冥界の勇魚たち

作者:坂本ピエロギ

 ディープディープブルーファングの供給が途絶えた。
 その報せに、赤い翼の死神はさして驚く様子を見せなかった。
 もう十分なデータは採取できた、あの青鮫はもう用済みだ――そう言わんばかりに。
「……来ましたね。待っていましたよ、貴方達」
 そう言って死神が迎え入れたのは、彼女の同胞たるデスバレスの魚たち。
 赤い目を光らせて宙を泳ぐ、2体の下級死神たちだ。
「お行きなさい、ブルチャーレ・パラミータ。そしてメラン・テュンノス」
 大した知能も持ち合わせていない魚たちに、赤い翼の死神はそう言って優しく微笑むと、そっと彼らを野に解き放った。
 人間を虐殺せんと、魚たちは競い合うように人里目指して突き進んでゆく。
「ディープディープブルーファングの戦闘能力……必ずや、自らの力とするのですよ」
 2体の背を見送ると、赤い翼の死神は、更なる研究への思索にふけり始めるのだった。

「先月、島根県の松江市で起こった事件を覚えているだろうか」
 ヘリポートで出迎えたケルベロスたちに、ザイフリート王子(エインヘリアルのヘリオライダー)はそう問いかけた。
 ディープディープブルーファング。
 日本各地に幾度となく出現した、死神の因子を植え付けられた鋼の青鮫。
 松江市は、その青鮫が最初期に出現した地点のひとつだ。
「実は……その松江市内で、魚型の死神の襲撃事件が予知された」
 静かに緊張を走らせるケルベロスたちに、王子は状況の説明を始める。
 出現する死神は全部で2体。いずれも5m弱の全長を誇り、宙を泳いで松江の市街地へと向かうという。
 このままでは、魚型の死神たちによって松江の街が地獄と化すのは避けられないだろう。何としても彼らを撃破し、街の人々を守らねばならない。
「事件の黒幕は、ディープディープブルーファングのそれと同じと考えてよかろう。恐らく海底基地の破壊によって作戦を変更したのだろうが……先の事件との関連性は不明だ」
 少なくとも現時点ではな――そう付け加え、王子は敵の説明を始める。
 1体目はブルチャーレ・パラミータというカツオ型の死神だ。
 この敵は卵のようなものを発射する『産卵攻撃』と呼ばれる能力を有しており、その性能はディープディープブルーファングのサメ魚雷に近いという。
 2体目はメラン・テュンノスというマグロ型の死神。
 こちらは、ひとりでに開く腹部から内臓のような触手を捻り出して攻撃する『触手攻撃』と呼ばれる能力を有する。青鮫でいうメカ触手に近い性能だ。
 加えて2体共通の攻撃方法として、紡錘形の体躯を生かした突進攻撃を用いてくる。
「いずれも下級の死神のようだが……いずれも戦闘力が強化されているようだ。黒幕の死神の意図は全く読めんが、くれぐれも油断は禁物だぞ」
 戦いの現場はディープディープブルーファングと戦った場所の少し北側になる。人影のない田園地帯で、人払いの類は一切必要ない。
 向かってくる敵を、絶対に取り逃さずに撃破すること。これが達成すべき目標だ。
「死神がいったい何を企んでいるのか……不気味ではあるが、いまの私達に出来ることは、敵の排除のみ。確実な撃破を頼むぞ!」
 そう言って王子は、ヘリオンの発信準備に取り掛かるのだった。


参加者
ヒルダガルデ・ヴィッダー(弑逆のブリュンヒルデ・e00020)
カルナ・ロッシュ(彷徨える霧雨・e05112)
土岐・枢(フラガラッハ・e12824)
セット・サンダークラップ(青天に響く霹靂の竜・e14228)
ヒスイ・ペスカトール(邪をうつ・e17676)
ゲリン・ユルドゥス(白翼橙星・e25246)
ゼー・フラクトゥール(篝火・e32448)
中村・憐(生きてるだけで丸儲け・e42329)

■リプレイ


 島根県は松江の街を、東へ一山超えた先。一面に広がる耕作地にケルベロス達はいた。
 無人の休耕地は静かなもので、波の音だけが潮風に乗ってのんびりと流れてくる。
「サメが退場したと思ったら、今度はカツオにマグロか……こいつァ活きが良くても全っ然有り難くないな」
「全く。これがデウスエクスでなければ、食欲もそそられたのだろうけどねぇ」
 ヒスイ・ペスカトール(邪をうつ・e17676)の言葉に、ヒルダガルデ・ヴィッダー(弑逆のブリュンヒルデ・e00020)は苦笑して、北の方角に視線を送った。そこに広がる一面の海には、未だ敵の――2体の魚型死神達の姿は見えない。
 カツオの死神ブルチャーレ。マグロの死神メラン。そして、彼らの背後で糸を引く死神。彼らの真意は未だ闇に包まれたままだ。
 しかし――と、土岐・枢(フラガラッハ・e12824)は思う。
 相手の狙いが何だろうと、襲い来る敵は排除するだけだと。
(「非道な手段は無視できません。きっちり殲滅しましょう」)
 デウスエクスは平和な日常に突然現れて、何もかもを奪って行く。自分のような犠牲者をこれ以上出さないためにも、この戦いは絶対に負けられない。
「カツオにマグロの死神っすか。ここは一本釣りと洒落込むっす!」
 中村・憐(生きてるだけで丸儲け・e42329)がドンと胸を叩いて言った。
 口調こそ軽いものが混じるが、彼は紛れもない実力派の一人である。
「奴らがナニ企んでようと、ぶっ潰すだけっすよ!」
「速攻でいくっす! ヤツらにオレ達のデータなんか渡さないっす!」
 セット・サンダークラップ(青天に響く霹靂の竜・e14228)は憐の気炎に応じるように、ブリーフィングで聞いた敵情報を反芻する。
 下級死神に似合わない強化された戦闘力。先に戦ったサメ型のダモクレスと類似した攻撃能力。敵の目的が単なるグラビティ奪取でないことはほぼ間違いない。
「どんな小細工も無駄だって、死神に思い知らせるっすよ!」
「異議なしだ。派手に叩き潰してやろうぜ」
 セットの言葉にヒスイが頷いたその時、遠方に目を凝らしていたゼー・フラクトゥール(篝火・e32448)が仲間達に警告を発する。
「来たようじゃの」
 皺だらけの指が示した先には、紡錘形の空飛ぶ魚影が2つ。死神に間違いない。武闘派のドラゴニアンとして戦場に身を置く戦士の五感は、老いて尚健在のようだ。
 ケルベロスの存在に気付いたのか、一直線に向かってくる死神に、ゲリン・ユルドゥス(白翼橙星・e25246)は目を輝かせた。
「おお、ファンタスティック……彼ら、空を泳いでるよ!」
 宙を泳ぐ体躯は大きく、ちょっとした自動車並だ。氷のように冷たい魚眼は、得物であるケルベロスを抹殺せんと、血に飢えた光をギラギラと放っている。
「マグロにカツオですか。ちょっと美味しそうですけど、食べるわけにはいきませんよね」
「残念だねえ。料理できたら、さぞや食べがいが……」
 枢の言葉に乗ったゲリンはハッと我に返り、あらぬ空想を振り切った。
「今はお魚さんを止めなきゃだ。頑張らないと!」
「後方支援は任せて下さい。きっちり三枚におろしてやりましょう」
 フォートレスキャノンを構え、迫りくる死神に照準を合わせるカルナ・ロッシュ(彷徨える霧雨・e05112)。憐はその前方に進み出ると、ビシッと敵を指さして言った。
「好きにはさせないっすよ、死神ども! ここがお前等の死地っす!」
「ピューッ! ピュイーッ!!」「ヒュルルウウゥゥゥーッ!!」
 デウスエクス達の咆哮が、戦いの始まりを告げる。


 死神達はひらりと宙を一回転すると、真っすぐにケルベロスへと突っ込んできた。速度が生む衝撃波で土煙をあげて飛ぶその姿は、まるで小さな戦闘機のようだ。
「煮ても焼いても食えん厄介者は、さっさと灰にしてしまうが良かろ」
 最初に仕掛けたのは、ヒルダガルデだった。
 ヒルダガルデは土を蹴って駆けだすと、飛来する魚卵の弾幕をかい潜り、投げ縄のように飛ぶ内臓触手を躱し、真正面からメランに飛び掛かった。
「じっくり中まで火を通してやろう」
「ヒュルルウウウゥゥ!!」
 ニヤニヤと笑うヒルダガルデの右脚が、地獄の炎でひと際強く燃え上がる。唸りをあげて放たれた後ろ蹴りが命中し、蹄の焦げ跡を額に刻み込まれたメランが悲鳴を上げた。
「さあオウガ粒子! ボクの愛に乗って、皆を包むんだ!」
「ドローン射出! 皆さん、コレを使ってくださいっす!」
 いっぽう後方では卵と触手を凌いだゲリンが、セットと共に前衛を支援していた。
 命中を強化された憐が、枢が、メランに狙いを定めて襲い掛かる。
「これだけデカけりゃ、狙うのが楽っすね!」
「非道な死神の、好きにはさせません!」
 憐は装着したエアシューズを駆動。深い轍を刻んで加速しメランの側面へと回り込むと、流星の蹴りを跳躍して叩き込む。
 横殴りの衝撃に、宙でたたらを踏むメラン。そこへ距離を詰めた枢が拳を振り下ろす。
 地獄化した右腕に高重力を発生させて標的を破壊する『魔神の暴腕』だ。
「好機ですね。使うしかないか、この力を――!」
 拳骨を無造作に叩きつけるというシンプル極まりない枢の攻撃は、隕石のごとき威力を伴ってメランを襲った。
 衝撃。轟音。振動。
 雑魚ならば蒸発を免れ得ない一撃を耐え凌ぎ、土煙を継ぎ破って飛び出してきたメランにゼーが狙いを向ける。
「やれやれ。老骨に鞭打ち、ちと頑張るかのぅ」
 ゼーはドラゴニックハンマーを砲撃形態へと変形させると、轟竜砲を発射。竜砲弾の直撃を受けたメランが、金切り声を上げながら宙を舞う。
「鳴いて空を飛ぶ魚とは、随分と変わった敵じゃな。リィーンリィーン、回復支援じゃ」
 愛弟子のボクスドラゴンが、メディックのゲリンに属性インストールを施した。敵の卵が付与したアンチヒールは、これでじきに消える事だろう。
 対するメランは攻撃を立て続けに受けた事で、次第にその動きが鈍くなり始めた。片割れのブルチャーレは援護に動こうとするが、ヒスイとカルナの妨害がそれを許さない。
「さァこっちを構ってくれよカツオちゃん。刺し身でもタタキでもお好きな方で料理してやるぜ?」
「付け合わせに、僕の砲撃も差し上げます!」
 カルナのフォートレスキャノンが命中し、ぐらりと傾くブルチャーレの体。
 開いた傷口に叩き込まれるのはヒスイの『式撃ち「逆しの式」』。癒しを阻害する呪いをのせた弾丸だ。
「ピュイーッ! ピュイーッ!!」
 あふれ出てゆく己が生命力に構わず、歌声のような鳴き声でメランを包むブルチャーレ。塞がる傷と共に、ヒルダガルデの獣撃拳が付与した重圧が消えてゆく。
「ヒュルルル……ヒュルルルルルル!!」
 ブルチャーレの歌に合わせるように、メランもまた歌声を響かせた。
 向けた先はブルチャーレではない。ケルベロスの前衛だ。
「ぐうぅ……っ! こんなもん、効かないっすよ!!」
「待っててね! 今ボクが支援するよ!」
 憐を庇いながら、耳を抑えるセット。ゲリンのフローレスフラワーズで除去されなかった催眠をシャウトで吹き飛ばす彼の横を、ヒルダガルデと枢が駆けてゆく。
 メランは回復と共にBS耐性を得たようだ。早いうちに剥ぎ取らねば面倒な事になる。
「邪魔だ、砕けてしまえよ」
 ゾディアックソードの斬撃がメランを切り裂くも、BS耐性は剥がれない。
 もう一撃、必要だ。枢はバスタードソードを叩き込んでメランの攻撃力を封じると、背後の憐を振り返って叫ぶ。
「中村くん、今のうちに!」
「オッケーっす!」
 拳を固め、一気にメランとの距離を詰める憐。狙うは敵の背中だ。
「こんのおおおおおおおおおおおおお!!」
 気合と共に繰り出される憐のハウリングフィスト。唸りをあげる一撃が、メランの背中にめり込んだ。骨の砕ける手応えと共に、付与されたBS耐性が綺麗に吹き飛ぶ。
(「ふむ。戦況はこちらがやや優勢、といったところかの」)
 悲鳴を上げて悶絶するメラン。跳躍からの踏みつけるような流星蹴りを叩き込みながら、ゼーが視線を送った先では、カルナとヒスイがブルチャーレを妨害し続けている。
「風よ、嵐を告げよ」
「さて、三枚おろしと行くか!」
 カルナの召喚した氷晶が、猛吹雪となってブルチャーレを包み込んだ。すかさず斬り込むヒスイの惨殺ナイフが、ジグザグの切り傷と共に足止めとパラライズを増幅させてゆく。
「ピュイイィィィィ!!」
 連携を断ち切り各個撃破。ケルベロス達の作戦に嵌ったブルチャーレは、一向に斃れない獲物に苛立つように、一際高い雄叫びをあげるのだった。


 状況はだんだんとケルベロスの優勢に傾いていった。かといって死神達が、無為に敗北を受け入れるはずもなかった。
 ブルチャーレの魚雷卵が、メランの触手が、雪崩を打って中衛と前衛へと襲い掛かる。
 だが、もはやそれは戦況を覆す攻撃にはなり得ない。攻撃を捌くケルベロス達は、すでにメランが瀕死の状態にあることを見抜いていた。
「さあ、そろそろフィニッシュと行こうじゃないか?」
 武器封じの付与にもかかわらず、ヒルダガルデは笑みをそのままにメランに襲い掛かる。敵に付与された武器封じ、その不利すら楽しむかのように。
「ほら、こいつでどうだ?」
「さあ、とどめを!」
 燃える飛び蹴りを叩き込まれ、身をよじるメラン。
 追撃の戦術超鋼拳で鱗を剥ぎ取った枢が、最後の一撃を仲間に呼びかける。
「よっしゃ、任せてくれっす!」
 応えたのは憐だ。カッと両目を見開いて発動するのは彼の必殺技、その名も――。
「これがケルベロスの真の力っす! くらえケルベロスビィィィーム!」
「ヒュ……ヒュルルウウウゥゥゥゥーッ!!」
 憐の両目から青白い二本の光が発射され、メランの体を突き抜ける。コミカルな見た目に反した凶悪なダメージに耐え切れず、メランは断末魔と共に爆散した。
「お見事! さあ、あとはカツオだね!」
 ゾディアックソードの星の光で後衛を照らしながら、ゲリンがキラリと爽やかに笑う。
 対するブルチャーレは同胞の死に怒り狂い、宙を大きく旋回して突進の体勢を取った。
 ヒスイの呪いの銃弾とカルナのフォートレスキャノンを立て続けに浴びながら、憎しみの籠った眼で二人を睨みつけるブルチャーレ。どうやら狙いはヒスイのようだ。
「やれやれ。冥界のお魚さんってのは、随分執念深いな」
 リィーンリィーンの付与したBS耐性がアンチヒールを取り去るのを感じながら、ヒスイは惨殺ナイフを構えて迎撃体制を取った。
「ピュイイィィィィィ!!」
「このっ! とっとと落ちるっすよ!!」
 セットの轟竜砲に怯むことなく一直線に突っ込んでくるブルチャーレ。軌道を先読みしたゼーがアイスエイジインパクトを浴びせながら、小さく呟く。
「そろそろ決着、かのう」
 ブルチャーレは体に回転を加え、巨大なドリルと化して突進してくる。直撃を受ければ、ヒスイの大ダメージは免れないだろう。
 だが――。
「どこを見ている? 相手は私だ」
 その強力だが読み易い攻撃を、ヒルダガルデが盾となって受け止める。それは受け止めると言うよりも、飛びついたと言った方が正しいかもしれない。
 ヒルダガルデに抱き着かれたまま、ブルチャーレの突進は勢いの衰えることなく、軌道を逸れてヒスイの脇をすり抜けて、突き刺さった地面を深く抉った。
「活きのいいカツオだ。刺身も良いが、此処は焼き魚といこうか」
 ヒルダガルデは立ち上がり、ブレイズクラッシュの構えを取る。
 徹底した足止めの付与によって、既にブルチャーレの回避能力は大きく損なわれていた。避けられる恐れは殆どないだろう。
 対するブルチャーレも、逃げる気配など全く見せない。怒り狂い、目の前のケルベロスを皆殺しにすることしか頭にないようだ。
「さあ頑張ろう! もう少しだ!」
 ゲリンの紡ぐ叙事詩『陽光の勇姿』がヒルダガルデの勇姿を歌い上げた。歌声に誘われて現れた星々は彼女の周囲を舞い、体の中へと入りこむと、傷口を塞ぎ、氷を、武器封じを、次々と取り去っていく。
「よし行くぞ。幕引きだ」
 ヒルダガルデのブレイズクラッシュが、ブルチャーレの腹にめり込む。
 炎上し、悲鳴を上げるブルチャーレめがけ、憐と枢が仕掛けた。アイスエイジインパクトと達人の一撃が織り成す氷の二重奏に転げまわるブルチャーレ。そこへさらにカルナの凍楔破砕嵐が追撃となって浴びせられる。
(「オレ達がここで勝つことも、黒幕にとっては計算のうちだろう――だが」)
 ジグザグスラッシュの狙いをブルチャーレに定めながら、ヒスイは思う。
 死神の深謀遠慮など関係ない。
 奴等がどんな策を弄しようとも、最後に勝つのは自分達だと。
「ブッ潰す!」
 惨殺ナイフが、振り下ろされた。
 氷を、炎を活性化されたブルチャーレはなおも咆哮を上げて抵抗を試みたが――。
 そこまでだった。
「フィニッシュっす!」
「然らばじゃ、死神よ」
 セットの竜爪撃に頭を割られ、ゼーのグラインドファイアの直撃を受け、ブルチャーレはコギトエルゴスムの結晶となって砕け散った。


「皆お疲れ様! それじゃあ、さっさと片付けちゃおう」
 ゲリンはそう言うと、愛と光とグラビティを田畑一面に振りまいて、仲間と一緒に現場を修復し始めた。
「人を守れてても田畑荒らしちゃったら、生きてられないしねー」
「土地の被害が少ないのは幸いだったっすね。しかし本当に訳の分からない敵っす……」
 畑に散らばったコギトエルゴスムの破片、かつて死神だった敵の残骸を処分しながら、セットは今回の襲撃に思考を巡らせる。
 新たに現れた2体の死神。カツオとマグロ、別種の魚である事に理由はあるのか。
 かつてサメ型のダモクレスが出現した地に現れたのは、間違いなく偶然だろう。これだけあちこちで出現していれば、重なる場所の一つや二つ、出てきても不思議はない。
 死神達の黒幕が望むものを得るまで、きっと同様の事件は続くのだろう。
「何だかお腹が空いてきましたね。倒せば海鮮丼になる敵なら良かったのに」
「……そうっすね。動いたらお腹ペコペコっす」
 カルナの言葉に、セットは思考を打ち切った。これ以上、あれこれ悩んでも仕方ない。
 そこへ会話を聞きつけた憐が、後ろから二人の肩をそっと叩く。
「お疲れ様っす。松江市だと、海の幸、山の幸、湖の幸と、色々ありそうっすね♪」
 ニッコリ笑う憐のスマホには地元の料理店がリストアップされていた。いつの間にやら、良さそうな所を探しておいたようだ。
 秋の穏やかさを取り戻した松江の空を見上げて、枢はぽつりと言葉を漏らす。
「いずれ死神とも、決着をつけなければ……」
 人々が平和に暮らせる日常を取り戻すために。
 1日も早い事件の終息を願い、ケルベロスは帰還の途に就くのだった。

作者:坂本ピエロギ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年9月19日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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