう?」
 タールの翼がどろりと広がり、仮面で半分隠れた瞳が、喜悦に歪んで弧を描いた。
「それを踏みにじる瞬間が、私は堪らなく好きなんだ」
「……アンタじゃ、話にならないみたいだな」
 立場が違い過ぎる。定命の者とデウスエクス。ケルベロスと、シャイターン。邪な気配にサイファの表情が強張る。だからこそ、告げるべき言葉。
「部外者が出しゃばるな」
「お前達みたいな奴は、絶対に許せない、ブッた斬ってやる!」
「……Okay, let's do this!」
 菖蒲が再度鎖陣を張り巡らせる中、優が仕掛ける。牙零天伐・電煌之太刀、神速の突きは、しかし敵の褐色の肌を一筋刻むのみに終わった。
 哄笑と共に、ヘルガの翼が打ち振るわれる。じっとりと重い黒の香気が広がって、次の瞬間それらが瞬間的に炎上した。小規模な爆発、業火がケルベロス達を炙る。その最前列で、凛はその攻撃に耐えていた。
 これが、精鋭。その力量を文字通り肌で感じながら、凛はさらに決意を硬くする。相容れないとはいえ信念らしきものを持った白百合の騎士と違い、これは正しく獣。これを解き放てば、別動隊も一たまりもないだろう。
 死を以て報われる――選定に至る女性に、それ以外の道へと繋げられる可能性が、僅でも残るなら。
「くっ……!」
 火勢を弱めるべくサークリットチェインを展開、多重の守護陣を駆使しながら、一同はヘルガを軸とする敵部隊との戦闘を開始した。

●劣勢
 フィルメリアの降らせた癒しの雨が、揺らめく炎を反射する。そんな中でちらちらと揺らぐ光を、菖蒲の銀の眼が映し出す。
 援護に回った彼女の力を借りて、シフカの剣閃とサイファの掌打が双方向に走る。狙いはそれぞれ白百合の騎士とヘルガだ。分断を図ったその攻撃に、ルースが続いた。鎚を用いた重い一撃が鎧をひしゃげさせ、さらに蹴り飛ばして反撃を防ぐ。
 ケルベロス達が最初に仕留めにかかったのは、当然白百合の騎士の側だった。優の斬撃を受けながらも、彼女はまた。
「ヘルガ殿、後ろへ」
「ああ、任せる」
 ヘルガを狙った攻撃さえもその身で引き受ける。
(「必死なんは、分かるけど」)
 オーラで自らを癒す白百合の騎士に相対し、凛もまた気を用いて傷を塞いでいく。
「手を貸しましょう」
 淡い藤色の瞳を揺らめかせて、景臣もまた彩色のオーラで凛を包む。
 敵と味方で単純な数の差もあるが、当然、援護がなければ――。
「ぐう……ッ!」
 最初に膝をついたのは、白百合の騎士だった。
「だあああああっ!!」
 振り抜かれた優のブーツから星が流れ、エインヘリアルに最後の一撃を加えた。
 優が手応えを感じた瞬間、それを待っていたようにヘルガがその傍らに至る。フランベルジェの揺らめく刀身、走るそれを。
「――ッ!」
 凛が日本刀で受け止める。だがその刀身を舐めるように蠢く刃が、再度その舌を伸ばした。
 頭に浮かぶのは、ここではない場所で戦う仲間と、ある兄妹のこと。どうか、少しでも良い行末を――。
 祈りと共に、連続で振るわれる刃を、抱き留めるようにして受け止める。
「ほう?」
 倒れいく彼女から、敵が刃を引き離す、その隙に、シフカの手から鎖が走った。
 殺技弐式『鎖陣・ドRoお巳』。再度、鎖が敵の周りでドームを作っていく。
「それはさっき防いでやったろ」
「さっきは、ね」
 呆れるようなヘルガの声に、シフカが不敵に返す。足の止まったそこを襲うのは、先程の鎖だけではなく。
「命の行動原理はふたつ。「愛」と「恐怖」だ」
 VIXI-I。鋭く突き込まれたルースの刀身がシャイターンの胴を貫く。ついに、ヘルガの表情が歪んだ。
「――ははっ! やるじゃあないか!」
 だがすぐに、それは凶暴な笑みにとって代わった。ディフェンダー位置に移動したルースを、赤い剣閃が襲う。喰霊斬りを叩き込み、回復と攻撃を同時に行うことで対抗するが、限界はすぐに訪れた。
 舌打ちし、赤に沈むルースごと、あの炎の爆発が巻き起こる。
 広範囲を焼くそれを、身体で抑え込んでいた景臣もまた膝を付く。斬撃を受け流すことでダメージを押さえていた彼も、これが相手では分が悪いか。
 じわじわと、だが急速に追い立てられていく状況に、サイファが焦れたように口を開いた。
「なぁ、アンタらの勧誘でそっちに行った人たちは、望んで戦いに赴いてんの?」
「知らんな。あの白兜を外して確かめてやれ」
 わかっていたことだが、時間稼ぎにもならない。放つ雷で敵を打ち据える。狙いすましたその一撃の光に紛れ、菖蒲の隠し持っていた小型リボルバーが火を吹いた。
 ぱっ、と、敵の肩口に穴が開く。
「……惜しかったな」
 代わりに見舞われた赤い炎に巻かれ、菖蒲もまた戦闘不能に陥った。

●任務完了
 耐えに耐えた、と言って良いだろう。ヘルガの攻撃を凌ぎ続けたケルベロス達だが、現状は明らかに劣勢。菖蒲が倒れたことにより、事前に定めた撤退への境界線を、ついに割ってしまう。
「とはいえ、この状況は――」
「ああ、よくないな」
 敵に悟らせぬよう、フィルメリアとサイファが頷き合う。退くと決めてはみたが、倒れた仲間を救助し、逃げる間、敵は黙っているだろうか。そして、この辺りは別動隊の動きの兼ね合いもある。
 どうだ、と言外に問うサイファに、フィルメリアが首を横に振って応えた。通信機は未だに不通。
 そして状況を切り上げるタイミングを探す間にも、赤い刃が踊ってシフカを追い詰める。
「心ここに在らず、か? 余裕だな」
「――ッ!」
 振り上げられた刀身、波打つそれが落ちてくる。まずい、と思うまでもない。もう一人倒れれば撤退すらもおぼつかなくなるだろう。そのタイミングで。
「させないわ!」
 突き出されたセリアの槍が、波打つ刀身を絡めとった。
「チッ、貴様等……!」
 別動隊が、ついに到着。その様子を見たヘルガが苛立ちを露にする。セリア達が現れたのならば、救うべき対象は、もはや。
「皆にこれ以上手は触れさせない」
「待たせた。あまり大丈夫……っぽい感じじゃなさそうだな」
 靜眞と慶もまた、前衛達の前に立ち、ヘルガから仲間を隠すようにする。
「忌々しい……!」
 状況の変化にヘルガが舌打ちする。さらに駆け付ける灼熱者達、こちらも、あちらも、もはや贅沢を言っていられる状況ではないだろう。
「興が削がれた。仕切り直しだ」
「勝手な事を言わないで」
 救済に挑み、セリア等は自らの信念を貫き通すべく戦ってきた。ここでみすみす敵を逃がすわけにはいかない、が。
「黙れ、互いに万全な状態でやってやろうと言うんだ、感謝してほしいくらいだが?」
 タールの翼を威嚇するように広げ、じっとりとした熱風と共にヘルガが言葉を絞り出す。救済自体に大して興味がないとはいえ、救出対象を失った彼女はメンツが潰れた格好だ。だがメンツのためにここでの殲滅に身を投じるよりは、叱責を受けようとも主のための剣である事を、彼女は選んだ。
 退こうとするヘルガに、傷を押さえながらシフカが言葉を投げる。
「ヘルヴォールに伝えなさい。私は強くなったわ、もし逢えたら、その時は――」
「黙れ雌犬。私にすら勝てぬ者が、でかい口を叩くな」
 忌々し気にそう言い残し、ヘルガは翼を翻した。
「次までに、せいぜい腕を磨いておけ、ケルベロスども」

「とてつもない……敵、だった……」
 撤退に成功したその場所で、菖蒲がタバコの形をした菓子を唇に乗せる。細い溜息。
「……そか、説得には成功したんやな?」
 救出に入ってくれた仲間達の報告を受け、凛は口元を綻ばせた。彼らがあのヘルガを足止めする間に、別動隊はその役目を完璧に果たしたのだ。
 狙い通りの結果。これこそが勝利だというべきだろう。
 ……それでも。
「……連斬部隊、次こそは、必ず……!」
 苦い思いを胸に、シフカは強く拳を握りしめた。仇敵、ヘルヴォールの影に近付きつつある。その気配を感じながら。

作者:つじ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年10月5日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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