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「皆さん、大変っす!!」
息せき切らし現れたのは、黒瀬・ダンテ。
ふぅー、ふぅーと深呼吸しダンテは息を整えると、集まったケルベロスたちに目を向ける。
「皆さん、本当に大変なんすよ!! あの城ヶ島への潜入任務が決まったっす」
今までは多数のドラゴンが生息するための、攻略することができなかった城ヶ島への潜入作戦が、水凪・紗璃亞(水凪流戦刀術士・e04007)さんにより立案されたのだ。
「これは大変危険な任務になると、予想されるっす」
鎌倉奪還戦と同時に城ヶ島は、ドラゴンたちに占拠され、拠点とし守りが固められているのである。
「この任務は、ケルベロスである皆さんにしか遂行できない任務なんっす。どうか、よろしくお願いしますっす」
●
「作戦の概要について、説明するっす」
ダンテはそう言うと、占拠される前の城ヶ島の地図を取り出す。
「今回の潜入任務はちょっと不便なんっす。いつもならヘリオンで現場まで行けるんすけど、今回はヘリオンが使えないんっす」
城ヶ島周辺の空域は、多数のドラゴンにより警戒されており、ヘリオンを使うことは自殺行為なのだ。
「でも、心配はご無用っす。三浦半島南部からの移動手段はいくつか、こっちで用意できるんで」
潜入に伴い、小型の船舶や潜水服、水陸両用車が用意でき、作戦に応じ使用することができる。
「ただ……海を泳ぐドラゴンも目撃されてるんで、安全とは言えないっすけど」
と、申し訳なさそうにダンテが呟く。
「気を取り直して、今回の作戦の戦闘指示っす。今回は作戦だけにちょっと特殊なんっす」
敵に発見された場合、おそらくドラゴンとの戦闘になる。
ドラゴンはブレス、ドラゴンクロー、ドラゴンテイルの3つを使用してくる。
ドラゴンとの戦闘に勝利しても、すぐに別のドラゴンが現れるため、敵に発見された場合、そこで調査終了となる。
「ただ敵に発見されると、調査は終わりになるんすけど、それでも重要な仕事があるっす」
この任務では、敵と派手に戦い、他の調査班が発見されないようにするといった援護も重要になる。
「今回は引き際を間違うと、最悪の結果が予想されるっす。でも、この任務には危険を冒すだけの意味があるっす。どうか任務を成功させ、ここに帰ってきて欲しいっす」
そう言ったダンテは、ケルベロスたちに頭を下げるのだった。
参加者 | |
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篠宮・紫(黎明の翼・e00423) |
ベルモット・ギルロイ(白熊さん・e02932) |
水凪・紗璃亞(水凪流戦刀術士・e04007) |
月乃・静奈(雪化粧・e04048) |
糸瀬・恵(好奇心は猫をも殺す・e04085) |
夜陣・碧人(語り騙る使役術師・e05022) |
久遠・征夫(静寂好きな喧嘩囃子・e07214) |
レフィス・トワイライト(灰色ノ死神・e09257) |
●
白波を起こし、海上を走る車――水陸両用車に乗るのは8人のケルベロスたち。
水陸両用車は三崎魚市場近辺のボート置き場から灘ヶ崎を通って、長津岬へ向かおうとしていた。
「こんなコトになってるんじゃなければ、観光で来たかったわね……」
城ヶ島を眺めながら篠宮・紫(黎明の翼・e00423)が口を開く。
「不謹慎かもしれませんが……ドラゴンという強者との戦い、楽しみです」
「こういうのは冷静になろうとしても燃えますね……」
糸瀬・恵(好奇心は猫をも殺す・e04085)に同意する久遠・征夫(静寂好きな喧嘩囃子・e07214)。
「この島に住んでいた人々はどうなったのでしょうか……生きていてほしいのですが」
月乃・静奈(雪化粧・e04048)は城ヶ島の島民を思い、心配そうな目を向ける。
「そうだよね。城ヶ島で何が起こっているか、ボクたちの目で確かめないとね」
静奈の隣に座ったレフィス・トワイライト(灰色ノ死神・e09257)が、力強く言う。
「あれは何でしょうか?」
水陸両用車の窓から城ヶ島の様子を窺がっていた水凪・紗璃亞(水凪流戦刀術士・e04007)が、黒い塔に気づく。
「たぶん、元は灯台とその近くにあったホテルだと思うぜ」
地図に目を落としながら、ベルモット・ギルロイ(白熊さん・e02932)が言う。
「どうします? 長津岬はもうすぐですが」
ハンドルを握る夜陣・碧人(語り騙る使役術師・e05022)が、ケルベロスたちの方へ向く。
「聞くまでもなかったですね」
そう言うと、碧人は黒い塔へとハンドルをきるのだった。
城ヶ島に上陸したケルベロスたちは、水陸両用車を乗り捨て、徒歩で黒い塔に向かう。
敵を警戒し、進むケルベロスたちの隊列は静奈、征夫が先行、殿は碧人、側面と空の警戒にあたるのは紗璃亞、紫、恵、レフィスの4人だ。
ベルモットは地図を片手に、地形、建物の変化を記していく。
敵との遭遇なく、黒い塔の近くに差し掛かった所で、静奈が止まるようにとサインを送り、ケルベロスたちは近くの茂みに身を伏せる。
ケルベロスたちが見つけたのは、門番をする竜牙兵の姿だった。
索敵に出ていた静奈と征夫が戻ってくる。
「あの扉以外、出入りできる場所はありませんでした」
と、静奈が、
「あの2体以外に敵の姿はありません」
と、征夫が告げる。
「もともと、ここはドラゴンたちの領地。何か重要な物があるのかもしれません」
紗璃亞が言う。
「行くしかないみたいだな」
そう言うとベルモットは地図をしまい、拳にオーラを纏わせる。
「ボクもベルモットさんに賛成だよ。塔で何が行われているか、確かめないと」」
やる気をみせるレフィス。
「できるだけに静かにやりましょう」
2人を落ち着けるように碧人が言う。
「それがよさそうです。仲間を呼ばれると、塔の中を探索できませんから」
恵は辺りを警戒し、増援、伏兵がいないことを再度確認する。
「ここからは、さらに気を引き締めるわよ」
紫の言葉に、ケルベロスたちの表情がより一層緊、引き締まるのだった。
●
竜牙兵たちはいつものように門番をしていた。
別段、問題が起きるわけでもない退屈な任務に辟易としていたのだが、今日は違っていた。
目の前の茂みから物音が聞こえ、1体が訝かしみながらも茂みに向かう。問題がないとわかりつつも確かめるのが、ドラゴンから与えられた任務なのだ。
1体が釣られたことを確認し、レフィス、静奈、征夫、紫が動く。
「終わらない悪夢を見るといいよ……!」
門の前に残った1体の体がレフィスの召喚した緑の粘液に浸食され、動きが止まる――無貌の従属。
動きの止まった竜牙兵に静奈、征夫、紫が一斉にかかる。
静奈はマインドリングから作り出されたマインドソードを振るい、その傷を正確に征夫の空の霊力を宿した日本刀が斬り広げる――絶空斬。
竜牙兵の動きが戻る。竜牙兵はルーンアックを征夫に振るい、それが空を斬ると返す刃で静奈を襲う。
しかし、刃は届くことはなかった、紫がそうはさせなかったのだ。ルーンアックスが届くよりも先に槍の如く伸ばされた紫のブラックスライムが竜牙兵の命を絶つのだった――ケイオスランサー。
茂みから戻ってきた竜牙兵が、ケルベロスたちの姿を視認する。と、仲間を呼ぶべく声を上げようとする。
「うるせぇ! 黙ってろ!」
声を発した瞬間、竜牙兵にベルモットの右ストーレートが見舞われる。
衝撃に吹き飛んだ竜牙兵は、ルーンアックスを地面に突き刺し、衝撃を和らげると高々と飛び上がり、ルーンアックスをベルモットに叩きこむ。
竜牙兵を恵の掌から放たれたドラゴンの幻影――ドラゴニックミラージュが襲い、身を翻し躱した竜牙兵に紗璃亞と碧人が肉薄する。
緩やかな孤を描き放たれる斬撃――月光斬、影の如き視認不可能な斬撃――シャドウリッパーが急所を捉え、竜牙兵は倒れるのだった。
竜牙兵との戦闘を終え、ケルベロスたちは辺りを警戒する。音を聞かれ、増援が来るのでは、と警戒していたが、それは杞憂に終わる。
間近で見た黒い塔は明らかに元の原形を留めておらず、闇の祭壇のような尖塔になっており、外壁には1度破壊し、ヒールで治したような痕跡が見て取れる。
塔に侵入したケルベロスたちは、待ち伏せの可能性も思案していたが、塔の中は拍子抜けするほど静かで敵の姿はない。
早々に探索を済ませ、塔の最上階を目指すケルベロスたち。そこで彼らは1人の女性の姿を目にするのだった。
●
屋上に上がったケルベロスたちが目にしたのは、女性だけではなかった。本来は灯台のライトがあった場所に『怪しく光る宝石』が埋め込まれてある。
もう一度、女性に目を戻す。
女性は、それは本当に服なのか? と首を傾げたくなるような服装――上半身は豊満な胸を覆う胸覆いのみで、腰から尻までの露になっているラインは女性的な妖艶さを醸し出す。秘部を隠すだけの腰巻は、屈めば中が見えてしまいそうで、そこからスラリと伸びる足がまた綺麗なのは言うまでもない。
簡単に言えば、女性は破廉恥な服を着ているのである。
その妖艶さは男性陣だけでなく、女性陣も生唾を呑み込んでしまうほどだ。
「誰じゃ!!」
ケルベロスに気づいた女性が振り返る。と、ケルベロスたちは長いため息とともに、がっくりと肩を落とす。
振り返った顔は肉が弛み、額の皺が4本、目尻のしわは深く、明らかに濃く塗られた化粧。その体と顔のギャップは凄まじいものであった。
しかし、そんなこと女性には関係ない。
「我のビフレストを奪いにきたのじゃな、そうはさせぬぞ!!」
叫び声を上げる女性。突如、その容貌に変化が現れる。
額を突き破り、雷様の角が露となり、背中の皮膚を突き破り翼が、体色は漆黒の黒へと変わる。
「……ドラゴン」
誰かの口から言葉がついて出る
そう、今ケルベロスたちの目の前にいるのは、もう女性ではない。女性はドラゴンと化し、ケルベロスたちの前に立ちはだかったのだ。
ドラゴンの翼の羽ばたきは凄まじい風を巻き起こし、その巨体を宙に浮かせる。飛びあったドラゴンは滞空し、ケルベロスたちを見据えると体から雷が迸らせ、それが口へと集まり、雷の奔流がケルベロスたちに襲い掛かる。
雷のブレスが降り注ぐ瞬間、静奈が動いた。
静奈は祭壇から霊力を帯びた紙兵を大量に散布し、仲間たちを守護する――紙兵散布。
そして、雷のブレスがケルベロスたちに降り注ぐ。
膝を着くケルベロスたち。しかし、全員が膝を着いたわけではない。
「お返しです」
恵が掌からドラゴンの幻影を放つ――ドラゴニックミラージュ。
しかし、ドラゴンはそれを滑空し躱す。避けはしたものの、ドラゴンが幻影に気を取られた一瞬、征夫が塔を発つ。
征夫はドラゴンを超え、さらに上空で止まり一気にドラゴン目指し急降下する。
「切れずとも潰すっ! 壱の太刀熨斗紙ッ!」
頭上からの衝撃にドラゴンが真っ逆さまに落ちる。しかし、塔に落ちる寸前、翼を力強くはためかせ衝突は逃れる。
「落ちろ」
ベルモットが凍結光線を発射し、ドラゴンの熱を奪う――フロストレイザー。
「忍び寄る呪い、静かに、彼の命を深淵の竜の元へ誘わん――眠る竜の呪い」
碧人の放った牙の呪いが、ドラゴンの生命を感知し襲いかかる。
2人の攻撃にドラゴンが塔に降り立つと、ケルベロスたちが一斉に躍りかかる。
「この太刀筋、あなたに見切ることができるかしら――水凪流戦刀術攻技『裂雨』」
懐に飛び込んだ紗璃亞は巧みフェイクでドラゴンを翻弄し、斬撃、刺突、柄頭での打撃と流れるようにドラゴンを襲う。
紗璃亞の斬撃が、竜燐に弾かれるとそこに容赦なく、鋭い爪が襲い掛かる。
爪を受け、退く紗璃亞。
「大丈夫ですか!? 今回復します」
オーラを溜めたレフィスが紗璃亞の許駆け付け、傷を癒す。
ただ回復を許すほど、ドラゴンは甘くはない。レフィスが傷を癒す最中、ドラゴンの尾が振るわれる。
「フレア!」
碧人のサーヴァントのフレアがレフィスを庇い、尾を受ける。
同族が人を庇うのか、と咆哮を上げるドラゴン。しかし、フレアは1歩も退かず尾からレフィスを庇う。
「うるせぇ! 黙ってろ! 戦場で言葉は不要だ!!」
ベルモットの右ストレートがドラゴンの顔面を捉える。ドラゴンは忌々し気な表情を浮かべ、ケルベロスを薙ぎ払うべく尾を振るう。
ケルベロスたちが尾を躱す一瞬、ドラゴンは空高く舞い上がる。
もう一度落とすべく、態勢を整えるケルベロスたち。しかし、ドラゴンの方が早い。迸る雷のブレス。それがケルベロスたちを襲う。
倒れ、伏せるケルベロスたち。王者の帰還と言いたげに優雅にドラゴンが塔に舞い降りる。
ドラゴンは目を疑う。1人立ち上がった者がいた、静奈だ。
「御業よ、優しき雪の結晶よ、凛然と咲く雪の花よ、全てを癒すま白き化粧と成れ。在るべき姿へと戻したまえ」
雪の結晶が優しく舞い降り、『御業』が雪の結晶に触れた者たちを癒していく。
次々と起き上がるケルベロスに、ドラゴンは今一度ブレスを見舞おうと翼をはためかせる。
しかし、それは許されない。
「何度もやらせないぜ」
「そこまでだ」
ベルモットと征夫がドラゴンに躍りかかる。ベルモットは獣化した拳を高速で放つ――獣撃拳を、征夫は緩やかな孤を描く斬撃――月光斬で翼を切り裂く。
地面に落ちるドラゴン。
そこに碧人が放った影の弾丸が見舞われる――黒影弾。
お返しとドラゴンが尾を振るう。尾を受ける瞬間、レフィスがケルベロスチェインを操り、ケルベロスたちの足元に魔方陣を描きケルベロスたちを守護する。
「これで少しは楽になるはず」
ドラゴンの懐に飛び込んだ紗璃亞は、日本刀に空の魔力を宿し、征夫が見舞った傷をさらに斬り広げる――絶空斬。
痛みに悲痛な声を上げるドラゴン。
飛び立つべく、翼をはためかせるがドラゴンは気づく。恵が作りだした光球に。
「舞い散り爆ぜよ、刹那の輝き」
高速で放たれた光球はドラゴンを追い、光球に触れたドラゴンの体を焦がす。
「汝が遡るは因果の果て、其の始り、原初の道。虚無の顎門へ誘いし鎖に慈悲は無く、汝の根源へ繋ぐ頸木より逃れえる術も無し」
地に伏せるドラゴンの周囲に無数の魔方陣が形成され、魔方陣から放たれたグラビティー・チェインがドラゴンの四肢を穿ち、球形の立体の魔方陣を形成し、さらに作られたブラックホールがドラゴンを蝕む。
ドラゴンはまだ健在であった。しかし、もう戦闘の意欲は見られない。ドラゴンはケルベロスたちに畏怖の眼差しを向けると、傷ついた翼をはためかせる。
一旦退き、ビフレストの欠片を安全な場所に移し、仲間とともに逆襲するつもりなのだ。
しかし、逃亡など許されるはずはなかった。
「お前の罪をいまここで断罪するッ!!!」
魔導書から死の瘴気を償還し、レフィスがそれをドラゴンに放つ。放たれた弾丸はドラゴンの胸を撃ち抜き、その魂を破壊するのだった。
●
ドラゴンとの戦闘を終えたケルベロスたちは傷を癒す間も惜しみ、辺りを探索していた。
「目ぼしい物はこれだけですか」
碧人はビフレストの欠片を手に言う。
「おい、俺達が戦ったのはドラゴンだったよな?」
「そのはずです……何がっ!?」
ベルモットの問いに答えた征夫は息をのむ。
先ほどまでドラゴンだった死骸が、今はドラグナーへと変貌を遂げていたのだ。
「ドラゴンではなく、ドラグナーであの強さなのですか……」
事実を知った恵は、さらなる強敵ドラゴンに思いを馳せつつ、今は遭遇しないで欲しいと心の底から思う。
「もう探索も終わりましたし、早くこの場を離れた方がいいのではないでしょか?」
紗璃亞の言葉に、一同頷き、足早に塔から脱出するのだった。
ケルベロスたちは水陸両用車にたどり着くと、すぐさまエンジンをかけ離脱するべく走り出す。
水陸両用車に揺られながら、レフィスが口を開く。
「ボクが思っていたより、城ヶ島は大変なことになってたね」
「そうですね。ドラゴンの数を減らせなかったのが、心残りです」
静奈は悔しそうに言葉を紡ぐ。
「でも、皆が無事で一緒に帰れて本当に良かったよ」
紫の言葉にケルベロスたちは一様に頷き、帰路につくのだった。
作者:缶屋 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2015年11月24日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 15/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 0
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