死滅回遊

作者:犬塚ひなこ

●死の回遊魚
「お行きなさい、ブルチャーレ・パラミータ、メラン・テュンノス」
 昏い夜の狭間に女の声が響く。
 名を呼ばれたそれらは魚の姿をしており空中をゆらゆらと彷徨っていた。赤い翼が夜風に揺れる最中、その死神は高台から見える街を指差す。
「さあ、あなたたちだけであの街を襲ってみなさい。ディープディープブルーファングの戦闘能力を自らの力としてみせるのです」
 眼下には夜の灯が燈る街の光が見えていた。
 そして、二体の下級死神は赤い翼の死神が命じた通りに街へ向かい――。

●夜闇を泳ぐもの
 そしてその夜、ちいさな街が死の運命に巻き込まれた。
 それが二体の魚型の死神に襲撃される未来なのだと語り、雨森・リルリカ(花雫のヘリオライダー・en0030)は今はまだ起こっていない事件を阻止して欲しいと願った。
「事件を起こすのは、ディープディープブルーファングを使役していた赤い翼の死神さんみたいです。きっと以前の敵を量産していた海底基地が破壊されてしまったので、作戦を変更したのだと思います」
 今回の敵となる二体の魚型の死神はカツオ型とマグロ型。
 それらもまた下級死神ではあるが戦闘力がかなり強化されているようだ。二体は全長五メートル程で、空中を泳ぐように移動する。市街地に到着次第、住民の虐殺を行うと予測されるのでその前に対峙して戦いを挑まなくてはならない。
「ディープディープブルーファング事件と、今回の事件がどう関係しているかはまだわかりません……。でもでも、やるべきことは変わりません」
 魚型死神達を撃破して人々を守って欲しいと伝え、リルリカは詳しい状況を語っていく。

 敵が現れるのは高台の一角。
 標的は街に続く坂道に添うように動いているので、ケルベロス達は坂道の途中で迎え撃てばいい。相手の気を引き、攻撃さえ仕掛ければ逃げることはないので後は負けないように戦うだけだ。
 魚型死神は突進攻撃を基本とする。
 これに加えて、ブルチャーレ・パラミータは卵のようなものを発射する産卵攻撃を行い、メラン・テュンノスは、腹部から内臓を捻りだしたような触手を出して攻撃する触手攻撃を行う。どちらも攻撃力は高く、油断していると敗北する可能性もある。
 どうか気を付けてください、と告げたリルリカはふと考え込んだ。ディープディープブルーファング、そしてブルチャーレ・パラミータとメラン・テュンノス。海底基地の破壊に成功したことで死神の作戦にも打撃を与えられたのだろうが、三体の繋がりはどうなっているのだろうか。
 どれも魚型の下級死神で戦闘力が強化されていることから、敵の目的は強化だったのかもしれないと話した少女は顔をあげ、仲間達を見つめる。
「まだ他にも目的がありそうな気がして不気味ではあるのですけれど……まずは目の前の被害を阻止することからです。皆さま、どうかよろしくおねがいします」
 何にせよ、人々が襲われる未来が解っていて放っておくことはできない。
 敵を倒すことが何かに繋がると信じて、リルリカは戦いに赴く番犬達を送り出した。


参加者
神宮時・あお(囚われの心・e04014)
黒江・カルナ(夜想・e04859)
ノチユ・エテルニタ(夜に啼けども・e22615)
ルト・ファルーク(千一夜の紡ぎ手・e28924)
サヴァ・シメオン(翡礫・e35851)
風鈴・羽菜(シャドウエルフの巫術士・e39832)
遠野・姫貴(魔ヲ狩ル者・e46131)
名無・九八一(最初の一歩・e58316)

■リプレイ

●揺らめく殺意
 街の灯、それは命の光。
 眼下に見える夜の街を一瞥し、黒江・カルナ(夜想・e04859)は思いを言葉にする。
「温かなものが息づく其処に、暗い影は、冷たい死の遣いは通さない」
 カルナが見据える先には空中を漂うようにゆらゆらと泳ぐ死神怪魚の姿があった。神宮時・あお(囚われの心・e04014)は掌を強く握り締め、仲間達に目配せを送る。
(「……サメの、次は、マグロと、カツオ、ですか」)
 あおが考えを巡らせる中、風鈴・羽菜(シャドウエルフの巫術士・e39832)は現れた二体の怪魚を見比べた。
「えっと、どちらがマグロさんでどちらがカツオさんなのでしょうか?」
 羽菜が戸惑う様子に気付いた名無・九八一(最初の一歩・e58316)は指先をメラン・テュンノス――最初に倒すと仲間内で決めたマグロ型死神を指差す。
 九八一の示した先を見遣り、シャーマンズゴーストのシャゴくんが身構えた。敵もケルベロス達の存在に気付いたらしく、何やら此方に狙いを定めているようだ。
 遠野・姫貴(魔ヲ狩ル者・e46131)はテレビウムのシュウ丸に気を付けるよう告げ、改めて敵の姿を確認していく。
「へぇ……そっちがマグロか。死神の討伐は初めてだな」
「此処は回遊魚には縁のない場所だろ」
 姫貴に続き、ノチユ・エテルニタ(夜に啼けども・e22615)が静かな声色で敵に語り掛ける。さっさとお帰り願おうか、とノチユが告げた言葉は届いていないのか、ブルチャーレ・パラミータが攻撃を行う素振りを見せた。
「気を付けてください、来ます!」
 サヴァ・シメオン(翡礫・e35851)が呼びかけた刹那、二体の死神が同時に動く。
 すぐさまサヴァがカツオ型の敵の前に陣取り、九八一がマグロ型の攻撃を受け止めに駆ける。衝撃の強さから、敵は現れはじめた当初よりも力があがっていることが分かった。サルベージという手段があって尚、死神がこのような強化を目指すのは戦力が必要になる出来事が起きているのだろうか。
 サヴァが疑問を抱く最中、ルト・ファルーク(千一夜の紡ぎ手・e28924)は腰に携えたジャンビーアを抜き放ち、夜空を泳ぐ死神を睨み付ける。
「言葉が通じるかわからない相手にとやかく言うつもりはないけれど……これだけは言わせてもらう」
 ルトは短剣を鍵のように回転させて異世界へと繋がる扉を開いた。扉から溢れ出す地獄の業火を解き放ち、ルトは真っ直ぐに告げる。
「たとえお前達がどんな手を打ってきたのだとしても、好き勝手させるつもりはない」
 街の明かりも、人の命の灯火も消させはしない。
 その言葉を聞いたカルナは強く身構え、首を縦に振ったあおも敵を瞳に映す。
 そして、夜の狭間で戦いは始まりを迎える。

●守るべきもの
 空を泳ぐ魚、とだけ聞けばロマンチックに思える。
「それだけなら良かったかもしれないけどな。街一つ壊す気でいるなら、話は別だ」
 ノチユは目の前に現れた理想とは掛け離れたものに肩を竦め、得物を構えた。砲撃形態に変化させた竜槌が一瞬で振り下ろされ、メラン・テュンノスを穿つ。
 更に姫貴が黒液を鋭い槍の如く伸ばし、あおが轟竜の砲撃を重ねた。しかし、敵はノチユ達の連続攻撃をものともしていない様子だ。
 羽菜は相手の手強さを感じ取り、九尾扇を掲げて癒しの風を起こした。
「あっちがマグロですね。切り身や調理された状態では見たことがあるのですがお魚の状態で見たことはありませんでした」
 何処かのんびりとした口調で羽菜は改めて敵を認識した。周囲を吹き抜ける風は守りへと変わり、仲間達の力となっていく。
 其処に攻撃の機を見出したカルナが地を蹴り、おいで、と囁いた。そして、喚ばれ出づるは黒猫の幻影。
「これより先は、立入禁止――」
 平和に生きる人々の元に、無情なる死を振り撒く事は許しません。
 敵に告げると同時に喚ばれた黒猫が敵の影に飛び込む。それはまるで獲物を狩る狩猟者のよう。敵の動きを見事に封じたカルナの黒猫に賞賛の視線を送り、サヴァは腕を天に向けて力を紡ぐ。
 死神の狙いは依然、謎のままだ。けれど、と少年は首を横に振る。
「どのような事情にしても相手の戦力を潰すのが早いですね。街を守りませんと」
 そして、自分が皆の盾になると心に決めたサヴァは浮遊する光盾を顕現させた。守護の意志に同調するかのように光が強く明滅する。
 ルトは仲間に守りと癒しを任せ、自らは攻撃を続ける決意を固めた。
 だが、そのとき。ブルチャーレ・パラミータとメラン・テュンノスが奇妙な動きをしたかと思うと、産卵と触手攻撃を行ってきた。その狙いはルトとノチユに其々向けられているようだ。避けられない、とルトが感じた次の瞬間、九八一が地面を蹴る。
「僕が行きます」
 短い言葉ではあったが、其処には仲間を守るという意思が感じられた。
 九八一が触手を受け止め、同時にシャゴくんが卵を弾き返す。更に其処から九八一は高く飛び上がり、虹を纏う一閃で敵を引き付けた。シャゴくんは衝撃を受けた主に祈りを捧げ、癒しを施す。
 あおは仲間の素早い対応と攻勢に頼もしさのような感情を抱き、自分も追撃に入る。されど、今しがた目にした敵の攻撃は奇妙過ぎた。
 受けるのは遠慮したいどころか、見たくもないと感じられるほどだ。
(「……見た目の、インパクトの、割に、なかなか、遠慮したい、攻撃を、して、くる、のですね……」)
 ふるふると首を振ったあおは指先を敵に差し向け、幻影竜を解き放つ。それに合わせて姫貴が黒影弾を撃ち、シュウ丸に自分を癒させていく。
「おらおら! ちったぁ楽しませてくれよな!」
 シュウ丸は戦いの中で乱暴な言葉遣いになる姫貴に心配そうな目を向けたが、主を支える為に懸命に力を揮い続けた。
 攻撃は今、メラン・テュンノスに集中している。
 ルトは敵達がただ目の前の存在を壊そうとするだけのものだと悟りながらも、己の思いをふたたび言の葉に乗せてゆく。
「お前達に伝わらなくても何度だって宣言してやる。みんなが願う当たり前の日常を――眩く輝くその未来を、そう簡単に奪えるとは思うなよ!」
 竜槌を振りあげ、一瞬で敵の眼前に跳躍したルトは勢いよく一撃を叩き込んだ。そうして、翼を広げたルトは身を翻して敵前から素早く後退する。
 一撃によってメラン・テュンノスが大きく揺らいだ隙を狙い、ノチユは空いた射線に腕を伸ばした。猟犬めいた勢いで宙を翔ける鎖は敵を絡め取る。
「随分と気味の悪い攻撃だったな。……ちっ、いちいち吐き気がする。いいか、これ以上は動くなよ」
 嫌悪感を隠さぬまま、ノチユは敵の動きを阻んだ。彼の漆黒の髪はまるで夜空に見える星屑めいた煌めきを宿し、戦いの中で仄かに揺らぐ。
 其処にカルナが更なる縛鎖を重ね、マグロ型死神の動作を封じ込めた。
「平穏なる夜を、護り抜きましょう。悪夢はここで、阻みます」
 橙色の瞳は真っ直ぐに標的に向けられている。繰り出されるカルナの一閃は敵を確実に絡め取り、着実に敵の力を削っている。
 その間も突進攻撃がブルチャーレ・パラミータを引き付けている九八一を襲ったが、すぐに羽菜が魔法の木の葉を纏わせて援護に入った。
「回復は任せてくださいね」
 羽菜は誰が痛みを被ってもすぐに癒すと話し、しっかりと身構える。
 サヴァも小型治療無人機を戦場に飛ばすことで皆の盾を作り、敵の動きを注視していた。そして、メラン・テュンノスの触手があおに向けられていると気付いたサヴァはひといきに駆ける。
「やらせはしません!」
 あおの前に立ち塞がったサヴァは触手に腕を絡め取られた。身動きが取れぬ状態にさせられたが、すぐにあおが動く。夢に沈む天竺葵の刃に呪詛をのせ、振り下ろした一閃がサヴァに絡み付く触手を切り落とした。
(「……守って、貰ってばかり、じゃ、いけない、から……」)
 仲間が傷付く様は見たくない、というように首を振ったあおは身構え直す。
 九八一は何故だか言葉を紡がぬ少女の抱く想いが理解できた気がして、同意を示すように軽く肩を竦めた。たとえこの場に集った誰とも面識がなくとも、今は共に戦う仲間に間違いはない。
 シャゴくんがサヴァの癒しを行う中、九八一は精神を極限まで集中させていく。
 瞬刻、狙い澄ましたようにメラン・テュンノスの周囲に爆発が巻き起こった。九八一が起こした爆炎に敵が傾ぐ。チャンスが訪れたと感じたのか、シュウ丸が姫貴の腕をそっと引っ張って呼んだ。
「そうだな、シュウ丸。やっちまうか!」
 テレビウムが凶器を構えて駆ける背を追い、姫貴も地面を強く蹴る。そうして、シュウ丸が放った鋭い一撃に重なるようにして全て喰らい尽くさんとするブラックスライムが敵に襲い掛かった。
 されど、撃破までは後少しが足りない。即座に現状を把握したルトは今にも地に落ちそうなメラン・テュンノスを見据え、もう一度翼を広げた。
「空を自由に駆け巡るのはお前らだけの特権じゃない。覚悟すると良いぜ!」
 愚直に突き進む死神には、目にものを。
 飛びあがったルトは空を舞う死神の頭上へと一気に回り込んだ。そして、振り下ろした竜槌は死神を真正面から穿ち、超重の凍結撃となる。
 一瞬後。メラン・テュンノスは地上に叩きつけられ、二度と動かなくなった。

●怪魚の最期
 これで残るはブルチャーレ・パラミータだけ。
 相手はほとんど無傷ではあるが、これまで九八一が果敢に引き付けてくれていた。癒しは羽菜が、守りはサヴァが担っていた為、仲間達に大事はない。
 ノチユは忌み嫌う死神との戦いに心底うんざりしている様子だったが、決して気は抜いていなかった。
「似ても焼いても食えない雑魚だ。相手をするのも飽きてきた」
 お前に語る噺なんてないが、と呟いたノチユは過ぎ去りし英雄譚に魔力を込めた。御伽噺は怨敵を斃せと囁き、まるで呪いの如く標的に絡み付く。
 カルナは銃口を差し向け、激しい光弾を解き放った。羽菜もまだ癒しは要らないと察し、熾炎でブルチャーレ・パラミータを焼き焦がす。
「火で炙ったり切り身にしたりと調理しているみたいですね」
「食えない奴だけどな!」
 思わず零れた感想めいた羽菜の言葉に姫貴が可笑しそうに口の端をあげた。そして、姫貴は黒影の弾丸を次々と撃ち込んでゆく。
 対する敵は勢いに乗せた突進でルトを狙った。だが、守護の意志を持ち続けるサヴァがすぐさま両者の間に割り込む。
「……! まだまだ、です!」
 鋭い衝撃がサヴァの身体に巡ったが、彼は懸命に耐えてみせた。自らに盾の癒しを施したサヴァに九八一が光輝く粒子を放ち、シャゴくんも祈りを捧げる。
 あおは護りを担い続けてくれている仲間を信頼しようと決め、自分は敵を倒す為の攻勢を崩さぬべきだと考える。
(「……魚介系は、海に、お帰り、願いましょう、か」)
 敵をしっかりと見つめたあおは、歌声に魔力を乗せる。響くのは地平線の音色。有は無に、無は有へと帰す円環の調べは死神を最果ての終焉へ導いていく。
 その音色が終わるよりも先にルトが追撃を行うべく動いた。
「お前達死神には、昏い海の底へと帰ってもらうぜ」
 刃を鍵として開いた門から迸るのは地獄の業火。それは燃え続ける決意の証。燃え尽きろ、と言葉にしたルトの思いに呼応した焔は全てを貫く一本の槍となって死神を真正面から貫いた。
 其処に続いたサヴァは光の翼を広げて戦場を翔ける。
「今ですね! これでっ!」
「ああ、とっとと引導を渡してやろう」
 サヴァの声にノチユが頷きを返し、地獄の炎を鎖に纏わせた。次の瞬間、光の軌跡となったサヴァの一閃に重なる形で炎鎖が迸る。
 光と火に包まれたブルチャーレ・パラミータが暴れる様は、死の淵に追い詰められているように見えた。羽菜が固唾を飲んでその姿を見つめる傍ら、あおと姫貴は次が最期を齎す一撃になると悟る。
 そう感じていたのはカルナも同じであり、ゆっくりと呼吸を整えた。傍に黒猫の幻影を呼び寄せたカルナは指先を敵に向ける。
「貴方達は冥府へと、その死を以てお帰りなさい――そして、お休みなさい」
 カルナが落とした言葉が紡がれ終わった、刹那。
 影を縫い止めるように飛び掛かった黒猫は気儘に戯れるかのように敵を翻弄し、やがて死神怪魚は力なく地に落ちた。

●夜空と赤い翼の死神
 呆気ない最期を迎えた死神は跡形もなく消え去った。
 後に残るのは夜の静けさのみ。戦いが完全に終結したのだと悟り、姫貴は小さく息を吐いた。傍らのシュウ丸も凶器を仕舞い、勝利を喜んでいる様子だ。
「下級死神……ね。あれで下級なら、上級はもっと強いんだろうな」
 姫貴が呟く傍ら、九八一はシャゴくんに腕を伸ばし、健闘を称えるようにして数度その頭に触れた。ノチユは辺りを見渡し、酷い怪我をした仲間が居ないかを確認する。
「手強かったが、大丈夫だったようだな」
 安堵めいた思いを抱いたノチユだったが、一度だけ死神達が漂っていた空中に目を向ける。胸の奥には死神に抱く燻った思いが未だ宿っていた。
 サヴァはノチユの様子が気にかかったが、敢えて声を掛けないことにする。奇妙な動きをする敵に思うことは其々。サヴァとて気にかかることは多かったが、今は仲間と共に掴んだ勝利を喜ぶべき時だ。
「何にしても今回の事件はこれで解決です!」
「これでひとまずは一件落着ですね」
 サヴァの言葉に答えた羽菜は特に戦闘の被害がないことを確かめて微笑む。
 ルトはそっと頷き、視線を夜空に巡らせた。
 眼下には街の灯、頭上には星のちいさな煌めき。何気ない景色ではあるがルトは星空が綺麗だと感じた。
「今夜の星空と、それから……誰かの大切な夜を守れたかな」
 死神による虐殺の未来を防いだことで、きっと大切な人を喪った自分のような悲劇は起こらずに済んだ。ルトは星の輝きを瞳に映し込み、拳を強く握った。
 カルナは共に戦った仲間達を見つめた後、ルトに倣って夜空を振り仰ぐ。
「裏に潜む影は未だ掴めずとも、今は一つ一確実に……そしてきっと、全てを白日の下に晒す機へと繋ぎましょう」
 決意の言の葉を紡いだカルナに、あおがちいさな頷きを返す。
 そして、あおは胸元を押さえた。
(「……赤い、翼の、死神……。……なんだか、胸が、きゅ、っとなるのは、なぜ、なのでしょう……」)
 辺りは穏やかだったが、妙な胸騒ぎがあおの裡に巡っている。
 夜空の星を見つめる少女は未だ知る由も無かった。いずれ自らが赤い翼の死神と対峙することになるという、そう遠くない未来を――。

作者:犬塚ひなこ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年10月1日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 6/感動した 1/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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