●活きる道は死の標
静岡県沼津市、沼津港。
深夜よりちょっと早い、夜11時頃……その港湾に立つ、赤い翼を持った……女性型死神。
彼女は海を暫し眺めた後……目を瞑り、念じる。
すると……彼女の間近に2体の下級死神が姿を現わす。
カツオの様な風体の『ブルチャーレ・パラミータ』、マグロの様な風体の『メラン・テュンノス』。
その二体の死神へ、頷く赤い死神。
「お行きなさい、ブルチャーレ・パラミータ、メラン・テュンノス。ディープディープブルーファングの戦闘能力を、自らの力として見せるのです」
と指示を与えると……二体の死神は尻尾を大きく振るわせながら、港を超え、漁師町に向けて動き始めるのであった。
「ケルベロスの皆さん、集まって頂けた様ですね。では、説明を始めます」
と、セリカ・リュミエールは、集まったケルベロスへの挨拶も早々に、早速。
「今回、静岡県は沼津市の漁港近くの待ちが、2体の魚型死神に襲撃される事件が起きようとしています」
「事件を起こすのは、ディープディープブルーファングを使役していた死神の様です。彼女はディープディープブルーファングを量産していた海底基地が破壊された事で、作戦を変更してきた様なのです」
「この2体の魚型死神は、カツオ型とマグロ型をしている様で、下級の死神ではありますが、戦闘能力がかなり強化されています」
「下級死神2体は全長5m程、空中を及ぶ様に移動し市街地へ到着次第、住民虐殺を行う事は間違い有りません」
「ディープディープブルーファング事件と、今回の事件がどう関係しているかは分かりませんが……ケルベロスの皆さんがやるべき事には変わりはありません。この二体の魚型死神を撃破し、人々を守って頂きたいのです」
更にセリカは、詳しい情報を説明する。
「今回現れる死神達は、全長5m程の体躯……攻撃手段は突進攻撃が基本となります」
「この突進攻撃に加えて、ブルチャーレ・パラミータはディープディープブルーファングのサメ魚雷に近い、卵のような物を発射する散乱攻撃を行います」
「一方のメラン・テュンノスは、腹部から内臓を捻りだした様な触手を出して攻撃する触手攻撃を行う様です」
「又、周りは日付の変わる頃……漁師の方々は、寝静まっている頃でしょう。余り騒ぎ立てると人が来てしまう可能性もありますし……その特攻攻撃で家々を破壊する可能性もありますので、彼らの動きをある程度制限出来る様な工夫が必要になると思います」
そして、最後にセリカが。
「海底基地の破壊に成功したことにより、死神の作戦にも打撃を与えられたのでしょう……もう一息だと思います。皆さんの力、貸して下さい」
と、頭を下げるのであった。
参加者 | |
---|---|
蒼龍院・静葉(蒼月の戦巫女・e00229) |
三和・悠仁(憎悪の種・e00349) |
レクシア・クーン(咲き誇る姫紫君子蘭・e00448) |
夜陣・碧人(影灯篭・e05022) |
唯・ソルシェール(フィルギャ・e24292) |
伽藍堂・いなせ(不機嫌な騎士・e35000) |
エリン・ウェントゥス(クローザーズフェイト・e38033) |
桜衣・巴依(紅召鬼・e61643) |
●活魚
静岡県沼津市の沼津漁港。
深夜、というよりは夜中という頃の、午後11時……漁港とその近くの漁師町は、静けさに包まれている。
もう数時間もすれば、海の男達が漁へと勇ましく出発していく事だろう……つまりこの静けさは、この漁港で繰り返される一時の静穏である。
……しかし、そんな静穏に包まれた漁港に、突如現れたのは、赤い翼を持った女性型死神。
そして、彼女により産み出された下級死神が二体……カツオの様な風体の『ブルチャーレ・パラミータ』と、マグロの様な風体の『メラン・テュンノス』。
そんな魚の姿をした死神を退治してきて欲しい、とセリカより依頼されたケルベロス達だが……。
「カツオにマグロなァ……字面だけ見りゃ食えそうだが、ま実物見りゃンな気も失せるよな……」
伽藍堂・いなせ(不機嫌な騎士・e35000)が深い溜息を吐く。
……他のケルベロス達からの話、そしてセリカからの説明を聞く限り、確かに姿形は巨大なマグロとカツオである。
だが……一つは卵を散弾銃の様に散乱し、もう一つは内蔵を捻りだした様な触手を持つというのは、奇っ怪、かつ気色悪い事この上無い。
「内蔵に、卵にと……殊勝にも内側を曝け出すと言うのなら、良いだろう」
静かに三和・悠仁(憎悪の種・e00349)が呟くと、唯・ソルシェール(フィルギャ・e24292)と夜陣・碧人(影灯篭・e05022)、そして彼のボクスドラゴンのフレアが。
「元よりその動向が分かりにくい死神ですが……これが混乱なのか、新たな計画なのか図りかねますわよね」
「ええ。ふざけた姿をしている割に手強そうですから、注意しませんと」
『ぎゃう! ぎゃーうーー!!』
……何かフレアは嬉しそう。その言いたい事を理解した碧人は。
「……フレア? これはご飯ではないですからね、ええ」
『ぎゃう? ぎゃうー……ぎゃう!』
最初残念そうな顔をしつつも、でもがんばる、と言った感じで鳴いてくるフレア。
コロコロと鳴き方と、表情を変えてくるから、何となく周りの仲間達も、言っている事が何となく分かる気がする。
……ともあれ、今回の相手はマグロとカツオの風体こそしているが、死神である事に違いは無い。
それも、昨今起きているディープディープブルーファングを産み出した者と同じ死神……関連性は分からないが、強敵であるのは間違い無い。
「正直、デウスエクスでなければ食べたかったですね。巨大カツオとマグロですから」
「そうですね。たしかにデウスエクスでなければ良かったですね……」
と蒼龍院・静葉(蒼月の戦巫女・e00229)と桜衣・巴依(紅召鬼・e61643)の言葉に対し、エリン・ウェントゥス(クローザーズフェイト・e38033)が。
「いや、普通食べようと考えちゃダメだと思うよ……」
冷静に突っ込むものの、二人がどれだけ本気なのかもちょっと分からない。
……ともあれ、このマグロとカツオが暴れ廻るのを阻止するのが今回の依頼。
「出来る限り早く終わらせましょう。漁師さんたちが睡眠不足になってしまったら明日の漁業にも影響が出てしまいますし」
「ええ。いっそうの警戒をして参りましょう。海辺の警備を日課にしていきましょう」
レクシア・クーン(咲き誇る姫紫君子蘭・e00448)に頷くソルシェール。
そしてケルベロス達は、その死神二体を倒す為、漁港近くへと展開するのであった。
●暴魚
静けさに包まれた漁港……人が居ない事が、この上なく恐怖心を刺激する空間。
そこをレクシア、いなせ、ソルシェールとフレアが翼で飛行。
空から捜索すると共に、残る仲間達は地上からの二面作戦を展開。
更に戦場となる部分に、万が一にも人が立ち入らない様に、静葉は悠仁と協力。
漁港近くを全部を囲む様、キープアウトテープを張り巡らせる。
……外側からキープアウトテープを張り巡らせ、人を追い出す様に。
幸い一般人は、漁港の中には無かった様で、取りあえずは安堵。
そして……六割ほどキープアウトテープを張り巡らせた、その瞬間。
「発見しました。少し北……市場の近くです」
上空から索敵していたレクシアから連絡が飛んできて、カツオとマグロの死神の位置を把握する。
すぐにケルベロス達が急行……二匹の魚型死神が宙空に浮かぶ所へ到着。
「居ましたね……取りあえず、此処だと被害が出ますし、こちらへと連れて行きましょう」
と巴依が仲間達に言い、注意を惹きつける様にして其の場から離れる。
殺すべくターゲットを発見した死神達は、当然それを追いかける様に進軍開始。
大きく跳ねながら動くその姿は、水平線の上でピチピチ跳ねる、活きの良い魚の様。
でも……その体長5mと巨大な状況では、気色悪さの方が勝る。
更にマグロの死神の方は、その内蔵を引き摺り出した様な、毒々しい赤色の触手が地面を叩きながら進んで来る。
「キモい触手だな、寄生虫かよ。しばらく魚食えなくなんじゃねーか、どうしてくれんだコラ!」
といなせが吐き捨てるが、マグロ死神は当然聞く耳を持たない。
……ただ、途中で興味を失ったかの様に、町の方へと不意に向かおうとする魚死神。
「てめぇらの相手はこっちだ、逃げんじゃねぇ!」
いなせが牽制の轟雷砲を放ち、ダメージを食らった死神の進路を誘導。
そしてどうにか魚死神を、市街地から大きく離れた、倉庫と倉庫の間の通路まで惹きつけると。
「良し。挟み撃ちです」
とエリンの言葉と共に、挟撃の両面に立ち塞がるケルベロス達。
前と後ろを塞がれた魚死神……互いに顔を見合わせたかの様な仕草を取る。
そんな死神へ悠仁が。
「中から、死ね。刳られ炙られ掻き回されて、ただの肉塊に成り果るがいい」
辛辣な言葉と共に近接……達人の一撃を真っ正面から叩き込む。
その一刀両断……魚死神は跳ねて、ギリギリの所で回避。
……どうやら、海にいる魚なりに中々動きは素早い様で。
そして反撃とばかりに、魚卵をその場で弾けさせて、散弾銃の様な攻撃。
更に内臓触手を鞭のようにしならせ、巻き付けようとしてくる。
取りあえず、触手の攻撃はギリギリで回避するソルシェール。卵攻撃に、幾分ダメージを食らうものの、大きな怪我にはならない。
「……身を削るような攻撃なのかはさておき、なんともグロテスクですわね……死神と言えば、骨のイメージではありますが……」
そう呟きつつも、視線で合図。
それに呼応する様にいなせが。
「ビタ」
端的に指示を与え、ビタは清浄の翼でソルシェールを回復。
「ありがとうございます……取りあえず、どちらから仕掛けますか」
と言うと、エリンが。
「ブルチャーレの攻撃の方が厄介です。そちらを優先しましょう」
ターゲットを指示しつつ、前衛へメタリックバーストで強化。
「了解しました」
と頷きながらソルシェールがカツオ死神に近接し、ジュデッカの刃で一閃。
そして、ジャマーのレクシアは前衛へ紙兵散布、いなせはエリンへマインドシールドで盾アップを付与。
また、静葉はエリンにメタリックバーストで、それぞれ強化。
一方、碧人は。
「フレア、行きますよ」
『ギャーウ!!』
声を掛け合い、碧人がスターゲイザー、同時にフレアのボクスブレス。
炎に燃え上がるカツオ死神……ただ薫るのは香ばしい匂いではなく、腐乱した匂い。
「やはり死神ですか……不味そうです。さっさと仕留めましょう」
心底残念そうに巴依が呟き、轟竜砲でその身を貫く。
次の刻。
死神二体はまだまだ活きが良く、飛び跳ねながら散弾卵と内蔵触手で無差別に攻撃。
巻き付く触手は……巴依のライドキャリバーを拘束。
エンジン音を掻き鳴らし、グルングルンと振り解くように動き回り……拘束解除。
「……巻き付かれると厄介ですね。とは言え散弾卵の方が、範囲攻撃でそれも面倒……」
「ええ」
巴依に頷くエリン。
……ともあれ狙いは変える事なく、カツオ死神。
「面倒臭ぇな……本当」
軽く舌打ちしつつ、いなせは前衛へヒールドローン。
そしてレクシアの次元凍結弾に、ソルシェールがヴァルキュリアブラスト、悠仁のルーンディバイド、そして碧人のグラインドファイアによる集中攻撃。
そしてエリンは。
「怒りで惹きつけます。援護をお願いします」
と静葉、巴依と頷き合い、彼女がファナティックレインボウ。
静葉が禁縄禁縛呪、巴依の斉天截拳撃の連携攻撃。
怒りを受けたカツオ死神の視線は鋭い物に変わる……が、攻撃手段は変わる事は無い。
その後も、挟撃の陣形を活かし、敵の攻撃を分散させながら少しずつ、死神達の体力を削る。
……挟撃開始から八分程が経過。
「ったく……魚臭いならまだ分かるが腐乱臭漂わせんじゃねぇよ!」
といなせの放った轟雷砲がカツオ死神に命中すると……どうやら限界を超えた様で、まるで蒸発するかの様に消え失せる。
……どうにか、やっと一体を仕留め、残るは後一体。
ただ、範囲攻撃等が少しずつ体力を削っていた為か、既に最初の活きの良さは最早無い。
そんなマグロ死神の風体を見て。
「死体は鮮度がいのち、燃やして凍らせ、さっさと捌いてしまおうか」
と言うと共に『冬刃精の語り』で、敵を強制冷却。
氷に包まれた死神……その触手をぐっと掴んだ悠仁。
「さっさと、死ね」
冷酷に、その触手をぐっと引っ張り、内蔵を引き摺り出したところに『塵境毀壊・軌跡断ち』の一撃を叩き込む。
その一閃は、内蔵からその身を蝕み……マグロ死神も、霧散する様に消え失せた。
●死魚
そして……二体の死神の姿が、消え失せるのを確認したケルベロス達。
「ふぅ……どうにか終わったか」
と、軽く汗を拭いながらいなせが息を吐く。
そして静葉も……。
「ええ……皆さん、お疲れ様でした。マグロもカツオも姿、消えちゃったのは残念ですけど……仕方ありませんね」
……ちょっと未練がある様だが、取りあえず無事に仕留めた事に安堵の一息。
そうしていると……漁港傍の村の灯が、ポツ、ポツ、と点灯し始める。
「ん……どうやら漁師達の起きる前には片が付けられた様か」
といなせの言葉にレクシアが。
「その様ですね……あ、でも、色々と壊してしまいましたか……」
激しいマグロとカツオとの戦いによって、湖岸の設備が一部、壊れてしまっている。
船が壊れる等、致命的な物はないものの……停泊する設備とかに一部破損が……。
「取りあえず、漁師の方々が来る前に、最低限治しておきましょうか」
とソルシェールの提案に、エリンが。
「そうですね……少しファンシーになってしまいますが、仕方ありません」
と頷き、ケルベロス達は手分けして、周囲をヒールグラビティで修復していく。
……一通り終わる頃には、ちらほらと漁師の方々もやってきて……ファンシーな空間に驚く物の、いなせが真摯に、やって来た漁師の人達に説明を行い、納得して貰う。
そして、暫しすれば……漁港はいつもの日常を取り戻す訳で……。
その夜に繰り広げられる、活気ある光景を眺めながら、ケルベロス達は、その場を後にするのであった。
作者:幾夜緋琉 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2018年9月26日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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