ファクトリーオペレーション!

作者:澤見夜行

●襲撃の未来
 様々な機械音を鳴り響く工場。
 今日も沢山の作業員達が、汗水垂らして働いていた。
「そろそろ休憩の時間か……今日の昼は何を食べようかな――ん? な、なんだ!?」
 平和な工場内突如現れる空間の歪み。そして――。
「わ、わあああ! デウスエクスだ――!」
 機械音を響かせながら現れるダモクレス。人間サイズのものから大型のものまでいる混成部隊だ。
「ジャマモノ ハ ハイジョ スル!」
 人間サイズのシモーベ二体が工場で働く作業員達に襲いかかる。つるはしを振るい、容赦なく虐殺していく。鮮血がシモーベの身体を赤く染めた。
「ケイカイ ケイカイ。ケルベロス ヲ ケイカイ セヨ」
 シモーベの虐殺現場から離れた場所に展開した戦闘用ライドロイドとシモーベ三体が、ケルベロスの襲撃を警戒し周囲に視線を這わせ武器を構えていた。
 ダモクレス達の目的は何か。
 それは工場に大量に用意されている資材に他ならない。
 作業用ライドロイド二体が、分散して資材を集めていく。邪魔もののいない工場内で、自由に資材を集め、満載していった。
 そうして大量の資材を集め終わると、それぞれのダモクレス達が集まって、来たときと同じように魔空回廊を通り撤退していく。
 あとに残るのは資材を根こそぎ奪われ、鮮血の海に沈む工場だけとなるのだった――。


 集まった番犬達にクーリャ・リリルノア(銀曜のヘリオライダー・en0262)が前回の作戦を労った。
「お疲れ様なのです。
 皆さんの活躍で、ダモクレスの海底基地の破壊に成功したのです。
 この成功により、ディープディープファング事件で使われるダモクレスは製造されなくなるはずなのですよ」
 作戦は成功に終わったが、ダモクレスが行っていた研究の全貌は明らかにならなかった。とはいえ、死神との関係は、一方的なダモクレスの供与というわけではなく、なんらかの目的があったと思われる。その為、今後のダモクレスの動向には注意が必要と思われた。
「また、海底基地では、ダモクレスの資材採掘基地が海底に存在する可能性も示唆されていたようなのです。
 資材採掘基地を発見して破壊することができれば、ダモクレスの大規模な作戦行動を自由にさせない事ができるかもしれないのです」
 そうして、番犬達の成果を話したクーリャは本題へと移る。
「今回集まって貰ったのは、海底基地が破壊された事で、資材の補給が十分に行えなくなったダモクレス達が、資材を求めて工場を襲撃する事件が予知されたのです」
 現れるダモクレスは工場建設に従事していたダモクレスのようだという。
「彼らは、戦闘能力は高くないのですが、資材の強奪とケルベロスへの警戒、グラビティ・チェインの略奪を狙った作業員の襲撃などを手分けして行うなど、統制の取れた行動を行ってくるようなのです。油断のできない相手なのですよ」
 クーリャは資料を提示して、状況の説明を続ける。
「敵の襲撃ポイントは予知されているので、戦力配分を考えながらそれぞれの地点へと向かって欲しいのです」
 予知された襲撃ポイントは、
 ケルベロスの警戒を行う『戦闘用ライドロイドとシモーベ三体』。
 作業員を襲う『シモーベ二体』。
 資材を運ぶ『一体目の作業用ライドロイド』。
 そして残る『二体目の作業用ライドロイド』。
 以上の四カ所が予知されている。
 敵の数は多いが、敵の戦力もある程度わかっている。
「シモーベ一体の戦闘能力は、ケルベロス一人よりも少し弱い程度なのです。
 作業用ライドロイドならば、ケルベロス一人だとちょっと厳しいかもですが二人なら互角以上に戦えるのです。
 戦闘用ライドロイドは戦闘用なので、弱くはないのですが、ケルベロスが四人同時に戦えば十分に撃破が可能なのですよ。ただシモーベが周囲に三体いるので、六人くらいはほしいところかもなのです」
 それぞれのダモクレスの行動も資料に記載されている。後でしっかりと確認するのが良いだろう。
 説明を終えたクーリャが資料を置くと番犬達に声をかける。
「今回の目的は、敵ダモクレスを撃破しつつ、的の資材略奪を阻止する事にあるのです。
 勿論、被害者を出さないことも重要なのですが、一度に全てを達成しようとすると戦力が足らなくなるかもしれませんね。
 移動に掛かる時間や、敵の動きを考えつつ、作戦を練るようにしてほしいのです。
 どうか、皆さんのお力を貸してください!」
 ぺこりと頭を下げて、クーリャは番犬達を送り出すのだった。


参加者
赤星・緋色(中学生ご当地ヒーロー・e03584)
レオン・ヴァーミリオン(火の無い灰・e19411)
ミカ・ミソギ(未祓・e24420)
レスター・ストレイン(デッドエンドスナイパー・e28723)
カリン・エリュテイア(スカーレッドデッドガール・e36120)
アンナマリア・ナイトウィンド(月花の楽師・e41774)
長久・千翠(泥中より空を望む者・e50574)
五栖・紅(店長代理・e61607)

■リプレイ

●人命を守る
 ダモクレスが資材を狙っている。
 その報せを受けた番犬達はさっそく予知された工場へと赴いた。
「資材が足らなくなったからって、人間の工場を狙ってくるなんて、なんてはた迷惑なのかしら……!」
 アンナマリア・ナイトウィンド(月花の楽師・e41774)が憤るとレオン・ヴァーミリオン(火の無い灰・e19411)が肩を竦めた。
「ついでに人間も狙ってグラビティ・チェインを確保しようとするなんて、ダモクレスも賢くなったものだねぇ。
 さてはて……運ばれていく資材に発信機でも埋め込んでみるかい?
 まあ、また海底とか訳のわからん秘境に運ばれてたら無駄になるけど」
 冗談めかして言うレオンだが、すでに作戦行動に移ろうとしていた。今回は迅速な移動が重要になる。工場で働く作業員達の配置を確認し、狙うであろうポイントを推測する。
「可能なら全てのダモクレスを撃破したい所ではあるが、ハードだな」
「いろいろ走り回るのは面倒だが、なぁに全部殴ってぶっ壊すだけだろう」
 五栖・紅(店長代理・e61607)の言葉に、長久・千翠(泥中より空を望む者・e50574)があっけらかんと答える。言うまでもないが千翠は大雑把であり脳筋だ。
「でも千翠さんの言うとおり、これ阻止できたらダモクレスの手もほとんど尽きそうな気がするかも。
 人命も資材も、どっちも守ろう!」
 グッと拳を握る赤星・緋色(中学生ご当地ヒーロー・e03584)。小柄な体躯で見せるその気合いに仲間達も気を引き締める。
「カリン、俺達は最初は別行動だね。大丈夫?」
 恋人であるカリン・エリュテイア(スカーレッドデッドガール・e36120)を心配するレスター・ストレイン(デッドエンドスナイパー・e28723)。
「大丈夫、ありがとう。
 けどな、心配しすぎはいけんよ。確かに私は忘れっぽいけれど、そのぶん自分のやる事は忘れる前にやり遂げる。その努力は積んでいるつもりや」
「うん、そうだね」
 心配しすぎなレスターのことはよく分かっている。カリンはその心配に感謝しつつも、大丈夫であることを知らせるように言った。カリンの言葉にレスターは自戒する。干渉しすぎるのは間違っている。そう二人はつがいの蝶のように飛び立てるはずなのだ。
「そろそろ時間だね。行こうか」
 ミカ・ミソギ(未祓・e24420)が静かに告げる。予知された時間はもうすぐそこまで迫っていた。
 番犬達の作戦は人数を二分し、同時に二つのポイントを守る戦いを選択した。
 作業員を狙うダモクレスに対して、レオン、ミカ、カリン、千翠の四人が向かう。
 資材を狙うダモクレスに対しては残りの緋色、レスター、アンナマリア、紅が向かう。
 戦闘用ライドロイドとシモーベ三体がどちらのポイントに向かうかは不明だが、ダモクレスを撃退した班が、残りの作業用ライドロイドを狙い、最後に戦闘用ライドロイドを撃破する算段だ。
 時間にして約九分。迅速にダモクレスを撃破し、次の標的に移動する拙速さが求められるだろう。
 番犬達は互いの武運を祈りながら、二手に分かれ、ダモクレスが狙うであろうポイントへと移動した。
 長いようで短い、濃密な戦いが、始まろうとしていた――。

 作業員達を守るレオン、ミカ、カリン、千翠の四人が、この工場で一番人の多い作業場に足を踏み入れた。
 作動する機械音の中、忙しそうに作業員達が働いている。
 その空間に、突如歪みが生まれ、大きな穴が開いた。
「グラビティ・チェイン ホジュウ スル!」
「ワレラ ノ エネルギー ト ナレ!」
 現れたシモーベ二体が、機械音声を響かせながら手にしたマトックを振り上げる。
「させないよ」
 光の翼を羽ばたかせ、颯爽と飛び出したミカが、翼をそのまま刃に変えて切りつける。霊魂の憑依した翼刃は驚異的なダメージを発揮すると同時にシモーベの一体を斬り飛ばした。
「さぁ、こっちも相手してもらおうか」
 残る一体へ向けてレオンが質量なき紅蓮の魔槍を投げ飛ばす。刺し貫かれたシモーベのすべての感覚回路が有無を言わさずレオンへと向けられる。
「ガガガ! ケルベロス! マチブセ ダト!?」
「エンゴ ヲ ヨウセイ。ハンゲキ ハンゲキ!」
 攻撃されたシモーベ達が体勢を立て直し、マトックを構え直す。
 モーター音を響かせながら、四肢を動かしシモーベが襲いかかる。振り下ろされるマトックの鋭い爪先が肌を抉り鮮血をほとばしらせる。同時に手にしたハンマーも振るわれて、鈍い音と共に鈍痛が身体に響いた。
 単体の戦闘能力は番犬達に及ばないものの、デウスエクスであることに間違いはない。油断することのできない相手だ。
「歪め。蝕め。――黙ってバラバラになりな」
 千翠の発する『破滅への呼び声』が呪詛となってシモーベを襲う。電子回路を流れるグラビティの流れは汚染され、シモーベの行動プログラムを蝕んでいく。
 機能不全となって動作に生まれた隙を狙い、千翠が手にした鎌を投げつける。高速に回転する鎌がシモーベの装甲をズタズタに引き裂いた。
「見かけ以上に素早いようやね。ほなら、これならどうや?
 ――Chaines、Chaines。落花のように」
 カリンが片足を軸に回転する。すると、体中の切断痕と足下から白い地獄の炎が沸き立つ。生み出された白丁花と椿を形取った炎弾がくるくると回転を加えながらシモーベへ向かって放たれる。ダメージを覚悟したシモーベが防御態勢をとるが、炎弾は直前で火の粉へと姿を変えると、シモーベの回避行動を妨げるように大きく散らばった。
「オノレ オノレ ジャマ ナ ワザ ヲ!」
「エングン ハ マダ コナイノ カ!」
 機械音声で悲鳴を上げながら、しかし攻撃の手を止めることなく動き回るシモーベ。そのシモーベの攻撃を時に避け、時に受け止めながら番犬達が追い詰めていく。
「機械だけに装甲は厚めだ。なかなかしぶといね」
「だけど、雑魚は雑魚だな。二体だけなら敵じゃない」
 冷静に敵戦力を測るミカに、千翠がシモーベを殴り飛ばしながら応える。レオンが頷きつつも、この後の展開を考慮しぼやいた。
「とはいえ増援が来る可能性もある以上、素早く撃破したいところだねぇ」
「そうしたいところやけど……遅かったみたいやわ」
 カリンが横目で確認しつつ言葉を零す。
 視線の先、工場内の通路の影から盛大に機械音が響き渡った。
 戦闘開始から二分。
 番犬達を警戒し展開していた戦闘用ライドロイドとシモーベ三体は、厄介なことに迅速な移動を持ってこちらへと現れるのだった。
「わぁお、これはハードなことになりそうだね」
 涼しい顔に笑みを浮かべつつも、油断ならぬ状況にレオン、そしてミカ、千翠、カリンの四人は武器を握り直す。
 作業員達の人命を守ることには成功した。しかし、形勢は逆転し番犬達の不利へと傾きながら、厳しい攻防へと変化していくのであった――。

●資材は渡さない!
 一方、資材を守る為に作業用ライドロイドが狙ってくるであろうポイントへと向かった四人は、狙い通り作業用ライドロイドの一体と接敵し、戦闘へと入ることに成功する。
 青い装甲の作業用ライドロイドは戦闘用でないこともあり、番犬二人の戦力に満たない。四人がかりでのラッシュを前に、対した抵抗もできずその装甲を爆散させる。
 ダモクレス達が工場へと現れ戦闘を開始して三分。
 番犬達の高い連携力と力強い攻撃を前に、早くも作業用ライドロイドはその機能を停止した。
「よしっ、バッチリ撃破だね!」
「援軍はこなかったね……ということは向こうかな。連絡してみよう」
 勝利を喜ぶ緋色の横で、レスターが作業員を守る為に向かった四人へと連絡を試みる。
 ――しかし。
「だめだな、電波が妨害されている」
 そう、こういった場合良くあることなのだが、デウスエクスは電波妨害やそれに類似する通信手段の妨害工作を行ってくることが多い。
 今回も類に漏れず、簡易的な通信手段を妨害してきていたのだ。
「となると、今向こうが戦ってる正確な場所も分からないし、合流するのが難しいかもしれないわね。できたら私と紅さんは援護に向かいたかったけれど……」
「得策とはいえないだろうな。大凡の場所がわかるとはいえ、もし移動していたのならば、見つける為の時間的ロスが大きい。
 戦力を分散したことで、敵を撃破できず資材を運び出される可能性もでてくるだろう。
 ならば、向こうのチームに耐えて貰ってる間に、残ってる作業用ライドロイドを撃破し、全員で救援に向かった方が良いかもしれないな」
 紅の意見に三人は頷く。
 それに、残る作業用ライドロイドを撃破すれば通信が使えるようになる可能性も残されている。
 今できることは、迅速に目標を撃破し、仲間の救援に全員で駆けつけることだろう。
 これは賭けとなる面も大きいが、仲間の力を信じるしかないだろう。
「そうと決まれば、急ごうっ!」
 緋色の言葉に、改めて頷いた番犬達は走り出した。
 次なる目標であるもう一体の作業用ライドロイドがいるであろう地点に向けて。
 工場内を走り、資材が多く集められた場所へと向かう。
 資材置き場が少し荒らされた形跡があり、すぐ側にライドロイドがいることが感じ取れた。
 通路を走り抜ける。最初の戦闘から五分が経過した。
 そして視線のその先に、資材を運ぼうとする青い影を見つける。ライドロイドだ。番犬達は即座に戦闘に入る。
「それを持って行かせるわけにはいかないな――灼き尽くせ、箱の中のインフェルノ!」
 先手を取って疾駆するレスターが、ルービックキューブを投擲する。
 作業用ライドロイドの上空で六面体の展開を見せたキューブが、その中に敵を閉じ込める。レスターの右半身に残る刺繍と同じ文様が具現化すれば、その鎖が幾重にもキューブに掛かっていく。相手を方形の牢獄へと閉じ込めるそのグラビティに、ライドロイドの足が止まった。
「今がチャンス! いっくよー!」
 ライドロイドの隙を狙い、緋色が走る。
 ライドロイドの振りかぶった一撃を直前で屈み込み避けると、勢いままに懐に潜り込んで卓越した技量からなる一撃を走らせる。
 凍てつく一撃にライドロイドが蹈鞴踏む。そこに、身を捻った緋色が理力籠もる星形のオーラを蹴り込んだ。ライドロイドの装甲が拉げ音を立てて割れる。
「カーテン・コールの時間だわ。月光の中でラスト・ダンスを踊りなさい!」
 アンナマリアの目の前に光の鍵盤が展開する。指を乗せそれを奏でると同時、背後に出現する半透明の『御業』が力を溜める。治癒のグラビティが仲間を包み込む。
「レッツゴーシリアルキラー! おいでませ、ザンテツうさぎ!」
 ポップでキュートな魔曲が一匹のうさぎを召喚する。超高速で動き回るうさぎが作業用ライドロイドを切り刻んでいく。
 斬撃の嵐の中を紅が一足飛びに疾走し、ライドロイドに肉薄する。その身体はオウガメタルに包まれ鋼の鬼と化している。
「残念ながら渡してやる物は此処には無くてな、お引き取り願おうか。まぁ、無事に返すつもりはないが」
 腰溜めにした力を解放する。殴りつけた一撃によって装甲が弾け飛ぶ。さらにナイフへと持ち帰れば折れ曲がった装甲にねじり込み、その裂け目を拡大させていった。
 攻防は番犬達の有利のまま進む。
 なんとか耐えきろうとするライドロイドだったが、その抵抗は空しい。番犬達に大きな被害をだすこともできず、任務も達成すること叶わず、緋色の一撃によって爆発し、ついにその機能を停止させるのだった。
『ジ……ジジ……』
 短いノイズが入る。通信が復活したのだ。すぐにアンナマリアが仲間へと連絡する。
「こっちは終わったわ。そっちは――」
『あんまり良い状況とはいえないけれど、なんとか耐えてるよ――援護頼めるかい?』
 苦しそうな声のレオンに応える。
「すぐに向かうわ。それまでどうか無事でいて――!」
 戦闘場所は特定できた。四人はすぐに移動を開始する。
 最初の戦闘開始から九分が経っていた。

●最良の結果
「はぁ……はぁ……くっ、きついな」
 千翠が顎先に滴る血と汗を拭う。すでに身体はボロボロだった。
 視線を移せば、他の三人も同じような状態だ。限界であることが察することができた。
 前を見る。赤い球体型のダモクレスが勝ち誇るように一歩前に出た。
 増援として現れた戦闘用ライドロイドとシモーベ三体。倒し切れていなかったシモーベ二体と合わせ六体を相手取った番犬達は、九分という時間をかけてシモーベ五体を倒し、戦闘用ライドにもかなりのダメージを与えることに成功していた。
 しかし、倒しきることはできなかった。徐々に体力を奪われ、今、瀬戸際に立たされていた。
 とにかく今は救援が来るまで耐えるしかない。残る力を振り絞り、攻めへと転じる。
 千翠の生み出した氷結せし角生やした小鬼が槍を振るい、カリンとサーヴァントのシロさんがグラビティを迸らせる。
 ミカも残された力で翼刃を羽ばたかせ薙ぎ払い、生まれた隙を狙ってレオンが刃を立てて傷口を斬り広げていった。
 だが、戦闘用ライドロイドは攻撃に怯むことなく番犬達を倒すのだと、右腕に装着したチェーンソーを振るい、ミサイルを放つ。
「ぐ……くぅ……!」
 肌を切り裂き、焼焦がす痛みに震える膝が限界を向かえた。
 ガクりと膝を付き、地に腕をつく。立ち上げる力もなく、もはやこれまでかと覚悟したとき――仲間達が駆けつけた。
「……助けるわ! だって手を伸ばせば届くもの! ――行って、騎士様!」」
 アンナマリアが曲を奏でれば、生み出された氷結の槍騎士がライドロイドに飛びかかる。
「間に合った! みんなをやらせはしないよっ!」
 緋色がその小さな身体、全身を使って全力の攻撃を叩き込む。甚大なダメージを負ったライドロイドが一歩後退する。
「逃がしはしないさ――!」
 肉薄する紅の炎纏う蹴りが赤い装甲を深紅に燃え上がらせる。
「間に合ってよかった、カリン。大丈夫、君のことは俺が守る」
「レスターくん、ありがとう」
 恋人の無事を確認したレスターが安堵の息を吐いて、青ざめた馬の名を冠するバスターライフルを構える。
 発射されるエネルギー光弾が、戦闘用ライドロイドに直撃し、爆発を引き起こした。
 爆煙のなか、バチバチと音を立てながら火花を飛ばすライドロイド。
 一歩、また一歩とゆっくり進むが、その足取りは重い。
「これで――」
「終わりだよっ!」
 アンナマリアと緋色がトドメの一撃を放つ。
 迸るグラビティが直撃し、戦闘用ライドロイドが一際大きな爆発をすると、後に残るのは動かなくなった鉄くずだけだ。
 こうして、資材を狙うダモクレスの襲撃を止めることができた。
 作戦だけでなく運も大きく絡んだ結果だが、全ての敵を撃破するという最良の結果を得られ、傷付きながらも番犬達は笑顔を浮かべるのだった――。

作者:澤見夜行 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年9月25日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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