
●
「相手の肉欲に縋る恋愛は間違っている!」
ひと気のない空き地。
「真実の愛は、プラトニックを貫ける忍耐力にこそ宿っている! プラトニックラブ以外の恋愛を許すなー!!」
聴衆の前で眦を吊り上げ、嘴から泡を飛ばすビルシャナの演説には、どこか神経質な響きがあった。
「恋愛関係になったからといって、すぐに体を求めてくる輩は男女どちらであっても信用できぬのが当然! そんな輩は別の輩と簡単に浮気するに決まっているのである!!」
酷い決めつけの暴論ではあるが、頷ける部分も無いではない弁舌に、信者達も感銘を受けて。
「ほんとよねぇ。男ってケダモノだわ」
「女でも居る居る。寂しいからってすぐ浮気するやつ」
と、愚痴を零しながら納得している。
「その点、プラトニックラブこそは真実の愛! 互いの手と手を重ねて心の強い繋がりを感じられれば、かような浅ましい行為に身を堕とす必要もなく、果てしない幸福感を分かち合えるのであるッ!」
ビルシャナは、妙に視野の狭くなっている信者達相手に果たして伝わるか疑問に思うぐらい、雰囲気だけは高尚な教義を真剣に語っていた。余程信者の数を増やしたいのだろう。
●
「うーん……プラトニック……純粋に精神的。ちょっとかけらは耐えられないでありますね。何分にも寂しがり屋なもんで」
小檻・かけら(麺ヘリオライダー・en0031)が、そんな前置きから語り始める。
「プラトニックラブへ並々ならぬ拘りを持つ男性がビルシャナ化して、集めた一般人を配下にしようと目論んでるであります」
日柳・蒼眞(落ちる男・e00793)が調べた結果、都心から少し離れた所にある空き地へプラトニックラブ唯一主義ビルシャナが現れると判った。
完全にビルシャナ化した元人間以外にも、彼の主張に賛同している一般人14人が教義を真剣に聞いているらしい。
「彼らはまだ配下になってはいませんので、説得によって正気を取り戻させることが可能であります」
つまり、プラトニックラブ唯一主義ビルシャナの主張を覆せる程にインパクトのある説得を行えば、戦わずして配下を無力化する事ができるかもしれない。
「もし配下になった一般人がいる場合は、ビルシャナを倒すまで戦闘に参加し、皆さんへ襲いかかるであります。ですが、ビルシャナさえ倒せば、元の一般人に戻りますので、救出は可能であります」
しかし、配下が多い状態で戦いが始まれば、それだけ不利になる為気をつけて欲しい。
また、ビルシャナより先に配下を倒してしまうと、往々にして命を落とすのへも注意。
「皆さんに倒して頂きたい敵は、プラトニックラブ唯一主義ビルシャナ1人のみであります。ビルシャナ閃光とビルシャナ経文で攻撃してくるでありますよ」
理力に満ちた破魔の光である閃光は、複数の相手にプレッシャーをもたらす遠距離攻撃。
また、敏捷性が活きた謎の経文は、遠くの相手を催眠にかける単体攻撃だ。
「配下の方々はハードカバーの哲学書を武器代わりに投げつけてきますが、皆さんなら敵ではありますまい。複数人に当たる遠距離攻撃であります」
昼日中の空き地で信者達に向け演説しているプラトニックラブ唯一主義ビルシャナのところへ、正面から乗り込む形になる。
教義を聞いている信者達はプラトニックラブ唯一主義ビルシャナの影響を受けているため、理屈のみの説得は難しい。インパクトが重要である故、何か斬新な論理や演出を考えるのがお薦めだ。
「それで……今回の信者達をプラトニックラブ教義から解き放つ為の説得でありますけど……」
途中まで言い差して口ごもるかけら。
顔が赤いのを見て、それまで黙っていた蒼眞が助け船を出す。
「……『肉体関係の素晴らしさや、それを継続させるメリット』もしくは『プラトニックな関係を続けたせいで生じるデメリット』を語れ、か?」
「さ、左様であります。愛の交歓とでも言いますか夫婦の営みとでも言いますか、その良さを実際にご存じの方も多い筈です。ぜひとも信者達へ愛する人とベッドインする事の素晴らしさを教えて差し上げてくださいっ……!」
かけらは続ける。
「そ、それに、夫婦喧嘩の仲直りの方法、としては定番でありましょう——決して創作だけの話ではなく——口下手な人が謝るには良い方法なのでありますよ」
「なるほどな」
「更には、夫婦生活が密で順調であればあるほど、むしろ喧嘩を未然に防げたりもするであります。ちょっと溜まった不満が営みのおかげで霧散したり、相手へぶつけなくても消化できるのでありますね……まぁ、こんな感じで、直截的な官能の魅力を語りづらい場合でも、『枕を共にするメリット』は沢山あると思いますよ」
何とか説明を締め括って、ぺこりとお辞儀するかけら。
「それでは、プラトニックラブ唯一主義ビルシャナの討伐、よろしくお願いいたします」
参加者 | |
---|---|
![]() 稲垣・晴香(伝説の後継者・e00734) |
![]() 日柳・蒼眞(落ちる男・e00793) |
![]() ラプチャー・デナイザ(真実の愛を求道する者・e04713) |
![]() 因幡・白兎(因幡のゲス兎・e05145) |
![]() リチャード・ツァオ(異端英国紳士・e32732) |
![]() 月白・鈴菜(月見草・e37082) |
![]() ケイティ・ラスト(蠱惑の仔猫・e44146) |
![]() トート・アメン(神王・e44510) |
●
空き地。
「プラトニックラブこそがあるべき恋愛の姿であるッ!」
多数の信者に囲まれご高説を垂れるビルシャナのもとへ、ケルベロス達は石英より降り立った。
「プラトニックな切ない恋に憧れた頃もありました……でもやっぱ人間、肌触れ合ってなんぼですよ!」
稲垣・晴香(伝説の後継者・e00734)は、愛用の真っ赤なリングコスチュームに身を固め、信者の解放にやる気を燃やしていた。
「うん、プラトニックラブ。哲学的な、精神の、物理・肉体に非ざる愛、ですか」
ケルベロスの中でもベスト50に入るほど有名なプロレスラーで、メディアへの露出も多いらしい彼女。
今も、大胆な衣装に身を包み健康的な肉体美を誇る美人を前に、信者の一部がざわついていた。
「凄いですね、どこまで求道的なんだろ? 少なくとも、視覚、触覚、聴覚、嗅覚は不要ですよね、きっと」
「えっ?」
滑らかな弁舌でいきなり五感の殆どを不要と切り捨てられ、動揺する信者達。
「まるで、SFやファンタジーに出てくる精神生命体です。悟りなんて水準じゃないですよ……ちょっと試させてもらって、いいですか?」
おもむろに男信者の背後を取った晴香は、素早く彼に目隠しをして、その手を握ったり撫で摩る。
「ひぃ!?」
更には背中からぴたっと身体を密着させて、官能へ訴えかけた。
当然、晴香の形の良い胸も男信者の背中にくっついている。
——晴香が敢えて視覚や嗅覚など不要と極端な誤解をした理由は、ここにあった。
視覚を封じる尤もらしい理由を作る事で、男の全神経を触覚へ集中させ、密着した体の感覚をより生々しく感じさせたかったのだ。
「こんな事されても、全く気にならないなんて……俗な私には全く想像できません!」
他の信者らを煽るべく色っぽい流し目を送る晴香。
「ぜ、全然気になりませんとも。僕はそんな色仕掛けに乗ったり」
目隠しされた信者は口だけで強がってみせたが、その声は上擦っている。
「羨まし……」
そして、男信者は彼の窮状へ我知らず本音を洩らし、
「最低」
女信者は彼の股間の反応から目を背けた。男信者が晴香に体を籠絡されたのはもはや明白である。
「まあ、アレですよ。ぶっちゃけた話私も色々しましたが、まあプラトニックラブにあこがれる気持ちは分からなくも無いですよ」
リチャード・ツァオ(異端英国紳士・e32732)は、いかにも落ち着いた大人の男性といった風情で鷹揚に構えていた。
「でもまあ、プラトニックだけじゃねぇ……と言う訳でたまには火遊びしても良いんじゃないです?」
と、茶目っ気を交えて言う辺り、充分な親しみ易さも備えているリチャード。
「プラトニックラブ。本当に相手はソレを望んでるんでしょうかねぇ?」
キラリと光った金の瞳に射竦められて、信者達の目が明らかに泳いだ。
「も、勿論」
「あんまり自分をストイックに見せかけすぎると相手の方がうんざりして逃げてしまうかもしれませんよ。プラトニックラブを貫こうとしてラブが壊れるのは本末転倒ですよねぇ」
リチャードの切れ味鋭い口撃に、段々と青褪めた顔色になっていく信者達。
「それともアレですかね? 皆さん経験が無いからやり方が分からずに怖がっているのかな?」
かと思えば、妙にねっとりした口調で軽くセクハラまがいの追及をされるのだから、女信者は青くなったり赤くなったり忙しい。
「失礼な!」
「侮辱しないで!」
これも当然の反応だが、彼女らの心を例え怒りだろうと大きく動かす事に成功している。
プラトニックラブに固執してるせいで男から馬鹿にされるんだ——という考えに至れば、充分教義を捨てる理由になり得るからだ。
「大丈夫大丈夫、やってみれば案外どうって事無いですよ? 女性の方で不安な人が居れば私がお試しでお相手させていただいても宜しいですよ?」
リチャードはナンパ用の声色を使い、女信者へ向かって甘く呼びかけた。
「大丈夫、それなりに経験は積んでいますのではじめての方でもちゃんと天国まで連れて行ってあげますよ」
「もし経験したくなっても相手は自分で探しますから!」
女達の大半はキャーキャー悲鳴をあげて、手解きを申し出るリチャードから逃げ惑うが、
「……あの、宜しくお願いします」
中には、リチャードの外見に惹かれたのか赤面して頭を下げる、稀有な女信者もいた。
一方。
「なんかさー潔癖すぎるっていうか恋愛とかに夢持ち過ぎじゃあないかなー」
やれやれと肩を竦めるのは因幡・白兎(因幡のゲス兎・e05145)。
「きれいな恋愛模様ばっか夢見てると、なかなか次の段階に進んだり、そもそも恋愛すること自体に尻込みしちゃうんじゃない?」
白兎自身はアバンチュールとワンナイトラブを好むだけあって、『ビルシャナの教義は健全な恋愛のステップを阻害している』という論理にもかなりの含蓄がある。
「もっと踏み込む勇気を持とうよ。それでダメだったら、また次の恋を探せばいいじゃん」
「踏み込む勇気……」
「恋は求めるもの、愛は与えるものって言うけどさ、愛の崇高さに目が行きがちなんじゃない?」
戸惑う信者達へ対する白兎の指摘は、実に正鵠を射ていた。
「『恋愛』って言葉は、『愛』の前に『恋』があるんだよ。互いに求め合って貪り合った後に自分から与えたい人って見つけるのに、前段階を疎かにしてるんじゃない?」
いわゆる『Hの後にI(愛)がある』論であり、一人と長く付き合うより沢山の女の子と後腐れなくお付き合いしたい——そんな信条の元、蝶が花から花へ移り渡るように恋を愉しむ自称ダメ人間の白兎なればこそ堂々言える理屈だろう。
ちなみに自分は前段階だけでいいやと思っている白兎だが、そこまでは言わず口を噤むだけ賢明である。
「そんな……体を重ねていない私達は、まだ本当に愛し合えてはいないと言うの……?」
信者らは経験豊富な白兎の隙のない自説へ影響されて、絶望感に苛まれた。
●
「プラトニックラブって、結構NTRの対象になりやすく、また慣れてない故にドハマりして残念な結末を迎える事が多いでござるよ?」
幅広く二次元趣味に通じた自宅警備員故か、よくあるゲームのあらすじを引き合いに出して話のとば口とするのはラプチャー・デナイザ(真実の愛を求道する者・e04713)。
(「正直、愛した事がない故、その辺り説けと言われても無理でござるね!」)
内心そう開き直っている彼は、自身の真実の愛の求道の為にビルシャナ側ケルベロス側双方の話を聞くのを主目的に来たらしい。
「愛する者同士でそういう事をキチンとこなしていた方が、幸せな展開も良くあるでござるし」
それでも日頃からゲームで培った知識や自らの価値観を安定した話術で披露し、数多のビルシャナ信者を救ってきたラプチャー。
「お主達、愛する者がそういう事をされて悦んでいたとしても、手を繋いで、心が繋がっていれば、平気。大丈夫だと言えるのでござる? 思えるのでござる? 本当に??」
なればこそ、恋愛経験が無くても他人の気持ちを慮れる彼の詰問は、信者達の心を鋭く抉り抜いていた。
「無理に決まってるわ、NTRって結局靡いた方だって浮気じゃない! 隠れて浮気されるなんて」
「つーか、そんな尻軽を恋人に選ぶ訳……」
信者達が怒りも露わに反論する。
「それよりは、身も心も今よりさらに深く繋がれて、幸せを深められる可能性がある、かの方法も手段の一つとして使った方が良いのでは、と拙者は考えるでござる」
ラプチャーは彼らを宥めるように、フィジカルラブのメリットを叙情的にかつ解り易く説明した。
(「肉体的な繋がりも、精神的な繋がりも、両方あるのが良さそう感」)
などと得心し始めている胸の内は、おくびにも出さずに。
「身も心も繋がる……それで彼女に浮気されなくなるのなら」
緩急自在の弁舌にすっかり感化されて、信者達は真剣に悩んでいる。
他方。
「所詮、愛などエロの文学的表現に過ぎん……まさにその通り。プラトニックラブなんて押し付けられてたまるか」
日柳・蒼眞(落ちる男・e00793)は、妙にカッコよく言い放った。
「……」
いつも通り彼を石英から蹴落とした月白・鈴菜(月見草・e37082)の視線を背中に受けながら。
「男性の立場から言わせて貰えば、所詮男の上半身と下半身は別の生き物だ」
蒼眞の余りにもあけすけな演説へ、思わず耳を疑う信者達。
だが、常日頃から女性と見ればデウスエクスでもヘリオライダーでものべつ幕なしにその胸を揉んでいる蒼眞が言うのだから、もはやこれ以上の説得力は無い。
何せ太陽機の釣り糸に引っかけられて帰還したばかりだというのに、石英へ移るなりすぐ小檻へおっぱいダイブをかますほど、元気の有り余っている蒼眞なのだ。
「口では何とでも言えるけど、禁欲生活を強制されて満足する訳がないだろう。表面上は上手くいっているように見えるとしても、いずれ確実に破綻するぞ」
と、彼が禁欲生活を強いられるプラトニックラブを断固拒否するのも頷けた。
「生物である限りはどこまでいっても三大欲求からは逃れられない。理性で性欲は抑えられるなんてのは、結局は人間だけが特別だという優越思想に過ぎないんだ」
男の本音のみならずしっかりと理詰めでも諭されて、項垂れる信者達。
「男は男だし、人間も所詮動物なのね」
深いため息が口々に漏れていたが、それだけ蒼眞の持論に納得した証拠だろう。
「否定したいのは勝手だけど、食欲や睡眠欲を抑えて真面目に生活出来ると思うのか?」
そんな彼らへ、蒼眞は淡々と追い討ちをかける。
「……確実に体調を崩すし、無理をすれば気が狂うか本当に死ぬぞ……」
げにご尤もであった。
その傍ら。
「……心さえ繋がっていれば……身体の繋がりなんていらない……」
鈴菜は、チラと蒼眞へ恨めしそうな視線を向けるや、地を這う声で呟く。
「……そう思っていたし……相手も理解してくれていると……勝手に思い込んでいたわ……」
かと思えば、ばっと両手で顔を覆い、声を詰まらせて悲嘆に暮れた。
「下半身別物男の彼女さん……?」
鈴菜を心配する信者達。
この日も蒼眞作の台本を暗記した鈴菜は、彼と恋人同士に見えるようエイティーンで大人っぽく変貌を遂げていた。
「……けど本当は違っていた……相手は私に気を使って……一人で自分の性欲を処理してくれていただけだったのよ……」
……しかも段々そういうお店に行くようになったりして……少しずつ一緒にいてくれる時間も減ってきて——鈴菜の述懐に、信者らは思わず息を呑んで聞き入る。
「……そのうちに心まで離れていってしまって……気が付いたらもう……」
「酷い!」
「……でも……悪いのは私……したい事もさせてあげずに……気を使わせて……一方的に優しさに甘えていただけの女なんて……捨てられて当然よ……」
半泣きで首を振る鈴菜の演技力はいつもながら高い。
尤も、内心では何故だか酷く嫌な気持ちになって泣きそうなぐらい感情を持て余している鈴菜だから、全ての仕草が演技とも言い切れないが。
そして、蒼眞の筋書きがまた見事なもので、プラトニックラブを強要された男が女から離れていく様を、女時点で実に生々しく描ききっている。
1組のカップルが崩壊するまでの過程をまざまざと見せつけられて、信者達は大きなショックを受けた。
「……何だか、自分の未来を見てるみたいで辛い……」
そう感じさせたのだから、鈴菜もとい蒼眞の思惑通りであろう。
「……こんな思いをする位なら……初めから抱いて貰えば良かった……」
すらりと刀を抜き、苦い涙を浮かべる鈴菜。
「……だけど……それでも諦めきれないの……もう……私にはこうするしか……」
振り下ろされる白刃から目を背けて、女信者達が悲鳴を上げる。
「……月白さんや……首が斬れそうなんだけど……」
幸い、蒼眞は鋭い刃風にも耐え、何とか真剣白刃取りを決めて、鈴菜の怒りを受け流していた。
●
「ふふん、プラトニックなんてクソくらえにゃ!」
さて、ケイティ・ラスト(蠱惑の仔猫・e44146)はいつになくヤる気満々で説得に挑む。
「寝取られたぁ? そりゃおめーのえっちが下手だからにゃ!」
「何ですって!?」
初っ端から歯に絹着せぬ物言いが炸裂、信者達へ的確に精神的ダメージを与えた。
「えっちだって鍛えないと上手くはならないにゃ。ちゃんと上手くなる努力はしたのかにゃ? 色々と準備して相手を満足させようとしてたかにゃ?」
顔を赤くした信者達が、きまり悪そうに俯く。
ケイティ曰くの良いえっちに必要なのは、経験と努力——そしてパートナーへの思いやり。誰もが納得できる理屈に反論する者はいまい。
「それを怠って相手が悪いってのは高慢だにゃ! カラダだけでヤり捨てられても文句は言えないにゃ!」
これはこれで紛う事なき正論である。ヤり捨てと言うと聞こえは悪いが、夜の生活が上手くいかない不満を抱えたままで無理に夫婦や恋人関係を続ける必要など、どこにもないのだ。
「童貞と処女はえっちに夢見すぎると後々酷い目に会うにゃ!」
これも勿論暴言ではあるが、口の悪い先達からの忠告とも取れる。何より、信者達に教義を捨てさせるには、時に暴言すら辞さない姿勢も大切だ。
「夢見てる訳じゃ……でも確かに、初めてはせめて気を遣って欲しいわ」
「にゃんだったら、今ここで、童貞も処女も卒業させてやるにゃ! この場の全員絞り尽くしてもいいにゃんよ!」
ケイティはするするとドレスのスカートをたくし上げて、すっかり準備の整ったそこを指で拡げようとする。
「はい、自主規制」
すかさず草臥・衣(神棚・en0234)が、ミミックの御衣櫃をケイティが大股開きしている真ん前にすとんと座らせ、局部を隠した。
「やだ!」
女信者達の殆どが絶叫するも、男信者達はどんな反応をして良いか判らず、言葉を失っている。
それでも。
「いや、人前で服脱いで股を広げて野外プレイを誘うような女子に童貞捧げたいとは思わないんで」
やはりドン引きした様子で、常識的な断り文句が自然と出てきたようだ。
「にゃぁん、公開生えっちにゃ! さあさあ誰から来るにゃん? 今なら無料でハメ放題にゃ!」
だが、マイペースなケイティは尚も信者達に誘いをかける。
「じゃ、遠慮なく」
すると、蒼眞が誘いに乗って、彼女の小柄な肢体を組み敷いた。
女信者らが一斉にそっぽを向く反面、男信者は食い入るように2人を見つめている。
流石に乱交参加こそ理性と倫理観で思い留まったものの、ケイティの痴態にしっかり官能を揺さぶられているようだ。
「阿呆か貴様ら。男も女も! 欲深でなければあるまい!」
トート・アメン(神王・e44510)はそう断言するや、蒼眞と組んず解れつしていたケイティを力強く抱き寄せた。
「美味い物があれば求め食し! 欲しい物があるならば欲し! その為の努力を行う!」
そして、まるで信者らへ見せつけるかのように唇を吸っては、腰から密着して弾力ある感触を徹底的に堪能している。
「そして! 美しい女が! 男が居ればそれを求め触れあう! その極上の身に溺れる事こそ男子の誉れ!」
トートの魂籠った叫びは凝った言い回しの割に単純明快。
つまりは体の交わり超最高、イイ女に溺れてこそ男の至福。
「求める心が無ければそこで終わりだ。己を磨く気力も生まれぬというものよ!」
人間、性欲があればこそ、外見内面共に成長する気にもなるのだと。
「大体……磨き輝いた肢体に触れぬ事こそまさに相手へ対する侮辱とも言えるだろう!」
最後はいささか暴論だが、怒涛の勢いで繰り出されるトートの主張へ感じ入って、男信者達は自ずと納得している。
「くっ……欲望のまま女性に触れない方が失礼か」
「失礼ならなぁ、触れるしかないよな!」
普通なら余裕でセクハラ認定されかねない突っ走り発言だが、プラトニックラブ教義を顧みず素直に性欲を露わにしたのだから、これも皆の説得の成果といえよう。
「この心地よき時間を否定する事こそ愚考と知れ」
ケイティのたわわに実った胸を存分に揉みしだき、耳へも口づけて味わうトート。
「それは……怖れなのだろう? 求める自分を否定される事への」
自分は充分に快楽を貪りながら、信者達の病的な羞恥心——恐怖にも似た忌避感を言い当ててみせた。
「うっ……!」
信者達が顔色を失くすも、内なる意識では葛藤せずにいられない。
晴香のように臆せず身体を密着させてくる美女がいる。
リチャードやケイティのように初めてを貰ったり筆下ろしを請け負ったりするなどと堂々言ってのける人々がいる。
ならば自分も蒼眞や白兎みたいに男の本音を隠さない生き方をして良いのではないか。
鈴菜のような後悔をせず、ラプチャーの言う幸せを掴めるかもしれない——と。
「良い、余が肯定してやる。気持ち良い事は良い事だ!!!」
だから、トートは彼らが教義を捨てる勇気を出せるように背中を押した。
「知るがいい、情熱と情欲こそ愛の形であると!!」
「おおおーっ!」
新たな教祖を崇めるかの如く沸き立つ信者は、全員瞳の輝きを取り戻していた。
これで信者の身の安全を心配する必要が無くなった9人は、残ったビルシャナを集中攻撃。
「恋愛は自由でないとね。押し付けは厳禁だよ」
最後は白兎が奴の首を刎ねて絶命させた。
作者:質種剰 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
![]() 公開:2018年9月22日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 1/感動した 1/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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