キラキラあまーい砂糖のお星さま

作者:天木一

 町の片隅にある閉鎖された工場。かつては町工場として賑わっていたそこも今ではすっかりと寂れ人の気配は全く無くなっていた。
 そんな場所に足を踏み入れたのは、機械で作られた小さな蜘蛛。蜘蛛は工場の中へと入り込む。まだ放置されたままの機械を見て回り、ピタリと足を止めたのは1m以上ある大きな釜の前。平たい釜は斜めに傾いており、中が覗けるようになっている。それは砂糖を熱して星のような形のお菓子を作る機械。金平糖製造機だった。蜘蛛はその中へと入り込む。するとギュゥウウウウッと鍋が高速回転を始め巨大化していく。4mを超えるサイズに達すると膨張が止まり、金平糖製造機は足元にそのサイズに見合った車輪を作って動き出す。
『キラキラお星さま♪ 甘くて美味しいお星さま♪ 口の中で溶けて消えるお星さまを食べよー☆』
 音声が流れると釜に砂糖が投入され高速回転と共に加熱が始まる。普通では考えられない速度で丸い飴になり、色の付いたシロップが投入されると角が付いてカラフルな金平糖が出来上がる。それは釜のサイズに合わせて通常の何倍もある拳サイズの金平糖だった。
『みんなにキラキラお星さまをプレゼントー☆ コーラにサイダーに、ほうじ茶にゆずに、なんだってあるよー☆』
 キラキラとお星さまのように輝く金平糖が飛び散り周囲に穴を空ける。製造機は前進して工場の壁を突き破り外へ出る。外は影が伸びて夕日が浮かび、その影を追いかけるように製造機は走り出す。その方角には人の集まる繁華街があった。

「また甘いお菓子を作るダモクレスが現れないかと調べたら、今度は金平糖を作るダモクレスを見つけちゃったよ」
 小鳥遊・涼香(サキュバスの鹵獲術士・e31920)が次は金平糖だとケルベロス達に告げる。
「放置された機械がダモクレスとなり、人々を襲ってしまいます。そうなる前に敵を迎撃して犠牲者が出ないように倒してしまう作戦となります」
 資料を配るセリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が説明を始めた。
「ダモクレスは全長4ほどに巨大化した金平糖製造機です。大きな鉄で出来た平釜の形をしていますが、そこから作り出される金平糖は甘く人の心を惑わす力を持っているようです。甘くて美味しいだけにその誘惑は強いようです」
 食べたものは操られたようにずっと金平糖を食べ続けて死んでしまう。
「現れるのは大阪の町で、廃工場から繁華街に続く道で迎撃する事になります。周辺の避難は殆ど終わっているので、一般人を巻き込む心配は少ないでしょう」
 避難は警察が既にやり始めており、ケルベロス達は敵に集中する事ができる。
「昔ながらの工場が一つ失われ、金平糖が作られなくなったのは悲しいことですが、だからといって人に食べるのを強制させる訳にはいきません。皆さんの力でダモクレスを退治してください」
 説明を終えたセリカはヘリオンへと向かう。
「金平糖って甘くて美味しいよね。それが嫌われるようなことをするのは悲しいよね。食べて欲しいっていうなら私たちが相手になってあげようよ」
 涼香の言葉にケルベロス達も同意し、甘い戦いに備え作戦を練り始めた。


参加者
ユージン・イークル(煌めく流星・e00277)
エイダ・トンプソン(夢見る胡蝶・e00330)
泉賀・壬蔭(紅蓮の炎を纏いし者・e00386)
神楽・ヒナキ(くれなゐの風花・e02589)
百鬼・澪(癒しの御手・e03871)
水無月・一華(華冽・e11665)
暁・万里(迷猫・e15680)
小鳥遊・涼香(サキュバスの鹵獲術士・e31920)

■リプレイ

●空に浮かぶお菓子
 夕暮れの繁華街に向かう道は閉鎖され、普段なら交通量の多い場所も今は放置された車だけが残っている。そんな道路に残っているのはケルベロスだった。
「さて、金平糖が大量にか……足元にも注意が必要かもな」
 泉賀・壬蔭(紅蓮の炎を纏いし者・e00386)が足元に視線を向けると、そこにはウイングキャットのねーさんが何か用と見上げてくる。壬蔭は緊張を解きその頭を撫でてやる。
「むう。このタイプのダモクレス達って、なんか皆働きモノだよね。それだけ元々の機械も、まだまだ頑張りたかったのかな」
 そんな機械の心情を思い小鳥遊・涼香(サキュバスの鹵獲術士・e31920)はなんともやるせないものを感じる。
「降る程の金平糖……甘党としましては、いっそ食べたいです」
 可愛らしい金平糖の雨を思い描いて水無月・一華(華冽・e11665)は微笑む。
「金平糖を降らせるか……聞いただけなら可愛らしいが、実際にあったら困りそうだな」
 その隣で暁・万里(迷猫・e15680)は掃除が大変そうだと降った後の事を考える。
「甘い甘いお星さま、小さな小さなお星さま。甘いものはいつだって幸せになれます」
 キラキラした星のようなお菓子を想像した神楽・ヒナキ(くれなゐの風花・e02589)の頬が緩む。
「けれど、人を襲う甘い機械は容認できませんね。きっちりしっかり、その役目を終わらせてしまいましょう」
 残念ながら今はお菓子を楽しむわけにはいかないと表情を引き締め戦いに備える。
 そうして待ち構えていると、道路の先に4mを超える平たい釜が車輪を動かしてやってくるのが見えた。
『キラキラお星さま♪ 甘くて美味しいお星さま♪ 口の中で溶けて消えるお星さまを食べよー☆』
 傾いた大釜が高速回転すると、中の砂糖が星の形となって放り出され、星のように宙に舞い散った。
「金平糖って可愛いですよね。お星様みたいで口に入れるととってもしあわせな気分になります。……でもこちらの金平糖は口に入れるのは厳しいですし、金平糖というより鉄球のような……」
 言葉を切ったエイダ・トンプソン(夢見る胡蝶・e00330)は横に移動し、足元をゴロゴロと転がってくこぶし大サイズの金平糖を見送った。
「降ってくる雨が金平糖だったら……なんて、子供の頃夢に見たものですけれど、甘いだけではすまなさそうですね」
 百鬼・澪(癒しの御手・e03871)は飛び交う金平糖によって凸凹ができたアスファルトや壁を見渡す。
「まさか……ボクと同じタイプの能力者かっ?!」
 ポーズを作ったユージン・イークル(煌めく流星・e00277)がわざとらしい驚きの表情を見せる。
「なんて冗談はさておき、被害を抑えるためにここで散ってもらうよ。色々被っててシンパシーは感じるんだけど、ねっ☆」
 敵の前に立ち塞がりウインクで星を飛ばし注意を引きつける。

●キラキラ
『キミもお星さまキラキラかな☆ ボクのお星さまもプレゼントー☆』
 赤黄緑白と様々な色の金平糖が雨のように降り注ぐ。だがそれは雹のように硬く、放置されている車を凹ませ窓ガラスを砕いた。
「こんな大きな金平糖は初めてだねっ☆食べられないのが残念だよ」
 迎え撃つユージンは刀を抜き打ち、金平糖を斬り裂いて次々と真っ二つにして地面に落としていく。
「細かい金平糖の土砂降りかしらと楽しみにしていたら……まさかの巨大。乙女心を弄ばれました。おのれだもくれす、ぜったいにゆるしませんからね!」
 ぷんぷんと怒った一華は、剣を掲げ放つ光で星座を描き仲間達を甘い誘惑から守護する。
「一華? 例え口に入るサイズでも食べたら駄目だからな? 食べたら心を操られるからな?」
 そう万里が注意しながら雷の壁を生み出して金平糖の直撃を防ぐ。
「相手が何であれお仕事です! 頑張りましょうね」
 気合を入れたエイダは魔力を込めて投げキッスを飛ばし、敵のエネルギーを吸収する。
『沢山食べてねっ、コーラにサイダーに、ほうじ茶にゆずに、なんだってあるよー☆』
 金平糖が続々と作られ、絶え間なく飛ばしながら近づいてくる。
「ここは通行止めです。お星さまを振舞いたいなら私たちが相手をしましょう」
 ヒナキはハンマーを砲に変え、敵の足元に撃ち込んで爆発を起こし進行を止めた。
「ゆず風味か……私は遠慮させて頂こう……レモン風味とかパイナップル風味のは無いのか?」
 壬蔭が挑発するとさっそくレモン風味の黄色い金平糖が放たれる。それを壬蔭は回し蹴りで弾き飛ばす。
「私はソーダ味が良いな、ぶどう味もあったりするかな?」
 ダッシュで近づいた涼香は、その勢いのまま飛び蹴りを打ち込み大釜の傾斜を大きくして中の砂糖を零れさせる。その間にねーさんは大きく翼を羽ばたかせ、風を送って仲間達を惑わす甘い香りを押し返した。
 ウイングキャットのヤードさんもぽっちゃりした体を揺らしながら翼を懸命に動かし、風を仲間達に送って清らかな空気で包み込む。そして落ちて来る金平糖を受け止めるとそのまま落下してガリガリと齧っていた。
「被害が出る前にお片付けをしましょうか」
 弓を構えた澪は弦を引き絞り雷の矢を放つ。雷の花弁を散らしながら飛んだ矢は精神を射抜いて巨体をふらりとさせた。そこに続けてボクスドラゴンの花嵐がブレスを浴びせ心の傷を深くする。
『甘くって美味しいお星さま☆ キラキラしててとってもキレー♪』
 新たにソーダ味やレモン味の青と黄の金平糖がキラキラと撒き散らされ、ケルベロス達を魅了するようにふわふわと下りて来る。
「ボクも星になってみせるよっ☆ 見てて!」
 まるで自らも金平糖に混じるように跳躍したユージンは、流星の如く飛び蹴りを釜に浴びせた。
「金平糖は好きですがシュークリームの方が好きですね、食べ過ぎ厳禁ですが」
 食べ過ぎて石油王との玉の輿に乗れなくなっては困ると、エイダは竜の幻を生み出して炎を浴びせて釜と中の砂糖を焦がす。
「おや……この程度で攻撃とは、温い温い」
 続いて踏み込みながら金平糖を避けた一華は、敵に接近して炎纏う前蹴りを釜に叩き込んだ。
「みんな気を付けてね。食べたら危ないから」
 その間に万里は空から薬液の雨を降らせ、金平糖の甘い誘惑を洗い流す。
「キラキラとした金平糖か……BS付きでなければ……」
 口に入れようとしていたところで誘惑を振り払った壬蔭は、手にしていた金平糖を放り投げ、両腕に嵌めたガントレットでガードして降って来る金平糖を弾きながら接近し、貫手を叩き込んで大釜に穴を穿つ。
『キラキラお星さまは空からあまーい砂糖を降らすー♪』
 ポンポンッと金平糖が次々と打ち上げられ、街中に降らそうと止まっていた車輪が動き出す。
「大きな金平糖を食べるのって、ちょっと夢かも。本当に星の様にも見えるね」
 動き始めたところへ涼香は光の剣で車輪を斬り裂き、前には進ませないと威嚇する。
「お菓子のお星さまでも、それだけ大きいと危険です」
 そこへヒナキは魔法光線を放ち、敵の車輪を一つ石に変えてしまって回転できなくさせた。
「金平糖の雨は綺麗ですけど、当たったら痛そうですね」
 花弁のような雷を纏い金平糖を蹴って高く跳躍した澪は、星のように飛び散る金平糖を超えて敵を踏み、電流を流して衝撃を与えて射線をずらす。
『コロコロお星さま。空も地面もみーんなお星さまでうめつくしちゃおー♪』
 そのまま傾斜を強くて新たに砂糖を入れて回転を上げ、ゴロゴロと金平糖が流れ落ちて地面を埋めていく。その波に近くのケルベロス達が呑み込まれていく。
「とーう!!」
 飛び上がったエイダが向かって来る金平糖を蹴り飛ばしてスタッと着地する。するとふらりと尻餅をついた。
「やっぱりこの金平糖……とっても痛ーい」
 泣き顔になりながらじんじんと痺れる足を撫でる。
「エイダちゃん、ちょっと待って! 今癒すからっ☆」
 ユージンはキラキラ輝くオーラを分け与え、足の痛みを取って金平糖の魔力を打ち消す。
「私たちが防ぎますね」
 澪と花嵐は仲間達を守ろうと雷を鎧のように纏い流れ来る金平糖を受け止める。すると花嵐が目を輝かせてじーっと金平糖を見つめた。
「花嵐、それは食べてはだめよ。頑張ったら帰りに金平糖、買ってあげますからね」
 そう言い聞かせて澪も食べないようにと口を閉じ、金平糖を押し戻した。
「食べられる大きさであれば、どんなに良かったことか……」
 踏み込んだ一華は刀を抜き打ち横一閃。青い閃きで金平糖を斬り払った。
「食べてもらいたい気持ちもわかるけど、彼女の為にも早々に退場してもらおうか」
 チラリと視線を送った万里は透き通ったオーロラ色の魚を召喚し、水を操り虹を描きながら金平糖を押し流していく。
『おーほしさーまーキーラキラッ☆』
 その水の流れを堰き止めんばかりに金平糖の生産量が増える。
「お仕事じゃ無かったら可愛い光景なのにな、あ、でもこの角の所当たると痛いね!?」
 涼香は流れる金平糖に跳び乗り、次々と跳び移って敵の頭上を取って釜を蹴りつけた。衝撃に生産が止まる。
「敵の動きが散漫になってきている様だ。着実にダメージが蓄積しているな」
 そこへ刀を抜いて雷を纏わせた壬蔭は、死角から閃光のように鋭い突きを放って刃を釜に突き刺した。
「甘くて美味しいお星さまのお礼に、私から花を贈りましょう」
 ヒナキは氷の花を咲かせ、敵を閉じ込めるように包み込んだ。

●砂糖の星
『きれーだね! きれーだね! キラキラお星さまみたい☆』
 無理矢理大釜を動かして氷を砕き、キラキラしながら金平糖が舞い飛び、それがまるで雨のように降り注いだ。
「ヤードさん! いっしょに止めるよっ☆」
 ユージンと口の周りを甘くしたヤードさんはスクラムを組むように射線を塞ぎ、攻撃を全力で受け止める。だが積もる金平糖に埋もれ、香りに引き込まれて金平糖を夢中で食べ始める。ねーさんと花嵐もそれを救助しようとするが、同じように金平糖の波に呑み込まれた。そしてエイダも巻き込まれ、リスがドングリを齧るように皆でガリガリと金平糖を食べ続ける。
「美味しそうで食べたくなる気持ちも分かりますが、量も多すぎますし遠慮しておきましょう」
 澪は雷の矢を放ち敵の心を射抜いて錯乱させ、誰も居ない場所へとキラキラ金平糖を降らせる。
「食べられないのに山積みにされているのは目に毒です!」
 その間に駆け出した一華は勢いよく跳び、飛び蹴りで金平糖の山を吹き飛ばして埋もれた仲間達を発掘した。
「金平糖を近づけないようにフォローしないと」
 一華が食べやしないかとた冷や冷やしながら、万里は雷の壁を作って金平糖を防ぎ仲間達に届かせない。そして治療も施して正気に戻した。
「はっ!? いつのまに金平糖をこんなに!!」
 次々と金平糖を食べていたエイダは、正気に戻って左右の手に持った金平糖の減り具合を見て顔を青くし、これは拙いと魔法光線を放って敵に浴びせ石へと変えて回転を鈍らせる。
「今が、畳み掛け時か……」
 正面から踏み込んだ壬蔭は、摩擦で燃え上がる拳を打ち込み金平糖を吹き飛ばし、大釜にひびを入れた。
「一気に押し切っちゃおう!」
 続けて涼香は黒い液体を伸ばし、車輪を貫いて吹き飛ばした。
「ここが流れ星の終着点です」
 その反対側からヒナキは砲撃を行い、無事な車輪を爆破し根本から折れて外れ地面を転がっていく。
『キラキラのお星さま♪ みんなで食べるとたのしーお星さま☆』
 天高く打ち上げられた金平糖が流星のように落ちて来る。アスファルトを砕き家の屋根に穴を開ける。
「君の金平糖にかける思い、実に輝かしいねっ☆負けられないや」
 キラキラ輝くユージンがウインクをすると、無数の星が飛び散り金平糖とぶつかり合う。すると欠片が敵にぶつかり、敵愾心を燃やして金平糖を降り注がせる。
「人の害になる流星雨はここで全て撃ち落とします」
 弓を構えたヒナキは矢を放ち、飛び交う金平糖を次々射抜いていく。ならばと金平糖を集中させて一塊にして落としてくる。
「大きい金平糖……壊してしまうのは勿体ない気もしますが、危ないですからね」
 横から雷を纏って空中で金平糖に着地した澪は、金平糖を押して軌道を逸らして地面に落下させた。
「これ以上食べると体重計に乗るのが怖くなってしまいます!」
 情熱を込めたエイダの投げキッスが放たれ、相手の気力を奪って金平糖の勢いを弱めた。
『キラキラ綺麗なお星さま☆』
 それでも回転を止めずに新たに色々の色の混じった大きな金平糖を作り出す。
「星すらも斬ってみせましょう」
 上段に構えた一華は刀を振り下ろし、飛び出て来た金平糖ごと硬い大釜を真っ直ぐに断ち斬った。
「オフィーリア、本物の天の川を見せてあげて」
 万里召喚したオーロラの魚が宙を泳ぎ、釜の砂糖を水浸しにして金平糖を一塊にしてしまう。
「すまないがそろそろ時間だ」
 そこへ飛び込んだ壬蔭が旋風のように蹴りを放ち、釜に残っている金平糖を薙ぎ払い不格好な金平糖が地面に落ちた。
「もう頑張らなくていいんだよ、おつかれさま」
 涼香の周囲から切り裂くような音が吹き抜ける。それは大釜の切れ目から入り込み敵の中央に届き、コアを幾重にも切り裂いた。釜は回転を止め、力を失ったように重々しく倒れた。

●お星さま
「お疲れ様でした。手強い相手でしたね、あのような怖い金平糖は勘弁です」
 特に女性の天敵であると、エイダは口の中に残る甘さにもっと食べたくなるのを頭を振って消し飛ばした。
「お菓子のお星さま。御伽噺のような素敵な光景でしたね」
 周囲への被害がなければもっと見ていたかったとヒナキは、転がる金平糖を片付ける。
「生まれ変わったらまたいっしょに輝き合おうねっ☆」
 残骸に向けてユージンがウインクしてキラキラと星を飛ばした。その足元ではヤードさんがガジガジとまだ残った金平糖を片付ける名目でお腹に入れていた。
「我慢できましたか? ……もう、仕方ないですね」
 澪が花嵐を抱きかかえると、その口元が甘くべたついているのに気づいて、優しくハンカチで拭ってやった。
「雨というより洪水でしたね……どんな味だったんでしょうか」
 ほっと一息ついた一華は周囲のヒールを手伝いながら、転がる金平糖に視線を向ける。
「一華、金平糖買って帰ろうか」
 残念そうな顔の一華を元気づけようと万里が誘うと、すぐに嬉しそうに一華は笑みを見せた。
「涼香さん、可愛らしい金平糖の店があるらしいけど行くか? パッケージも可愛いフルーツ系金平糖の店らしいのだが」
「パッケージが可愛い……フルーツ系……みかげさん大変っこれは行くしかないね!」
 壬蔭が調べておいたお店を端末から見せると、涼香がすごい勢いで頷きその手を引いた。その後をのんびりと頬をぱんぱんに膨らませたねーさんが追う。
 空を見上げれば日が落ち、キラリと光る星が浮かんでいた。

作者:天木一 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年9月22日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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