堕ちたスプジャンダル

作者:湯豆腐

●いいんだよ
 中二病。
 それは誰しも必ず通る道。
 お母さんがデパートで買ってきた服をダサイと一蹴し、縦線の入ったジャージを好んで着用するなど朝飯前。
 両手を構えて気を溜めれば、なんかそれっぽい殺意の波動を感じていたし、そのまま両手を空に掲げれば、世界中の元気が集まってくると信じていた。
 現世の姿は仮の姿で、実は自分は大天使エリューダルの生まれ変わり(今は堕天使として闇の波動を感じている)じゃないかなとか、古の第参の眼を持っていて(普段は封印されているが、暴走すると開眼してとりあえず地球が滅ぶ)、日々暴走を欲する闇の自分と闘っているとか、まあとにかくそんな感じのことを日々考えていたのである。
 そんな中二病ではあるが、皆オトナになるに連れ、いつしかその病は身を潜め、良き社会人として振る舞うようになる。
 そう、一部の者を除いて。

●うがっ……! がぁっ!!
 参連休も終わりの鐘を告げようとしている昼下がりの横浜。
 ナウな若者(ヤング)達はその時をエンジョイし、そして来るであろう、平日という名の無慈悲な終末の始まりに、ちょっとおセンチな気分に浸る。
 中二病というより別の病にかかってしまっているみたいになってしまっているので、これはこれでもうやめておく。
 刹那――。
「うがっ……! がぁっ!!」
 往来で突然胸を抑えうずくまる男性。
「だ、大丈夫ですか!? 誰か救急車を!!」
「はぁ、はぁっ……くそっ、スプジャンダルのやつめ……まだ、大人しくしていろと、言っていたのに……」
「はい? すぷじゃんだる? だれ?」
「へ、へへっ、そうかよ……やっぱり、暴れたいのかよ、おまえも……」
 頭を垂れながら、ゆらりと、気の抜けたような笑みを浮かべる。
「えっ、やだこわい」
 女性の目はもう『あ、そういう人でよろしかったですか?』という目である。
 つまりはそういう人だったのである。
「貴様、こわいことなどあるかっ!! そう、中二病こそ大正義!! 中二病万歳!!!」
 いきなり立ち上がり、雄たけびをあげる男性だった、者。
 彼は既にビルシャナとなってしまっていた。
「キャー! たーすけてー!」
「ひゃー、これはたまらん!!」
 散り散り逃げようとする一般人の方たち。
 やあ、随分と唐突だなあ。

●依頼だ……がぁっ!!
「皆さん、依頼です」
 ケルベロス達の前に姿を現すセリカ・リュミエール。
「個人的な趣味趣向による『大正義』を目の当たりにした一般人が、その場で、ビルシャナ化してしまう事件が発生しようとしています。ビルシャナ化するのは、その事柄に強いこだわりを持ち、『大正義』であると信じる、強い心の持ち主であるようです」
「ふむ。その事柄とは?」
 ケルベロスの問いにセリカは一つ頷く。
「中二病です」
「おっおーん」
 一気に力が抜けるケルベロス達。
 しかしセリカは気にもせず続ける。
「事柄は大したことがないかもしれませんが、このまま放置すると、その大正義の心でもって、一般人を信者化し、同じ大正義の心を持つビルシャナを次々生み出していく為、その前に、撃破する必要があります」
 確かに、この世の全てが中二病にまみれたら……ちょっと楽し……いやなんでもない。
「大正義ビルシャナは、出現したばかりで配下はいませんが、周囲に一般人がいる場合は、大正義に感銘を受けて信者になったり、場合によってはビルシャナ化してしまう危険性があります。大正義ビルシャナは、ケルベロスが戦闘行動を取らない限り、自分の大正義に対して賛成する意見であろうと反論する意見であろうと、意見を言われれば、それに反応してしまうようですので、その習性を利用して、議論を挑みつつ、周囲の一般人の避難などを行うようにしてください。なお、賛成意見にしろ反対意見にしろ、本気の意見を叩きつけなければ、ケルベロスでは無く他の一般人に向かって大正義を主張し信者としてしまうので、議論を挑む場合は、本気の本気で挑む必要があるだろう」
 セリカさん、語尾?

「主な依頼は二つ、です」
 ぴっ、と指を二本たてるセリカ。
 おっ、おん。
「周囲の一般人の避難と、ビルシャナの撃破です。大正義に対する議論を行っている間は、ビルシャナはそれに応じます。ただし、避難誘導時に『パニックテレパス』や『剣気解放』など、能力を使用した場合は、大正義ビルシャナが『戦闘行為と判断してしまう』危険性があるので、できるだけ能力を使用せずに、避難誘導するようにしてください」
「避難が終わったら?」
「それは撃破してください。素早く」
 おっ、おっ、おん。

●忘れたい、けれど忘れられない
 一通り依頼内容を告げたセリカは、ふっ、と物憂げな表情を浮かべる。
「……大正義ビルシャナは自らを大正義であると信じている為、説得する事は不可能です。それどころか、大正義の心が周囲に伝染すれば大惨事になりかねません。周囲に一般人が多く、避難活動も必要になりますが、無事に事件を解決させてください。お願いします……そう、あの時の私には、できなかったから……スプジャンダル……」
 え? なんて?


参加者
アリス・ヒエラクス(未だ小さな羽ばたき・e00143)
神城・瑞樹(廻る辰星・e01250)
鮫洲・蓮華(ぽかちゃん先生の助手・e09420)
知井宮・信乃(特別保線係・e23899)
スプリナ・フィロウズ(慈愛の泉・e44283)
アンヴァル・ニアークティック(バケツがガジェット・e46173)
肥後守・鬼灯(純情少年・e66615)

■リプレイ

●プレリュードオブケルベロス
「『世間の』風『当たり』が……強くなって来たわね……でも……何故かしら……この風……まるで泣いている様だわ……」
 アリス・ヒエラクス(未だ小さな羽ばたき・e00143)は、そよぐ風に揺れる髪をそのままに呟く。
 見え隠れする尖った耳はアリスがシャドウエルフであることを物語る。
「俺はリアルあってこそ妄想だと思うし、妄想はそっと心の中に置いておくもんだと思う。見てて痛い。しんどい。やるなら人が居ないとこでやってほしいわ」
 いきなりばっさりとぶったぎる神城・瑞樹(廻る辰星・e01250)。
「あと中二病って言うからには年齢制限あると思う。つーかスプジャンダルって豆腐料理っぽい名前だよな。なんか甘辛そう。でも美味くはなさそう」
 さらに続ける瑞樹。
 無論真顔である。
「とうとう目覚めてしまいましたか、スプジャンダル……。未だ時は満たぬというのに。致し方ありません、我が神の名の下に今一度、ケイオスの淵へ送り返して差し上げましょう」
 どこか寂しく、儚げな表情を浮かべるスプリナ・フィロウズ(慈愛の泉・e44283)。
 ビルシャナの中に宿るスプジャンダルを再封印する、という悲しくも美しい使命を胸に、スプリナは再びこの依頼を受けた。
 そう、かの約束を、もう一度果たすために(適当)。
「スプジャンダルだと……まさか、この時代に復活しようとは……されど、未だ覚醒(めざ)めの刻(とき)ではない。今一度、封印(ねむり)につくがいい」
 溢れそうな思いを抑えつつ、その決意を告げるアンヴァル・ニアークティック(バケツがガジェット・e46173)。
「我は唯一にして全故に、道を誤りしかつての同胞(はらから)に、今一度道を示さん」
 説明しよう。
 つまりアンヴァルはビルシャナの相手をしようということだ。以上。
「中二病って、片腕に包帯を巻いて『力が勝手に!』とか、眼帯をして『この左目がうずく……』とか、そういうのだと理解していいんでしょうか? ということは、『私はムー大陸の戦士の生まれ変わり。同じく現代に生を受けた戦士よ、これを見ていたら応えてください』と雑誌に投稿するのとか、『将来の夢は世界征服』と卒業文集に書くとか、そういうのも中二病なんでしょうか?」
 冷静に、中二病とはなんぞや? と、かのなんとか書房のような説を説く知井宮・信乃(特別保線係・e23899)。
「あ、私はやっていませんよ? 卒業文集ネタは学校にいましたけど」
 えっ、まじに?
「放っておくと大変カオスなことになりそうなので、皆さんが議論を展開している間に一般人の避難誘導を優先して行います」
 きりっとした表情で告げる肥後守・鬼灯(純情少年・e66615)。
 一般人の安全を第一に考える鬼灯はケルベロスの鑑と言っても過言ではない。
 でも好きなんだろう? カオス。
「ぽかちゃん先生、すっごいかわいい……!」
 目をキラキラと輝かせながら、ぽかちゃん先生を見つめ、両手を組む鮫洲・蓮華(ぽかちゃん先生の助手・e09420)。
 聖守護猫天使(ぽかちゃん先生)とその聖徒のレンカという隙のない設定だ。
 キラキラ法王のコスをさせられたぽかちゃん先生は、ひどく困惑しているご様子。
(「なんなのこれ?」)
 って目で訴えているものの、蓮華は気にしていないご様子。
「そうか……やはりそうなのか、スプジャンダル」
 金色の眼を細め、空の蒼を見据えるアンゼリカ・アーベントロート(黄金騎使・e09974)。
 ただ、アンゼリカの紡いだ言の葉は街の喧騒にかき消され、誰かの耳に届くことはなかった。

●心底(シンテイ)に響くソナタ
「燃えろ、俺の心の小宇宙……漆黒の堕天使……スプジャンダル……ふふふ……」
 ビルシャナはにやりと微笑みを零しながらゆらり、ゆらりと身体を揺らす。
 大体の一般の方々は、それはもう「うわぁ」という表情を浮かべざるを得ないのだが、
「ちょっと、カッコイイ、かも……」
 中にはその神々しい姿に魅了されてしまいそうになってしまうような気がしなくもない方々もいそうな、いなさそうなその時。
「スプジャンダル……およそ聞かぬ名ではある……然し、其の気風。本来は余程名誉高き一族の末裔と見たわ。此の剣を交える前に聞かせて頂戴。貴方は何処より来たり、そして何処へ去りゆく渡り鳥なのか『訳:お前のキャラ設定を晒せ。話はそれからだ』」
 ビルシャナの元へと駆け付けるアリス達。
 同調なり否定なりなんなりして、おもしろかっこよくビルシャナの気を惹いている内に、周辺の一般人を避難させるという作戦だ。
 避難誘導の先陣を切るのは。
「私たちはケルベロスです! 皆さん、慌てず騒がずここから避難してください!」
 多くの人に声が伝わるよう、ハンドマイクを使い、周囲の人々に避難を促す信乃。
 ビルシャナとの戦闘の影響が及ばないであろう、公園に向けて避難するよう呼びかける。
「お年寄りや小さい子供もいます! 皆さん協力しあって避難してください!」
 信乃は細やかな気遣いも忘れない。

 とその時。
「ぐぬうぅぅ……ベロス……ルベロス……ケルベロスウゥゥゥウ!!!
 首を掻きむしりながら声をあげるビルシャナ。
「我が魂、ソウルスプジャンダルを封印した憎き、憎き敵(カタキ)いいぃぃ!! ……許さぬ。許さぬぞおおお!! このダークブラッドアイズを手に入れた今、我が誇りにかけて、そしてダークフェザーズの名に懸けて、貴様らを闇に葬ってくれるわあぁぁ!!」
 決まった! と言わんばかりにびしぃ! とケルベロス達を指さすビルシャナ。
 はぁ。
 ため息が聞こえた。
「設定とかの整合性とかが一番気になる。設定モロ被りもそうだが、逆にぶつかる時とかどうなんの? 設定ブレないの? ブレたら恥ずかしくないの? あと中二病って言うからには年齢制限あると思う『真顔』」
 そしてすっごい正論をぶん投げる瑞樹。
 ビルシャナ、えっ? て顔して、ちょっと涙目。
「中二病は面白そうなのはわかる。でも過ぎれば痛々しいだけだと思うんだよな。正直本気でやってるのを見るのはしんどい。わざとやってるってのだと安心してみてられるんだけどな」
 だが瑞樹は続ける。
 ビルシャナ、えっ? えっ? って顔して、涙目。
「終末の刻を高らかに示す最後の鐘。我こそ極星、アンヴァルとは人の身の仮の名に過ぎぬ。極星は総てを穿つ者なり。堕ちしスプジャンダルよ。宿命に選ばれし者達の言葉を、今一度……魂に刻むが佳い」
 えっと、なんか難しいよアンヴァルさん。
 でもなんかいいよアンヴァルさん。
「スプジャンダルの覚醒めは、一万と五千年先の彼方の未来の筈……何故に今に及んで……因果律を乱す暴挙に出たか。世界の法則が、崩壊(こわ)れるぞ? それは汝も、希望(のぞ)んではおるまい……それとも、光の顕現たる汝までもが……暗黒に回帰したと申すか!」
 そのままの勢いで一息で続けるアンヴァルさん。
 一億と二千年……いやなんでもない。
 とりあえずビルシャナはポカーンである。
「古傷を抉られる前に去りなさい……此れ以上は貴方達が忘却の彼方に閉じ込めていた物語が目を覚ますことになる……」
 ビルシャナのの背後に回りこみつつ、めっちゃボディランゲージでアピるアリス。
「ばっ、馬鹿をいうな! ……? 貴様、まさかアリスィングオブザナイトマスターか!?」
 アリスの姿をみとめ、おののくビルシャナ。
 ちょっと楽しそう。
「スプジャンダル、まさかもう既に現界の依り代を……!?」
「はっ! くくくっ……今頃気が付いたのか……だがもう遅い。この世は破滅の道を辿ることでしかその存在を続けることができぬわ! 主もそう思うだろう? ……えーと、ダークスター蓮華」
 今えーとって言った!
「なんてことっ……! しかし、まだ間に合う! 暗黒の波動を抑える霊薬がある、これを打てば必ず……!」
 しかしのっかる蓮華。
 よく鉢植えとかに差す例のアレみたいなやつを取り出す。
「笑止! そんなもの、暗黒の波動に見染められたこの我に効くものかっ!」
「くっ、もう手遅れだったなんて……! このままでは闇の力が世界に……!」
 二人とも、楽しそうでよかった。
 一方ぽかちゃん先生は飽きてそこらへんのもふもふした草とかにじゃれ始めていた。
 ぽかちゃん先生可愛いね。
「其は光、其は涙、其は慈悲。汝憩うべし、安らぐべし。大いなる腕に抱かれ唯々眠るべし……」
 慈悲の表情を浮かべるスプリナ。
「この腐りきった世を変えるのは我が神をおいて他になし。貴方は選ばれたのです、人類を正しく導く王として。只……スプジャンダル、彼は神の御許に仕えなければならない存在。そう、それこそが人類の真の目的……過ちを繰り返す人類の愚かしさ……その人類を支配し管理するのです」
 いや、ごめん、何がなんだか……。
(「あたし一般人だけど、ちょっとケルベロスって……」)
 そんな様を横目に、避難を始めていた一般人の方から漏れ出る声。
「皆さんを安全に避難させるための作戦です」
 すかさずフォローを入れる鬼灯。
「一つ、意見を言わせて貰おうか。中二病……皆が『ソレ』を持つことは肯定するよ。背伸びしてもいいじゃないか。己を修飾しても構わないだろう。己を愛せないで、何を為せるというのだね」
 建物と建物の間から、コツ、コツ、と歩みだし、クールアンドスタイリッシュに姿を現すアンゼリカ。
 ここってタイミングで満を持して登場だ。
 で、今までそこで出番待ってたの?
 ちなみにお腹は6つに割れて……ない!!
「己の中に眠る何かを解放したいという欲求。全ての人がソレに寛容になれば、相手に優しくもなれる。それぞれが、暴走を欲する闇のもう一人(設定)を認め、リスペクトし、己(設定)に反映し、高めあう。それは、優しさだろう」
 ごめんなさい。
 ちょっともうアンゼリカさんも何を言っているのかが僕にはよくわかりません。
「そうだな、そういうことだな。我が内に眠る黄金騎使……」
 そっと目を閉じるアンゼリカ――。

 アンゼリカは感謝していた。
 この世界に生を受け、そして黄金騎使としてなお生き続けられていることに。
 そしてその言葉、優しさとともに右手を天に掲げるアンゼリカ。
 その手には、確かに握られていた。如意棒が。
 はて、ライトセイバーは?
「それでは、黄金騎使の”光”をお見せしよう! 我が金色の魂に呼応するがよい! ゆくぞライトセイバー!!!」
 アンゼリカさんやり切った!
 でもそれ如意棒だよね?

●君に捧げるシンフォニア
 信乃と鬼灯の避難誘導が功を奏し、周囲の一般人の避難は完了した。
 あとはもうビルシャナをどうにかするだけだ。
「……一度捉えた獲物は、逃がさない」
 螺旋氷縛波と惨劇の鏡像を交互に放つアリス。
 そしてトラウマが6個付与出来たかなってところでSweet Snipeとジグザグスラッシュに攻撃を切替える。
 Sweet Snipe――其れは万人を死へと誘う甘い毒。相手の関節や傷、体幹を担う箇所や弱点を狙って正確無比な一撃を放つ。本来は相手の動きを鈍らせ、確実に仕留める布石として用いる暗殺技術である。
 すっごく中二っぽいのでそのまま採用させていただいたのは秘密だ。
「中二病は切って治す『物理』」
 武器封じをしながら援護していく蓮華。
 自分へのダメージはちゃんとシャウトで回復だ!
 ぽかちゃん先生だってディフェンスポジションで武器封じをしながら頑張るよ!(でも二人とも見切りには注意)。
「さぁ受けたまえ……この究極の光の中、無に帰るといい!」
 グラビティと如意棒をいい感じに使い倒すアンゼリカ。
 ピンチの時はシャウトの準備も万全だ。
「中二病とかよくわかんないです」
 ザシュッ!
 絶空斬を放つ信乃。
「中二病とかよくわかんないです!」
 フォー!!
 サイコフォースを放つ信乃。
「中二病とかよくわかんないです!!」
 斬霊斬を放つ信乃。
 ビルシャナは、えぐっ! とか、あいっ! とか声をあげる。
「眠りなさい、真に目覚めの時が来るまで」
 手持ちで一番命中率の高いグラビティを使用するスプリナ。
 ちょっと、そんなのってありなの?
 ありなの!
「スプジャンダルには我が権能で葬送曲を」
 そしてノリノリで攻撃を加えるアンヴァル(14歳と21ヶ月児)。
 14歳的妄想でスプジャンダルを釘付けにして、その隙に避難して貰ったというあざとさ。
 何も問題はない。
 そしてなんだかんだで気が付いたらビルシャナはこの世からスプジャンダルしていたのだった。

●歌いたかったレクイエムンダル
「なんとか倒せましたね」
 スプジャンダルしたビルシャナを見つめ、ほっ、と胸をなでおろす信乃ンダル。
「一般の人に被害が及ばなくてよかったです! 信乃さんもありがとうございました!」
 鬼灯ンダルは信乃ンダルに笑顔を向ける。
「くっ……抑えが効かなくなって来たようだわ……」
 疼いて仕方がない、と、ついに包帯を撒いた右腕を抑えるアリスィング。
 そういえば昨晩寝てる時に、プ~ン、て耳元を飛び回るモスキートスプジャンダル的な音してた。
「素で豆腐料理だと思ってたスプジャンダル」
 至って真顔の瑞樹ンダル。
(「もういいかな?」)
 といった表情を浮かべ、蓮華ンダルを見つめるぽかちゃんだる。
「光あるところに闇あり。私にできるのだろうか……いや、きっと、守れるものは、あるさ」
 スッとライトセイバー(如意棒)をしまうアンゼリカ。
「……何。もう厨二はいい? 別にいつも通りだが」
 ええ、アンゼリカさんはいつも通りでございます。
「……今夜は一晩かけて懺悔ですね……」
 目を閉じ、祈りを捧げるスプリナンダル。
 シスターに身を置きながら、あたかも神をネタにしてしまったことの罪悪感にさいなまれているご様子。
「疲れた」
 とりあえずヒールをかますアンヴァルンダル(16歳)。
「中二病……凄まじい強敵だったわね……多くの人々の心に傷を刻んだその雄姿……忘れはしないわ……たぶん」
 アリスィングの言葉が夕闇に染みる。
 みんな、誰しもその時は本気なのである。

作者:湯豆腐 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年11月16日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 8/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 1
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