儚げなOLに救いの手を

作者:なちゅい

●差し伸べられた『選定』の手
 そこは、とある商社のビル屋上。
「もう、嫌……」
 儚げな雰囲気をした1人のOLが力なく、その場で座り込んでしまう。
 夜風が吹くこの場所には、誰もいない。
 虚ろな瞳は屋上の柵を見ているはずなのに、どこか遠くを見ているようで。
 就業時間後、セクハラ部長にここへと連れてこられたOLは先ほどまで、体のあちらこちらを触られていた。なお、部長は悪戯に満足してすでに帰ったらしい。
 嫌悪感しかないのに、逆らうことも出来ない。
「耐えるしか、ない……けど」
 セクハラは、昨日今日始まったわけではなさそうだ。
 体を震わせるOLは憔悴しきっており、もはや限界。
 そんな彼女が柵に足をかけようとしたところに突然、露出大きめの褐色の肌とタールの翼を持つ豊満な体を持つ1人の女性が現れる。
「王女レリの命により、あなたを救いに来ました」
 シャイターンであるこの女性は、ヴィオラと名乗った。
「あなたは、あなたを虐げた男を殺し、自ら救われなければなりません」
 ここまで精神的に追い詰めたあの下衆な男に復讐するのは、当然だとヴィオラは話す。
 そしてもう1人、全身に白い鎧を纏った女性型のエインヘリアルが現れ、気絶させたセクハラ部長を女性の前へと放り投げる。
「あなたがエインヘリアルとなれば、この男に復讐して殺す事ができるでしょう」
「……わかったわ。お願い」
 OLが誘いに応じると、ヴィオラは女性の周囲に砂の嵐を吹かしてその命を奪い去ってしまう。
 その後、OLの体は大きく変形し、新たな女性型エインヘリアルとしての生を受けることとなる。
「…………」
 エインヘリアルと成り果てたOLは気を失った部長へと躊躇なく刃を振り下ろし、その首を切り落としてしまったのだった。

 シャイターンの選定によって、新たなエインヘリアルが生み出される事件が起こってしまう。
 詳細を求め、ヘリポートへと集まるケルベロス達は臨戦態勢を整えている者も多い。
「来てくれてありがとう。とても頼もしいよ」
 リーゼリット・クローナ(ほんわかヘリオライダー・en0039)もまた、説明が終わったらすぐにでも出発するとのことである。
 さて、事件内容だが、シャイターンはセクハラ、パワハラを受け続けるOLの前に現れ、その原因だった男性部長を殺す事と引き換えに、エインヘリアルとなる事を受け入れさせようとしている。
 この取引に応えたOLがエインヘリアルとなると、男性部長を殺してグラビティ・チェインを略奪してしまう。
「皆には現場に急行して、選定を行うシャイターンと護衛のエインヘリアルの2体を撃破し、可能なら新たなエインヘリアルが生まれるのを阻止してほしいんだ」
 現場にはシャイターンの女性と被害者の男性部長、導かれているOLの他、護衛として、白い鎧兜の騎士風のエインヘリアルが1体付き添っている。
 まず、シャイターンだが、『連斬部隊』の一般兵だ。
「リボルバー銃に剣と斧を持っていて、ジャマーとして多彩な攻撃を仕掛けてくるようだね」
 続いて、エインヘリアルは珍しい女性型だ。戦闘力は高くないようだが、油断は禁物である。
「こちらは、ディフェンダーとして布陣して槍を使った攻撃を行うよ」
 現場は、茨城県某所の会社屋上。
 導かれるOLがエインヘリアルとなる事を受け入れる直前に、現場に突入する事が可能だ。
 OLは目の前の男性への憎しみなどもあり、エインヘリアルになる事を受け入れてしまう。
「ただ、皆の説得が成功しさえすれば、導きを拒否してエインヘリアル化を防ぐ事が出来るはずだよ」
 エインヘリアルとならなかった場合も、敵がOLを攻撃する事は無い。
 この為、説得に成功した場合は、2体のデウスエクスと戦って撃破できれば作戦は成功となる。
「説得が失敗した場合、OLはエインヘリアルとなってしまうよ」
 エインヘリアル化したOLは、まずは男性の殺害を優先する。
 説得に失敗しそうな場合は、男性を戦闘班に外に助け出す必要があるかもしれない。
 OLがエインヘリアル化すると、白い鎧兜のエインヘリアルとシャイターンは彼女を撤退させて、ケルベロスと戦うようだ。
「撤退しようとする元OL……女性エインヘリアルを撃破するのなら、なんらかの作戦が必要だよ」
 さらに、リーゼリットは説明をつけ足すようにしてこう続ける。
「OLの説得は簡単ではないよ。あと、そのOLがエインヘリアルとなった場合、気絶した男性を救出することも難しいと把握してほしい」
 なお、OLがエインヘリアルとなるのは、男性への復讐が原動力となっている。
 もし、OLがエインヘリアルとなる前に男性が命を落としたなら、彼女はエインヘリアルとなることはないようだ。
「状況的に、目の前のシャイターンとエインヘリアルのみ撃破するという選択も、やむを得ないかもしれないよ」
 説得が難しいならば割り切りも必要かもしれないと話し、リーゼリットは説明を締めくくったのだった。


参加者
レクシア・クーン(咲き誇る姫紫君子蘭・e00448)
ロベリア・エカルラート(花言葉は悪意・e01329)
館花・詩月(咲杜の巫女・e03451)
山蘭・辛夷(フォックスアイ・e23513)
クローネ・ラヴクラフト(月風の魔法使い・e26671)
岩櫃・風太郎(閃光螺旋の紅き鞘たる猿忍・e29164)
八久弦・紫々彦(雪映しの雅客・e40443)
彩葉・戀(蒼き彗星・e41638)

■リプレイ

●まだ間に合うはず……!
 現場に急ぐケルベロス一行。
 ヘリオンの降下から直接、ビルの屋上に乗り移ると敵に気付かれるという判断もあり、メンバー達は直接目的のビルへと向かう。
 なお、一部メンバーは隣のビルから乗り移ることにしていたようだ。
「話には聞くけど、実際居るんだねぇ。こういうオジサン」
 明るく仲間へと呼びかける、赤い髪にメッシュの入ったロベリア・エカルラート(花言葉は悪意・e01329)。
 彼女も色々と思う事はあったようだが、それを顔に出すことはない。
「ま、この女性が受けた苦しみがどんなものかは想像も出来ないけど、人生捨ててエインヘリアルになる事はないでしょ」
 ただ、精神的に追い詰められているOLは、このままでは人外と……地球の敵となる道を選んでしまう。
「ギリギリだけれど……、まだ間に合う。ううん、間に合わせてみせる」
 ほとんど表情が変わらぬ館花・詩月(咲杜の巫女・e03451)だが、その胸の内はOLに同情を寄せており、救い出したいと考える。
 メンバー達は急いで某商社のあるビルに突入し、現場となる屋上を目指す。
 OLを踏み止まらせる為、そして、そそのかすデウスエクス達を討伐する為に。

 某商社ビル屋上にて。
 シャイターンとOLが言葉を交わすところに、白い鎧を纏ったエインヘリアルが現れていた。
「あなたがエインヘリアルとなれば、この男に復讐して殺す事ができるでしょう」
 『連斬部隊』一般兵、ヴィオラがOL竹内・梨愛に決断を促す。
 そこへ、飛び込んできたのは、隠密気流を纏ったニホンザルのウェアライダー、岩櫃・風太郎(閃光螺旋の紅き鞘たる猿忍・e29164)だ。
 御業を纏った風太郎は炎弾を放ってヴィオラへと奇襲をかけるが、それに気付いた敵は飛び退いてしまう。
 同じく、着物姿のヴァルキュリア、彩葉・戀(蒼き彗星・e41638)もその身に御業を卸して炎弾を発射するが、この場のデウスエクスからはあっさり避けられてしまった。
 ただ、牽制には十分。
 階段を駆け上がって屋上へと飛び出したメンバー達も、この場に現れる。
 ギリギリまで隠密気流を使っていたレクシア・クーン(咲き誇る姫紫君子蘭・e00448)は地獄の翼を噴き上げ、炎の燐光を残しながらエアシューズで接近し、シャイターンの動きを制しようとする。
「邪魔が入りましたか」
 シャイターンはケルベロスの出現にもさほど驚くことなく、素っ気無く告げた。
 そのタイミングで、散開するメンバー達。
「悪いね、邪魔させてもらうよ」
 ロベリアはビハインドのイリスと共に、デウスエクス2体の抑えに動くと、エインヘリアルの女性キャロルも槍を携えてケルベロスの出方を窺っていた。
 詩月もOLと敵の間に割るようにして入っていたが、ロベリアは倒れたままの上司、林・孝一郎にも仲間が護りに入っているのを見て。
「ま、正直あのオジサンも助けることになるのは、ちょっとアレだけどね」
 気を失ったままの上司の男性の手前には、キセルをくわえた山蘭・辛夷(フォックスアイ・e23513)が控えている。
「エインヘリアルに人生捧げさせる上に、殺人を勧めるなどもっての外だ」
 キツネ目で相手を鋭く睨む彼女は、地球のルールに従わぬデウスエクス達に退場を促す。
「ついでに、給料やすそうだしな。お前ら」
「さあ、どうでしょうか」
 煽りも込めてさらに辛夷は一言付け加えるが、敵2人はそれにまるで動じる様子はない。
 一方で、クローネ・ラヴクラフト(月風の魔法使い・e26671)はデウスエクス達から女性を話し、落ち着けようとする。
「こんな形で復讐しても、誰も救われないよ。まずは、ぼく達の話を聞いてほしい」
「…………」
 ケルベロスの登場、そしてクローネの言葉にOLは戸惑いも見せていたが、倒れたままの上司を見つめる目は非常に冷ややかだ。
(「さて……」)
 銀髪の八久弦・紫々彦(雪映しの雅客・e40443)は大斧「玄帝」を担いで戦闘態勢をとり、上司とOLにそれぞれ視線を落とす。
 ――OLの説得ができればそれでよし。もし、それが叶わぬなら……。
「仕事の邪魔はさせませんよ」
 その時、エインヘリアルとシャイターンがほぼ同時に仕掛けてきたこともあり、紫々彦は相手の足止めの為に仕掛けていくのである。

●思い留まらせる為の言葉を
 ケルベロスとして優先したいのはOL竹内・梨愛の説得だが、シャイターンとエインヘリアルが攻撃を仕掛けてくることもあり、抑えながら代わる代わる説得を行うこととなる。
「イリス、守るよ!」
 傍のロベリアが轟竜砲で相手を牽制しつつ、ディフェンダーとしてシャイターンが飛ばす銃弾を受ける。
 その間、詩月は左手の小型呪符印刷装置で即席の呪符を印刷して。
「―― 以下略。急急如律令!」
 複数の符を組み合わせ、召喚した御業を召喚してからOLに呼びかけを始めた。
「赤の他人に解決を任せて、貴方は満足できるの?」
 詩月はやや辛辣な言葉で、OL自身の奮起を促そうとする。
 他者を殺めることすら、相手に促されている状況。それは、これからも続いていくことだろう。
「今ここで振りほどかなければ、ずっと終わらないよ」
「解放―――! 輝き、戒めよ!」
 続き、トリテレイアの花を髪に咲かせたレクシアは自身の蒼い地獄を籠めた水晶石をシャイターンへ放り、一気に地獄を開放してその目を眩ませようとする。
「デウスエクスになって復讐をしても、貴女が救われた事にはなりません!」
 その上で、レクシアも一旦、OL梨愛の説得に回っていた。
「梨愛さんのまま救われないと、意味が無いんです!」
 また、デウスエクスの甘言とはいえ自己主張できたではないかとレクシアは訴えかける。
「大丈夫、きっと貴女はご自身が思うより主張が出来る人ですよ」
「……そんなの、綺麗事ね」
 だが、OLはケルベロス達の主張を一蹴してしまう。
 それもあり、ポルターガイストを使うビハインドのイリスに一度抑えを任せ、ロベリアも説得に入る。
「1つ忘れてるよ。殺されてデウスエクスの手先に造り変えられる事が貴女の為になるハズ無いんだってさ」
 受けた苦しみと秤にかけ、どちらも酷いことなのをOLに再認識させるロベリア。
 現状を跳ねのける為、もう1つ動くべきとロベリアは諭す。
「今度はささやかながら、私達も手伝うよ」
「……どうやって?」
 ただ、OLの闇は深い。
 ケルベロスの言葉を耳にしながらも不信を拭えず、冷ややかな視線が変わる様子はまるで見られない。
「梨愛殿、よくぞ独りで今まで耐えて参られた」
 身構えるエインヘリアルへと「無量光大螺旋阿弥陀棍」を伸ばして攻める風太郎もまた、上司を殺したいほど憎悪するOLの心境を深く慮る。
「だが、思い出してくだされ! そなたには理解者たる家族や友人がおる事を!」
 彼女は1人ではなく、道を示す恋人、相棒、友人がいるはず。
 風太郎にも大切な心友クロことクローネがこの場にはおり、その存在は未来と空の中心の星を指し示す如くと、羅針盤のストラップを掲げる。
「一時の復讐の為にエインヘリアルになってしまえば、そなたは大切な彼らを失ってしまいますぞ!」
 オウガ粒子を飛ばして仲間の支援に当たる辛夷も、一旦その手を止めて。
「この男を殺して、エインヘリアルに残りの人生捧げるほどの価値はないなぁ」
 レプリカントである辛夷は、エインヘリアルがケルベロスなどと交戦を繰り返すブラックな職場であること、今度は肉親を殺せと命令するかもしれないと告げる。
「セクハラ絶えない職場は辞めればいいし、暴力渦巻く職場に転職する必要もない」
 もう少し穏やかに働ける職場を紹介すると辛夷はさらに話を続け、OLにその判断を促す。
「……それができていたなら、今こうしてはいないわ」
 ただ、相手の将来を考えた為の言葉であっても、今の梨愛には届かない。ここが復讐のタイミングと考える彼女の冷たい視線は、倒れたままの上司に向けられたままだ。
「雪しまき、呑まれて消える人影よ」
 後方の紫々彦は激しい吹雪を起こし、敵の足を止めていく。
 戦況は悪くないが、説得が思わしくないと紫々彦は察してそちらへと回る。
「もし君がここで殺してしまえば、事実を誰も知らないまま終わってしまう。それは少し悔しくないか」
 証拠を集め、出るところに出ようと紫々彦が話すと、OLの瞳へとほのかに温かみが戻るような気がして。
「彼の為に、君が手を汚す必要はないよ。失うものは多すぎるからさ……」
「やはり、綺麗事しか言わないのね」
 しかし、紫々彦の最後の一言でOLは落胆したようにも見えた。
 御業によって敵を抑えていた戀も、攻撃の合間に説得へと加わる。
「セクハラなどする阿呆というのは、身をもって知らなければその性格は治らぬというしの、お主の気持ちはわかる」
 だからといって、手をかけてよいとはならぬと戀も諫めようとした。社会的な責任を追ってまで、こんな阿呆に復讐したいのか、と。
 復讐を望むなら、まず仲間に助けを。そして、動かぬ証拠を手にして社会的責任をこの上司に負わせるべきだ。
「生きて償わせるのが、何よりお主のためじゃろう」
 殺してでも、などという疚しい考えは捨てるべき。
 言葉の所々で僅かに反応を見せる言葉はあるのだが、それは梨愛が本当の意味で求める言葉ではない。
 彼女はあくまで、今までの苦しみをどう上司に理解させるか、その一点のみしか考えていない。
「辛いセクハラやパワハラを、一人で耐え続けたきみは偉いよ。良く、戦ったね」
 オルトロスのお師匠に攻撃を一旦任せ、光の盾で回復支援していたクローネが最後に梨愛を落ち着かせるように呼びかける。
 今、彼の命を奪っても、苦しみはなかったことにされるだけ。
「刃では無く、法の力で裁きを受けさせるべきだ」
 クローネの一言だけは少し、梨愛が反応をみせたがそこまで。
「あんなやつの為に、きみがきみを捨てる必要は無いんだ」
 戦い続けたその勇気は、もっと別の使い方が……。
 その時、梨愛は肩を落としながらも、シャイターンの方に呼びかけた。
「……あなたの誘い、乗るわ」
「選定の暇など与えぬ!」
 シャイターン、ヴィオラは口元を吊り上げると、風太郎がすかさずその手を止めようとするが、白い鎧のエインヘリアルが行く手を阻む。
「こちらを忘れて貰っては困りますよ?」
 炎の燐光を残しつつレクシアも攻め立てていくが、シャイターンを止めることはできない。
 次の瞬間、OLの体は砂嵐に包まれ、その命は断ち切られてしまう。
 遺体は大きく変化し、この場に新たなエインヘリアルを誕生させてしまうこととなる。
 辛夷が男性を庇うように立ちはだかるが、エインヘリアルと成り果てた梨愛はシャイターン、ヴィオラから受けとった剣で、ゴミを見下ろすように元上司の首を切り落としてしまう。
「ご苦労でした。後は……」
「はい、わかりました」
 頭上に現れる魔空回廊へ、新たなエインヘリアルはヴィオラに剣を返してから突入してこの場から去っていく。
 ケルベロスは誰もが、OLの説得は叶うと疑っていなかった。
 それだけに、この僅かな間の出来事に対応できず、ただその成り行きを見守ることしか出来なかったのだった。

●道を踏み外させた者達に粛清を
 やるせない想いを抱きながら、ケルベロス達はただ目の前の相手の殲滅を目指す。
 説得の間傷ついていた仲間の為に、辛夷は大自然との霊的な接続によって癒しへと当たる。
 クローネも敵のグラビティによって惑わされる仲間に花びらのオーラを舞わせ、正気に戻そうとしていく。
 ただ、敵は勢いづいている。
 士気が落ちているケルベロスを攻め落とさんとし、エインヘリアル、キャロルの持つ槍が雷を纏い、ビハインド、イリスの体を貫いて霧散させてしまう。
 双子の姉を倒されても、ロベリアは余裕を崩さずに竜鎚を振るって反撃を叩き込む。
「1人の女性を人ならざる道に落とした罪、許しがたいでござるよ!」
 態勢が崩れかけた相手に、使役する御業タタリと憑依合体した風太郎が力強く叫ぶ。
「憑依合体! 仙忍モード! ニルヴァーナ・グラトニィィィー・スマァァァッシュ!」
 全身、黄金色に発光した彼は猛然と光の一撃を叩き込むと、エインヘリアルの全身が爆ぜ飛んでしまった。
 残るシャイターンには、詩月が柄の長いハンマーを軽々と振り回して叩きつけていく。
 多少攻撃されても、シャイターンはしたり顔を崩さない。
 それでも、ケルベロス達は攻撃を止めず、レクシアは「物質の時間を凍結する弾丸」を射出し、紫々彦も大斧「玄帝」の刃を叩きつけていった。
 所詮、闘争本能しか持たぬシャイターンに、戀は自分の言葉が届くと思ってはいないが、それでも彼女は言わずにいられない。
「罪を犯す者からの無礼に耐える罪なき者を、何じゃと思っとる」
 一時的に、戀は使役するエネルギー体全てを召喚する。
 死者の魂を纏ったそれらは相手に彗星の如く突撃し、シャイターンにレクイエムを捧げた。
「ふ、ふふ……」
 身体を大きく燃え上がらせ、消えゆくシャイターン。
 その撃破はしたものの。ケルベロス達は目的を果たした相手に、敗北感を拭いきれずにいたのだった。

●救えぬやるせなさを感じながら
 この場に現れたシャイターンとエインヘリアルを討伐したケルベロス一行。
「皆の者、お疲れ様じゃの」
 戀が仲間達を労うが、顛末の後味の悪さもあってメンバー達の表情は浮かない。
 まず、某商社部長、林・孝一郎の命を護ることはできなかった。
「自業自得ですが、命まで奪うのは……」
「…………」
 レクシアの言葉に、クローネも悔しさを滲ませる。
 OLを極限にまで追い詰めたこの男に、慈悲などない。
 風太郎も警察へと連れて行くつもりでいたし、仲間達もそれに賛同していた。
 この男に罪を認めさせ、悔い改めさせるべきだとクローネは考えていたが、その機会は永久に奪われてしまった。
 ――エインヘリアルと化したOL、梨愛自身の手によって。
「私達が求めていた決心は、そうじゃないんだよ……」
 辛夷は戦いが落ち着いたらOLに会社へ辞表の提出を勧め、ケルベロスカードを渡してから自身を頼ってほしいと伝える気でいた。
「誰かに頼ることは、悪いことではないんですよ……」
 空を見上げる詩月は、OLに弁護士事務所に頼るよう勧めようと考えていた。
 もしあの場面で、そういった社会的制裁の手段を直接伝えられたなら、彼女の決意は変わっていただろうか。
 ケルベロス達はそんな後悔を抱きながらも、事後処理を進めていくのだった。

作者:なちゅい 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年9月18日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 5
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。