豪華ホテルでの選定

作者:MILLA

●豪華ホテルの悪夢
 スイートルームが一泊数百万という高級ホテル。このホテルには各国の富豪、要人が集う。ホールには、生演奏を聴きながら、食事を楽しむ人々。
 だが、その優雅な一時は、突如として起こった何者かの襲来によって悪夢に変わった。
 ホテルの北側が崩壊し、黒煙が昇る。何事かと戸惑う客たち。
 ホールでも強い揺れがあった。同時に何者かのけたたましい笑声が響く。
「今、何が起こっているのか確認中です! 危ないので、ここを動かないようにお願いします!」
 ホテルマンが客に呼びかけるが、その男は傲慢だった。
「どけ! お前たちなんぞに任せておけるか!」
 男はホテルマンを殴り飛ばし、自分だけ部屋へ逃げようとした。ところが――。
 シャンデリアが男の上に落ちてくる。
 シャンデリアの下敷きになって動けなくなった男の前に降り立つのは、皮肉な笑みを浮かべるシャイターン。
「金ならいくらでもやる! 俺だけは助けてくれ!」
「金ですべてを解決できると思えるその傲慢さ。醜悪さ。実に素晴らしい。エインヘリアルに生まれ変わり、その傲慢さでもって人間どもを駆逐せよ」
 シャイターンは男の胸を剣で貫く。しかし、男はシャイターンの思惑通りにはならず、そのまま死に絶えた。
「クズはクズだったか。まあいい、これだけの獲物がいる。一人ぐらいはエインヘリアルになってくれるだろう」
 シャイターンはにやりと不気味な笑みを、ホールの客たちに向けた。

●予知
 集まったケルベロスたちを前に、セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が説明を始めた。
「シャイターンが、エインヘリアルを生み出すために事件を起こそうとしていることが予知されました」
 シャイターンは、事故を起こし、死にかけた人間を殺すことで、エインヘリアルに導こうとする。今回は高級ホテルが狙われたというわけだ。
「シャイターンは『他人を見捨ててでも自分だけ助かろうとする』ような人を好んで選定しますが、襲撃が起こる前に人々を避難させてしまうと、シャイターンは別の建物に現れる恐れがあり、被害を止められなくなります。ですので、皆さんはあらかじめホテルに潜伏しておき、襲撃が発生した後、まずはシャイターンが選定しようとする被害者の避難誘導を行ってください。そしてその後に、シャイターンを撃破するようにしてください」
 セリカはつづけて襲撃現場の状況を語り始める。
「ホテルには五百名ほどの人々がいると思われます。シャイターンもすぐ傍にいますし、これだけの人数を避難させるのは大変でしょうから、うまく敵の足止めを行う必要があります。シャイターンは剣の使い手であるようです。皆さんの力を合わせて、事件を解決に導いてください!」
 セリカは力強く拳を胸の前で固めた。
「できるなら、死傷者が出ないように事件を解決してください。そしてシャイターンの撃破をお願いします!」


参加者
アイン・オルキス(矜持と共に・e00841)
シャーリィン・ウィスタリア(千夜のアルジャンナ・e02576)
キソラ・ライゼ(空の破片・e02771)
湯川・麻亜弥(大海原の守護者・e20324)
イズナ・シュペルリング(黄金の林檎の管理人・e25083)
伽藍堂・いなせ(不機嫌な騎士・e35000)
エリアス・アンカー(ひだまりの防人・e50581)
フロッシュ・フロローセル(疾風スピードホリック・e66331)

■リプレイ

●狂気の選定
 さすがに一流ホテルのホールというだけはあった。ゆったりとくつろげる広々とした空間は、内装も豪華。天井にきらきらと輝くシャンデリアはかなりの値打ち物だろう。立食パーティを楽しむ人々の中には、メディアで取り上げられるような顔も混じっている。
 その中に紛れ、敵の襲来を待つケルベロス達。
「一泊数百万ですか、私には到底縁のなさそうな高級な場所ですね」
 湯川・麻亜弥(大海原の守護者・e20324)が紅茶のカップを取り、一口すすった。そのカップも値が張る代物だろう。
「まったく」
 エリアス・アンカー(ひだまりの防人・e50581)が肩をすくめる。
「金持ちが悪とは言わねぇが、金と欲と傲慢さってのは仲が良いからな。そういう人間の集まる場所を狙うたぁ、随分と鼻のきく野郎だぜ」
 敵の襲撃を告げる爆発音。ホール全体が揺れるような衝撃に、客たちは倒れ込み、悲鳴が木霊した。混乱の最中、いかにもな成金といった風貌の男がホテルマンに突っかかり、我先にと逃げ出す。その男目掛けて落ちてくるシャンデリア。
 男の首根っこを乱暴に引っ掴まえ、シャンデリアの下敷きになるのを阻止したのは、キソラ・ライゼ(空の破片・e02771)だった。シャンデリアを指さし、じろりと男を睨み下ろす。
「精々感謝しな、コレは金じゃあ動いてくれなかったぜ?」
 男は泡を喰って、へっぴり腰で逃げ出した。
「ったく」
 と、頭の裏を掻きながら、キソラはシャンデリアを落とした張本人を見上げた。黒いタールの翼で宙を浮遊しているシャイターンの姿は、天井に巣を張っている蜘蛛のようにも見えた。シャイターンはにやりと皮肉な笑みを浮かべる。
「おやおや、そんなクズを庇い立てする物好きがいるとはねえ」
「クズがクズ集めたぁ、シャレのつもりかね?」
 キソラも言い負けない。
「こいつは失礼した。では、お前が代役を務めてくれるってわけだな?」
「無駄足な上に狩られる為来てるワケ? ご愁傷サマなあ」
 キソラに気を取られている隙を突き、ガジェット・瞬走駆輪炉で加速したフロッシュ・フロローセル(疾風スピードホリック・e66331)が、シャイターンに飛び掛かった。その接近に気付いたシャイターンは彼女に劣らぬ素早さで身を翻したが、フロッシュは壁や天井を蹴って駆け巡り、目標へと迫っていく。
「まずは一撃っ……だね!」
 しかしシャイターンは、殴り掛かってきたフロッシュの腕を掴み、フロアに叩きつけた後、剣を抜いた。
「なかなかすばしっこいが、俺も速さには自信があるんだ」
 ケルベロスたちの誘導の下にホールから避難していく人々を目端に止めて、シャイターンはにやりと口の端を上向ける。そしてそちらへと掌をかざし――。
 うなりを上げて放たれた炎が避難する客たちの真上の天井を爆破した。瓦礫の下敷きにしようというのだ。そうはさせまいと落ちてくる瓦礫を食い止めるエリアス。
 しかしシャイターンの真の狙いは人々を瓦礫の下敷きにすることにはなく、ケルベロスたちがそちらに気を取られている間に、よたよたと逃げ惑う成金男を始末することにあった。
 男の前に舞い降り、シャイターンは残虐な笑みを浮かべて剣を振りかざす。
「やらせるかよ!」
 横からシャイターンに当て身を喰らわせたのは、伽藍堂・いなせ(不機嫌な騎士・e35000)。さらにイズナ・シュペルリング(黄金の林檎の管理人・e25083)が飛んできて、ゲシュタルトグレイブを振り、敵を男から引き離す。
「ちょっと執念深いよ、あんた!」
「お前たちが、そのクズを守ろうとする執念深さには負けるがな。そいつを守ったところで何になる?」
 にやりと笑うシャイターンに答えたのは、いなせ。ぎろりと鋭い眼光で相手を睨む。
「屑だろうが、殺させるわけにゃいかねーよ。どんなに下衆で糞で救いようがなくて死んだ方がマシって奴でも、デウスエクスに殺させるわけにゃいかねーなァ」
「やれやれ、まったく風変わりだよ、君たちケルベロスは。俺たちはお前たちが毛嫌いするようなクズを引き取って、俺たちのために使おうっていうだけなんだが。互いにメリットがあると思うんだがねえ」
 シャイターンの勝手な言い分に、イズナは頭に来たようだった。
「もう! シャイターンはまだそんなことしてるんだね! ホテルを襲ったりして、みんなもすっごく迷惑してるんだから! わたしたちが誰もエインヘリアルなんかにはさせないんだからね!」
 イズナの手のひらからそっと解き放たれる緋色の蝶。
「――緋の花開く。光の蝶」
 幻想的に舞う光の蝶、シャイターンはしばしその蝶の行く末を目で追い続けた。その刹那の幻想からシャイターンを目覚めさせたのは、エリアスの強烈な蹴りだった。
 シャイターンは、間一髪その蹴りを防いだものの、あまりの重さに腕が痺れたようだった。
「どうだ? ちったぁ目が覚めたか?」
 エリアスが首を鳴らしながら、口の端を上向けた。
 ホールには、すでに自分とケルベロス達しか残ってはいないことを、シャイターンは確認する。
「もはやお前に逃げ道はない。速やかに済ませるぞ」
 素っ気なく言い放ち、アイン・オルキス(矜持と共に・e00841)は刀を抜いた。
 シャイターンは、くっくっと嫌な笑い声を洩らした。
「逃げ道がない? とんでもない。待っていてやったんだ。お前たちの中のどいつが俺の駒となるにふさわしいか、じっくり見定めようと思ってな。せいぜい惰弱で醜い本性を剥き出しにして楽しませてくれよ」

●窮地
「残念だけれど、貴方は目的を果たせないまま、よ。ヒトが傲慢で醜いだなんて今更のことだわ。誰の心にも狂気はある。わたくしたちの中にも……。さあ、貴方の炎を……消してさしあげます」
 シャーリィン・ウィスタリア(千夜のアルジャンナ・e02576)が夜のような静けさの中に蒼い狂気の炎をかすかに滲ませ告げる。
「行きましょう、ネフェライラ」
 ボクスドラゴンのネフェライラが放ったブレスを、事も無げに躱したシャイターン、大きく手を広げて声高らかに笑った。
「よかろう、曝け出してみろ! お前たちの狂気とやらを!」
 ホールに砂嵐が吹き荒れた。幻影であることはわかる。しかし幻影がさらなる幻影を呼ぶ。ケルベロスたちが眩暈に襲われる隙を突き、シャイターンは縦横無尽にホールを飛び回り、剣を振るった。
「チッ……!」
 剣の切っ先が頬を掠め、キソラは後退を余儀なくされる。幻惑に惑いながらもエリアスは果敢に打って出るが、得意の間合いに詰め切ることかなわず、敵の反撃によって身を刻まれた。
 敵の足を止めるべく、アインは轟竜砲を放つが――。
 シャイターンは難なく躱し、砲弾は壁をぶち抜いた。ホールが揺れるのと同時に、シャイターンが嘲笑う。
「そうだ、もっとやれ。建物が崩落して、人間が大勢餌食になるのでよければな!」
「くっ……!」
 アインが唇を噛む。
「俺は容赦しないぜ?」
 シャイターンはホールのあちこちを狙い、掌からいくつもの炎弾を放つ。
「てめえ、いい加減にしやがれ!」
 怒りを滲ませ、いなせが蹴りかかった。
 そのとき、子供の悲鳴が上がる。襲撃に怯え、テーブルの下に隠れていた子供がいたのだ。その子が天井の梁の下敷きになろうとしていた。
 しかしその子とケルベロス達の距離が遠い。躊躇わずに飛び出したのはフロッシュだった。間に合わないなどとは露ほどにも考えなかった。
 彼女には覚悟があった。
 アタシはケルベロスだ……力ない人達の為の、皆のヒーロ-だ。
「はぁあーっ!!」
 フロッシュは加速する。
 梁が重たくフロアに落ち、埃が舞った。
 フロッシュは、子供は――?
 間一髪、フロッシュは子供を抱きかかえ、救い出していた。
「大丈夫?」
 そう問いかける彼女の背を、シャイターンの炎弾が焼いていた。
「はははっ、バカめ! ゴミ一匹見捨てられない甘さゆえに、お前たちは死んでいくんだ!」

●反撃
「ビタ、あの子の面倒を見てやりな」
 いなせにそう命じられて、ウイングキャットのビタはフロアに横たわるフロッシュのもとに飛んでいく。
 子供を守り通し倒れた仲間を見て、アインは刀を握る手に力を込めた。
「私はお前を許さない。この場で必ずお前を打ち倒す! オルキスの名に賭けて!」
「いいぜ、さあ、撃ってみろ! 俺を! そして後悔しろ! 殺意に塗れた咎人となって!」
 にやにやと笑みを浮かべ挑発するシャイターンを睨みつつ、アインが召喚したのは電撃から生じる馬。アインはその馬に跨り、刀を振りかざした。
「駆けろ、オーキスッ!!」
 駿馬は跳ねる。瞬時に敵との間合いを詰めていた。
 アインの放った刀閃は、敵の胸を裂き、血を散らせていた。
「貴様……! しかし!」
 馬であるなら小回りは利かないだろうと踏んだシャイターン、急旋回してアインの背後を捉える。だが、その動きを読んでいた麻亜弥。
「その素早い動きを、封じてあげますよ」
 シャイターンをフロアに蹴り落とす。
 そこで待ち構えていたキソラ。
「とことんヤな奴なんで、後腐れなくぶっ倒せてイイワ」
 拳を固め、にやりと笑う。
「惑え!」
 その拳から光が充ちた。溢れる彩りは霧散し、敵の目を、耳を、感覚を惑わし深淵へと誘う。
 一方、傷ついたフロッシュは。気が付いたらしい、かすかに瞼を開いた。その霞む視界にシャーリィンの静謐な微笑みがあった。
「咎人というなら、誰しもが咎人……。さあ、立って。あなたにはまだ成すべきことがありますわ」
 親指に針を刺したような血の雫。その雫が生気の迸りとなって、フロッシュを包んだ。

「いい加減、くたばっちまいな!」
 いなせが鋼と化した拳を思い切り振るい、殴り飛ばす。
 口の端に血を滲ませフロアに着地したシャイターンを、地を割って走ってくる針の山が襲った。
 エリアスの放つ棲鬼針山・改。
 全身を針に斬り裂かれるのを防ぐためには、シャイターンは宙に逃げるしかない。
「はっ、どうした? 逃げ回るしか手がなくなったか?」
 エリアスが煽る。
 シャイターンは憎々しげな目で睨み返したが、にやりと笑み、
「思ったよりやるじゃないか。だが、お前たちが死ぬことに変わりはない」
 再び放たれる砂塵の幻影。
「まったく……何度も何度も嫌なことを思い出させやがる……」
 いなせは舌打ちをする。
 ケルベロス達がその厭わしい幻に手を焼いていたとき――。
 砂嵐の最中に遠く聞こえてくる古の唄、まるで月から聞こえてくるような。
 その歌声の呪力がシャイターンを縛る。砂嵐の中から現れ、苦悶にあえぐシャイターンの前に立ったのは、シャーリィンだった。
「ねえ、どうして貴方はこんなところで人間を襲うなんてするのかしら? 誰かに命じられているの?」
「ちっ……」
「そんなの、くだらないわ。貴方に、もっと純粋に……透き通った狂気があるのなら、わたくしに示してみせて。其の黒濁の瞳に映る最期が、如何様なものか……わたくしは、知りたいの」
「望み通り、殺してやる!」
 呪縛を断ち切り、シャーリィンに凶刃を振りかざす!
「やらせない! その禍々しい選定の剣はわたしの槍で叩き折ってあげるよ!」
 その言葉通り、飛来したイズナがゲシュタルトグレイブで一閃、敵の剣を砕く。
「もうおしまいですね」
 飛びのく敵に、麻亜弥が狙いをつける。
「海の暴君よ、その牙で敵を食い散らせ……」
 鮫の牙を思わせる、ギザギザした暗器を袖から引き出し、切りつける。シャイターンの胸に食い込んだ暗器がその禍々しき牙によってさらに傷口を広げた。
 激痛に呻くシャイターン、漆黒の翼を懸命に羽ばたかせ、麻亜弥から逃れる。
「貴様らあ……!」
 歯ぎしりをしながら、ちらと出入口に目をやる。しかしその視線の先に手綱を握ったアインが立ち塞がった。
「ここから逃れて、無辜の民を盾にでもするつもりだったか。無駄だ、お前はこの場で仕留めると言った。諦めるんだな。お前にはもはや打つ手は残されてはいない」
「そうかい?」
 シャイターンは跳び上がった、戦闘によって生じた天井の穴から逃げようと。
「ぐっ!?」
 だが、バスケットボール大の石が凄まじい速度で飛んできて、シャイターンを弾き飛ばした。
 キソラが蹴ったものだった。
「ワリィね、足癖悪くって」
 逃げ道を絶たれたシャイターンは、掌に炎を集める。ケルベロスたちを狙うというよりは、建物を狙い――。そのどさくさに紛れて逃げ出す算段だろう。
「ほんっとに往生際わりーな!」
 いなせがそうはさせまいと横から殴りかかる。
 往生際の悪さと執念深さは一端のもの、シャイターンはなおもホール中を飛び回り、ケルベロスたちを攪乱、何とか隙を見出そうと画策する。
「ほんとに性根の悪さとすばしっこさだけは見上げたものですけど……なんとか、敵の動きを止めませんと」
 麻亜弥は敵の姿を目で追い、攻撃の機会をうかがうが、そうやすやすと捕まる相手でもないのはわかっている。
「……アタシに任せて」
 手傷を負いながら立ち上がったフロッシュが言った。
「アタシがあいつの動きを止めるから、後はお願い」
「フロッシュさん? だけど、あなたは……」
 麻亜弥が心配そうに声をかける間にも、フロッシュは瞬走駆輪炉を『疾走形態』に変化させ、身構えていた。
「まだ……アタシに出来る事を精一杯っ!」
 しなるように駆け出した。敵目掛けて、一直線に。
「賭けるっ!」
 ぐん! 加速エネルギーを全放出、一気に相手の間合いに飛び込んでいた。瞬走駆輪炉を『電光刃形態』にチェンジ、渾身の一撃を叩きこみ、穿つ! さらに打撃を加えた箇所に刃の破片を残して炸裂させ、電流をシャイターンの身体へ流し込んだ!
 地に落ち、這いつくばるシャイターンの前に、エリアスが待っていた。
「終わりだ!」
「待てっ……!」
「はあああああっ!!」
 シャイターンの目には、その拳は巨大化して見えたに違いない。
 エリアスが突き上げるようにして放ったオウガナックルは、シャイターンの胸をぶち抜いていた。

●狂気去りし後
「まったく面倒な敵だったぜ」
 大きなあくびをしているビタの傍で、手入れのされていない髪を掻きつつ、いなせがぼやいた。
「ほんと。ずいぶん派手に暴れちゃったしね」
 イズナがホールの惨状を前にして、大きく息をつく。後片付けが大変そうだと。
 やれやれとばかりに片付けに取り掛かるキソラとエリアス。
「大丈夫ですか、フロッシュさん」
 麻亜弥が壊れていない椅子を見つけてきて、フロッシュを座らせた。
「大丈夫、ちょっと疲れただけ……」
 無事に子供を守れたことを喜ぶように、フロッシュは微笑んだ。その微笑みの意味を理解したように、アインもまた微笑みを浮かべる。
 しかしただ一人シャーリィンの浮かべる微笑みだけは、どこか儚く物悲し気だった。狂気の果てにまた何も見出せなかったことを憂うように。

作者:MILLA 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年9月27日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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