●妨害への襲撃
「やはり邪魔をしに現れましたわね……」
下劣なケルベロス共、とくるりと毛先踊るツインテールを揺らし白い鎧纏った女は紡ぐ。
エインヘリアルであるその女の名は――魔謀のミュゲット。
第四王女レリの右腕を自称するミュゲットは、勝気な緑の瞳を眇めふんと鼻を鳴らし傍らの者へと視線向けた。
「行きますわよ。ケルベロスにより仲間が傷つくことをレリ王女は厭いますもの」
その言葉を受けたシャイターンの女ははいと返事をし、これから向かう方向を見定める。
「ケルベロス共を討ち取って、わたくしはレリ王女に……レリ様に褒めていただくんだから」
ふふふと幸せそうな、恍惚の笑みを浮かべミュゲットは得物である銃を両の手に。
そしてビルの間を跳躍する。ビル上を軽やかに進み、向かうのは仲間の元。
敵対するケルベロス達の手より、仲間を救うために。
●予知
シャイターンの選定によりエインヘリアルが生み出される――そんな事件が起こっているのは知っていると思うけれど、と夜浪・イチ(蘇芳のヘリオライダー・en0047)は集まったケルベロス達へと紡いだ。
不幸な女性の前に現れ、その不幸の原因だった男性を殺す事と引き換えにエインヘリアルとなる事を受け入れさせようとするシャイターン。
この事件は既に多数起こっており、今回もその事件のひとつを発端とするのだが――今回はそれだけではないのだという。
そこでチームを二つ作って対する事に。この件に共に対処するケルベロスはグアンさんが募ってくれているとイチは続け彼の方へ視線向けると、手を挙げて応えてくれた。
「グアンさんの方では、勇者選定の件への対応。俺の方は、勇者選定の場に助けに入ろうとしている敵の相手だね」
だから、気になる方の話を聞いてほしいと言って、イチは話を続ける。
「勇者選定事件への敵の援護は精鋭……敵の幹部と思われる相手がやってくるんだ」
だからその襲撃を阻止すると共に、可能ならばその幹部とみられる敵の撃破をお願いしたいとイチは言う。
現れる敵は、二体。
エインヘリアルとシャイターンだ。
幹部とみられるエインヘリアルは武器として銃を持っている。シャイターンは杖を。
「勇者選定に対する皆が向かったのを見て、この二体は戦場に向かい襲撃をかける」
けれど、駆けつけるルートは予知で判明しているのだからあとは、とイチは皆に視線向けた。
「こちらができるのは迎撃。二体が進むルート上に隠れ、現れると同時に迎え撃つ、っていうのが作戦。待ち伏せにいい場所があるんだ」
そこは、とイチは示す。
広げた地図の上には勇者選定の場所が記され、赤い線で引かれている。
「勇者選定の場所はビルの屋上。ここから二体は見ていて……こういうルートでビルの間を上手にわたってやってくる」
その、赤い線をイチは指でなぞる。それが敵の通る道筋。
だから、迎え撃つのはここと示された場所はビルの屋上だ。
屋上にあがる出入口の影、それから給水塔の裏側は二体の進路から死角となる。
そこに隠れ、二体がこのビルの屋上に降りた時に姿を現せば良いとイチは示した。
「ここは勇者選定の戦場から二分程度で行き来できる場所だよ。おそらく、二体との戦いの口火斬るのは、勇者選定の方で戦闘が始まった三分後くらいかな」
敵は幹部であり強敵。撃破は難しいだろうが最低限、勇者選定の事件が解決するまで足止めできればそれで十分。
けれど、と。言葉は続く。
「勇者選定の皆が素早く解決し、合流できれば大きな勝機になる。逆に、こっちが解決前に負けてしまうと勇者選定に対応している皆が窮地に陥る、ってこと」
それはしっかり、覚えておいてほしいとイチは言う。
「戦いは時の運も含めてだから、どう転がるかはわからない。その時の状況を見て動いてほしいんだ」
こちらは、増援させぬ為に足止めをするるのだが、強敵相手であり救援を待つ身でもある。
長丁場の戦いになる可能性ももちろんあるのだ。
「勝機を得る為にも、耐え忍ばなきゃいけない。まずは最低限、仲間を守る戦いをしてほしい」
皆なら出来ると信じているから、とイチはケルベロス達に託したのだった。
参加者 | |
---|---|
平・和(平和を愛する脳筋哲学徒・e00547) |
春日・いぶき(遊具箱・e00678) |
ミルフィ・ホワイトラヴィット(ナイトオブホワイトラビット・e01584) |
アトリ・セトリ(エアリーレイダー・e21602) |
ユーシス・ボールドウィン(夜霧の竜語魔導士・e32288) |
湊弐・響(真鍮の戦闘支援妖精・e37129) |
ココ・チロル(箒星・e41772) |
リリエッタ・スノウ(小さな復讐鬼・e63102) |
●待ち伏せ
手にした携帯端末の画面には圏外の表示。それを確認した春日・いぶき(遊具箱・e00678)はダメですかと小さく零した。
選定に対している仲間達から合流の場合は連絡が入るのだがそれを受けられそうにない。
ならば、ここで出来る限り足止めをするだけ。
息顰め、周囲を伺っていると小さく響いてくる足音がふたつ。
「早く行かなきゃ倒されてしまいますわ」
そして女の声が響き、合図となった。
いぶきが死角より軽やかに踏み込む。けれどミュゲットにナイフの軌道をかわされる。
けれど、それでいいのだ。今は足を止める事が何よりなのだから。
「っ、ケルベロス!?」
「この先に、友人がいるんですよ。彼も今、頑張ってるんです」
それが何ですのとミュゲットはいぶかしむ。わたくしには関係無い事と。
「貴方の王女が部下を思うように、僕は、友人を思う」
「……行かせないという事ですのね」
そうです、といぶきはやわらかに笑って見せる。
「主張が対立したならば、戦うしかありませんよね。互いの目的のために、全力で参りましょうか」
互いに構えるのは瞬間的な事で、すぐにミュゲット達も対応してくる。
アトリ・セトリ(エアリーレイダー・e21602)も臨戦態勢を取りながら猟犬の鎖を躍らせた。アトリのウイングキャット、キヌサヤも翼での羽ばたきを仲間達へ。
「ふっふーん! ここを通りたくば、ボクたちを倒していけー!」
平・和(平和を愛する脳筋哲学徒・e00547)が向かったのは魔法兵だ。その足に流星の煌めきと重力の力を乗せて飛び蹴りを。
その瞬間、和の瞳にはミュゲットが映る。
(「足止めをすればいいとの事だが……」)
別にアレを倒してしまっても構わんのだろう? と和はドヤ顔で思う。
「バレ、絶対通さないよ!」
ココ・チロル(箒星・e41772)は傍らのライドキャリバー、バレへと声かけつつエクトプラズムの霊弾を生み放つ。バレはそれに続いて炎を纏い突進をかける。
「不幸な女性を救うねえ……」
結局は、自分達の戦力増強のための詭弁でしょうけどと、ユーシス・ボールドウィン(夜霧の竜語魔導士・e32288)は狙いを魔法兵へ。
最初に紡いだのは己のみ扱える竜語魔法。
「理に背く者共よ……大地より飛び立つ雷竜に穿たれるがよい!」
魔法兵の足元から雷纏うドラゴンの幻影が飛び上がり、そのまま昇りゆく。
「貴女が、魔謀のミュゲットですわね……生憎ですが……貴女達を通す訳には参りませんわ……!」
敵の姿を見据えながら、ミルフィ・ホワイトラヴィット(ナイトオブホワイトラビット・e01584)は猟犬の鎖を地に展開し仲間を守護する魔法陣を。
「強きを挫き弱きを助く、やり方こそ歪でも、騎士道精神に偽りは無いのでしょう」
けれど、と湊弐・響(真鍮の戦闘支援妖精・e37129)は思う。
「力無き者を守りたい、その気持ちこそ同じなのに……もどかしいですわ」
そして今、響は仲間達を守る為に縛霊手より紙兵を放ち阻害への耐性を高めていく。
「絶対に向こうの邪魔はさせないよ。ここでやっつけてやる!」
さらにリリエッタ・スノウ(小さな復讐鬼・e63102)もオウガメタルの力を借りていた。光り輝くオウガ粒子をリリエッタより前に立つ仲間達へ。
戦いやすいように、ケルベロス達は整えていく。相手は二体だが決して油断できる相手ではないと知っているからだ。
「只の早業じゃないよ」
今にわかる、とアトリは庇いに入った直後の魔法兵へと攻撃向ける。
簒奪者の鎌へと纏いつく影が紫黒の刃を形成する。踏み込んで、斬りつけるのは一瞬。そこから緩やかに浸食する影は賦活力を奪い苛むもの。
「生とは、煌めいてこそ」
血に触れて溶ける硝子の粉塵が舞う。いぶき自身を含めた前列の上にきらきらと落ちる。そして、それは守りの力だ。
オウガメタルを纏った攻撃を魔法兵へと和は放つのだが、魔法兵はそれを受けてもまだ態勢崩す様子はない。
(「レリ王女の……味方を助ける姿勢には、共感を覚えなくもないですが……こちらも仲間や一般の方の為……増援を許す訳には参りませんわ…」)
ミルフィはアームドフォートを魔法兵へと向けた。主砲よりの攻撃、その衝撃は痺れ残し動きの精度を落とすもの。
痛みが募っているのだろう。魔法兵は自らを癒し守り固めていく。
そこへ、ユーシスは踏み込み、流星の輝きと重力の力をもって一撃を叩き込んだ。
「引きなさいよ! レリさまからの任務の邪魔しないでくださる!? 早く行かないと……!」
ミュゲットは双銃を構え、弾丸を自由に打ち放ち銃弾の雨は前列の仲間達の上へ。
前列に立つ三人は守り硬く、攻撃の威力は半減している。けれど受ける傷があるのは確かなのだ。
「王女殿下の事をお慕いなのですね」
貴女と私はよく似ている様に感じますわ、と響は零した。
「私も死んだ筈の命を、とある方に……お姉さまに救われましたの」
紡ぎながら、響は仲間達の為に舞い踊り踵を鳴らす。その力は先程傷受けた仲間達を癒していく。
「敬愛するお方の為に一命を賭するその心意気や、敵ながら心より敬服いたします」
出来れば違った形で出会いたかった――そう思うのだが、今は交わらぬままだ。
「デウスエクスのくせに仲間の心配するなんて……そんなの認められないよ」
先程のミュゲットの言葉を心の内で反芻してリリエッタは零しながら再びオウガ粒子を仲間達へ。
その表情は変わらぬがどこか声は沈んだようなもの。
癒しの力を受けながらココは走る。
魔法兵、その正面で軽やかに停止し、獣化した足で蹴りを一閃。
(「通しません、それが私達の、役目」)
これ以上先へは行かせないとココの心は定まっている。
今は決して、倒れないのだと橙の瞳には矜持が宿っていた。
●防衛の為
魔法兵が構えれば無数の数が渦巻き、ココの身を斬り裂いていく。
「さあ行きなさい。踊りなさい。私の奏でるワルツと共に」
緑色の燐光を放つ自律式空中砲台を一時的に響は召喚する。それはココ達の傷を癒しつつ、共に攻撃することで攻撃力を上げていくのだ。
そして響だけでなくキヌサヤも清浄なる翼で羽ばたき援護を。
盾の役目負った者達は可能な限り攻撃が向かわぬ様に、そして響は癒す事に力を傾ける。
その響の立つ後列へと、いぶきは粉硝子を。
いぶきが仲間達を支える力振るう間にアトリは守るために攻める。
簒奪者の鎌、その刃に虚の力を孕ませて切りつける。その攻撃は魔法兵の生命力奪いアトリの糧とするもの。
先程のお返しと、アトリが一歩引いたすぐあとにエクトプラズムの霊弾。
ココの攻撃と共に、バレもまた走り抜ける。
「面倒くさいやつらね! 道を、開けなさい!」
レリ様の為に早く行かなきゃと零す。その言葉を耳にしつつ、ふわりと肉薄したミルフィ。
「目を閉じて――わたくしからの愛、お受け取り下さいまし……」
口づけたミルフィは桃色の霧となって消える。それは初めから幻術だったのだ。
「まるで、弱みにつけ込む詐欺師みたいなやり方。正直、虫唾が走るわ」
そして魔法兵へと襲い掛かるのはドラゴンの幻影。ユーシスの手元から放たれたものだ。
「まあ、エインヘアルとシャイターンじゃ仕方ないかもね。罪人を人様の街に放り込んだり、選定のためにわざと事故を起こすような連中だもの」
そんな連中が『助けにきた』なんて、素敵な冗談ねとユーシスは嫌悪を滲ませていた。
炎の中にある魔法兵の身が凍てつく。それはリリエッタが熱奪う凍結光線を放ったからだ。
攻撃が集中する魔法兵にはミュゲットから回復が。それよりミュゲットの攻撃の機会は失われ募るダメージは減る。
しかし――攻撃の多くを受け、そして回復を受けていても魔法兵一体でおし止められる攻撃量ではないのだ。
「とどめー!」
集中を限界まで募らせて。
和の声と共に、魔法兵の上で起こる爆発。その連鎖が終わると、魔法兵はその場に崩れ落ち、倒れた。
今まで厚い守りとなっていた魔法兵が倒れることにより、ミュゲットへと攻撃が集中する。
が、戦う上で守りを厚くしたことにより決定的となるようなダメージを連続で与えられるという事がない。
魔法兵を倒され、一人となってもミュゲットは手強い相手だったのだ。
「一人倒したくらいでいい気にならないでくださる?」
まだ強気の表情を以て、両の銃から放たれた弾丸は中衛を狙っていた。
しかしそれは通さないといぶきとアトリが庇いに入った。
守り厚くしていても、的確に抜いていく一撃は痛い。その一弾で倒れる事はないものの、続けて受ければと思うものだ。
それでも、ミュゲットの意識引くように笑って可愛らしい一撃ですねと煽ってやる。
それにアトリもそうだねと笑えばミュゲットは苛立ちを募らせている様子。
それはすぐさま回復するさまが見て取れたからだ。
響が舞い踊れば仲間達を癒す花びらのオーラが降り注がれる。響が絶えず送る癒しの力により、他の者は攻撃へと意識が傾けられる。
ココは踏み込み、魔法兵へと音速を超える拳を叩き込む。
和が傍らに召喚した御業が、その手より炎弾を放つ。炎に焼かれて短い悲鳴をあげるものの、まだミュゲットには余裕があった。
「こんな待ち伏せも読めないなんて、お前達のリーダーは無能だよ」
リリエッタは挑発を駆けながら再び氷結光線を。それを受けたミュゲットの身の一部は凍り付くが、それよりもレリさまを馬鹿にしないでとそちらの方が問題らしい。
「味方を助けるのも、あくまで王女の為?」
アトリが振り下ろす鎌。その攻撃を銃で受け止めたミュゲット。
ふと、気になっていた事をアトリは尋ねてみた。
するとミュゲットはそれ以外何があるのよと紡ぐ。
「レリさまの為によ! 任務をこなさないと褒めてもらえないじゃない!」
そう、とアトリ零して鎌で弾く。
「どちらが折れるか、根競べといこうか」
このまま長期戦となれば、押し切れるだろうが選定側がすでに事を負えているなら、戦う意味は無いというのは互いの意識の端にちらついている。
だが、ミュゲットも引く気はない。
選定がどうなっているのかわからず、この場から引けない。そしてまだ誰も倒れておらず継続して戦う力は十分にある。
ユーシスはちらりと時計を目にする。戦い始めて七分経つというところだった。
●花の末
と――青白い魔力の尾を引いて銀の弾丸が突き刺さった。
癒されていく傷。この力は知っている、といぶきは後ろを振り返る。
そこにいたのは、選定事件へと対していた仲間達だ。
「なかなか来ないので何かあったのかと……杞憂だったようですが」
「心配をかけた。――あと一体か」
ただ視線一つ投げ、いぶきは肯定しミュゲットへと視線投げた。
「さぁ、もうひと仕事しましょうか。悪いけれど、これ以上は許さないわ」
アトリの上へ差し出された千歳よりの癒しの傘。その癒しにありがとう、助かるよとアトリは紡ぎ地を蹴って向き直る。
影の如き斬撃はミュゲットの視界の端に映るのみ。気づけば急所を鋭く斬り開いていく。
「喰らえー、てややー!」
和も精神を極限まで集中させミュゲットの上で爆発を起こし、続けてソルが戦鎚での攻撃をかけながら吼える。
ココは自身の前に編まれた盾に笑み零し、バレへと声かけ共に向かう。
幾重にも、それぞれの攻撃が重なりミュゲットは追い詰められていく。
回復も間に合わず、逃げる選択肢を取ることもなく。
足止めの為の戦いでは余裕を見せていたミュゲットは歯噛みし、その表情を歪めている。
戦況の優劣は明確だ。けれどミュゲットは逃げるそぶりを見せない。
あんたの望みを通す道理がねぇと、麟太郎は三日月の軌跡を。白靄纏う凍結の一撃をソルが放つ。
そして眠堂の扇が舞の所作なぞり、フィーラが槍を。レーアの咆哮がミュゲットを戒めていく。 援護を受け、今は癒す必要もなく。今まで仲間を支えるべく動いていた響も攻撃の一手を。
響の傍らに現れた御業はその手を伸ばしミュゲットを掴み離さない。
その間にいぶきは懐に踏み込んだ。右手の理想と、左手の幻想と。十字柄のナイフはその傷を深く抉りゆく。
「このまま逃げるなんて、できるわけないのよ!」
「わたくしも、お仕えする主を持つ身……主に認めて貰いたいという気持ちも……解らなくもございませんが……それとこれとは話が別ですわ」
ミュゲットは吐き出した言葉を耳と留め、ミルフィは零しつつ炎纏った蹴りを見舞った。
しかし――ミュゲットもただやられるばかりではない。
両の手にある銃を向け、放たれた攻撃は縦横無尽に幾つもの弾丸が放たれ駆け巡る。
その攻撃は前列跳び越え、後衛へと向けて跳ねたのだが、朝希達によって守られる。
しかしその間抜けた弾丸がひとつ。それはユーシスを捕らえていた。
「っ、最後のあがきね」
穿たれた痛みに一瞬眉を顰めるも、贈られた力と共に癒しが降る。
そんな味方の間を抜けていく攻撃にリリエッタはきゅっと眉を寄せた。
「リリのほうが上手に銃を扱えるもん」
それを証明してあげるとリリエッタはミュゲットの、その足元に狙いを定める。
「影の刃よ、リリの敵を切り裂け!」
圧縮されたグラビティの弾丸が足元に打ち込まれる。すると地面から影の刃が浮かび上がり急所を掻き斬っていく。
その攻撃の合間に、先程受けた傷もまた癒されていく。
「任せたわ。いってらっしゃい」
その言葉を、想いを受けて、ユーシスは言の葉紡ぐ。
「理に背く者共よ……大地より飛び立つ雷竜に穿たれるがよい!」
その言葉の終わりと共に、ミュゲットの足元より雷纏ったドラゴンの幻影が天に昇る幻影と雷が貫いていく。
その雷光の中で、ミュゲットは未だ立っている。
だがすでに――終わりは近い。
ふらりと体制崩し傾ぐものの、まだその瞳にはわずかの敵意と、己の末を感じる絶望が宿っていた。
そこへ軽やかに、肉薄してココは真っすぐ、ミュゲットへと視線を合わせた。
その瞬間、ミュゲットはくしゃりと表情崩して涙零し主の名を紡ぐ。
「やっ……レリ、さま……! たすけっ」
「ミュゲットさん……終わり、です……!」
ココの獣化した腕で空を切る音が追いかけていく。
速く、重くと振るわれたその腕はミュゲットの命を手折ったのだった。
終った、とココはそっと瞳を伏せる。
ミュゲットが倒れて消える。その姿を見送り、ミルフィはさてと零す。
「王女はどう出ますかしら……」
戦いの大きな流れの、その端を掴んだ程度。
それでも、一つ事が終わったのは事実だ。
「お疲れ様、奏多さん」
駆けつけてくれた友人にいぶきは労いを。
違う場所で戦って、そして来てくれたけれどできるなら次は、最初から同じ場所で戦う機会に恵まれればといぶきは思う。
どのみち、この後エインヘリアル達との戦いもまだ続くのだから。
作者:志羽 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2018年10月5日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 7/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 5
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